この記事は、離婚届の書き方にわからない点がある人向けです。内容は難しいですが、どうしても疑問が消えない・確信が持てない人のために、ほとんどの人には不要な情報まで掲載しています。
もし、これから離婚届を書き始める場合や、離婚届の入手方法・提出方法を知りたいだけであれば、離婚届の入手から提出まで(簡単な書き方も載っています)を先に見てください。
令和3年9月1日以降、戸籍の届書に押印は必要なくなります(押印しても構いません)。随時修正する予定ですが、令和3年9月1日以降は押印についての記載を読み飛ばしてください。
また、この記事でも説明が不足している場合は、役所(海外在住なら大使館や総領事館)へ問い合わせることをおすすめします。
届出日/届出先(欄外)
右側の受理・送付・発送などの欄は、役所が使うので記入不要です。
届出日
届出日に書くのは、離婚届の記入日(作成日)ではなく、戸籍の窓口へ実際に提出する日か、郵送なら投函する日なので、最後に記入するべきです。
もし、先に届出日を書いてしまって、訂正せずに後日提出した場合は、窓口なら提出日に訂正を求められます。
郵送の場合にも訂正を求められそうですが、投函日・消印日・到達日のズレは普通にありますし、郵送では役所への到達日が受付日となるため、訂正にはならないでしょう。
離婚届を窓口で受領した日、または郵送で到達した日を受付日とし、離婚届の記載が適法・適正かどうか審査して受理された日が受理日です。
受理日は、審査を経るので受付日より遅れることも当然ありますが、離婚届が受理されると受付日にさかのぼって受理日とされます。
届出先
離婚届は、本籍地以外の役所でも提出できますから、届出先(宛先)には実際に離婚届を提出する役所の市区町村名を書きます。最初から「長 殿」と印刷されているので、正確には提出する役所の市区町村長宛てです。
A市が本籍、B市が住所だとして、どちらでもないC市に離婚届を出す場合、届出先はC市と書きます。
もし、入手した離婚届に市区町村名が印刷・押印されている場合、横線で消して提出する市区町村長宛てに訂正します(訂正印は必要ありません)。
海外在住の場合は在外公館への届出も可能
海外在住の場合、在外公館(大使館・総領事館)に離婚届を提出することができます(戸籍法第40条)。したがって、在外公館に届け出るなら、届出先の記入は大使や総領事などになります。
また、在外公館の有無にかかわらず、本籍地の役所に郵送で提出することは可能です。
氏名/生年月日
氏名
婚姻中の氏名を、略字を使わず戸籍の記載どおりに記入します。婚姻中、日本人夫婦は同じ戸籍に入り、同じ氏(姓・名字)を使うので、離婚届では夫も妻も氏の記入は同じです。
なお、裁判離婚(調停、審判、和解、請求の認諾、判決)では、離婚届を出す前に離婚が成立していますが、裁判離婚でも離婚届では婚姻中(離婚前)の氏で記入することになっています。
つまり、離婚の種別に関係なく、婚姻中の夫婦の氏名を記入するということです。
夫婦の一方が外国人の場合
婚姻時は、日本人を筆頭者とする戸籍が作られ、外国人配偶者は戸籍の身分事項欄(婚姻)に記載されます(外国人に戸籍はありません)。
ですから、戸籍に記載された夫婦の氏名を、そのまま離婚届に記入しましょう。日本人が「外国人との婚姻による氏の変更届」で外国姓へ変更していた場合、戸籍上も外国姓なので、離婚届の氏は外国姓で記入します。
ちなみに、外国人配偶者の氏名がカタカナなら「よみかた」は不要、漢字では「よみかた」が必要です。
生年月日
日本人は元号から和暦、外国人は西暦で記入します。和暦の元号をアルファベットで略記はできませんが、数字はアラビア数字(1,2,3…)で大丈夫です。
日本人の生年月日を西暦で記入して提出した場合、生年月日が戸籍と相違なければそのまま受理する扱いがされます(昭和54年6月9日民二3313号通達)。
ところが、実際は西暦で記入した離婚届に訂正を求める窓口が多いようで、どうしても西暦にこだわるなら、通達を根拠にすれば西暦で受理されるでしょう。戸籍法上は、「届出人の出生の年月日」としか規定されていません(戸籍法第29条第3号)。
ただし、離婚届が西暦表記で受理されたとしても、戸籍の記載が西暦になることはあり得ず、和暦(元号)で戸籍に記載されます。
出生届の誤り・遅れなどで、真の生年月日が戸籍上の生年月日と違う場合でも、離婚届で記入するのは戸籍上の生年月日です。
戸籍上の生年月日を真の生年月日へ訂正するには、家庭裁判所で戸籍訂正許可の審判を得てから、役所に戸籍訂正を申請します。
住所/世帯主の氏名
住所
離婚届を出す時点で、住民登録をしている住所(海外在住は後述)を都道府県名から記入します。
住所の書き方ですが、「丁目」や「地番号」を省略することはできず、方書(間借りの世帯主、アパート名・マンション名・団地名など)も省略せずに記入します。
住所にハイフン(”-”)を用いた略記(例えば○○町1-1-1)は使用できません。数字部分は地名に該当しない限り、アラビア数字で大丈夫です。
離婚前の別居と離婚届の住所
離婚前に別居している場合、まだ住民異動届(転出届と転入届、同一市区町村内は転居届)を出していなければ別居前(婚姻中)の住所を記入、既に住民異動届を出していれば現住所を記入します。
つまり、離婚届提出時の同居・別居に関係なく、夫婦それぞれが住民登録上の住所を記入すればよいことになりますが、これは住民異動の手続きが適時行われている前提だからです。現実には、離婚前に別居していても、住民異動届を出していないことはあるでしょう。
そこで、離婚前の別居では、離婚届と同時に転入届・転居届を出す場合に限り、現住所を記入できます。同じ扱いで、離婚後の別居でも、離婚届と同時に転入届・転居届を出す場合に限り、新住所を記入できます。
転入届は転入先の役所へ出すのですから、住民登録されていない現住所や新住所を離婚届に書くことができるのは、転入先の役所へ離婚届を出す場合だけです。
また、転入届には転出届での転出証明書を必要とする(住民基本台帳カードによる特例を除く)ため、事前に転出届を出していることが前提です。うっかりしやすいので注意してください。
まとめると、以下のとおりです。
- 原則は夫婦それぞれが住民登録上の住所を記入
- 離婚前の別居で現住所が住民登録上の住所と異なれば、現住所の役所へ離婚届を出す場合に限り現住所を記入できる
- 離婚後の別居で新住所が決まっていれば、新住所の役所へ離婚届を出す場合に限り新住所を記入できる
- 2と3のどちらの場合も離婚届と同日に転入届・転居届が必要(転入届なら先に転出届も必要)
夜間・休日に離婚届を提出する場合
離婚届は夜間・休日でも受け付けてもらえます(受理は翌開庁日)が、住民異動届は夜間・休日に受け付けてもらえません。
したがって、夜間・休日に離婚届を提出するなら、離婚届には住民登録上の住所を記入して、開庁日に住民異動の手続きをする流れです。
ただし、離婚届と一緒に転入届や転居届を出す場合、受け付ける(受理は翌開庁日)扱いの役所もあります。このとき、離婚届の住所をどのように記入すべきかは、届け出る役所に直接聞いてください。
※判明したら追記します。
外国人の場合の住所
現在は、外国人であっても中長期滞在なら住民登録されるため、住民登録上の住所を記入します。この住所は、在留カードにおける住居地(旧外国人登録証明書における居住地)となるはずです。
海外在住の場合の住所
渡航時に海外転出届を出していれば、日本では住民登録されていないので、海外の居住地を片仮名と漢字(国・州・市など)で記入します。
世帯主の氏名
離婚届に記入の住所は住民登録上の住所です。住民票で確認できる世帯主をそのまま記入します(世帯主によみかたの記入欄がある用紙もあります)。
※外国人が世帯主の場合は調査中です。
ただし、前述のように離婚届と転入届・転居届を同時に出すことで、離婚届に住民登録と異なる住所を記入する場合、その住所の世帯主です。このとき、転入届・転居届に記入する新しい世帯主は、離婚届に記入した世帯主と一致します。
本籍
婚姻中は、夫婦が同じ戸籍に入っているため、本籍欄はひとつしかありません。戸籍に記載のある本籍を都道府県名から記入し、下の段に筆頭者の氏名を記入します。
筆頭者の氏名は、婚姻で氏(姓・名字)が変わらなかった側の氏名ですが、同姓同士で婚姻した場合には、戸籍謄本で筆頭者を確認するか、婚姻届を出したときに決めた筆頭者を思いだすしかありません。
氏名欄が婚姻中の氏名で記入するのと同じように、既に離婚が成立している裁判離婚であっても、離婚届では婚姻中の本籍と筆頭者の氏名を記入します。
また、住所欄と同じく、本籍はハイフン(”-”)を用いた略記を使用できず、数字部分は地名に該当しない限り、アラビア数字で問題ありません。住所と異なり、本籍は番まで(号がない)または番地なので注意しましょう。
本籍がわからないとき
住所は日常的に使うので忘れるとは考えにくいですが、本籍はめったに使わないので、住所と異なる本籍の人は、本籍を忘れてしまうときもあります。
戸籍謄本を見れば確認できるとはいえ、戸籍謄本は本籍地の役所に交付申請しますから、本籍がわからないと戸籍謄本も取れない堂々巡りですよね。
本籍がわからない場合には、住民票の写しでも確認できます。
住民票の写しを交付申請する際に、本籍は希望しないと記載されないので注意してください。
また、ICカード免許証を持っている場合は、運転免許証に内蔵されているICチップを、スマホアプリで読み込むことで本籍を確認できるようになっています(2種類の暗証番号が必要、3回間違えるとICチップが読み込めなくなるので注意)。
他には、マイナンバーカードを持っていると、現在の住所地と異なる本籍地の戸籍謄本をコンビニ交付することもできますが、事前にコンビニ交付利用登録申請をしなければならず、利用登録申請の際に本籍を入力しなければなりません。
このとき、一部のコンビニでは本籍をICカード免許証から読み取れますので、本籍の確認だけなら利用登録申請の途中まで進めてみるのも手です。
夫婦の一方が外国人の場合の本籍欄
外国人配偶者には戸籍がなく、日本人配偶者の戸籍に記載の本籍と筆頭者(必然的に日本人配偶者)を記入し、「夫(妻)の国籍 外国名」と外国人配偶者の国籍を併記します。
このとき、外国名は一般的に使われる国名で構いません。例えばアメリカ合衆国をアメリカと書いても、中華人民共和国を中国と書いても大丈夫です。
父母及び養父母の氏名/父母との続き柄
夫婦それぞれについて、離婚届を出す時点における父母の氏名と、父母との続柄を記入します。続柄は長男(長女)、二男(二女)、三男(三女)のように記入し、次男(次女)は使わないので注意しましょう。
また、この欄で面倒だとすれば母の氏です。母の氏は書く場合と書かない場合があり、現在の父母の関係によって変わります。
父母が婚姻中で共に存命
父母は同じ戸籍なので、父は氏名を記入し、母の氏は省略します。
父母が離婚せず死別した
父母が離婚していなくても、配偶者の死亡で婚姻関係は終了していますが、父母が同じ戸籍なので母の氏は省略します。父母の両方が死亡している場合も同じです。
ただし、同じ戸籍でも生存配偶者が姻族関係終了届を出している場合と、復氏届を出して別戸籍にいる場合は、父母の氏名を両方記入します。
父母が離婚した
父母が別戸籍なので、父母の氏名を両方記入します。
離婚した父母が同姓
考えられるケースとしては、そもそも父母が同姓同士だった、離婚時に「離婚の際に称していた氏を称する届」で婚氏続称した、再婚相手が前婚と同姓だったなどありますが、いずれも父母は別戸籍なので、父母の氏名を両方記入します。
なぜなら、同じ呼称・表記の氏でも、戸籍が違えば異なる扱いを受けるからです(同じ名字でも違う家の人とは区別されるのと似てますね)。
夫または妻が養子の場合
普通養子の場合には、実父母の氏名と実父母との続柄、養父母の氏名と養父母との続柄を記入します。
古い様式では、養父母の氏名・続柄の記入欄がないので、その他欄に記入してください。
養父母が複数いる場合は、この欄に記入しなかった養父母の氏名・続柄を、全てその他欄に記入します。
なお、特別養子の場合、戸籍上は実の親子として扱われますから、戸籍に記載されている父母の氏名と父母との続柄を、養父母欄ではなく父母欄に記入します。
夫または妻が嫡出ではなく認知された子の場合
認知されていれば法律上の父子関係があるので、父母の氏名を書きます。続柄は戸籍に記載された続柄を記入します。
夫または妻が嫡出ではなく認知されていない子の場合
認知されていない場合は、血縁上の父は存在しても、法律上の父子関係がないので、離婚届には父の氏名を記入せず、母の氏名と戸籍に記載された続柄を記入します。
非嫡出子(婚外子)の続柄
非嫡出子(婚外子)の続柄については、平成16年11月1日から、認知されていない子であっても長男・長女、二男・二女…のように出生順で記載されますが、それ以前の戸籍では男・女としか記載されていません。
この点について、男・女と記載された戸籍を、出生順の記載にしたいときは、本籍地の役所に更正の申出をすることになりますが、離婚届のその他欄で更正の申出をすることもできます。
※離婚届のその他欄に「夫(妻)の続柄を○○とする更正を申し出ます」(○○は出生順の続柄)と記入すれば、申出の意思表明に足りると考えられますが、詳しくは役所に確認してください。
離婚の種別
離婚届がどのような離婚に基づいているか、区別するために用いられます。大きな区別としては、協議離婚と裁判離婚(広義)で、裁判離婚は調停の成立、審判の確定、和解の成立、請求の認諾、判決の確定による離婚です。
例外的に、離婚調停では協議離婚する旨の合意で調停を成立させ、調停離婚ではなく協議離婚にするケースがあります。
このケースでは、調停が成立しても離婚は成立しておらず、協議離婚にチェックします。
また、裁判離婚では、家庭裁判所が交付した文書を離婚届に添付します(その他欄に添付した文書名も記入します)。
ところで、協議離婚だけは日付の記入欄がありません。これは、届出日欄でも説明したとおり、協議離婚が離婚届の受理によって(離婚届の記入時よりも未来に)成立するからです。
裁判離婚の日付は家庭裁判所の文書を確認
裁判離婚では、離婚届を提出するときに家庭裁判所の文書を添付すると説明しました。これらの文書には日付が記載されており、その日付を離婚届に記入します。
調停、和解、請求の認諾では調書に記載の年月日、審判、判決では確定した時点で離婚成立となるため、確定証明書に記載の年月日(確定日)です。
婚姻前の氏にもどる者の本籍
婚姻前の氏にもどる者の本籍欄は、おそらく離婚届で一番書き方が難しい欄です。
離婚で夫婦の戸籍から抜ける側、つまり婚姻時に氏を変えた側について、離婚後の戸籍を決める非常に重要な欄となりますので、十分に内容を理解してから記入するようにしてください。
夫婦の一方が外国人のときは、この欄への記入は不要です。
また、外国人と婚姻して、「外国人との婚姻による氏の変更届」により外国人の氏へ変更している場合は、離婚から3か月以内に限り、「外国人との離婚による氏の変更届」を出すことで婚姻前の氏に戻ることができます。
まず、夫婦の戸籍から抜ける側は、次の2つを決めなくてはなりません。
- 氏:婚姻前の氏(旧姓)に戻るのか、婚姻中の氏をそのまま使う(名乗る)のか
- 戸籍:婚姻前の戸籍に戻るのか、新たな戸籍を作るのか
氏と戸籍のそれぞれに2通りですから、組み合わせて4通りの選択肢があるように思えるところ、婚姻中の氏を名乗って婚姻前の戸籍に戻ることはできず、選択できるのは3通りです。
- 婚姻前の氏(旧姓)に戻って婚姻前の戸籍に戻る
- 婚姻前の氏(旧姓)に戻って新しい戸籍を作る
- 婚姻中の氏を名乗って新しい戸籍を作る
氏は自由に変更できるものではなく、戸籍も自由に出入りできるものではありません。したがって、離婚後の氏と戸籍はよく考えてから決めましょう。
上記3通りのいずれかを選んだら、以下、該当の見出しをクリックすると詳細が表示されます。
1.婚姻前の氏(旧姓)に戻って婚姻前の戸籍に戻る
婚姻前の氏に戻る「夫」または「妻」と、「もとの戸籍にもどる」にチェックして、戻る戸籍(婚姻前の戸籍)の本籍と筆頭者氏名を記入します。
戻り先として考えられる戸籍
- 婚姻で親の戸籍から抜けた場合・・・親の戸籍
- 婚姻前に自分を筆頭者とする戸籍があった場合・・・その戸籍
- 例外として婚姻中に養子縁組した場合・・・養親の戸籍
筆頭者の氏名は、親の戸籍に戻るなら親の氏名、自分が筆頭者の戸籍に戻るなら自分の氏名、養親の戸籍に戻るなら養親の氏名になります。
ただし、記入するのは戻りたい戸籍が除籍になっていないことを確認した後にしてください。婚姻前の戸籍が「除籍」になっていると、離婚で戻ることができないからです。
ちなみに、除籍という用語は、婚姻等で個人が戸籍から抜ける場合、個人が死亡して戸籍から除かれる場合にも使います。
戻ろうとした戸籍が除籍になっているケースとしては、
- 両親共に亡くなって、親の戸籍に他の子供(自分にとって兄弟姉妹)が誰もいない
- 婚姻前は自分を筆頭者とする戸籍だったが、婚姻で抜けて誰も戸籍にいなくなった
- 婚姻前は自分を筆頭者とする戸籍で子供も一緒だったが、自分は婚姻で抜け、子供は配偶者と養子縁組で抜けて誰も戸籍にいなくなった
などです。
戻りたい戸籍が除籍になっている場合
婚姻前の戸籍が除籍になっていると、戻れないので婚姻前の氏で新しい戸籍を作るしかなくなります。したがって、この場合は「2.婚姻前の氏に戻って新しい戸籍を作る」を記入の参考にしてください。
もし、戻る戸籍が除籍になっていることを知らず、除籍になった戸籍の本籍と筆頭者氏名を書いて離婚届を出してしまうと、受理できないため訂正を求められます。
本人からの届出ではないときは持ち帰りとなるか、その場で本人に連絡ができれば、新本籍と筆頭者になる旨を確認した上で職権訂正も可能です。
戻りたい戸籍が転籍している場合
自分以外を筆頭者とする戸籍へ離婚で戻りたいときに、戻り先の戸籍が転籍して除籍になっていることもあります。離婚で戻りたい戸籍が転籍している場合は、転籍後の戸籍が戻り先になるので、転籍後の本籍と筆頭者氏名を記入します。
離婚後の戸籍に子供を入れたい場合は要注意
夫婦の戸籍から抜ける側が親権者なら、離婚後に子供を親権者の戸籍へ入籍させることが多いでしょう。注意すべきは、同じ戸籍に三世代が入れない点です。
もし、離婚後に親権者が親の戸籍へ戻ってしまうと、親権者の親にとって孫となる子供は、親権者の親の戸籍に入ることができません。
結局は、親の戸籍から自分が抜けて、自分と子供で構成される新しい戸籍を作ることになるので、そのくらいなら離婚時に新しい戸籍を作っても同じです(「2.婚姻前の氏に戻って新しい戸籍を作る」を参照)。
2.婚姻前の氏(旧姓)に戻って新しい戸籍を作る
婚姻前の氏に戻る「夫」または「妻」と、「新しい戸籍をつくる」にチェックして、新しい戸籍の本籍と、筆頭者である自分の氏名を記入します。
このときに筆頭者として書く氏は、婚姻前の氏に戻るのですから婚姻前の氏(例外として婚姻中に養子縁組していれば養親の氏)です。
新しい戸籍の本籍は、国内に存在する(地番や住居表示の街区符号がある)場所であれば、どこでも自由に選ぶことはできます。
いくら自由に本籍を選べるといっても、遠隔地では戸籍謄本を取るときに不便です。
したがって、離婚後の住所がある市区町村を本籍地とするケースが多いのですが、住所と本籍は異なるとはいえ、本籍から住所を推測されてしまうと困る場合は、離婚後の本籍を住所と全く関係のない場所にすべきでしょう。
また、明らかに使えるとわかっている本籍以外は、事前に本籍候補地の役所へ問い合わせておく必要があります。存在しない場所を本籍に記入してしまうと離婚届が受理されません。
新本籍の訂正は、欄外に押した捨印(または署名)では役所が訂正できず、訂正できるのは本人だけです。よって、本人の訂正により訂正箇所に直接訂正印(または署名)を必要とします。
新しい戸籍を作ると婚姻前の戸籍には戻れない
離婚で婚姻前の戸籍に戻る場合、戻った戸籍において自分が筆頭者でなければ、いつでも分籍によって新しい戸籍を作ることが可能です。ただし、分籍後に旧戸籍へ戻ることはできません。
一方で、離婚で新しい戸籍を作った場合には、その時点で旧戸籍である婚姻前の戸籍へ戻ることができなくなります。
分籍による新戸籍、離婚による新戸籍のいずれも、旧戸籍へ戻れないのは同じですが、離婚による新戸籍は、婚姻前の戸籍(多くは親の戸籍)へ戻る唯一の機会を失うことになるので、後悔しないかよく考えましょう。
3.婚姻中の氏を名乗って新しい戸籍を作る
離婚で氏が戻ることに生活上の不都合があるなら、離婚後も婚姻中の氏を名乗ることができます(婚氏続称といいます)。戸籍も婚姻中の氏で作られます。
ただし、厳密には婚姻中の氏ではなく、婚姻中の氏と同じ呼称・表記の氏へ変えたに過ぎないのですが、対外的には名字が変わっていないので問題ないでしょう。
これは、「民法上の氏」と「呼称上の氏」という氏の二重概念を使った仕組みで実現されており、詳しく知りたい場合は以下を参考にしてください。
離婚後に婚姻中の氏を名乗るためには、離婚届と一緒に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出します。この届出を離婚届と一緒にするときは、婚姻前の氏にもどる者の本籍欄は空欄にします。
そして、離婚届のその他欄に、離婚の際に称していた氏を称する届(戸籍法77条の2の届)を離婚届と同時に提出する旨を記入します。
その他欄記入例(いずれか)
- 同日離婚の際に称していた氏を称する届出
- 戸籍法77条の2の届を同時に提出
離婚の際に称していた氏を称する届出は離婚後でも可能
離婚の際に称していた氏を称する届は、離婚から3か月以内なら、後から届け出ることもできますが、その場合には離婚届で一度婚姻前の氏に戻ります。
したがって、離婚後に届け出る場合は、離婚届で「婚姻前の氏にもどる者の本籍」は空欄にできません(「1.婚姻前の氏に戻って婚姻前の戸籍に戻る」か「2.婚姻前の氏に戻って新しい戸籍を作る」を参照)。
その後、離婚の際に称していた氏を称する届が出されたときに、現在の戸籍筆頭者が自分でなければ、婚姻中の氏による新しい戸籍が作成されます。
離婚の際に称していた氏を称する届が出されたときに、現在の戸籍筆頭者が自分でも、同じ戸籍に他の人(必然的に未婚の子供)がいると、婚姻中の氏による新しい戸籍が作成されます。
しかし、現在の戸籍筆頭者が自分で戸籍に自分しかいないとき、現在の氏から婚姻中の氏に更正されるだけで、新しい戸籍は作られません。
なお、離婚から3か月を過ぎた場合は、家庭裁判所で氏の変更許可の審判を申し立てるしか方法がないので、最終的に婚姻中の氏を使いたいなら、離婚届と同時または離婚から3か月以内に届け出ましょう。
裁判離婚で戸籍筆頭者が離婚届を提出する場合
裁判離婚では、調停・審判の申立人または訴えの提起者が、自分の署名だけで離婚届を提出できます。これは、夫婦のどちらでも同じです。
ところが、離婚で氏も戸籍も変わらない戸籍筆頭者にとって、離婚届の「婚姻前の氏にもどる者の本籍」は何の関係もありませんよね。
とはいえ、相手の意向を無視して「新しい戸籍をつくる」にチェックを入れることはできませんし、勝手に相手の新本籍を決めることも当然できません。
ですから、相手が離婚届で新しい戸籍を作るときは、次のような何らかの方法を必要とします。
- 離婚届のその他欄に相手が新本籍を記入し署名する
- 離婚届と一緒に相手が作成した新戸籍編製の申出書を添付する
- 離婚届と一緒に相手の新戸籍編製が定められた調停調書等を添付する
これらの方法では、「新しい戸籍をつくる」にチェックを入れて、新しい戸籍の本籍ならびに筆頭者として相手の氏名(氏は相手の婚姻前の氏)を記入します。
いずれでもない場合、相手は婚姻前の氏に戻り婚姻前の戸籍に戻ります(「離婚の際に称していた氏を称する届」が添付されている場合を除く)。
もし、戻る戸籍が除籍されていれば、戻る戸籍と同じ本籍の新しい戸籍が作られ、相手はその戸籍の筆頭者になります。
1.離婚届のその他欄に相手が新本籍を記入し署名する
記入すべき内容は、新しく戸籍を作る意思、新本籍、署名の3つです。
その他欄記入例(いずれか)
- 新戸籍編製の申出をします。新本籍 署名
- 妻(夫)は 新本籍 に新戸籍編製を申し出ます。署名
※押印は任意ですが、署名は必ず本人のものです。
このとき、相手の署名で使う氏は、婚姻中の氏であることに注意しましょう。
2.離婚届と一緒に相手が作成した新戸籍編製の申出書を添付する
新戸籍編製の申出書については、書式が不明です(判明したら追記します)。
しかし、その他欄への記入と同じ内容(新しく戸籍を作る意思、新本籍、署名)があれば足りるはずです。この場合、離婚届のその他欄への記入は不要です。
3.離婚届と一緒に相手の新戸籍編製が定められた調停調書等を添付する
調停調書等に、相手の新戸籍編製が定められていれば、本籍も当然に記載されているので、この場合は離婚届のその他欄への記入は不要です。
未成年の子の氏名
夫婦に未成年の子供がいるときは、夫婦の一方を親権者として指定しなければ離婚できない扱いです。そのため、未成年の子がいるのに、親権者の指定がない離婚届は原則として受理されません。
親権者が、夫または妻のどちらになるかは夫婦の協議で決めますが、親権は離婚協議の中でも特に激しく争われることから、調停・審判・訴訟で定められることも多くあるでしょう。
親権者の決まり方がどうであれ、未成年の子供(子供2人でも子供3人以上でも全員)を、「夫が親権を行う子」と「妻が親権を行う子」に分けて離婚届に記載します。子供の氏は、離婚時に子供が入っている戸籍の氏です。
「夫が親権を行う子」「妻が親権を行う子」の記入欄は、それぞれひとつずつしかありませんが、複数の子供の氏名を書いて問題ありません。
また、未成年の子の氏名欄に訂正があるときは、訂正箇所に夫婦両方の訂正印(または署名)を必要とします。
親権者の指定の訂正が、欄外への捨印(または署名)や一方の訂正印(または署名)で可能になると、届け出る一方が親権者の指定を容易に変更できてしまうからです。
未成年の子供が夫婦の戸籍にいない場合
未成年の子供が夫婦の戸籍にいない場合とは、どのような状態か想像できない人も多いのではないでしょうか。
例えば、事実婚で生まれた子供は母親の戸籍に入りますが、母親が父親の氏を称して父親と婚姻すると、父親を筆頭者とする戸籍に母親だけが入り、認知された子供でも母親の旧戸籍に残ります(もちろん夫婦の戸籍に入ることはできます)。
このように、親権を行うべき未成年の子供が、夫婦の戸籍以外にいる場合、未成年の子の氏名欄で記入する氏は、子供が現在入っている戸籍での氏です。そして、その他欄に子供が現在入っている戸籍の本籍と筆頭者氏名を記入します。
親権者の指定と子供の戸籍は別問題
離婚届で親権者の指定をしても、未成年の子供が自動的に親権者の戸籍へ異動することはなく、離婚で夫婦の戸籍から抜ける側は、夫婦の戸籍に残った未成年の子供と戸籍が別になります。
離婚後に子供の戸籍を異動させるには、家庭裁判所に「子の氏の変更許可」の審判を申し立て、自分と同じ氏にしてから自分の戸籍に入籍させる入籍届が必要です。
同居の期間/別居する前の住所
同居を始めた年月と、別居した年月を元号を用いて記入、別居をしていれば別居前の住所を記入します。婚姻後に同居しない夫婦がいれば、離婚して別居しない元夫婦もいるので、この欄はケースバイケースで空欄になります。
婚姻前から同居していたときは、婚姻前に同居を始めた年月で記入します。婚姻後に同居したなら結婚式の年月でもよいとされているくらいなので、この欄は元々アバウトで構いませんし、同居の証明も別居の証明も必要ありません。
また、住所欄には住民登録上の住所を書くことでもわかるように、同居や別居は住民登録で判断します。そのため、夫婦の住所欄が同じなら、実際は別居していても同居として扱います。
同居の期間がないとき
書くべき内容がないので全て空欄にして、その他欄に「同居期間なしのため(6)(7)(8)空欄」と記入します。
同居と別居を繰り返しているとき
最初に同居した年月と直近の別居した年月、直近の別居前の住所を書きます。あまり厳密に考えなくても問題ありません。
離婚時に同居中のとき
別居した年月と別居前の住所は空欄にして、その他欄に「現在同居中のため(7)(8)空欄」と記入します。
同居または別居の年月が不明のとき
この欄は、厳密さを求められていないので、思いだせる限りで近い年月を書いても大丈夫ですが、どうしても年すら思い出せないなら「年月不詳」にしましょう。
それでも、戸籍を確認すれば婚姻届が受理された日はわかるので、同居を始めた年月(または結婚式の年月)くらい推測できるはずです。
別居する前の世帯のおもな仕事と夫妻の職業
別居する前の世帯のおもな仕事
夫婦で収入の多かった側の主な仕事をチェックします。普通は離婚後に別居して世帯が分かれるか、婚姻中に別居して世帯が分かれるので、別居する前の世帯の収入源となっていた主な仕事をチェックするだけです。
「別居する前の世帯」にこだわってしまうと、婚姻中に一度も同居していない場合や離婚後も同居する場合に該当しなくなりますが、その場合でも夫婦で収入の多かった側を対象にしてチェックします。
なお、選択肢3は従業員数1人から99人までを対象としていますが、正確に調べる必要はなく、ざっくりとわかる範囲で区分けして構いません。
夫妻の職業
国勢調査のある年の4月1日から、翌年の3月31日までに離婚届を提出する場合に記入が必要です。
ただし、裁判離婚によって国勢調査のある年の3月中までに離婚が成立している場合は、離婚届の提出が4月1日以降でもこの欄を記入する必要はありません。
逆に、裁判離婚による離婚成立が、国勢調査のある年の4月から翌年の3月までなら、国勢調査の翌年4月に入ってからの離婚届でも一定期間は記入が必要です(詳細は役所に確認してください)。
なお、国勢調査の年とは、西暦の下1桁が0か5の付く年(2020年、2025年、2030年…)です。
職業欄に書くべき職業とは?
人口動態職業・産業調査で使われる職業を、例示表から探して2桁の分類番号を記入します。普段使っている職業名ではないので注意してください。例示表は役所に置いてあります。
参考:職業例示表 – 厚生労働省
※別ウィンドウまたは別タブで開きます。
その他欄
その他欄に書くべき内容は、実に多岐に渡るため、全ての事例を網羅することはできません。記入が必要な代表的な事例を紹介しておきますが、詳しくは役所の窓口で教えてもらった方が確実な欄です。
記入が必要な理由 | 記入例 |
---|---|
離婚の際に称していた氏を称する届の提出 | 【同日離婚の際に称していた氏を称する届出】 【戸籍法77条の2の届を同時に提出】 |
裁判離婚:添付書類 | 【添付書類 調停(和解、認諾)調書謄本】 【添付書類 審判(判決)書謄本、確定証明書】 【添付書類 ○○国△△裁判所の判決書謄本、確定証明書、和訳文】 |
裁判離婚:相手方が新本籍編成 | 【夫(妻)は○○(新本籍の場所)に新戸籍編製を申し出ます。△△(相手方署名)】 |
裁判離婚:相手方による届出 | 【訴えの提起者○○による届出がされないため相手方である△△による届出】 ※訴えの提起者は調停・審判なら申立人に変更 |
夫または妻が普通養子 | 【夫(妻)の養父 ○○】 【夫(妻)の養母 △△】 【夫(妻)の養父母 ○○、△△】 |
夫または妻が非嫡出子で続柄を更正したい | 【夫(妻)の続柄を○○とする更正を申し出ます】 |
未成年の子供が夫婦の戸籍にいない | 【夫(妻)が親権を行う未成年の子の表示 ○○(子の本籍) △△(子の本籍の筆頭者)】 |
未成年の子供の出生届がされていない | 【出生届未済の○○(生年月日)の親権は父(母)△△が行う】 |
届出人または証人が自署できない | 【届出人(証人)○○は自署不能につき代書】 【届出人(証人)○○は自署不能につき代書、印がないので拇印】 |
記入が必要な欄を空欄にするとき | 【~のため○○欄は空欄】 ※○○欄は欄外の()番号でも良い |
届出人署名
届出人とは、離婚する夫婦のことです。使者が離婚届を提出する場合でも夫婦が届出人です。
ただし、裁判離婚の場合には、夫婦の一方が届出人となり、通常は調停・審判の申立人または訴えの提起者が届出人です。
例外的に、申立人または訴えの提起者が、裁判離婚の成立から10日以内に届け出ない場合と、調書等に相手方からの届出が記されていれば、相手方からも届け出ることができるので、そのときの届出人は相手方になります。
署名の注意点
署名は、届出人である夫婦の双方(協議離婚)または夫婦の一方(裁判離婚)が、必ず自署によって記入します。署名する氏は婚姻中の氏です(つまり夫婦で同じ氏)。
押印は任意なのでしなくてもかまいませんが、押印する場合の印鑑は夫婦で異なる印影でなくてはなりません。認印(実印以外の印鑑)でもよく、ゴム印やスタンプ印は使用できない扱いです。
本人が署名できない場合
事情(例えば手が不自由などの理由)があって、本人が署名できない場合には、他の人に代書させることも可能です。代書した場合はその他欄に自署ができず代書したと書きます。
この扱いは、本人に離婚の意思があっても、本人がすべき署名をできない場合の例外で、離婚届を勝手に代書してよいという趣旨ではありません。
夫婦の一方が外国人の場合
署名は自署が原則なので、協議離婚では外国人も本国の文字で署名(サイン)します。
証人署名押印/生年月日/住所/本籍
協議離婚のときは、届出人(離婚の当事者)以外の成年者の証人2人による署名(押印は任意)、生年月日、住所、本籍が必要です。裁判離婚に証人は必要ありません。
届出人以外の成年者なら、友人・知人、血縁者、第三者でも証人になることができますし、外国人であっても証人にできます(外国人が成年であるかどうかは本国法に依存します)。
また、成人年齢に達していない日本人でも、婚姻して成年者と扱われていれば(成年擬制といいます)証人になることができます。
外国人の場合、署名は本国の文字で押印は不要、生年月日は西暦、住所は在留カードの住居地(旧外国人登録証明書の居住地)、本籍は国籍です。
しかし、証人は成年者なら誰でもなれるので、あえて外国人に証人を頼む事情がない限り、メリットは特にないでしょう。
面会交流/養育費の分担(欄外)
民法の改正(平成24年4月1日施行)により、民法第766条に面会交流(父又は母と子との面会及びその他の交流)と養育費の分担(子の監護に要する費用の分担)が明記されたことから、離婚届の書式が変わりました。
面会交流と養育費の分担の取り決めについてチェックする欄が設けられ、令和3年には養育費の取り決めの方法(公正証書・その以外)欄や、法務省の関連HPへのQRコードが追加されています。
これらのチェックがなくても離婚届は受理されます。そもそも面会交流と養育費の取り決めは、法律上で離婚の必須要件ではないからです。
しかし、自治体の中には面会交流と養育費の分担が協議されているか確認する運用もされていることから、既に決まっているならチェックしておいた方が無難でしょう。
それ以前に、面会交流や養育費は、きちんと決めてから離婚すべきです。
連絡先(欄外)
欄外のどこかに連絡先を記入する欄があります(左側の下が多い)。
連絡が来ることはほとんどありませんが、問題は離婚届に受理できないほどの重大な不備があったときです(郵送時や窓口でのチェック漏れなど)。
重大な不備があるのに連絡先がわからないと、いつまでも離婚届が受理されません。協議離婚では、離婚届が受理されるまで離婚が成立しないことになります。
ですから、役所が開いている平日の昼間に連絡可能な電話番号を書きましょう。可能なら(問題なければ)夫婦双方の連絡先の方がベターです。
住所を定めた年月日など(欄外)
離婚届は、市区町村によって微妙に異なるため、欄外に以下のような記入欄が設けられている離婚届が存在します。
- 住所を定めた年月日(または住定年月日など)
- 受領年月日
- 本人確認の方法
- 不受理届出の有無
- 通知の要否
- その他事務処理上のミスを防ぐための確認欄
中でも、住所を定めた年月日は、連絡先の隣に配置されている離婚届を確認できており、いかにも記入が必要に思えますが、これらは役所側が使うもので記入は必要ありません。
住民登録のある市区町村内で住所変更(転居)した場合の日付です(住民基本台帳法第7条第7号)。住民票の写しで確認できます。
住民となった日(転入日)から転居がない ⇒ 住民となった日が住所を定めた年月日(または未設定)
住民となった日(転入日)から転居がある ⇒ 転居日が住所を定めた年月日
離婚届の記入を書き間違えてしまったら
書き間違いがあるときは、横線(二重線か一本線)で消して書きなおし、届出人署名欄に使った印鑑で欄外に押印(または署名)します。
修正液や修正テープを使ってはダメで、これは訂正があった箇所を訂正後も読むことができるようにしておくためです。
多くの自治体は、離婚届の欄外に捨印や署名できる用紙を使っています。欄外に枠がなければ、欄外(中段や訂正箇所の横でも良い)に届出印で捨印(または署名)します。
ちなみに、訂正箇所に訂正印を押した(訂正用の署名をした)場合でも、離婚届は受理されます。
離婚届に訂正すべき点がある場合、届出人(離婚の当事者)に訂正を求めますし、欄外の捨印(または署名)によって、軽微な誤りなら役所で訂正します。
捨印がなくても、軽微な不備は「符せん(付箋)」を貼り付け、誤りがある旨を記載する対応がされます(戸籍事務取扱準則制定標準第33条)。
しかし、戸籍の記載ができないほどの重大な不備が後から見つかると、届出人に訂正してもらって受理するか、追完届(受理後に不備を補正させる届出)によって不備を補正します。
なお、本来は訂正、追加(加入)、削除した文字数も記入する必要がありますが(戸籍法施行規則第67条による同規則第31条第4項の準用)、実際はそこまで求められないようです。
捨印(または捨印に代わる署名)について
離婚届では、記入に誤りがないと思っていても、記入した全員(届出人と証人)について欄外に訂正印としての捨印(または署名、以下同じ)をしておく方が無難です(捨印は必ず届出印を使います)。
捨印をさせることが、正しく離婚届を書けないと思われているようで嫌なら、捨印をする必要はありません。その代わり、役所側で捨印を使って訂正できない不備があった場合は、窓口まで出向くことを覚悟しましょう。
また、捨印をすることで、不正な訂正までされてしまうのではないかと思うのなら、そもそも戸籍を扱う職員を疑っていることになるため、その前提では捨印を押しても押さなくても、離婚届に何を書いても同じことです。
ゆえに、離婚を届け出るという法律で定められた行為も、役所の職員を信じられないのでは最初から無意味になってしまいます。
豆知識:離婚届と人口動態調査
同居の期間、別居する前の住所、別居する前の世帯のおもな仕事と夫妻の職業は、毎年行われる人口動態調査と、国勢調査の年に行われる人口動態職業・産業調査のために必要な情報として、離婚届に記入を求められるものです。
これらの情報は、戸籍に記載される内容ではありませんが、戸籍法施行規則第57条の規定により届け出るべき事項で、離婚届の書式にも用いられています。
離婚届から人口動態調査離婚票を作り、集計される仕組みですが、人口動態調査離婚票を作るのは役所なので、離婚届を出す人にしてみれば、単に離婚届で情報提供しているに過ぎません。