調停の終了は多岐に渡り、家事調停と民事調停の違いだけではなく、誰が終了させるのかという違いもあります。
想定できる状況がありすぎて、全てを網羅できませんが、次のような状況で終了することが多いのではないでしょうか。
- 調停で合意して争いが無くなった→成立
- 何度調停しても双方が全く譲らない→不成立、取下げ
- 調停への欠席が続く→不成立、取下げ
- 調停外で解決した→取下げ
上記以外にも、調停が終了するパターンはあるので、これから調停を始める場合や調停中なら、念のため知っておいても損はないはずです。
ここでは、どの調停にも共通している終了と、家事調停に特有の終了、民事調停に特有の終了について解説します(少し難しい用語も出てきます)。
家事調停・民事調停に共通の終了
- 調停の成立
- 調停の不成立
- 調停の取下げ
- 調停をしない措置
- 当事者死亡による当然の終了
調停の成立
これはわかりやすいでしょう。話合いで合意に至って、調停委員会が合意内容を相当であると認めたときに調停は成立します。そもそも調停を申し立てるのは、調停を成立させるためです。
調停での合意内容は、調停条項として調停調書に記載され、調停調書への記載は法的な効力を持ちます。
家事調停の場合
調停調書への記載は、確定判決または確定審判(別表第2事件の場合)と同一の効力を持ちます(家事事件手続法第268条第1項)。
民事調停の場合
調停調書への記載は、裁判上の和解と同一の効力を持ちます(民事調停法第16条)。裁判上の和解は、民事訴訟法第267条により確定判決と同一の効力を持つので、民事調停の成立も確定判決と同一の効力です。
調停の不成立
調停が続けられないときを含み、調停で合意が見込めないときは、調停委員会が調停を不成立にします。不調に終わるという言い方もされます。
これが一般的に知られる不成立で、その他にも不成立になるケースとして、合意が相当でないと調停委員会が認めた場合も、職権で不成立になります(家事事件手続法第272条第1項、民事調停法第14条)。
例えば、著しく公序良俗に反し不適当な合意、実現が全く不可能と思われる合意、過大・過小な給付に関する合意などが考えられます。
調停の取下げ
調停の申立人は、申立ての全部または一部について、いつでも相手方の同意なしに(例外あり)調停を取り下げることができます。
調停の取下げは、申立人の任意で行われる他、合意形成に見込みがないと判断した調停委員会から勧められることもあります。
また、調停で合意したのに調停を成立させず、あえて取下げを選択するレアケースもあって、いずれの場合でも調停の取下げは申立人の判断です。
調停を成立させずに取り下げる場合は、争いが再発するおそれや合意が反故にされるおそれ、支払い等における請求権の時効なども考慮して、慎重に選択する必要があるので気を付けましょう。
調停をしない措置
調停委員会の職権として、申立てが不当な目的である場合や、事件が調停を行うのに適当ではないと認めるとき、調停を行わないで終了させることが許されています(家事事件手続法第271条、民事調停法第13条)。
基準について特に規定はなく、調停委員会の裁量で調停をしない措置が可能です。例えば、根拠のない申立て、不成立直後に同じ調停の申立て、別な作用への時間稼ぎと思われる申立てなどが該当するでしょう。
当事者死亡による当然の終了
説明するまでもないですが、調停の当事者が調停中に死亡した場合、もはや合意によって調停を成立させることは叶わず、当然に調停は終了します。
家事調停に特有の終了
家事調停には、事件によって特殊な審判で解決を図る方法もあります。
調停で合意に達したときでも、事件の性質から調停成立による終了が馴染まないときに「合意に相当する審判」がされます。
参考:合意に相当する審判
調停で合意に達しないときでも、食い違いが僅かであるときや、事件の早急な解決が望ましいときなど、家庭裁判所の職権により「調停に代わる審判」がされます。
参考:調停に代わる審判
調停手続の終了
家事事件手続法では、調停の申立てについても細かく規定があり、調停の申立てから却下される場合があります。
調停が開始されて終了するわけではないため、調停の終了には該当しませんが、手続として終了するので念のため紹介しておきます。
調停の申立ての却下
調停の申立てが不適法であるときは、申立てが却下されます。この却下に対しては即時抗告が可能です(家事事件手続法第255条第3項)。
調停の申立書の却下
調停の申立書には「当事者及び法定代理人」と「申立ての趣旨及び理由」の記載がなければならず、不備があるときは補正を命じられます。
また、手数料の納付がされていない場合と、相手方に申立書の写しを送付するための費用(切手)を予納しない場合にも、納付または予納を命じられます。
これらを命じられても申立人が対応しなければ、裁判長の命令で申立書が却下され、却下に即時抗告も可能です(家事事件手続法第256条第2項による同法第49条第4項から第6項ならびに同法第67条第3項及び第4項の準用)。
申立書の不備を訂正するか、手数料・切手を納付すれば解決しますし、申立人は望んで調停を申し立てるのですから、規定に反することは通常ありません。
ただし、この規定は相手方に申立書の写しを送付できない場合にも適用されます。申立書に記入した相手方の住所地に通知ができない場合、過失がなくても不備として補正を求められるので注意しましょう。
民事調停に特有の終了
民事調停には、家事調停の「調停に代わる審判」に相当する「調停に代わる決定」があります(民事調停法第17条)。
※調停に代わる決定については今後解説ページを公開する予定です。