調停は裁判所手続であるため、調停の知識がないと、裁判所=弁護士を連想させます。しかし、調停は当事者の話合いを前提とする手続であり、弁護士だけの出席も許されますが、望ましいのは本人の出席です。
だからといって、弁護士へ代理を依頼することに何の意味もないかというと、それは別の話で、弁護士に依頼するメリットはあります。ただし、それなりにデメリットもあることは覚悟しておきましょう。
ここでは、メリットとデメリットを中心に解説していきますが、調停で弁護士に依頼するかどうかは、自分で判断するべきなので結論は出していません。
調停は弁護士に依頼するほど面倒ではない
そもそも、調停という制度が設けられているのは、面倒で負担の大きい訴訟をすることなく、裁判所を活用できるように作られた経緯があります。
調停を始めるための手続は、申立書への記入と必要な書類を揃えるだけで、家事調停なら2,000円程度と安価です(申立てに1,200円+連絡用の郵便切手、戸籍謄本などの交付手数料を除く)。
民事調停では、その請求額が大きいほど変わるのですが、訴訟を提起する場合に比べて、半額かそれよりも少ない額となります。
ただ、申立書の作成や書類を揃えるのが面倒、難しそうでやりたくないという理由で、弁護士への依頼を勧められることもあるでしょう。
しかし、それはあまりにも大げさすぎます。未成年ならともかく、大人なら会社や役所に申請書や届出を出した経験くらいありませんか?
調停の申立書もその程度の難易度で、書き方がわからなければ裁判所でも教えてくれますし、当サイトでもある程度は解説しています。必要書類に至っては、当事者が揃えられない書類を裁判所から求められるはずもありません。
調停は当事者主体の制度
調停は裁判所手続ですから、裁判所の公権力が背景にあるとはいえ、裁判所から何かを強制されることはなく、当事者の意思が尊重されます。当事者が「No」と拒み続ける内容を、無理やり「Yes」に変えることなど絶対にないです。
裏を返せば、依頼した弁護士が何を主張しようと、相手に「No」と言われただけで調停は成立しません。そのくらい、調停は当事者主体だということです。
また、調停は法的な知識を持たない当事者の参加を前提としており、民間から選出された調停委員に対して事情を説明します。
その調停委員ですが、弁護士等の有資格者が調停委員になるケースを除くと、ほとんどが法律の専門家ではありません。
しかも、原則として調停では当事者が直接話さないので、一度でも調停を経験している人なら、何のために弁護士へ依頼するのかわからない人も多いのではないでしょうか。
調停での話合いは法的な性質ではない
端的に言ってしまうと、一般的に弁護士が活躍するのは、弁護士が持つ法的な知識をふんだんに活用し、主張する根拠を法律に求めていくような場面です。
しかし、調停での話合いは、どちらが悪いからその責任を取らせるといった目的よりも、どうしたら当事者や関係者の将来にとってより良い結果になるか、妥協点を探りながら、当事者による本質的な解決を目指すことが目的です。
つまり、調停に「勝った負けた」は最初から無いのです。あるのは、落としどころが見つかったか(調停成立)、見つからなかったか(調停不成立)だけです。
そのような手続でなければ、一般の人が利用するにはハードルが高すぎますし、白黒をつけるには訴訟があるので、調停の存在意義が失われてしまいます。
調停を弁護士に依頼するメリット
調停を弁護士に依頼するとしたら、多くの人は次の2つを動機とするでしょう。
- 調停に出席したくない、出席できない
- 法律に詳しくないので不安、言いくるめられそう
対価を支払ってでも、この2点を解決したいと思うのなら、調停を弁護士に依頼するメリットは大きいです。
相手と会わなくても調停ができる
基本的に調停は別席で行われ、相手と会う可能性は小さいですし、事情があれば事前に伝えておくことで、当事者の接触がないように配慮してもらえます。
また、感情的な問題で調停に出席したくない人は多くいますが、中には身の危険を感じて、調停の出席を拒む人も少なくありません。
DV事案に対して、裁判所は危害が及ばないよう特に配慮してくれるとはいえ、裁判所外での待ち伏せなど、絶対に接触がないとも言えないからです。
2019年には、離婚調停中の妻が夫に刺され亡くなるというショッキングな事件がありました。
なお、弁護士に依頼しても、離婚と離縁の調停成立時には、原則として代理人のみの出席が許されず本人出席なので注意してください(ウェブ会議での調停成立を可能とする改正が予定されています)。
調停の場所が遠くてもOK
調停は、原則として相手方の住所地を管轄する裁判所で行われます。
当事者が離れて住んでいるとき、自分が申立人なら、相手方の住所地を管轄する裁判所まで行かなくてはならず、遠隔地なら泊まりがけになりますし、どうしても家を離れられない事情も考えられます。
弁護士に依頼するとこの点は解決できますが、調停期日の当日だけではなく、前後でも弁護士を拘束するとなると、一般家庭の収入では大変な出費です。
その場合、弁護士は相手方の地元で依頼すると、出張費用が抑えられるので金銭的な負担は減ります。その代わり、弁護士との意思の疎通がうまくいかない可能性もあり、一長一短だとも言えます。
どうしても、相手方の住所地に行けない事情があるなら、自庁処理を上申して、地元の裁判所で行うように頼んでみる方法も考えてみましょう。
管轄ではない裁判所が、事件を自ら処理すること。
自分の地元の裁判所に調停を申し立て、自庁処理の上申が認められると、地元の裁判所で調停が行われます(自庁処理は事情がないと認められません)。
電話会議での調停をしやすい
テレビ会議システムや電話会議システムを利用すれば、そもそも相手方の住所地を管轄する裁判所まで行く必要もなく、遠隔地だからという理由だけで弁護士に依頼するのは早計です。
また、新型コロナウイルスの影響で、調停期日が延期されたり、裁判所への来庁ができなくなったりと、裁判所手続の停滞が起こったことや、当事者の不安解消・負担軽減ならびに感染防止の観点から、テレビ会議システム・電話会議システムでの調停需要は増えると思われます。
ところが、最寄りの裁判所へ出頭する以外の電話会議は、代理人弁護士の事務所なら認められやすいのですが、自宅等ではハードルが高くなります。
その理由は、調停の当事者本人が電話していると確認することが不確実なことに加え、非公開の調停手続において、電話の向こうに本人・代理人以外の誰もいないこと、録音されていないことの確認ができないからです。この点、弁護士はその職責から信頼されていると言えます。
裁判所外からの電話会議で調停をしたいのなら、弁護士への依頼は考えておくべきでしょう。
法律のプロに任せる安心感
調停委員は、法律の専門家ではありませんが(中には弁護士もいます)、全くの素人よりも法律を勉強しているのは確かです。
これは当たり前の話ですが、調停委員として研修を受け、担当する事件に関係する法令を踏まえておかないと、誤った方向で調停が進みかねないからです。
調停委員が民間人だと知っていても、裁判所職員であるからには萎縮してしまいそうですよね。調停委員と対抗する場面を想定するなら、法律のプロである弁護士に理詰めで対応してもらうほうが安心できます。
本来、調停委員は意見を押しつけるのではなく、当事者の話を聞いて合意形成を促す存在ですが、それは建前で、調停委員は高圧的な人や非常識な人もいます。そして、基本的に調停委員を変更してもらうのは相当難しいです。
また、弁護士は依頼人の利益のために(それが自らの利益になるから)動くのであって、依頼人を無視して調停委員に説得されるようなことは到底考えられません。
冷静な話合いと抗議したいときにも有用
当事者ではない弁護士は、交渉に長けている職業柄、依頼人が望む方向へ進むように調停委員と話を進めてくれます。
調停委員としても、刺激しないように気を使いながら当事者と話すよりも、弁護士のほうが話しやすいかもしれません。
また、調停への不満の中でも、特に多いのが調停委員への不満です。言い方は悪いですが、当たり外れは否定のしようがなく、調停委員から人格を疑う発言があることも良く聞く話です。
そのようなとき、当事者の抗議はあまり効果がありません。争いを扱う調停では、申立人と相手方の利益が反するため、一方が不満を持って感情を荒立てることは少なくないからです。
しかし、第三者の弁護士(依頼人の利益で動くので厳密には違いますが少なくとも事件の当事者ではない)であれば、弁護士という責任のある資格も重みを増して、抗議を聞き入れてもらえるかもしれません。
弁護士はアドバイスをしてくれる
完全に弁護士へ委任する場合は、弁護士からアドバイスを受けても意味はありませんが、弁護士に同席してもらうか、時には自分だけで調停に出席することがあるなら、弁護士のアドバイスは役に立つでしょう。
同席のときは、弁護士がわかりやすく補足してくれることもありますし、自分だけで調停に出席するときでも、想定問答を弁護士としておけば慌てません。
また、調停での話合いを重ねていると、感情が高ぶって不用意な発言をしてしまう可能性もあり、どのように進めれば良い結果を得られるか、戦略的なアドバイスを受けながら調停に臨むことができます。
調停条項をチェックしてもらえる
調停成立時に作成される調停調書には、調停で取り決めた内容が記載され、これを調停条項と呼びます。
もちろん、双方で合意した内容が記載されますし、調停調書を作るのは裁判所書記官なのですが、何か抜けていないか、調停条項に曖昧さがないかなどチェックしたい内容は多いのです。
しかも、調停調書には執行力があり、反故にすると強制執行できるのですから、本来であれば細心の注意を払って調停条項を一字一句確認するべきでしょう。
ところが、調停の当事者にしてみると、長かった調停がやっと終わる安心感で気が緩むのは否めません。後悔しないよう、弁護士にチェックしてもらえるのはとても大きいのではないでしょうか。
個人的には、弁護士に依頼するとすれば、この調停条項のチェックが最大のメリットで特に推したいところです。
調停を弁護士に依頼するデメリット
誰でも思いつくのが、調停を弁護士に依頼することによる費用の高さです。家事調停なら数千円でも可能なのに、数十万円の弁護士費用を払ってまで、弁護士に代理してもらうかどうかは、争いの事情と経済状況に関わります。
弁護士を拘束すると相当高い
弁護士の報酬は、たった30分の相談で5,000円が相場の世界(しかも初回時のサービス価格)ですから、2時間程度の調停+その前後の移動で、弁護士を拘束すると相当高い日当です。
依頼するだけでも着手金は発生しますし、弁護士を出席させても、相手が欠席したとなれば、日当はドブに捨てるようなものです。
ただ、調停でどうしても欲しい成果があるのに、その対価である弁護士報酬が惜しいというのであれば、それは単なる虫の良い話でしょう。高度なサービスに、高額な費用がかかるのは少しも珍しいことではありません。
ですから、成果への対価という点では、弁護士費用が高いのもやむを得ないとなるのですが、それはあくまでも成果がある前提です。
それだけの費用を支払っても、調停で何か成果が得られるとは限らず、当事者が出席したときと同じく弁護士が話すのも調停委員です。他人と話すのが本当に苦手な人以外は、調停委員と話すことにそれほど苦労はしないでしょう。
弁護士の中には、成果がなくても最善の手を尽くすための費用だから、弁護士費用は何のデメリットにもならないと言い出す人がいます。完全に弁護士側の論理です。
専門家の弁護士がやるだけやってダメだったら諦めなさい。でも(一般庶民にとって高額で弁護士にとって高額ではない)お金は貰いますよ。というわけです。
本当にそれで良いのでしょうか? 騙されたつもりで試す健康食品や化粧品と訳が違いますよね?
調停が成功でも失敗でも、弁護士には高額を支払わなくてはなりません。承知の上で契約したのですから当然です。ただ、弁護士には大きなリスクもないのに、依頼人は調停の失敗で弁護士費用を支払い、何も進展がないのはあまりにも痛い……。
これが訴訟なら、勝訴でも敗訴でも結果は必ず出るので、最善の手を尽くしてくれる弁護士に、お金をかけるだけの価値は十分にあるでしょう。
なお、経済的に余裕があって、自分が出席するよりも、弁護士に出席させたほうが安いほどの高収入であれば、弁護士への依頼も成り立ちます。
また、収入の高い人ほど、例えば財産分与のようにお金が関係する調停では影響も大きいため、弁護士へ依頼する動機は強いと思われます。
調停が不成立なら費用出費だけで終わる
調停で解決すると成立で終了、解決しなければ不成立(または取下げ)で終了となりますが、成立なら弁護士に依頼した甲斐があっても、不成立なら何の意味もなく、ただ弁護士に支払うお金を無駄にするだけです。
調停不成立は敗訴と異なり、何も決められず話合いが決裂しただけです。つまり、自分と相手のどちらも譲らなければ、成果もないまま調停は不成立となって、続けて争うには訴訟です(自動的に審判移行する一部の家事事件を除く)。
弁護士に依頼しても話がまとまるとは限らず、最初から話合いにならない相手との調停で、弁護士を立てることには何の意味もありません。
モラルがない弁護士も存在する
弁護士法は第1条第1項で、「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」としています。しかし、弁護士も人間ですから、中には逮捕される弁護士もいれば、モラルのない弁護士も残念ながら存在します。
そのような弁護士を、依頼者側から見抜くことは非常に困難で、とりわけ人間関係の争いが主役の家事調停は、自分の一生の問題を弁護士に委ねてしまって良いのか、熟考した上で決断するべきです。
調停で弁護士がいると調停は有利になるのか
恐らくここが一番気になるでしょう。弁護士に依頼して調停が有利になるなら、費用よりもその結果を優先したいのは皆同じだからです。
まず、はっきりさせておきたいのは、成立しない調停を、弁護士の能力で成立させることは不可能です。いくら弁護士報酬を支払ったところで、この点だけはどんなに優秀な弁護士でもどうにもなりません。
これは、調停が成立ありきではなく、成立と不成立を決めるのは、あくまでも当事者であることに起因します。どんなに好条件でも、相手が合意しないだけで調停は不成立になります。この点、判決ありきの訴訟とは全く違います。
根拠もなく有利になる謳い文句に騙されるな
弁護士に依頼すると、いかにも調停が有利になるような謳い文句を、インターネット上でも他のメディアでも見たことはないでしょうか?
弁護士は依頼がなければ生活できないのですから、必死になるのも無理はありません。弁護士の数を増やす政策が実施されて、弁護士は「質より量」となり、顧客獲得競争が激化しました。
既に説明したように、弁護士が優秀であることと、調停を成立させられるかどうかは全くの別問題です。
例えば、離婚調停だとして、全く離婚の意思がない相手に、財産を全て譲っても親権を譲っても何をしても、相手が離婚しないと言えば、それだけで調停不成立です。
そこを離婚に持っていくのも、弁護士の能力だと思うかもしれませんが、内容が条件面ではないので交渉の余地が生まれず、誰に頼んでも結果は同じです。
しかも、弁護士にとってはそのほうが”オイシイ”商売で、調停が不成立なら離婚訴訟へと依頼が続きます。わざと調停を成立させずに長引かせ、高い日当を受け取って不成立にした上、訴訟にする悪質な弁護士がいてもおかしくないくらいです。
条件の交渉こそ弁護士の出番
弁護士というのは、相手の持つ弱点や矛盾を突き、その立証をして、依頼人の主張が通るように交渉をするのが仕事です。
訴訟では、相手の不利を突く立証能力と、合理的な説明で裁判官の心証に働きかける弁論能力から、報酬が高くても有能な弁護士は必要です。
同じように、調停でも主たる争いでは合意しており、条件面で折衝が必要になったときは、高い交渉技術で依頼人の利益を保護するために弁護士は動きます。
この点において、弁護士の優位性は明らかで、調停委員には「ただの民間人」も多く、弁護士が相手だと気後れしてしまう面は少なからずあるでしょう。
調停委員の中には、弁護士が参加すると調停が自分の思い通りに進まず、イライラして機嫌が悪くなる人もいるそうです。
その場合に、弁護士の存在がマイナスに働いているかというと、弁護士なしでは調停委員の思い通りに進んでしまうのですから、事件の当事者ならたまったものではありませんよね。
そういう調停委員に当たったときは、やはり弁護士に依頼したいところです。
弁護士でも常識外の請求はできない
例えば、本来なら100万円の請求が妥当な案件を、弁護士に依頼したからといって500万円で調停成立させるような真似はできません。
裁判所には裁判所の基準があり、社会通念や道義的な側面も踏まえ、相当の範囲内で解決させますし、くどいようですが、調停は双方の合意が成立の条件だからです。
弁護士の報酬は高いので、どうしても期待は膨らみますが、少なくとも調停において報酬と成果は比例するものではなく、弁護士への過信は禁物です。
相手が弁護士に依頼しているとき
相手が弁護士に依頼して、自分はひとりで戦うとすれば、調停はかなり面倒な展開になると思ったほうが良く、ということは、弁護士への依頼に意味がある証拠です。
ただし、相手に弁護士が付いて難儀するのは、法律論で攻めてこられたり、証拠もない捏造した主張をされたりすることで、こちらの心証が悪くなり、反対意見に終始するような事態に陥るケースです。
前者はともかく後者の捏造は、司法の場である裁判所で、そんなことが許されるはずないと思うでしょうか? そう考えているなら、よほど善良な生き方で過ごしてきたのでしょう。
家事調停は特に捏造が多い
プライベートな事情が絡む家事調停では、嘘を並べ立てて相手の人間性を疑わせ、少しでも調停委員の心証を悪くする作戦が弁護士の常套手段です。
調停では訴訟のように、主張に対する立証を厳しく問われませんし、プライベートな事情を立証するのは無理だと知っていて、そのような作戦に出てきます。
最近の傾向として、DVと聞くだけで反射的に非難の対象になりますから、相手が暴力をふるった・侮辱したとする嘘は、効果が高く反論も難しい実に便利な主張です。
いわゆる「でっち上げ」に反論していくためには、そうではないことを証明しなくてはならず、無いことの証明は悪魔の証明と呼ばれるくらい、困難というか不可能です。その点も計算済みで、相手の弁護士は攻撃してきます。
どうせ嘘なので放っておいてもバレる。正義は勝つなどと思っていたら甘すぎます。そうしたでっち上げが、成功した事例も多いからこそ使われるのです。
家事事件の当事者は、お互いに憎しみすら持っていることが多く、弁護士に吹き込まれてそのように主張するばかりか、自分に有利な結果を求めて必死です。相手の必死さを甘く考えず、自分も弁護士に依頼することを考えてみましょう。
弁護士にとってはビジネス
弁護士の全てが善良で正義感が強く、弱きを助けると思っているなら大きな勘違いです。信念を持って、社会正義のため動いている弁護士が、世の中に存在するのは確かですが……。
儲かるから弁護士をしている人も、当然ながら多数いますし、悪い意味ではなく、弁護士は慈善事業ではないので、ビジネスとして調停の依頼を受けているのが普通です。
要するに、弁護士にとって調停は商材で、あなたのトラブルも弁護士にとってはお金を生み出す案件だということです。では、弁護士ともあろう者が、捏造した主張をすることに、何の抵抗もないのか? と思いますよね。
これは考え方ひとつです。
依頼人に最高の結果をもたらすため、最大限の努力を惜しまない弁護士と、信念に基づき正攻法で進める弁護士で、得られる結果が異なるとき、あなたが依頼人なら、どちらが優れた弁護士だと評価するでしょうか。
調停が成立すると、法的な効力を持つのですから、正義感だけでは割りきれません。弁護士に良いイメージを持っているなら悪い弁護士がいること、悪いイメージを持っているなら良い弁護士がいることを知りましょう。
訴訟前提なら弁護士に依頼する手もある
調停を通過点としか捉えず、不成立を前提として最初から訴訟を考えているなら、途中から任せるより、最初から最後まで任せたほうが、経緯も知っていて打ち合わせの回数も減り、弁護士と意思の疎通が図りやすくなります。
もっとも、訴訟ができる事件なら、最初から訴訟を起こせば良く、そのケースで調停から依頼するとしたら、調停前置主義で付調停になった場合です。
弁護士に依頼しているだけで本気度が伝わる
弁護士に依頼していることで、訴訟を前提にしていると調停委員に伝えたとき、信憑性が高く合意は難しい印象を与えます。
本気で争う覚悟がなければ、高いお金を出して弁護士に依頼しませんし、訴訟になれば弁護士に依頼するのが普通だからです。
場合によっては、初回の調停で話し合う気がないことを伝えると、そのまま初回で調停が不成立になる可能性もあり、訴訟までの手順を大幅に短くできます。
まとめ
- 調停は弁護士が必要なほど難しくはない
- 弁護士は調停の戦略を教えてくれる
- 成立しない調停は弁護士に依頼しても成立しない
- 弁護士に頼んだら万事うまくいくと思っていたら間違い
- 全ての弁護士が正義の味方だと思っているなら間違い
- 費用負担が問題でなければ弁護士に頼んで損はない
調停での弁護士への依頼を、どちらかというと否定的に解説してきましたが、そのくらい調停の手続は簡単で、自分で調停をしている人は多いです。
それでも、動機は人それぞれですから、弁護士が必要だと思えば依頼すれば良いでしょう。味方はひとりでも多い方が心強いですからね。
ただ、弁護士に依頼したら有利になる、争いが解決するという幻想だけは思い直したほうが良く、弁護士でもできないものはできないです。
世の中お金を払えば、何でもうまく解決できると思うのは間違いで、弁護士も万能ではありません。相談内容に応じて、適切な弁護士を案内してくれるサービスもあるので、良かったら参考にしてみてください。
弁護士なら誰でも法律を全て熟知しているものではなく、専門以外は詳しくないのが当然です。くれぐれも、モラルのない悪徳弁護士に搾取されないよう気を付けましょう。