離婚調停を経由して協議離婚する方法もある

調停は、当事者の合意がなければ成立しないので、自分が離婚したくても相手が離婚に合意しなければ、当然に離婚調停は成立しません。

ですから、離婚調停を成立させて調停離婚することが最良だと思ってしまいます。もちろん、調停離婚が目的ならその通りなのですが、目指しているのは「離婚」であって「調停離婚」ではないですよね。

つまり、離婚できるなら離婚調停が成立してもしなくても関係ないはずです。

調停制度は柔軟にできており、離婚調停の成立と、調停離婚は必ずしもリンクしません。イレギュラーな方法となりますが、離婚調停を経由して協議離婚する方法について解説します。

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協議離婚にするための離婚調停もある

離婚調停で離婚の合意に至り、調停成立で調停離婚になると、調停調書という家庭裁判所のお墨付きを得ることで、夫婦の一方から離婚届を出すことができるようになります。

ところが、離婚調停の当初は離婚に争いがあっても、調停が成立する直前では、既に離婚の合意があるため、実はどうしても調停調書が必要になるわけではありません。

調停離婚するつもりで離婚調停を申し立て、離婚に合意したら、夫婦で離婚届を書いて役所に提出することでも協議離婚できます。

このとき、選択肢としては次のいずれかです。

  • 離婚届を出して離婚調停を取り下げる(順不同)
  • 協議離婚届出の合意で調停を成立させて離婚届を出す

離婚調停の成立=調停離婚という概念に固まってしまうと、調停離婚を回避して、協議離婚届出の合意で調停を成立させる方法に辿り付けません。

調停離婚では、調停調書に「申立人と相手方は本日離婚する」などと記載されますが、協議離婚届出の合意で調停を成立させると、調停調書には協議離婚の届出に合意した旨が記載されます。

もちろん、調停で話し合って決めた離婚条件も、調停調書に残すことができますので、離婚条件を公正証書にしたい人は手間が省けるでしょう。

協議離婚できるのなら、調停離婚せずに協議離婚を選ぶ人は多く、離婚調停を申し立てたからといって、調停離婚しなくてはならないという決まりもないのです。

協議離婚届出の調停が成立している数

令和元年司法統計によれば、離婚調停・円満調停が調停離婚で成立した数は19,118件、協議離婚届出で成立した数は199件でした。

夫が申し立てた場合、妻が申し立てた場合で大きな差はみられず、地域差も見られません。調停離婚の数に対し、概ね1~2%が協議離婚届出の調停成立です。

珍しいと言えば珍しいですが、どの家庭裁判所でも100件成立すれば、1件や2件は協議離婚届出の調停成立があることになるので、変に思われることもないでしょう。

なぜ協議離婚を選ぶのか

離婚をしたくて離婚調停を申し立てたのに、わざわざ調停離婚を回避したり調停を取り下げたりしてまで、協議離婚を選ぶ理由はどこにあるのでしょうか?

その答えは戸籍の記載にあり、戸籍には離婚の種別(協議、調停、審判、判決など)が記載されてしまうため、調停離婚と記載されるのを嫌って協議離婚にするのです。

離婚歴を消すために、わざわざ転籍する人もいるくらいですから、離婚の種別が協議離婚ではないことを好まない人がいても何らおかしくはありません。

現在は、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)を取ることができる人が、直系親族などに制限されてそれほど心配はないですが、以前までは離婚後に戸籍を勝手に取られ、離婚歴の他に離婚の種別まで知られてしまいました。

今ですら、戸籍の不正取得に弁護士や行政書士などが加担するケースもあって、戸籍が悪意の第三者から完全に守られているとは言えない状況です。

離婚の種別が協議離婚以外の場合、争って離婚したことが戸籍に残ってしまい、再婚に備えるなど何か理由がある人もいると考えられます。

あえて協議離婚にする場合の注意点

調停離婚もできる状況で、あえて協議離婚にする場合には注意を要します。なぜなら、調停離婚と協議離婚届出の合意では、調停調書による効果が異なるからです。

調停離婚の場合、調停調書に離婚する旨の記載がされた時点で離婚が成立します。一方で、協議離婚届出の合意では、役所に離婚届が提出されて受理されるまで離婚が成立しません。

つまり、協議離婚届出の合意で調停を成立させても「離婚したことにはならない」ので、確実に離婚届が提出されない不安は残るということです。

もっとも、協議離婚届出に合意した旨が記載された調停調書は、家庭裁判所書記官によって作成され、裁判官が内容を読み上げて当事者の確認を取っています。

ですから、調停後に抵抗しても無駄のように思えるところ、協議離婚ならではの問題があってなかなか厄介です。

離婚届は提出する時点で離婚意思が必要

協議離婚では、離婚届を「書いた時点」ではなく「提出する時点」で当事者に離婚意思がある前提のため、協議離婚届出の合意で調停を成立させても、離婚届を出すまでに気が変わると厄介です。

離婚届を出す前に「やっぱり離婚しない」と言い出されたら、離婚調停をやり直すのは無駄が多く、速やかに協議離婚できるように工夫しなくてはなりません。

協議離婚届出の合意を成立させる場合は2つを確認

協議離婚届出の合意で調停を成立させる場合は、次の2つを確認しましょう。

  1. 相手が離婚届の不受理申出をしていないか
  2. 離婚調停の期日で離婚届のやり取り

ひとつ目の不受理申出とは、離婚届が受理されないように役所に申し出る制度です。不受理申出がされていると、協議離婚の離婚届が受理されないので、不受理申出を取り下げてもらわないと協議離婚できません。

二つ目の離婚届については、調停成立までに夫婦両名が署名押印した離婚届を用意し、届け出る方(通常は申立人)に渡しておくのがベストです。離婚調停の実務上も、協議離婚届出の合意時はそのような運用がされています。

調停の場で離婚届を手に入れておくと、家庭裁判所から役所に直行して離婚届を出すことができます。協議離婚ですから調停調書は必要としませんが、証人2人の署名押印が必要な点には注意してください。

離婚届の受理まで離婚が成立しない協議離婚では、とにかく離婚の合意が得られたら、すぐに離婚届を出してしまうのが得策です。

離婚調停を取り下げて協議離婚するメリットはない

協議離婚届出の合意で調停を成立させても、協議離婚である以上は不確実ですが、調停を取り下げて協議離婚する場合には、なおさらのこと離婚が不確実になるので、取下げを選択するメリットはありません。

調停を取り下げると、調停調書に記載されるはずの離婚条件について、何も担保されない状態となるので、むしろデメリットとも言えるのではないでしょうか。

最も確実なのは、先に離婚が成立する調停離婚で、次に確実なのは協議離婚届出の合意で調停成立、最も不確実なのが調停を取り下げた協議離婚です。

調停を取り下げるのであれば、せめて先に離婚届を出すのが手順で、離婚届の前に調停を取り下げるのはやめておきましょう。

まとめ:離婚調停を経由した協議離婚

  • 調停は協議離婚届出の合意でも成立する
  • 戸籍に調停離婚と残したくない場合に活用
  • 協議離婚では離婚届受理まで離婚が成立しない
  • 不受理申出の確認と調停の場で離婚届の受け渡しが重要
  • 調停離婚できるならその方が断然確実
  • 調停取下げよりも協議離婚届出の合意で調停成立の方が確実

離婚調停を経由して協議離婚する方法は、決してポピュラーではないですが、離婚調停の有効な利用方法のひとつです。

若干注意するべき点を残すとはいえ、確実に離婚届を出すことができる状態にすれば大きな問題とはならず、戸籍に協議離婚届出と記載させることが可能です。

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初めての調停
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