家事事件の種類

家事事件(家庭内における紛争を家事事件と呼びます)には、審判の対象になる家事審判事件と、調停の対象になる家事調停事件で4種類に分かれます。

また、家事事件の手続には、人事訴訟、家事審判、家事調停があり、事件の種類によって利用できる手続は異なります。

家事事件の種類と利用できる手続は、1対1の関係になっていません。審判事項でも調停を利用できる事件、訴訟事項でも調停前置主義で調停を余儀なくされる事件もあるので意外と複雑です。

少しややこしいですが、どのような争いがどの事件に分類され、どんな手続をすれば良いのか知ることは重要なので我慢しましょう。

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家事審判事件

家事審判事件には、別表第1事件と別表第2事件があります。別表第1事件と別表第2事件の「別表」とは、家事事件手続法で定められた別表のことです。

別表第1事件

紛争性が低いか対立する当事者がおらず、法律上、家庭裁判所による手続でなければ処理ができない事件を対象とします。

後見等(後見・保佐・補助)、失踪宣告、氏の変更、相続放棄、戸籍訂正、親権の喪失・停止など

公益性が高く当事者の自由意思による処分が許されない性質もあって、別表第1事件では調停を利用できず、審判のみによって処理されます。

例えば、社会で公称する氏(苗字)は、当事者が自由に変更できてしまうと社会に混乱をもたらしますよね。このように、当事者だけではなく第三者にも影響が大きい申立ては、審判のみによって処理されるということです。

別表第2事件

別表第1事件と異なり紛争性が高く、当事者の話合いによる解決も期待される事件で、審判と調停のどちらも利用できます。したがって、別表第2審判事件・別表第2調停事件となるのですが、ここでは別表第2事件とします。

養育費、面会交流、財産分与、親権者の指定・変更、遺産分割、年金分割など

本来は審判事項ですから、別表第2事件の調停と審判は連動しており、調停が不成立でも自動的に審判へ移行します(調停に代わる審判がされることもあります)。

また、審判を申し立てても、家庭裁判所の職権で調停から始める(付調停といいます)ことがあるのも別表第2事件の特徴です。

家事調停事件

家事審判事件が家事事件手続法の別表で列挙されているのに対し、家事調停事件は限定的ではなく、訴訟事項や審判事項(別表第2事件)の他、訴訟や審判に馴染まない紛争でも調停を利用できます。

※別表第2事件で、調停申立て・付調停があると別表第2調停事件となりますが、その特徴は別表第2事件で説明済みなので省略します。

特殊調停事件

離婚と離縁を除く人事訴訟事項が該当します。身分(家族関係での立場)に関する争いであるため公益性が高く、当事者の自由意思による処分は許されません。調停で合意形成があっても調停成立とならず、合意に相当する審判で終わるのが特徴です。

この特徴から、特殊調停事件は「合意に相当する審判事件」とも呼ばれます。

婚姻の無効・取消し、協議離婚の無効・取消し、嫡出否認、認知など

特殊調停事件は、調停前置主義により原則として調停から申し立て、調停が不成立なら訴えを提起するのが通常の流れです。

一般調停事件

別表第2調停事件、特殊調停事件を除く調停事件は全て一般調停事件です。

離婚、離縁、慰謝料請求、遺留分減殺請求、男女間の紛争、親族間の紛争など

離婚や離縁は人事訴訟事項、慰謝料請求や遺留分減殺請求は民事訴訟事項となり、一般調停事件には訴訟事項が多く含まれますが、訴訟事項ではない紛争も一般調停事件として調停の対象にしているのが特徴です。

一般調停事件のうち人事訴訟事項に該当する事件では、調停前置主義の適用を受け、調停から先に申し立てなくてはなりません。

また、一般調停事件で調停不成立になると、訴訟事項では訴えを提起して争います(調停に代わる審判がされることもあります)。

家事事件の種類と利用できる手続

別表第1事件別表第2事件特殊調停事件一般調停事件
手続の流れ審判審判、調停→審判調停→訴訟調停→訴訟
調停前置なしなしありあり
調停に代わる審判なしありなしあり
合意に相当する審判なしなしありなし
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初めての調停
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