離婚時に妻が親権者の割合と夫が親権者の割合

民法上、夫婦に共同で親権を行う未成年の子がいるとき、つまり、子の父母が婚姻しているときは、一方を親権者と定めなければ離婚できません(民法第819条)。

そして、離婚時の親権者指定に特別な条件は設けられておらず、一次的には父母の協議に委ねられ、父母の協議で親権者を定められないときは、家庭裁判所が介入する規定になっています。

しかし、父母の協議で自由に親権者を定められるとはいえ、実際には母(妻)を親権者にするケースが多いのは周知のとおりでしょう。

本記事は、離婚全体の親権者指定状況と、離婚調停を経由した離婚での親権者指定状況について、統計データからその偏りを確認するものです。

記事全体で、未成年の子がいる夫婦=子の父母という前提です。

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離婚時に親権者が定められた離婚件数(妻・夫)

人口動態調査には、離婚時に妻を親権者とした件数が、未成年の子の人数別(0人~10人以上)で集計されています。

例えば、2021年は次のとおりです。ただし、未成年の子が6人以上いる離婚は、全体の1%に満たないため、以下の表では除外しました。

2021年妻が親権者の離婚件数
子の人数0人1人2人3人4人5人件数合計
1人6,29842,68148,979
2人4,2702,05633,10539,431
3人1,30150070510,81413,320
4人217851561352,1892,782
5人4013243831463609
件数合計12,12645,33533,99010,9872,220463105,121
※データ:人口動態調査2021年
※未成年の子が6人以上の離婚を除く

縦は離婚時における未成年の子の人数別、横は妻が親権者になった子の人数別です。

縦の人数と横の人数が同じになる妻のみが子の親権者となった件数、横の人数が0人の夫のみが子の親権者となった件数になります。残りの部分は、2人以上の子の親権を妻と夫が分け合った件数です。

さらに、全体の件数がわかっているのですから、全体の件数から妻が親権者の件数を引いて、夫を親権者とした件数が求められます。

2021年夫が親権者の離婚件数
子の人数0人1人2人3人4人5人件数合計
1人42,6816,29848,979
2人33,1052,0564,27039,431
3人10,8147055001,30113,320
4人2,189135156852172,782
5人4633138241340609
件数合計89,2529,2254,9641,41023040105,121
※データ:人口動態調査2021年
※未成年の子が6人以上の離婚を除く

これらの数字から、妻が親権者の割合、夫が親権者の割合を求めてみましょう。

妻・夫が親権者になった割合(離婚件数ベース)

妻が1人以上の子の親権者になった件数はの合計です。

2021年妻が親権者の離婚件数
子の人数0人1人2人3人4人5人件数合計
1人6,29842,68148,979
2人4,2702,05633,10539,431
3人1,30150070510,81413,320
4人217851561352,1892,782
5人4013243831463609
件数合計12,12645,33533,99010,9872,220463105,121
※データ:人口動態調査2021年
※未成年の子が6人以上の離婚を除く

夫が1人以上の子の親権者になった件数はの合計です。

2021年夫が親権者の離婚件数
子の人数0人1人2人3人4人5人件数合計
1人42,6816,29848,979
2人33,1052,0564,27039,431
3人10,8147055001,30113,320
4人2,189135156852172,782
5人4633138241340609
件数合計89,2529,2254,9641,41023040105,121
※データ:人口動態調査2021年
※未成年の子が6人以上の離婚を除く

それぞれを総件数で除して割合を求めます。

総件数(2021年)妻が親権者の離婚件数夫が親権者の離婚件数
105,12192,99588.46%15,86915.10%
※データ:人口動態調査2021年
※未成年の子が6人以上の離婚を除く

2021年において、妻が親権者になった離婚件数の割合は88.46%、夫が親権者になった離婚件数の割合は15.10%でした(未成年の子が6人以上の離婚を除く)。

この割合は、2017年~2021年の5年間でも大きな違いはありません。

総件数妻が親権者の離婚件数夫が親権者の離婚件数
2017年123,209108,66488.19%18,91415.35%
2018年120,246105,93488.10%18,55815.43%
2019年118,433104,29088.06%18,36315.50%
2020年111,11198,00588.20%16,96215.27%
2021年105,12192,99588.46%15,86915.10%
合計578,120509,88888.20%88,66615.34%
※データ:人口動態調査2017年~2021年
※未成年の子が6人以上の離婚を除く

2017年~2021年の5年間で、妻が親権者になった離婚件数の割合は88.20%、夫が親権者になった離婚件数の割合は15.34%でした(未成年の子が6人以上の離婚を除く)。

妻と夫を合計した割合が100%を超えているのは、子が2人以上の場合に、親権を妻と夫で分け合ったケースが重複カウントされているためです。

子の人数別:妻・夫が親権者になった割合(離婚件数ベース)

参考までに、妻のみが親権者になった割合、妻と夫が親権者になった割合、夫のみが親権者になった割合を、子の人数別で紹介しておきます(2017年~2021年)。

子の人数総件数妻が親権者の離婚件数夫が親権者の離婚件数
妻のみが親権者妻と夫が親権者夫のみが親権者
1人268,484233,66287.03%00.00%34,82212.97%
2人218,697183,21783.78%11,0365.05%24,44411.18%
3人72,91658,67580.47%6,7729.29%7,46910.24%
4人14,95711,58777.47%2,10814.09%1,2628.44%
5人3,0662,31375.44%51816.89%2357.66%
※データ:人口動態調査2017年~2021年
※未成年の子が6人以上の離婚を除く

子の人数が増えるほど、妻のみ・夫のみの親権になる割合は下がり、妻が親権者の割合(妻のみ+妻と夫)、夫が親権者の割合(夫のみ+妻と夫)は、子の人数が増えると上がります。

離婚時に親権者が定められた子の人数(妻・夫)

視点を変えて、妻が親権者になった子の人数、夫が親権者になった子の人数を求めてみます。それぞれの人数がわかれば、妻と夫が親権者になった子の割合を合計100%で出すことができます。

ただし、子の人数ベースで集計すると、1人の妻・夫が複数の子の親権者になった場合は複数カウントされますから、離婚件数ベースとどちらが信憑性が高いかは判断が分かれるでしょう。

前述の妻・夫別の離婚件数表に、子の人数を乗じたものが以下の表です。

妻が親権者の子の人数
子の人数0人1人2人3人4人5人人数合計
1人042,68142,681
2人02,05666,21068,266
3人05001,41032,44234,352
4人0853124058,7569,558
5人013481141242,3152,614
人数合計045,33567,98032,9618,8802,315157,471
※データ:人口動態調査2021年
※未成年の子が6人以上の離婚を除く
夫が親権者の子の人数
子の人数0人1人2人3人4人5人人数合計
1人06,2986,298
2人02,0568,54010,596
3人07051,0003,9035,608
4人01353122558681,570
5人031767252200431
人数合計09,2259,9284,23092020024,503
※データ:人口動態調査2021年
※未成年の子が6人以上の離婚を除く

子の総人数は両方の合計となり、妻が親権者の割合、夫が親権者の割合を計算します。

総人数(2021年)妻が親権者の子の人数夫が親権者の子の人数
181,974157,47186.53%24,50313.47%
※データ:人口動態調査2021年
※未成年の子が6人以上の離婚を除く

2021年の離婚全体において、妻が親権者になった子の割合は86.53%、夫が親権者になった子の割合は13.47%でした(未成年の子が6人以上の離婚を除く)。

こちらも、2017年~2021年の5年間で大きな違いはありません。

総人数妻が親権者の子の人数夫が親権者の子の人数
2017年212,445182,94286.11%29,50313.89%
2018年208,191179,23286.09%28,95913.91%
2019年204,482175,95086.05%28,53213.95%
2020年192,692166,24586.27%26,44713.73%
2021年181,974157,47186.53%24,50313.47%
合計999,784861,84086.20%137,94413.80%
※データ:人口動態調査2017年~2021年
※未成年の子が6人以上の離婚を除く

2017年~2021年の5年間で、妻が親権者になった子の割合は86.20%、夫が親権者になった子の割合は13.80%でした(未成年の子が6人以上の離婚を除く)。

親権者の割合について人口動態調査からわかること

人口動態調査のデータで示したように、離婚件数ベースでも子の人数ベースでも、妻と夫の親権者割合は87%前後で変わりません。

重要なのは、約9割が協議離婚の離婚全体において、圧倒的に妻を親権者とした割合が高い点です(協議離婚の比率は下落傾向で2021年は86.4%)。

夫婦の協議で親権者を決めた場合でも、圧倒的に妻が親権者になっているのですから、離婚時の親権者に妻が多いのは、一般的に受け入れられてきた慣習や風潮のように思えます

ちなみに、子が1人のケースで妻と夫の親権者比率が1:1だったのは、1960年頃までさかのぼります。徐々に妻を親権者とする割合は高まり、2011年以降は約87%を維持です。

意外だと思うかもしれませんが、親権者に妻が多いのは昔からではないのです。

夫が外で働き、妻は家庭を守る昔ながらの習慣で、妻に親権者が多いとするありがちな理由付けは、夫婦のライフスタイルが徐々に変わってきた時代の流れと正反対に、妻の親権者割合が高くなっている矛盾を説明できません

離婚調停を経由した離婚で妻・夫が親権者になる割合

司法統計では、離婚調停を経由した離婚(調停離婚、協議離婚届出の調停成立、調停に代わる審判による審判離婚)について、親権者が父母別に集計されています。

このデータは離婚調停の件数ベースなので、人口動態調査と同様に、妻が親権者の割合、夫が親権者の割合を求めてみましょう。重複カウントがあるので合計は100%にならないです。

親権者を定めた件数妻が親権者の件数夫が親権者の件数
平成28年度20,64419,31493.56%1,9429.41%
平成29年度20,52519,16093.35%1,9599.54%
平成30年度20,02018,71393.47%1,8739.36%
令和元年度18,51417,35893.76%1,7279.33%
令和2年度17,96716,90894.11%1,6359.10%
※データ:司法統計平成28年度~令和2年度
※親権者を定めた件数は総数から定め無しの件数を引いた数
※統計上の「母」「父」を「妻」「夫」に変更して表示

年集計と年度集計の違いはありますが、人口動態調査のデータと比較してみます。

人口動態調査司法統計
妻が親権者の割合夫が親権者の割合妻が親権者の割合夫が親権者の割合
2017年88.19%15.35%平成28年度93.56%9.41%
2018年88.10%15.43%平成29年度93.35%9.54%
2019年88.06%15.50%平成30年度93.47%9.36%
2020年88.20%15.27%令和元年度93.76%9.33%
2021年88.46%15.10%令和2年度94.11%9.10%
※データ:人口動態調査2017年~2021年、司法統計平成28年度~令和2年度
※人口動態調査は未成年の子が6人以上の離婚を除く
※司法統計上の「母」「父」を「妻」「夫」に変更して表示

このように、離婚調停を経由した離婚は、離婚全体よりも妻を親権者とする割合が5%以上高い傾向でした。その理由はわかりません。

離婚調停を経由した離婚が、離婚全体の数字(妻が親権者の割合)を押し上げているので、単に協議離婚と比べた場合は僅かですがその差は開きます。

協議離婚する夫婦と、協議離婚できず離婚調停を申し立てる夫婦で、妻を親権者とする事情に何か違いがあるのでしょうか?

あくまでもデータ上において、夫が親権を得られず離婚する割合は、むしろ離婚調停経由のほうが協議離婚より大きいという衝撃です。この点は全く予想できませんでした。

なお、家庭裁判所の親権者指定に、男女の偏りがあることを批判する声は大きいですが、家庭裁判所に一般社会の現状(協議離婚)と乖離した親権者指定の運用を求めるのは、なかなか難しいのではないかと当サイト管理人は感じています。

まとめ

  • 妻が親権者の割合は87%前後(離婚件数ベース・子の人数ベースのどちらも)
  • 妻のみ・夫のみが親権者の割合は子の人数が増えると下がる
  • 妻が親権者の割合は高止まり傾向で10年ほど変わっていない(2021年時点)
  • 離婚調停経由では妻を親権者とする割合が若干高い
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