調停の参加者の中で、調停の当事者にとって最も重要なのが調停委員です。そして、何かと誤解? が多いのも調停委員で、調停委員のせいで調停がうまくいかなかったと考える人は数多くいます。
実際、多くのサイトでは調停委員を味方にすると調停は有利に進むといった解説がされますから、そのくらい調停委員の存在は、調停で大きな役割を持っています。
しかし、はたして正しく調停委員を理解している人はどのくらいいるのでしょうか?
対立する当事者の主張は必ず正反対になりますので、少なくとも主張が通らない当事者の一方は、間に入る調停委員への不満を持つのが普通です。苦情を言いたくなるのもよくわかります。
ここでは、調停委員はどうやって選ばれるのか、調停委員の立場、調停委員は変更できるのかなど、様々な角度から調停委員について取り上げます。
調停委員はどうやって選ばれる?
自分の身の回りで、調停委員の経験者を聞いたことがあるでしょうか?
恐らくほとんどの人は、調停委員の経験者と付き合いがなく、調停で初めて調停委員と話すのだと思われます。ですから、いったい調停委員って何者? と思うのは無理もありません。
調停委員は、民間から選ばれた非常勤の裁判所職員です。
調停では、争いの内容に応じて、裁判所が担当の調停委員を決めます。
ただ、あらかじめ断っておきますが、裁判所という「お堅い」場所のイメージに対して、調停委員にはそこまで堅いイメージを持たなくてもいいでしょう。
決して、調停委員に敬意を払わなくてもいいと言っているわけではないので誤解なきよう。
特に、調停という裁判所手続を今まで知らなかった人は、そのくらい調停委員について知識がありませんので、少なくとも調停委員がどうやって任命されるのか知っておくべきです。
参考:調停委員の選考と任命
もしかしたら、調停委員に対して自分が構えすぎだったと気づいたり、調停期日に向かう気持ちが少しは変わったりするかもしれませんね。
もっとも、調停委員への見方が変わったところで、調停そのものは変わらないのですが……。
調停委員はどういう立場の存在?
調停委員は、裁判官と共に調停委員会を組織し、当事者の間接的な話し合いを円滑にできるよう調停を運営する存在です。
実際には、当事者双方から話を聞き出し、争点を整理して解決のために導くのですが、調停は主体が当事者であることから、当事者の間に入ってそれぞれの主張を伝える役割を持っています。
ただし、単に伝言するだけなら誰でもできてしまいます。調停委員は、自ら持つ知識や経験を生かしつつ、時には事件の当事者が争いを解決できるようにアドバイスをすることもあります。
非常勤とはいえ、裁判所職員であることから、立場上の制限も受けるので、詳しく知りたければ参考にしてください。
参考:調停委員の地位と職務
調停委員に不満があるとき
もし、担当の調停委員に不満があっても、当事者の希望で調停委員を変更してもらうのは、相当難しいといわざるを得ません。
裁判所職員が事件に関与できなくなる制度には、除斥・忌避・回避と3つあります。
- 除斥:当事者と関係性がある場合に事件へ関与できなくなること。
- 忌避:除斥以外の理由で当事者の申立てにより事件から外れること。
- 回避:自ら事件から身を引くこと。
いずれも、公平性を欠かないように法律で規定されているのですが、当事者からの申立てで事件から外れる忌避は、調停委員に適用されていないのです。
参考:調停委員に忌避が無い理由
それでも納得できないなら、抗議の方向で考えるしかないでしょう。どうして調停委員が変更できないのかについても触れているので、続いて読んでみてください。
調停委員の存在をどのように考えるのか
調停を行う調停委員会は、裁判官と2人以上の調停委員(基本的には2人)で組織されます。しかし、調停委員を余計だと考え、裁判官だけにして欲しいと思うこともあるでしょう。
そういうときは、決まって調停委員と考えかたが合わず、調停の相手と間接的に話し合っている感覚よりも、まるで調停委員と言い争いをするために調停しているような状態になるからです。
もし、裁判官の判断にしたがうなら、訴訟(家事調停の別表第2事件は審判)で解決すればいいのであって、望まない調停を続ける意味がありません。
そして、調停委員の意見は裁判官による判決・審判ではないのですから、当事者は調停委員の意見をはねのけることができ、合意しないで調停を不成立にすることができます。
第三者の視点である現実は認識しておきたい
前述のとおり、当事者の一方が調停委員と意見が合わないのは仕方がありません。
それでも、この調停委員はダメだと烙印を押す前に、何の利害関係もない第三者の調停委員が、客観的に当事者間の争いと向き合っている点を忘れないようにしてください。
しかも、調停委員は2人いること、調停委員会は裁判官が指揮をしていることを踏まえると、裁判所の方針が自分の意見と合っていない現実とは向き合わなくてはならないでしょう。
もちろん、調停委員の発言=裁判所の代弁ではありません。
調停委員も人間なので、当事者の一方に心情が傾くのは否定できないですし、それを言い出したら、訴訟での判決も裁判官の心証形成がとても重要です。
調停委員が必要か不要かという二極論に立つなら、人によっては不要とする意見はあるにしても、当事者間のクッションになる調停委員の存在は大きいのではないでしょうか。
当事者間で直接話し合いがまとまらないとき、解決方法が裁判所の判決や審判しかないよりも、第三者の調停委員が間に入ってい進める調停の選択肢があることは、日本人の気質に合っていると当サイト管理人は考えます。