養育費の平均相場(子の人数別・父の支払額)

この記事では、司法統計と全国ひとり親世帯等調査(旧全国母子世帯等調査)の実数値から、実際に取り決められた・支払われた子の人数別養育費の平均相場(父の支払額)を推測しています。

家庭裁判所が採用している「算定表」の計算方法から得られる養育費は、シミュレータ(計算機)がインターネット上に多数あるのでそちらを使ってください。

今回、使用したデータが多く説明が長いため、先に結論から。

子の人数別養育費の平均相場(令和3年度・父の支払推定額)

  • 母子世帯全体:30,935円+子の人数×9,240円
  • 協議離婚:29,975円+子の人数×8,953円
  • 家庭裁判所:37,035円+子の人数×11,063円

※養育費は、子の年齢・父母の収入でも変わります。
※子の人数が増えると年齢の高い子が増えるため、子が4人以上では金額が増えるかもしれません。

上記は、当サイトが独自に統計データから推測した結果です。信用するかどうかはもちろん自由ですし、何の保証もできない参考金額に過ぎません

検証過程をこれから説明していきますので、数字や計算にアレルギーがなければご覧になってください(令和3年度の検証過程です)。

※令和4年度以降は結果だけ追記する予定です。
※子の年齢別養育費の平均相場は別記事で取り上げます。

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司法統計での子の人数別養育費

令和元年12月23日から家庭裁判所で使われる算定表が切り替わったため、旧算定表と新算定表が混在している平成元年度司法統計は集計から外し、平成26年度~平成30年度を旧算定表、令和2年度~令和3年度を新算定表として集計しました。

子の人数が増えると、必然的に養育費も増えます。ただし、子1人の場合に支払われる養育費が、子2人になると2倍になるかというとそうではありません。

つまり、養育費は子の人数に応じて乗算ではなく加算されていく性質です。

司法統計では、離婚調停で離婚に至ったケースについて、母を監護者と定めた件数が、父の養育費支払額別・子の人数別で集計されています。

離婚調停で離婚に至ったケースとは、調停離婚、協議離婚届出の調停成立、調停に代わる審判による審判離婚のことです。

旧算定表における子の人数別養育費

まずは、旧算定表が使われていた平成26年度~平成30年度の5年度累計件数です。

~1万円~2万円~4万円~6万円~8万円~10万円10万円超総数
子が1人1,7476,04218,5248,8133,0401,3731,67341,212
子が2人1,2423,59610,0277,4943,8191,9482,24430,370
子が3人3781,0182,0461,8817359881,1718,217
子が4人801582271661611111561,059
5人以上27283128222337196
※データ:平成26年度~平成30年度司法統計

数字の大小である程度のイメージは湧くと思います。

この表に割合を追加して、子の人数別に養育費の中央値(件数が50:50になる境界の近似値)を求めてみます。さらに、平均額も欲しいのですが、司法統計のデータは10万円超に上限がないので、正確な平均額は求められません。

そこで、10万円超の平均を12万円~16万円まで幅を持たせて試算した推定平均額としています。

12万円~16万円に根拠はないので、推定平均額はあくまでも参考です。

養育費が20万円や30万円になるほどの高所得では、逆に養育費の争いが起こりにくいと考えて、14万円をベースに上下2万円の幅にしてみました。

~1万円~2万円~4万円~6万円~8万円~10万円10万円超総数
子が1人件数1,7476,04218,5248,8133,0401,3731,67341,212
割合4.24%14.66%44.95%21.38%7.38%3.33%4.06%100.00%
中央値33,838円
推定平均額39,621円~41,245円
子が2人件数1,2423,59610,0277,4943,8191,9482,24430,370
割合4.09%11.84%33.02%24.68%12.57%6.41%7.39%100.00%
中央値40,854円
推定平均額47,665円~50,621円
子が3人件数3781,0182,0461,8817359881,1718,217
割合4.60%12.39%24.90%22.89%8.94%12.02%14.25%100.00%
中央値47,087円
推定平均額55,188円~60,888円
子が4人件数801582271661611111561,059
割合7.55%14.92%21.44%15.68%15.20%10.48%14.73%100.00%
中央値47,771円
推定平均額54,636円~60,529円
5人以上件数27283128222337196
割合13.78%14.29%15.82%14.29%11.22%11.73%18.88%100.00%
中央値48,571円
推定平均額55,791円~63,342円
※データ:平成26年度~平成30年度司法統計から当サイトで計算
※推定平均額は10万円超の平均を12万円~16万円と仮定した場合

結果を見ると、子が3人まで中央値は順調に増加していますが、子が4人・5人では微増です。したがって、推定平均額も微増です。

本来であれば、子が4人で中央値55,000円付近、子が5人以上が中央値60,000円以上になりそうなところ、集計数が少ないとはいえ、子が4人・5人は逆に1万円以下の割合が増えています。

そうすると、司法統計のデータは、母が監護する子の人数(父が養育費を支払うべき子の人数)ではなく、監護者が父母に分かれた場合を含めた合計人数なのかもしれず、集計方法が公表されていないため不明です。

養育費は、子の生活費全体に対して、父母の収入に応じた分担額の差額が支払われるものです。子が複数のとき、監護者が父母に分かれると、分担額の差額が小さくなることは十分に考えられます。

新算定表における子の人数別養育費

続いて、新算定表が使われている令和2年度~令和3年度の2年度累計です。

~1万円~2万円~4万円~6万円~8万円~10万円10万円超総数
子が1人4381,4245,9684,0101,80184399715,481
子が2人2858203,1472,7671,7831,0291,41611,247
子が3人942887096593414466553,192
子が4人19661041016143103497
5人以上101612781735105
※データ:令和2年度~令和3年度司法統計

旧算定表(平成26年度~平成30年度)と同様に、中央値と推定平均額を求めてみます。

~1万円~2万円~4万円~6万円~8万円~10万円10万円超総数
子が1人件数4381,4245,9684,0101,80184399715,481
割合2.83%9.20%38.55%25.90%11.63%5.45%6.44%100.00%
中央値39,700円(旧算定表33,838円)
推定平均額46,810円~49,386円
子が2人件数2858203,1472,7671,7831,0291,41611,247
割合2.53%7.29%27.98%24.60%15.85%9.15%12.59%100.00%
中央値49,913円(旧算定表40,854円)
推定平均額56,355円~61,391円
子が3人件数942887096593414466553,192
割合2.94%9.02%22.21%20.65%10.68%13.97%20.52%100.00%
中央値55,326円(旧算定表47,087円)
推定平均額63,164円~71,372円
子が4人件数19661041016143103497
割合3.82%13.28%20.93%20.32%12.27%8.65%20.72%100.00%
中央値51,782円(旧算定表47,771円)
推定平均額59,869円~68,159円
5人以上件数101612781735105
割合9.52%15.24%11.43%6.67%7.62%16.19%33.33%100.00%
中央値58,750円(旧算定表48,571円)
推定平均額69,429円~82,762円
※データ:令和2年度~令和3年度司法統計から当サイトで計算
※推定平均額は10万円超の平均を12万円~16万円と仮定した場合

表内に旧算定表の中央値を書いていますが、新算定表は明らかに旧算定表よりも養育費が高くなっています。割合の分布も明らかに旧算定表よりも高額寄りでした。

しかし、子が4人のときに落ち込んでいるのは2年度分で数が少ないからだとして、旧算定表と同じく子が4人・5人では思ったように増えていません。

したがって、子が3人まではデータを採用できても、子が4人・5人は、なぜ増加が鈍るのか理由がはっきりするまで使えない印象です。

もしかしたら、子が2人・3人も低めの金額になっている可能性があります。

全国ひとり親世帯等調査での子の人数別養育費

当初は、司法統計だけで充分だと思っていたのですが、前述のとおり怪しい結果になったので、全国ひとり親世帯等調査での養育費平均額(実数値)も紹介します。

全国ひとり親世帯等調査では、母子世帯と父子世帯のどちらも集計されており、司法統計(父の養育費支払額)との兼ね合いから、こちらは母子世帯の集計を取り上げました。

母子世帯子が1人子が2人子が3人子が4人子が5人
平成28年度世帯数328222469-
平均額38,207円48,090円57,739円68,000円-
令和3年度世帯数52029172183
平均額40,175円57,804円86,835円72,353円53,333円
※データ:平成28年度・令和3年度全国ひとり親世帯等調査

あまりにも集計数が少ない統計だとはいえ、全国ひとり親世帯等調査は、現実に支払われている養育費ですから参考にしないわけにはいきません。

集計数がせめて現在の10倍あれば有用な統計データなのですが……。

また、数が少ないうえに養育費の「平均額」である以上、平均額と大きく離れた世帯の存在に平均額が引っ張られてしまいやすいことには注意してください。

令和3年度・子が3人のように、とても妥当な平均額とは思えない数値が出やすいということです。

子の人数別養育費平均相場の推測

さて、司法統計は子の人数が増えると養育費が横ばいになる理由がわからず、全国ひとり親世帯等調査は集計数が少なすぎるという困った結果になりましたが、養育費平均相場を推測してみます。

都合のよいことに、平成28年度は旧算定表、令和3年度は新算定表になるので、全国ひとり親世帯等調査(母子世帯)の平均額と、司法統計での中央値・推定平均額を比べてみましょう。

司法統計の推定平均額は、12万円~16万円だったものを14万円に固定した金額です。

まずは、平成28年度(旧算定表が使用されていた)。

子が1人子が2人子が3人子が4人子が5人
平成28年度母子世帯平均額38,207円48,090円57,739円68,000円-
司法統計旧算定表中央値33,838円40,854円47,087円47,771円48,571円
推定平均額40,433円49,143円58,038円57,583円59,566円
※データ:平成28年度全国ひとり親世帯等調査、平成26年度~平成30年度司法統計から当サイトで計算
※司法統計の推定平均額は10万円超の平均を14万円と仮定した場合

子が1~3人の場合で、全国ひとり親世帯等調査(母子世帯)の平均額と、司法統計旧算定表の推定平均額が近似しています。子が4人以上はアテにならないので無視してください。

司法統計での推定平均額が正しいとするなら、中央値は低すぎることになりますが、旧算定表は従来から金額が低すぎると批判されて新算定表に切り替わった経緯があり、推定平均額(子が1~3人)を当時の養育費平均相場と見てもおかしくないと思われます。

続いて、令和3年度(新算定表に切り替え後)。

子が1人子が2人子が3人子が4人子が5人
令和3年度母子世帯平均額40,175円57,804円86,835円72,353円53,333円
司法統計新算定表中央値39,700円49,913円55,326円51,782円58,750円
推定平均額48,098円58,873円67,268円64,014円76,095円
※データ:令和3年度全国ひとり親世帯等調査、令和2年度~令和3年度司法統計から当サイトで計算
※司法統計の推定平均額は10万円超の平均を14万円と仮定した場合

一番信頼できる(集計数が多い)子が1人の場合において、司法統計での推定平均額が全国ひとり親世帯等調査(母子世帯)の平均額を大きく上回りました。

ただし、この結果は仕方がないのかもしれません。

なぜなら、家庭裁判所が新算定表に切り替わったからといって、影響があるのは家庭裁判所手続で処理された養育費の紛争に限られ、離婚全体の大半(令和3年は86.4%)を占める協議離婚には、新算定表の影響が小さいと考えられるからです。

新算定表の養育費水準が、一般的な認識として浸透するのはまだ先でしょう。

全国ひとり親世帯等調査の調査世帯にも、新算定表での家庭裁判所手続を経由している世帯があるはずなので、協議離婚だけの平均額はさらに下がると思われます(推測額は後述)。

したがって、養育費平均相場は、司法統計の推定平均額(子が1~3人)より低い水準と推測しますが、全国ひとり親世帯等調査(母子世帯)の平均額と差が大きすぎるのは気になりますよね。

子の人数増加と養育費の増加割合

視点を変えて、子の人数が増えるとどのくらいの割合で養育費が増加するのか、子が1人の場合を1として検証してみましょう。増加割合(指数)なら金額に影響されない傾向がつかめます。

子が1人子が2人子が3人
平成28年度母子世帯平均額11.26 1.51
司法統計旧算定表中央値11.21 1.39
司法統計旧算定表推定平均額11.22 1.44
令和3年度母子世帯平均額11.44 2.16
司法統計新算定表中央値11.26 1.39
司法統計新算定表推定平均額11.22 1.40
※データ:平成28年度・令和3年度全国ひとり親世帯等調査、平成26年度~平成30年度・令和2年度~令和3年度司法統計から当サイトで計算
※司法統計の推定平均額は10万円超の平均を14万円と仮定した場合

子が1人の養育費を1としたとき、子が2人になると1.21~1.26倍、子が3人になると1.39~1.51倍くらいが養育費の増加割合となりました。

唯一、 で示したように、令和3年度全国ひとり親世帯等調査(母子世帯)の養育費平均額は、子が2人・3人が他の指標から大きく外れています。令和3年度に限って、養育費が高騰する事情があったとは思えず、そのまま鵜呑みにはできません。

司法統計には大きな変化がないので、何か事情があったとすれば協議離婚ですが、急に養育費が高くなる社会的要因は思いつきませんでした。データ精度(集計数の少なさ)が原因だと予想します。

そこで、令和3年度全国ひとり親世帯等調査(母子世帯)の養育費平均額(子が1~3人)を、子が2人の場合は1.23倍、子が3人の場合は1.45倍に補正した金額を出してみました。

子が1人子が2人子が3人
令和3年度母子世帯補正値40,175円49,415円58,254円
※データ:令和3年度全国ひとり親世帯等調査から当サイトで計算

この補正値は、司法統計の中央値に近く、推定平均額よりも低い金額ですが、母子世帯に支払われた現実の養育費(子が1人)をベースに、統計から得られた増加係数を乗じているため、養育費の平均相場として使えるのではないでしょうか。

ただし、新算定表の養育費水準が一般に浸透していくと司法統計の推定平均額に近づいていく、つまり、これから徐々に上がっていくと予想します。

協議離婚だけの養育費平均相場は?

既に説明のとおり、新算定表に切り替わり後、養育費の平均相場は家庭裁判所のほうが高いと思われるため、協議離婚だけの平均額も考えておかなければなりません。

令和3年度全国ひとり親世帯等調査(母子世帯)を補正した金額のうち、86.4%を協議離婚の平均額、13.6%は家庭裁判所経由(司法統計の推定平均額)として計算したのが以下の表です。

子が1人子が2人子が3人
令和3年度協議離婚(母子世帯)推定平均額38,928円47,927円56,835円
※データ:令和3年度全国ひとり親世帯等調査から当サイトで計算

これで、①司法統計(父の支払額)の推定平均額、②全国ひとり親世帯等調査(母子世帯)の補正値、③協議離婚(母子世帯)の推定平均額を割り出すことができました。

結論:子の人数別養育費の平均相場

これまでの検証とデータの有効性を踏まえ、子が1人の場合の金額(集計数が多くて信頼性が高い)を基準に、子が1人増えるごとの増加率を0.23として計算したものです。

子の人数別養育費平均相場(令和3年度・父の支払推定額)

  • 母子世帯全体:30,935円+子の人数×9,240円
  • 協議離婚:29,975円+子の人数×8,953円
  • 家庭裁判所:37,035円+子の人数×11,063円

※養育費は、子の年齢・父母の収入でも変わります。
※子の人数が増えると年齢の高い子が増えるため、子が4人以上では金額が増えるかもしれません。

上記を当サイトの結論とします。

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