戸籍に婚姻の記載がされることは良く知られています。そのため、離婚後に相手の戸籍を見ることができれば、相手が再婚したかどうかを知ることは可能です。
しかし、個人情報を含む戸籍は、誰でも簡単に取得できるほど甘くはなく、同じ戸籍にいる婚姻中と違って取得が制限されます。これは同時に、自分の再婚が戸籍から相手に知られるかどうかの問題でもあるでしょう。
離婚後の相手の再婚は、興味本位で知りたい場合の他、養育費の関係で知りたい場合もあるはずです。離婚すれば赤の他人ですが、過去に夫婦であった事実は消えず、子がいれば将来でも無関係ではいられません。
戸籍で再婚を知る方法は、自分と相手のどちらが婚姻中の戸籍筆頭者だったかによって大きく変わります。
多くの元夫婦は、元夫が筆頭者となり、元妻が離婚で戸籍から抜けるため、ここでは同じ前提で解説します(逆なら読み替えてください)。
離婚で戸籍がどうなるか知っておこう
婚姻で夫婦が同じ戸籍になること、離婚で夫婦が別の戸籍になることは説明の必要もないはずです。知っておきたいのは、戸籍に記載されている「人」です。
婚姻中の戸籍を以下のように表し、離婚後と比べてみます。
【婚姻中の戸籍】
夫(筆頭者)、妻
子のいない夫婦が離婚したとき
離婚後の元夫の戸籍には、元妻が異動して除籍された記載がされます。しかし、離婚後の元妻の戸籍には元夫の記載がありません。
【離婚後の元夫の戸籍】
元夫(筆頭者)、元妻(除籍)
【離婚後の元妻の戸籍(いずれか)】
・元妻(筆頭者)
・元妻の親(筆頭者)、元妻
元夫が子と同じ戸籍にいるとき
子がいても夫婦の戸籍は同じ動きをしますが、子の戸籍については意図的に異動させなければ、元夫の戸籍から動きません。元妻が子と暮らしていても同じです。
【離婚後の元夫の戸籍】
元夫(筆頭者)、元妻(除籍)、子
【離婚後の元妻の戸籍(いずれか)】
・元妻(筆頭者)
・元妻の親(筆頭者)、元妻
元妻が子と同じ戸籍にいるとき
元妻が子の戸籍を異動させると、元夫の戸籍には元妻と子が異動して除籍された記載が残ります。元妻が子と同じ戸籍になるとき、親の戸籍に戻ることはできず、必ず元妻が筆頭者となって子と同籍します。
【離婚後の元夫の戸籍】
元夫(筆頭者)、元妻(除籍)、子(除籍)
【離婚後の元妻の戸籍】
元妻(筆頭者)、子
元夫が元妻(元嫁)の再婚を知りたい場合
離婚によって元夫の戸籍から抜けた元妻は、離婚後どの戸籍に異動するとしても、元夫の戸籍では除籍になり、異動先の本籍が記載されています。
【離婚後の元夫の戸籍】
元夫(筆頭者)、元妻(除籍)
※元妻が離婚で異動した本籍も記載されている
※この戸籍は自分の現在の戸籍なので取ることができる
元夫が転籍していなければ、自分の戸籍謄本を取るだけで、元妻の除籍記載と異動先を確認できます。もし、元夫が離婚後に転籍したとしても、転籍前の戸籍(除籍になっているので除籍謄本)を取れば同じです。
そこで、元妻の異動先である本籍地に、元妻の戸籍謄本を請求しても取れません。それは、元妻の戸籍に元夫の記載がないからです。
【離婚後の元妻の戸籍(いずれか)】
・元妻(筆頭者)
・親(筆頭者)、元妻
※元妻の戸籍に元夫の記載はない
※この戸籍は原則取ることができない
この状態で、元夫が元妻の戸籍を取るためには正当な理由が必要とされ、元妻の再婚を知りたくても興味本位では戸籍を取ることができないのです。
子が元妻と同じ戸籍なら追いかけられる
未成年の子がいる場合、母親が親権者や監護者となって、子と暮らすケースが多いです。母親と子の戸籍が異なると不便なため、家庭裁判所に「子の氏の変更許可審判」を申し立て、許可を受けて元妻の戸籍に子を入れます。
このとき、元夫は子の親として子の戸籍謄本を取ることができます。子の戸籍謄本は、元妻を筆頭者としているので、元妻の戸籍謄本を取るのと同じです。
【離婚後の元夫の戸籍】
元夫(筆頭者)、元妻(除籍)、子(除籍)
【離婚後の元妻の戸籍】
元妻(筆頭者)、子
※この戸籍は子がいるので取ることができる
しかし、元妻が離婚後に子の戸籍を異動させず、元夫の戸籍に子が残ったままなら、元妻の戸籍には元夫の記載がないので、子がいない場合と同じように、正当な理由がない限り元妻の戸籍を取ることはできません。
元妻が転籍しても、子と同じ戸籍にいる限りは、元夫が子の戸籍(元妻が筆頭者の戸籍)を取ることができますから、子の戸籍謄本を理由に追いかけられます。
ただし、元妻が再婚したとき、再婚相手の氏を称する婚姻をすると、元妻は再婚相手の戸籍に入り、子は再婚前の戸籍に残されてしまいます。
【再婚相手の氏を称して再婚した元妻の戸籍】
再婚相手(筆頭者)、元妻
※この戸籍は原則取ることができない
この状態では、元妻の戸籍を追いかけられませんが、子だけ残った戸籍には、元妻が婚姻で除籍になった記録が残されているので、再婚を知るだけなら十分でしょう。
【再婚前の元妻の戸籍】
元妻(筆頭者、除籍)、子
※元妻は婚姻で除籍されるが子は残る
※この戸籍は子がいるので取ることができる
また、たとえ子が元妻と再婚相手の戸籍に入籍したとしても、元妻と子のいずれも除籍された戸籍は除籍簿に入り、除籍謄本として取ることが可能です。
元妻が元夫(元旦那)の再婚を知りたい場合
元夫の戸籍には、元妻が離婚で除籍された記載がされているため、戸籍に記載された本人として、元妻は元夫の戸籍謄本を取得できます。
【離婚後の元夫の戸籍】
元夫(筆頭者)、元妻(除籍)
※この戸籍は自分の過去の戸籍なので取ることができる
離婚後も元夫が同じ戸籍にいる場合は、それだけで元夫の再婚を知ることができます。再婚が元夫の氏を称する婚姻なら、再婚相手が記載されています。
【元夫の氏を称して再婚した元夫の戸籍】
元夫(筆頭者)、元妻(除籍)、再婚相手
※この戸籍は自分の過去の戸籍なので取ることができる
一方で、元夫が再婚相手の氏を称する再婚をすると、再婚後の元夫の戸籍(再婚相手が筆頭者の戸籍)は、元妻が取ることはできません。
【再婚相手の氏を称して再婚した元夫の戸籍】
再婚相手(筆頭者)、元夫
※この戸籍は原則取ることができない
しかし、再婚前の戸籍は、元夫と元妻のいずれも除籍されて除籍簿に入るだけで、引き続き除籍謄本として取ることができます。除籍謄本には、元夫が婚姻で除籍になった記録があり、再婚を知るだけなら目的は達成できます。
【再婚前の元夫の戸籍(除籍)】
元夫(筆頭者、除籍)、元妻(除籍)
※元夫は婚姻で除籍される
※この戸籍は自分の過去の戸籍なので取ることができる
元夫が転籍すると元妻の記載はなくなる
戸籍の筆頭者である元夫が、離婚後に「他の市区町村」へ転籍してしまうと、転籍後の戸籍には元妻の記載がなくなります。したがって、転籍した元夫の戸籍謄本は、元妻が取ることはできません。正当な理由を必要とします。
【他の市区町村に転籍した元夫の戸籍】
元夫(筆頭者)
※この戸籍は原則取ることができない
普通に考えて、理由もなく転籍することはないのですが、次のような状況下において、離婚後に元夫が転籍することは良くあります。
- 引っ越しに伴って本籍を変えたい
- 元夫が戸籍から離婚歴を消したい
- 再婚相手が元妻の記載がある戸籍に入りたくない
特に、最後の理由で、再婚相手が元夫に転籍をして欲しいと言ってくることは十分に考えられます。再婚後に夫婦の戸籍謄本を取得したとき、戸籍に元妻の記載があるのでは、再婚相手にとって複雑な心境なのは理解できますよね。
このように、元妻が元夫の再婚を戸籍から知ることができるのは、元夫が離婚後の戸籍(元妻が除籍された記載のある戸籍)へ留まっている場合だけです。
しかしながら、子が元夫と同じ戸籍にいるときは、元夫の転籍によって子も一緒に転籍するので、子の戸籍謄本を理由として戸籍を追いかけることは可能です。
子が親の戸籍謄本を取ることは可能
さて、ここまで元夫・元妻の視点で解説してきましたが、子が直系親族である親の戸籍謄本を取ることに制限はありません(制限されてたら大変ですね)。
ということは? 感の良い方ならお気づきでしょうが、離婚相手の戸籍がどこにあろうと、子に頼めば戸籍謄本を取ることができてしまいます。
ただし、親の戸籍が転籍や改製などによって新たに作られると、除籍された子(婚姻等で親の戸籍から抜けた子)は新しい戸籍に記載されません。
ですから、親子関係を証明するために、子本人の戸籍謄本を添付しなければならない場合があります(子の戸籍謄本には親の名前がある)。
もっとも、離婚相手が再婚したか知りたい目的で、子に戸籍謄本を取ってもらうくらいなら、子に直接聞いてもらえば良いだけの話なのですが……。