戸籍謄本・戸籍抄本は、役所で保管されている戸籍の記録を、紙に写した状態で交付してもらえる、戸籍の公的な証明書です。
調停でも調停以外でも使うことがとても多く、特に身分関係(夫婦関係や親子関係)の証明が必要になる場面では、提出を求められることが良くあります。
戸籍謄本・戸籍抄本の取得には何かと制限があり、せっかくなので取得方法を覚えておきましょう。難しい手続ではなく、何度か請求する機会があれば慣れるはずです。
戸籍謄本と戸籍抄本の違いは?
戸籍というのは、夫婦の未婚の子供をひとつの単位として作られています。したがって、場合によっては複数の人が同じ戸籍に入っているのですが、証明書として使う場合に、戸籍の全員が記載されている必要があるとは限りません。
そこで、戸籍の全員の情報を記載したものを戸籍謄本、一部(複数も可能)の人の情報を記載したものを戸籍抄本と呼び、どちらかを選んで交付請求できます。
また、戸籍は旧来から戸籍簿として紙媒体で保管されていましたが、システム化が進んで現在は電子データで管理されています。システム化が終わった役所では、戸籍謄本を「戸籍全部事項証明書」、戸籍抄本を「戸籍個人事項証明書」と呼びます。
戸籍謄本=戸籍全部事項証明書
戸籍抄本=戸籍個人事項証明書
その他に、戸籍一部事項証明書という書面の交付も請求でき、これは戸籍の記載事項のうち、一部の事項だけを抜き出して証明するものです。
感覚的には、「全部」と「一部」なので、戸籍一部事項証明書が戸籍抄本(戸籍個人事項証明書)のように思われがちですが、異なるので注意してください。
特定の人の全ての記載事項が必要→戸籍個人事項証明書
特定の人の一部の記載事項が必要→戸籍一部事項証明書
戸籍謄本や戸籍抄本の請求
戸籍謄本(戸籍抄本でも同じなので、以下は戸籍謄本とします)は、本籍がある地域(本籍地)の役所に請求します。それ以外の役所では交付してもらえません。
また、戸籍謄本は郵送での請求が可能になっているので、その方法についても紹介しておきます。
本籍地がわからない場合は?
本籍地がわからなくても、現在住んでいる地域で住民票の写しを取得すれば、住民票に本籍の記載があります。ただし、何も考えずに請求すると本籍の記載は省略されているので、必ず本籍の記載を含めるように申請しましょう。
以前までは運転免許証に本籍の記載がありましたが、現在は記載されていません。
請求できる人
個人情報の保護と不正利用を防止するために、請求できる人は限定されています。
- 戸籍に記載のある本人とその配偶者
- 直系尊属(親や祖父母)
- 直系卑属(子や孫)
- 任意代理人
- 法定代理人
任意代理人とは本人に代わって請求を委任された人、法定代理人とは請求できない本人に代わって法律で代理が認められている人のことです。例えば、未成年の法定代理人は親や未成年後見人、成年被後見人なら成年後見人が法定代理人です。
窓口請求に必要なもの
- 戸籍証明請求書(名称は役所によって異なります)
- 手数料450円
- 本人確認書類(運転免許証、パスポート、住基カード等)
- 戸籍謄本等の直系親族を証明できるもの(戸籍に記載がない直系の請求者の場合)
- 委任状(任意代理人が請求する場合)
- 代理人としての資格を証明する書類(法定代理人が請求する場合)
請求する人が顔写真付きの本人確認書類を用意できないときは、健康保険証、年金手帳、印鑑登録証明書、公的資格の免状や証書など、本人確認に適当と思われる書類から、2種類を提示します。
戸籍謄本等の証明が必要になるとすれば、例えば、孫が祖父母の戸籍を請求するとき、明らかに直系ですが、祖父母の戸籍に孫の記載がありません。親の戸籍謄本を用意すれば、祖父母(親にとっての親)と孫(親にとっての子)の両方が確認できます。
任意代理人が請求するときは、本来請求できる人からの委任状を必要とし、法定代理人が請求するときは、戸籍謄本や登記事項証明書等の資格証明が必要です。
郵送で請求する場合
まず、戸籍証明請求書は本籍地の役所のホームページからダウンロードして、印刷して使用すれば良いでしょう。どの役所で印刷しても使えますし、請求書が手書きだからと却下される請求でもありません。
ただし、手書きの請求書では、次のような事項を記載して請求しないと、役所の方ですんなり交付してくれないので注意が必要です。
- 請求者の氏名、連絡先(住所、昼間連絡可能な電話番号)
- 何通必要か
- 戸籍抄本の場合は誰の抄本か
- 請求する戸籍の本籍と筆頭者氏名
- 請求者と筆頭者との関係(本人、配偶者、祖父母、親、子、孫など)
- 請求の理由(第三者による請求の場合)
郵送請求の手数料
戸籍謄本は手数料が発生する請求なので、郵送の場合には手数料のことを考えなくてはなりません。一部の役所は現金書留も受け付けていますが、どの役所でも対応しているのは「定額小為替証書」です。切手は受け付けてもらえません。
手数料450円の代わりに、450円の定額小為替証書を用意しておけば大丈夫です。
郵便局で取り扱う、決まった金額の現金を「定額小為替証書」として発行してもらい、定額小為替証書を送ることで受取人が郵便局で換金できる仕組みです。
50円から1,000円以内の金額(450円もあります)で、12種類の定額小為替証書が用意されており、1枚100円の手数料で発行してもらえます。
その他、郵送請求で用意するもの
本人確認書類のコピー
コピーを取って同封しますが、例えば運転免許証なら、住所変更をすると裏面に記載されるので、両面をコピーしなければならない場合もあるので気を付けます。
委任状・資格証明
任意代理人の委任状や法定代理人の資格証明は窓口で請求する場合と同じです。
返信用の封筒
郵送時にうっかり忘れてしまうのが、返信用の封筒も同封する点で、返信用封筒には切手を貼り付けておきます。枚数が多いときなど、切手代が不明なら多めに貼るか、同封して送ると必要な分だけ使用して、残りは戻してくれる役所もあるようです。