弁護士会照会制度(23条照会)は何ができるのか

最終更新日:2023/1/10

弁護士は、様々な場面で代理人として対応してくれるほか、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする(弁護士法第1条第1項)法律の専門職として、一般人では許されない多くのことが職務上可能とされています。

身近なところでは、職務上必要な範囲において、住民票や戸籍謄本の取得が可能なことは知られているのではないでしょうか。それ以外に、弁護士に依頼することで受けられるメリットとして、弁護士会による照会制度があります

費用的な負担に加え、調停に不成立がある以上、実利を伴わない可能性を考えれば、調停で弁護士に依頼するかどうかは、訴訟を見据えた調停以外は微妙なところです。

ただし、弁護士へ依頼する判断には、弁護士会照会制度の存在も含めるべきでしょう。

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弁護士会照会(23条照会)とは

弁護士会照会とは、弁護士が受任している事件に必要な範囲で、所属する弁護士会を通じて、官公庁や企業などに必要な報告を求めることができる制度です。

弁護士法第23条の2で次のように規定されており、23条照会とも呼ばれます。

弁護士法 第二十三条の二
弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。

2 弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

ここで注意したいのは、弁護士が所属する弁護士会からの照会であって、弁護士が照会権を持っているのではないという点です。弁護士は、所属弁護士会に照会を申し出るだけに過ぎません。

弁護士会が弁護士からの申出を審査することで、弁護士による照会の濫用や、不適切な照会を防ぐ仕組みになっています。

なぜ弁護士会照会制度があるのか

冒頭では、弁護士が基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とすると説明しましたが、現実の争いでは、不利になりそうな情報は隠匿され、もしくは情報が不足して、依頼人の正当な権利が実現しないことは良くあります。

照会制度は、弁護士が事件に必要な資料を収集し、その職務をまっとうできるように設けられました。弁護士の職務は、依頼人の利益を守ることですから、照会制度も依頼人の利益でしかないとする批判もあるでしょう。

しかし、照会制度によって依頼人の正当な権利を実現することは、依頼人個人の利益だけではなく、基本的人権の擁護や社会正義の実現に繋がるという、公益性を持っているとされます。

弁護士会照会の費用

弁護士会照会では、弁護士会への手数料や郵送費がかかるため、実費として1件につき数千円~1万円程度の費用が発生します(弁護士会によります)。

弁護士会照会は、弁護士が受任している事件に必要な範囲で利用する性質から、弁護士会照会だけを目的とした依頼(受任)が存在しない以上、弁護士会照会だけの報酬体系も論理的には存在しません

したがって、依頼人が負担するのは実費となるのですが、弁護士の報酬は自由化されていますので、依頼人との合意によって実費以上の負担になることも考えられるでしょう(そのような弁護士は敬遠したいところですが…)。

弁護士会照会(23条照会)ができること

法律上は、照会内容についての規定はなく、「必要な事項の報告を求めることができる」と規定されているだけです。したがって、事件の解決に必要な範囲で、照会先を問わずに照会可能です。

調停においては、相手方に関する次のような事例でしょうか。

弁護士会照会ができることの事例

  • 現住所や給与金額を勤務先に照会する
  • 転居先を郵便局に照会する
  • 預金残高を銀行に照会する
  • 保有株式を証券会社に照会する
  • メールアドレスから電話番号を電話会社に照会する
  • 電話番号から氏名・住所・料金振替口座などを電話会社に照会する
  • 生命保険の加入状況を保険会社に照会する
  • 子供の在籍や住所などを学校に照会する
  • 医療記録を病院に照会する

この他にも色々考えられますが、照会先が応じるとは限らないのは前述のとおりです。また、電話やメールなど通信に関する電話会社への照会は、通信の秘密からほぼ確実に拒否されるようです。

郵便局から転居先を照会できる場合がある

調停では、弁護士会照会で利用したい照会先として、相手方の現住所があります。

なぜなら、相手方の現住所がわからなければ、調停を申し立てても通知できないので、相手方が参加できず調停は始まらないからです。

住民登録を異動せずに(住民票を移さずに)転居する場合でも、郵便物の転送をしてもらうために、郵便局へ転居届を出すケースは比較的多いでしょう。

そこで、郵便局に転居先を照会しても、「信書の秘密」や「郵便物に関して知り得た秘密」を理由に、従来は一切応じてもらえませんでした。

この点、判例を受けて取り扱いが変わっており、

「信書の秘密等に該当する事項のうち、郵便法第8条第2項に規定する、郵便物に関して知り得た他人の秘密については、比較衡量の結果、それらの情報を用いることによる利益が秘密を守られる利益を上回ると認められたときには、第三者提供が可能となると考えられる」

となりましたので、弁護士会照会で転居情報を得られる可能性があります(詳しくは後述)。

弁護士会照会(23条照会)の利用件数

日本弁護士連合会(日弁連)の公表によると、2017年~2021年における弁護士会照会の利用件数は次のとおりでした。各年とも20万件前後で推移しています。

2021年2020年2019年2018年2017年
195,866197,455222,811216,474210,898
※データ:日弁連弁護士白書2017年版~2021年版

分野別の照会先では、2021年において金融65,456件(33.4%)、警察56,614件(28.9%)、検察16,992件(8.7%)、通信13,943件(7.1%)、運輸11,754件(6.0%)、医療5,674件(2.9%)などです。

また、照会先には地域性が認められ、その理由は定かではありません。

関東以北では金融関係への照会が警察よりも多く、中部以西では警察への照会が金融よりも多くなっています。また、通信関係への照会は、北海道(札幌)で多く行われています。

こうした照会先の傾向は、地域による受任案件の傾向なのかもしれませんが、いずれにせよ弁護士会照会は幅広く行われており、依頼人にとっては心強いでしょう。

弁護士会照会に対する報告義務

弁護士法は、照会制度を規定しているだけで、照会先に対する義務規定はありません。となれば、誰でも思うのが「照会しても回答しないのでは?」という疑問です。

事実、照会制度は個人情報に関する内容が多く、個人情報保護法との兼ね合いもあって、照会を受けた当事者の同意がなければ回答を拒絶するケースがあります。

弁護士会照会に対する報告義務については、明文の規定がないために軽視されがちですが、最高裁は「正当な理由がない限り,照会された事項について報告をすべきものと解される」としましたので(最高裁平成28年10月18日判決)、報告義務があることは認められています。

ただし、照会する内容にも左右され、照会先が回答することによる公共的利益よりも、回答の拒絶で保護される利益が大きいと判断される場合、その限りではありません。

つまり、あくまでも事案に応じて判断されるということです。

弁護士会照会と個人情報保護法の兼ね合い

個人情報保護法では、本人の同意なく個人情報の目的外利用と第三者提供を制限しています。

例えば、ある商品を配達する目的のために、購入者本人の同意を得て氏名と住所を取得したとします。この場合、商品の配達以外の目的で、取得した氏名と住所を利用することはできません。

何らかの目的で取得した個人情報を、本人の同意なく弁護士会照会に応じて提供することは、個人情報の目的外利用であり、第三者への提供にも該当するのですが、いずれの場合でも「法令に基づく場合」は例外とする規定があります。

この「法令に基づく場合」には、弁護士会照会も含まれると解されており、省庁の公表する個人情報保護のガイドラインなどにもその旨が明記されています。

もっとも、照会先が弁護士会照会に応じる場合、前述のとおり個別の事案によって、公益性と個人情報保護による利益を判断して提供されることは言うまでもありません。

郵便分野での個人情報保護ガイドラインとの関係

郵便法は、第8条第1項で日本郵便が取り扱う「信書の秘密」を侵してはならないと規定し、第2項で郵便業務の従事者(退職後を含む)には「郵便物に関して知り得た他人の秘密」を守らなければならないと規定しています。

郵便法 第八条
会社の取扱中に係る信書の秘密は、これを侵してはならない。

2 郵便の業務に従事する者は、在職中郵便物に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても、同様とする。

注:会社とは日本郵便株式会社のこと

個人情報の第三者提供が、個人情報保護法による「法令に基づく場合」は、郵便法の規定に抵触するため、ガイドラインにおいて郵便法を遵守するよう定められていました。

従来、郵便局への弁護士会照会がことごとく拒絶されていたのは、このような個人情報保護ガイドラインの運用に基づいたものです。

しかし、郵便物の内容ではない転居情報は、「通信の秘密」や「信書の秘密」に該当しないとした判例(名古屋高裁平成29年6月30日判決)を受け、「郵便物に関して知り得た他人の秘密」とガイドラインに明記されました。

その上で、郵便物に関して知り得た他人の秘密については、比較衡量の結果、それらの情報を用いることによる利益が秘密を守られる利益を上回ると認められたときには、第三者提供が可能とされ、ガイドラインに弁護士会照会が例示されています。

参考:郵便事業分野における個人情報保護に関するガイドライン解説(PDF)※P101参照

ただし、「弁護士会が照会申出を審査してDV・ストーカー・児童虐待の事案との関連が窺われない法的手続であり適当と判断した旨を表示して発出した照会に係る者に限る」とされていることに留意してください。

それ以前に、転居情報を用いることによる利益が、秘密を守られる利益を上回ると認められなければ、転居情報は得られません

弁護士会照会を利用する際の注意点

弁護士が弁護士会照会を申し出ることができるのは、受任した事件に関してのみです。つまり、事件処理の依頼(委任)がないと弁護士は動けません

ただし、弁護士が正式に受任する前の相談段階や、依頼が示談交渉であっても、照会を利用することは可能になっています。

そうしないと、例えば、相続財産が不明な状態で法律相談をしたとして、先に委任契約を結ぶと着手金が発生するのに、後で照会してみたら財産が僅かだった・無かったという場合は、依頼人の不利益があまりにも大きいからです。

なお、単に相手方の住所を調べて欲しいといった、照会そのものを目的とした依頼はできないので注意してください。あくまでも、依頼する事件があって、事件の解決に必要なら弁護士会照会制度を利用できるということです。

法律相談は無料の弁護士も多いですし、弁護士会照会が使えそうか聞いてみてから、依頼を判断してみるのも一考ではないでしょうか。今は弁護士探しに役立つサービスも充実しています。

法律全般サポート(日本法規情報)

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