家事調停の平均的な審理期間と期日回数

家庭裁判所で開かれる家事調停は、おそらく初めて調停を経験する人にとって、あまりにも長すぎると思うかもしれません。

調停期日が1か月から1か月半に1回しか開かれない状況は、トラブルの当事者にとってモヤモヤする期間が長く、早く決着を付けたいとうんざりすることも多いでしょう。

人的資源が限られている裁判所においても、手続を迅速化したいのは当然なのですが、複雑な事情が多い家事事件は、むしろ逆の方向に進んでいるようです。

ここでは、家事調停の審理期間と期日回数がどのくらいかイメージしてもらうために、裁判所が公表しているデータを紹介します。

【データ出典】司法統計(平成28年~平成30年)
※全体の平均審理期間は各区分ごとに代表値を用いた算出

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別表第2調停事件の平均審理期間

別表第2事件で多いのは、子の監護に関する処分(養育費面会交流・子の監護者の指定・子の引渡し)、婚姻費用の分担、遺産分割などです。財産分与も別表第2事件に含まれます。

平成28年平成29年平成30年
~1か月7,415(9.4%)7,244(9.1%)6,910(8.8%)
~3ヶ月22,511(28.7%)21,668(27.4%)20,350(25.9%)
~6か月23,744(30.2%)23,811(30.1%)22,959(29.2%)
~1年17,806(22.7%)18,885(23.8%)19,871(25.3%)
~2年6,226(7.9%)6,656(8.4%)7,492(9.5%)
2年~865(1.1%)950(1.2%)1,068(1.4%)
総数78,567(5.8か月)79,214(6.0か月)78,650(6.4か月)

データからわかるのは、総数にそれほど変化は見られず、平均審理期間は徐々に長くなっている点でしょうか。

約2/3は6か月以内に終局していますが、もっとも多い分布が3ヶ月~1年となっており、早くても3ヶ月は当たり前にかかると思って臨まなくてはなりません。

また、このデータは調停に関するもので、審判の審理期間は含まれていないことに注意してください。別表第2事件は調停不成立になると審判へ自動移行します。

つまり、争いが激しく双方が譲らない場合、調停→審判となることによって、事件全体の審理期間はさらに延びるということです。

別表第2調停事件以外の平均審理期間

別表第2事件を除く事件には、離婚・離縁、親族間紛争などの一般調停事件協議離婚無効確認、認知などの特殊調停事件が含まれています。

その約8割が夫婦関係調整調停であり、夫婦関係調整調停は大半が離婚調停なので、以下の表は離婚調停の平均審理期間に近いと思ってもそれほど間違っていません。

平成28年平成29年平成30年
~1か月4,357(7.2%)3,979(6.9%)3,888(7.0%)
~3ヶ月18,537(30.8%)17,186(29.6%)15,697(28.3%)
~6か月21,072(35.0%)20,014(34.5%)18,949(34.2%)
~1年13,069(21.7%)13,425(23.2%)13,146(23.7%)
~2年2,961(4.9%)3,191(5.5%)3,554(6.4%)
2年~124(0.2%)185(0.3%)198(0.4%)
総数60,120(5.1か月)57,980(5.4か月)55,432(5.6か月)

総数が減っていることについては、晩婚化・少子化・経済不安などの理由で、婚姻数が減っているのですから、必然的に離婚数も減り、離婚調停の数が減っていても不思議ではないでしょう。

夫婦関係調整調停の既済件数は、平成28年が47,332件、平成29年が45,865件、平成30年が44,085件です。

そして、こちらも平均審理期間が上昇傾向です。

この理由について、裁判所が公表している「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」では、

  • 取下げの割合が下がっている(取下げは平均審理期間が短い傾向)
  • 夫婦関係調整調停に並行して婚姻費用分担請求の申立てが多い
  • 婚姻関係の事件は弁護士の関与率が高くなっている

が指摘されています。

審理期間の短い取下げが少なくなると、相対的に平均審理期間が長くなるのは理解できますし、離婚調停に並行した婚姻費用分担請求は、当事者の一方が生活に困窮してしまわないよう優先されても仕方ありません。

また、弁護士の関与については、弁護士が関与するから複雑化するのか、複雑な事情から弁護士に依頼するのかまでは不明とはいえ、弁護士の関与率と平均審理期間の長さに相関があることは統計データから読み取れます。

これは私見ですが、調停の当事者は自分の言い分を通すために弁護士を雇うのですから、依頼された弁護士としても対峙する相手の要求を飲むことは信用問題に関わります。特に、申立人と相手方の双方で弁護士が関与していると、なかなか終局に向かわない状況が起こりやすいのではないでしょうか。

もっとも、弁護士が関与しないことで、当事者の利益や権利がないがしろにされる結果になったのでは、紛争の解決に家庭裁判所を頼った当事者の期待を裏切ることになり、それは審理期間が長くなることよりも大きな問題です。

調停期日は何回開かれるのか

申し立てる調停によって異なりますが、家事調停全体を平均すると平均審理期間は概ね6か月です。

では、6か月の間に調停期日は何回あるのでしょうか?

これは一概に言えるものではなく、そもそも当事者の都合が合うかどうか、事実調査の必要性、家庭裁判所側のスケジュール調整、評議の進行具合などによってまちまちです。

そこで、実施期日が1回以上の婚姻関係事件(平成30年、審判も含む)データから、月当たりの平均的な実施回数を推測してみようと思います(実施期日が11回以上はごく少数なので除外)。

1か月超~3か月3か月超~6か月6か月超~1年
1回6,65762881
2回7,5765,758216
3回8339,7971,153
4回304,5893,887
5回139074,880
6~10回141386,286
総数15,12321,81716,503
総実施回数※124,60565,53094,208
月平均回数※20.810.670.63
※1 総実施回数は6~10回を平均8回として計算
※2 月平均回数は1か月超~3か月を平均2か月、3か月超~6か月を平均4.5か月、6か月超~1年を平均9か月として計算

長期化するほど実施回数が増えるのは当然として、データから見た月平均回数は長期化で減っていく傾向です。

3か月超~6か月が0.67回/月、6か月超~1年が0.63回/月ですから、ざっくりした計算ですが、6か月×0.65回=3.9回なので4回なら妥当な回数と言えるでしょう。

まとめ

ここまで、司法統計データを確認してきましたが、審理期間は6か月程度、調停期日は4回程度が1つの目安です。

ただし、成立・不成立以外の終局も含めて平均が6か月ということは、成立を目指した場合、6か月以上を覚悟しなくてはなりません。期日回数も増えます。

もう1つ気になるのは、弁護士の関与によって審理期間は長くなる傾向が見られることです。

弁護士に依頼することで、負担の軽減や法的な不安の解消など得られるメリットはありますが、審理期間が長くなる=日当などの弁護士費用も増えることも考えておきましょう。

弁護士への依頼については、別記事にしているので参考にしてください。

参考:調停を弁護士に依頼するべきか考えてみる

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