調停で決まったことを守らないとどうなる?

せっかく調停で話し合って決めたのに、調停後に約束が守られないことはとても多くあります。裁判所では合意したフリをして調停を成立させ、実際には無視すると、どのような結果が待ち受けているのでしょうか?

調停成立時に作成される調停調書には、一般に債権債務の関係が記載されます。

債権債務の多くは、「○○は××に△△円を支払う」といった金銭的な内容ですが、調停で決まるのは必ずしも金銭的な内容とは限らず、いつまでに~するといった、特定の行為が調停調書に記されることも少なくありません。

お金の支払いや役務の提供、物や人の引渡しなどを受けることができる権利を債権、それらを行わなければ義務を債務と呼びます。債権者は債務者に対して、義務を履行するように求める権利を持っています。

調停調書では、申立人と相手方が合意した、何らかの約束事を記載しますから、その約束を履行させる権利(債権)と履行する義務(債務)の関係が成り立ちます。通常は、何らかの請求があって調停を申し立てるので、申立人が債権者になります。

ここでは、債権者を権利者、債務者を義務者として説明します。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

調停調書は法的な効力を持つ

調停で決まった内容に基づいて調停調書がつくられると、その記載内容は法的な効力を持ちます。これが調停の大きな結果でもあり、申立人の目指すところでしょう。

大切なのは、調停が成立して調停調書がつくられることです。

調停を進めていくうちに、話がまとまったからといって途中で調停を取り下げてしまうと、調停自体が無かったことになり効力は発生しません。

法的な効力とは、家事調停なら確定判決または確定審判と同一(家事事件手続法第268条第1項)、民事調停なら確定判決と同一です(民事調停法第16条、民事訴訟法第267条)。

では、これらの効力があることで、どんな結果をもたらすのでしょうか?

調停の申立人と相手方で、その立場は正反対となりますが、調停調書があるとこのようなことができると思って読み進めてください。

調停調書があると履行の確保手続ができる

調停調書に記載された内容が守られないとき、権利者は裁判所への申出または申立てによって、義務者の義務を履行させるために、何らかの手段を講じることができます。

具体的には、履行勧告の申出、履行命令、間接強制、直接強制の申立てに分かれ、徐々に強制力は増していきます。

※間接強制と直接強制は強制執行と呼ばれます。

履行勧告(家事調停)

家事調停での合意事項を守らない相手に、裁判所から原則として書面で義務の履行を勧告してもらいます。

相手が履行勧告に従わなくても、強制することはできませんが、裁判所から書面で勧告されるだけでも一定の効果は見込めます。

令和元年度司法統計によれば、履行勧告14,117件において、義務の全部が履行された・目的を達したのは4,931件(34.9%)、義務の一部が履行された・一部目的を達したのが1,994件(14.1%)でした。

合計すると、約半数は履行勧告の効果があったのですから、家庭裁判所からの勧告であることに意味はあるのでしょう。

履行命令(家事調停)

家事調停での合意事項が、金銭や財産上の給付に関係する債権であるときは、履行勧告よりも強い履行命令を出してもらうことができます。正当な理由なく履行命令に従わないときは、10万円以下の過料に処されます(家事事件手続法第290条第5項)。

履行命令を出してもらうために、履行勧告が前条件とはなっていませんが、運用上は履行勧告を先にするのが通常です。

ところが、この過料も実質的には強制力を持っておらず(強制執行できますがされたと聞いたことがない……)、過料が権利者に入るわけでもありません。

また、履行命令は件数自体が極めて少なく、令和元年度で終局した79件のうち、履行命令は37件しかありませんでした。

権利者の立場からすると、履行勧告で効果がなかったのに、履行命令を出してもらったところで、義務者は応じないと考えてしまうのでしょう。

このように、家事調停においては履行勧告・履行命令が用意されていますが、確実性に乏しいため、家事調停・民事調停のどちらにおいても、強制執行(間接強制・直接強制)による債権回収が、事実上の有効な手段として用いられることになります。

間接強制

間接強制は、義務を履行しない相手に対し、間接強制金と呼ばれる金銭を課す方法です。つまり、相手の不利益になるような決定、例えば「いつまでに○○をしないときは××円支払え」と裁判所に命じてもらうことで、義務を履行させるのが目的です。

間接強制は、原則として金銭の支払い(金銭債権)に対しては適用できません。金銭債権に対して、さらに間接強制金を課すことは不適切で、直接強制ができるからです。

しかし、親族関係の義務(夫婦の協力扶助義務、婚姻費用の分担義務、子の監護に関する義務、親族間の扶養義務)に関する債権は、民事執行法第152条の2で特例が設けられており、金銭債権でも間接強制ができることになっています。

もっとも、扶養に関する支払いをしない義務者に対し、支払いをしないので間接強制金を支払えと言っても見込みが薄く、結局は直接強制による債権回収が現実的でしょう。

直接強制

直接強制では、強制的に相手の支払い義務を履行させます。具体的には、相手の給料や財産を差し押さえて、強制的に回収することができます。ですから、強制執行=直接強制をイメージするのではないでしょうか。

差押えの典型的な例としては、給料の差押えでは勤務先を、預貯金口座では金融機関を第三債務者として、差押命令を出してもらいます。差押命令を受けた勤務先や金融機関は、相手の給料(上限があります)や口座の預貯金から、差押えの申立人に支払うか裁判所に供託します。

したがって、差押えの申立人は、第三債務者から直接または裁判所を経由して、目的とする支払いを受け取ることができる仕組みです。

直接強制は、金銭的な給付以外でも可能ですが、強制的な実現が馴染まない義務は対象にできません。例えば、子の引渡しや面会交流を直接強制で実現しようとしても、子が拒否すれば無理ですし、子の身柄を拘束することもできるはずがないからです。

そのため、直接強制に馴染まない義務は、間接強制によって間接強制金を課し、それでも義務を履行しなければ、今度は直接強制で間接強制金を取り立て、相手にプレッシャーをかけて義務を履行させる方向で進んでいきます。

調停調書は債務名義になる

強制執行は、国家権力による債務の強制的な履行(直接強制)もしくは金銭的な制裁(間接強制)ですから、権力の濫用を防ぐために安易な申立てが制限され、債務名義と呼ばれる特別な文書を必要とします。

債務名義になる文書には多くの種類がありますが、その中の1つに確定判決と同一の効力を有するもの(民事執行法第22条第7号)があります。前述のとおり、調停調書は確定判決と同一の効力を持つので債務名義です。

つまり、調停が成立して調停調書に記載された時点で、裁判所が強制執行を認めるお膳立てが、事前にできてしまっているということです。

自分が調停の申立人であれば、調停で決まったことを守らない相手方には強制執行を申し立てるべきですし、自分が調停の相手方になって、請求を認める調停を成立させた場合は、相当の覚悟をしなければなりません。

なお、2020年に強制執行制度が改正され、それまでよりも債権回収がしやすくなりました。

※この改正については別記事を掲載する予定です。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
  • 0
  • 2
  • 1
  • 0
初めての調停
タイトルとURLをコピーしました