別表第2事件は、家事事件手続法での別表第2に規定されており、家事事件手続法施行前までは、家事審判法における乙類事件と呼ばれていた紛争です。
婚姻費用、子の監護に関する処分、財産分与、年金分割、親権者の指定又は変更のように、婚姻中や離婚後の争いが含まれ、親族間で争われる遺産分割も含まれるので、別表第2事件は激しく争うケースが珍しくありません。
その紛争性の高さから、別表第1事件に比べると長期化しやすく、離婚を除いた主要な家事事件とも言えるでしょう。
別表第2事件の特徴
手続面から先に説明すると、別表第2事件は調停と審判のどちらからでも申し立てることができます。
したがって、当事者間で十分に話し合った、あるいは話合いにもならないといった状況はもちろん、まだ当事者間で話し合っていない段階でも、審判を申し立てることは可能です。
しかしながら、自主的な話合いによる解決を第一に期待することから、審判を申し立てても家庭裁判所は職権で調停をさせる(付調停と呼ばれます)ことが可能で、調停から始める場合も少なくありません。
ただし、別表第2事件には調停前置主義が適用されないため、付調停の際には当事者の意見が聴かれます。当事者が調停を望まないのに、家庭裁判所が調停を強制するわけではないということです。
調停でも審判でも効力に差がない
調停と審判のどちらも申立てが可能な別表第2事件では、調停を申し立てた場合と、審判を申し立てた場合で結果に差があってはおかしいですよね。
ですから、調停が成立した場合には、確定した審判と同一の効力を持ちます(家事事件手続法第268条第1項)。
また、調停が不成立の場合には、調停の申立て時に審判の申立てがあったとみなされるので、自動的に審判へ移行して結論が示されることになります。
つまり、調停が不成立で審判に移行した場合、審判を申し立てて付調停が成立した場合、審判を申し立てた場合のいずれも、得られる効力(確定審判と同一)に差がありません。
調停に代わる審判の対象
調停で話合いが進み、概ね合意に近づいているのに、どうしても調停成立に至らないとき、別表第2事件では家庭裁判所の職権で「調停に代わる審判」をすることがあります。
調停に代わる審判は、調停が成立しないときに行われる特殊な審判で、調停不成立から自動移行する審判とは別の審判です。
参考:調停に代わる審判
調停に代わる審判に異議が申し立てられない(または異議の申立てを却下する審判が確定した)ときは、調停不成立から自動移行した(または審判申立てによる)審判の確定と同一の効力を持ちます(家事事件手続法第287条)。
よって、調停成立、調停に代わる審判、調停不成立から自動移行した審判確定のいずれも効力は同じです。
なお、調停に代わる審判に適法な異議が申し立てられ、その効力を失ったときは、審判へ自動移行するので、別表第2事件が終結するパターンは次の5通りです(即時抗告・抗告審を除いていることに注意してください)。
- 調停申立て→調停成立
- 審判申立て→審判確定
- 調停申立て→調停不成立→自動移行した審判が確定
- 調停申立て→調停が成立しない→調停に代わる審判に異議申立てがなく確定
- 調停申立て→調停が成立しない→調停に代わる審判が異議申立てで失効→自動移行した審判が確定
※調停申立ては、審判申立てからの付調停を含む
訴訟事項ではない
別表第2事件は、人事(身分:家族関係での立場)に関する争いを含まず、訴訟事項でもないという特徴があります。
そのため、必ず調停か審判で事件が終結し、審判に不服があれば即時抗告(高等裁判所に不服申立てをすること)は可能です。
親権者の指定や、子の監護に関する処分・財産分与・年金分割は、離婚訴訟で扱われることの多い争いですが、あくまでも離婚訴訟に伴っている場合であり、それぞれ単独の争いで訴えを提起することはできません。
離婚と一体関係にある争いは、離婚訴訟で同時に解決したほうが良いのでそのように扱われ、単独の争いでば調停・審判を利用するようになっています。
別表第2に含まれる家事事件の種類
別表第2に定められた事件を以下にまとめています。
※家事事件手続法を基に作成しているので、法律の改正があれば正確になっていない可能性があります。
カテゴリ | 項 | 審判または調停される事項 |
---|---|---|
婚姻等 | 1 | 夫婦間の協力扶助に関する処分 |
2 | 婚姻費用の分担に関する処分 | |
3 | 子の監護に関する処分(養育費、面会交流、子の監護者指定・変更、子の引渡し) | |
4 | 財産の分与に関する処分 | |
5 | 離婚等の場合における祭具等の所有権の承継者の指定 | |
親子 | 6 | 離縁等の場合における祭具等の所有権の承継者の指定 |
親権 | 7 | 養子の離縁後に親権者となるべき者の指定 |
8 | 親権者の指定又は変更 | |
扶養 | 9 | 扶養の順位の決定及びその決定の変更又は取消し |
10 | 扶養の程度又は方法についての決定及びその決定の変更又は取消し | |
相続 | 11 | 相続の場合における祭具等の所有権の承継者の指定 |
遺産の分割 | 12 | 遺産の分割 |
13 | 遺産の分割の禁止 | |
14 | 寄与分を定める処分 | |
特別の寄与 | 15 | 特別の寄与に関する処分 |
厚生年金保険法等 | 16 | 請求すべき按分割合に関する処分 |
生活保護法等 | 17 | 扶養義務者の負担すべき費用額の確定 |