特殊調停事件として扱われる家事事件は、人事(身分:家族関係での立場)に関する訴えを提起できる争いのうち、離婚・離縁を除いたもので、家事事件手続法が制定される前の家事審判法においては、23条事件とも呼ばれていました。
- 婚姻の無効、取消し
- 協議離婚の無効、取消し
- 婚姻関係の存否確認
- 嫡出否認
- 認知
- 認知の無効、取消し
- 父を定める訴え
- 実親子関係の存否確認
- 養子縁組の無効、取消し
- 協議離縁の無効、取消し
- 養親子関係の存否確認
- その他の身分関係の形成または存否の確認
※離婚と離縁は特殊調停事件に含まれます。
これらの人事に関する事件は、身分事項を記録する戸籍に関わる内容でもあるため、当事者による処分が許されない性質を持っています。
また、特殊調停事件は訴訟事項ですから、人事訴訟を提起することも可能ですが、原則として調停前置主義により調停から始めることになります。
参考:調停前置主義とは
特殊調停事件の特徴
「特殊」と付くほどなので、特殊調停事件には他の調停と明確に異なる特徴があります。
それは、特殊調停事件が調停成立では終わらない点なのですが、それはなぜなのでしょうか?
調停成立の代わりに合意に相当する審判で終わる
冒頭で、人事に関する事件は、当事者による処分が許されないと説明しました。
しかし、当事者の合意による調停成立で終結してしまうと、それは即ち、当事者による処分を許すことに他なりません。
調停というのは、当事者が調停を利用しなくても決められることなのに、話合いがつかなくて利用する手続ですから、特殊調停事件が調停成立で終わってしまうと、当事者が調停せずに決められるのとイコールになってしまいます。
そこで、特殊調停事件では、当事者が合意して争いがなくなったことを確認したうえで、合意に相当する審判という特殊な審判をします。
参考:合意に相当する審判
合意に相当する審判が確定すると、確定判決と同一の効力です。つまり、人事訴訟をしなくても、調停→合意に相当する審判によって同じ効力を得られます。
当事者が合意せず調停が終了すると、人事訴訟を提起して確定判決を得るしかありませんので、特殊調停事件の調停(合意に相当する審判)は、当事者負担を大きく減らすことができる重要な存在です。