離婚調停の成立前には戸籍と氏を考えておく

離婚調停は、成立して離婚する前提(離婚する前提でなければ円満調停)で申し立てられますから、調停成立後には離婚届を出すことになります。

このとき、離婚届には夫婦の戸籍から抜ける側の戸籍(本籍)について、「婚姻前の氏にもどる者の本籍」欄に記入して提出する決まりです。

「婚姻前の氏にもどる者の本籍」欄の記入には戸籍の知識を必要としますが、一生の間に何度も離婚する人は少なく、戸籍の知識は日常生活にあまり必要とされないため、理解が不十分なまま調停離婚するケースが多いようです。

そして、調停離婚では、夫婦の一方(多くは調停の申立人)だけでも離婚届を書いて提出できるため、夫婦の戸籍から抜ける側が離婚届を書くとは限りません。

結果として、自分の望んだ戸籍にならない可能性もあり、離婚で戸籍から抜ける側が考えておくべき戸籍と氏について説明していきます。

調停離婚の離婚届は1人で出すことができる

離婚調停の成立後は、10日以内に離婚届を役所に提出しなければなりませんが、通常は離婚調停の申立人が離婚届を提出します。提出される離婚届に、相手の署名や承認の署名は必要とされていません。

離婚調停の相手方から離婚届を出すことに合意があり、調停調書にもその旨を記載していると、相手方からも離婚届を出すことができます。また、申立人が10日以内に離婚届を出さないときにも、相手方から離婚届を出すことができます。

離婚届を出す人、戸籍から抜ける人の組み合わせは、次の4パターンのいずれかです。

  1. 自分が申立人で(離婚届を出して)自分が戸籍から抜ける
  2. 自分が申立人で(離婚届を出して)相手が戸籍から抜ける
  3. 相手が申立人で(離婚届を出して)自分が戸籍から抜ける
  4. 相手が申立人で(離婚届を出して)相手が戸籍から抜ける

この4パターンのうち、問題になりそうなのは3です。戸籍から抜けるのは自分ですが、相手が離婚届を出すので、必ず自分の意図どおりにしてもらう必要があります。

自分が離婚届を出さないからと相手に任せたことで、例えば、離婚後は自分の新戸籍を作りたいのに、相手が「もとの戸籍にもどる」欄にチェックして離婚届を出したとき、自動的に婚姻前の戸籍と氏に戻ってしまいます。

婚姻前の戸籍と氏に戻りたいなら大丈夫ですが、そうでなければ、離婚後の戸籍と氏については、離婚届を適切に記入して出さなくてはなりません。

以降は3の前提で、戸籍から抜ける人に向けて解説しています。しかし、2の場合でも相手の離婚後の戸籍や氏について、意向を確認するべきでしょう。

離婚調停成立から離婚届まで日にちに余裕はない

離婚調停成立から離婚届提出までの10日以内とは、役所の開庁日で10日以内ではなく、土日・祝祭日・年末年始の閉庁日を含めた10日以内です。ただし、10日目が閉庁日なら、翌開庁日が提出期限となります。

調停離婚では、調停調書謄本(もしくは省略謄本)の添付を必須としますが、調停調書は成立日に即日交付されることは少ないようで、後日交付(送達)では、調停成立から離婚届の提出期限まで日にちに余裕はありません。

また、離婚調停の申立人は、離婚届を出すために調停を申し立てるのですから、調停調書謄本が交付されたら、すぐに離婚届を出してしまうでしょう。

そのため、離婚調停が成立しそうな時点で、離婚後の戸籍の希望を固めておかなくてはならず、その希望を相手に伝える必要もあるということです。

調停成立後に提出される離婚届を、調停の場で当事者に確認させる離婚調停の運用もあります。離婚届に不安があるときは、事前確認ができるように調停委員へ相談してみましょう。

離婚後の戸籍と氏には3つの選択肢がある

離婚で夫婦の戸籍から抜ける側は、戸籍の異動先として2つ、氏の選択として2つあり、組み合わせて合計3つの選択肢があります。

  1. 婚姻前の氏に戻って婚姻前の戸籍に戻る(旧姓・旧戸籍)
  2. 婚姻前の氏に戻って新しい戸籍を作る(旧姓・新戸籍)
  3. 婚姻中の氏を名乗って新しい戸籍を作る(婚氏続称・新戸籍)

必ず3つから決めなくてはならず、離婚調停の成立前に決めて、必要なら書類を用意するか、自分で離婚届に記入して相手に渡します。

1.婚姻前の氏に戻って婚姻前の戸籍に戻る

いわゆる旧姓に戻り、親の戸籍など婚姻前の戸籍に戻ります。

離婚届の「婚姻前の氏にもどる者の本籍」欄は、「もとの戸籍にもどる」にチェックして、戻るべき婚姻前の本籍とその筆頭者を記入します。

戻るべき婚姻前の本籍とその筆頭者は、婚姻中の戸籍謄本に従前戸籍として記載されているので、自分でも確認できます。

このパターンが調停離婚における離婚届の原則で、戸籍の希望を相手に何も伝えないと、そのまま離婚届が出されたときは婚姻前の氏と戸籍に戻ります。

2.婚姻前の氏に戻って新しい戸籍を作る

旧姓に戻りますが、自分を筆頭者として新戸籍を作ります。

以前までは、原則どおり旧姓・旧戸籍に戻ってから、改めて新戸籍を作る方法しか認められていませんでしたが、現在では夫婦の戸籍から抜ける側が、離婚届と同時に新戸籍編成を申し出ることが可能になっています。

このとき、離婚届の「婚姻前の氏にもどる者の本籍」欄は、「新しい戸籍をつくる」にチェックして提出するのですが、そのためには本人の申出を必要とします。

しかし、離婚届を出すのは相手ですから、次のような方法をとります。

  • 離婚届のその他欄で新戸籍編成の申出を行う
  • 新戸籍編成の申出書を相手に渡し離婚届に添付してもらう
  • 調停調書に新戸籍編製と新本籍を記載してもらう

離婚届のその他欄(もしくは新戸籍編成の申出書)に書くのは、新戸籍の編成を申し出る旨、新本籍、署名押印です。

3.婚姻中の氏を名乗って新しい戸籍を作る

自分を筆頭者として新戸籍を作りますが、旧姓に戻らず婚姻中の氏を名乗ります(婚氏続称と呼ばれる方法です)。

そのために必要となるのは「離婚の際に称していた氏を称する届」で、自分で記入して相手へ渡し離婚届に添付してもらいます。

離婚の際に称していた氏を称する届があるときは、離婚届の「婚姻前の氏にもどる者の本籍」欄は、何も記入する必要がなくなります。

なお、この届出は離婚から3ヶ月以内なら、離婚届の後でも提出することができます。したがって、何も言わずに相手に離婚届を出させて、とりあえず旧姓・旧戸籍に戻ってから、改めて出すことは可能です。

最も確実な方法は調停調書への記載

ここまで説明してきた3つの選択肢は、いずれであっても自分がどうしたいのか離婚届を出す相手に伝えておくべきですが、伝えない又は伝えても相手が手続せずに、希望しない旧姓・旧戸籍へ戻っても、取り返しの付かないほどではありません。

希望が旧姓・新戸籍なら、旧姓・旧戸籍に戻ってから分籍(ただし筆頭者以外)すれば良く、希望が婚氏続称・新戸籍なら、旧姓・旧戸籍に戻ってから離婚の際に称していた氏を称する届を出せば、希望どおりにはなります。

しかし、絶対に旧姓・旧戸籍へ戻りたくない場合は、離婚届と同時の手続が必須です。相手へ確実に伝えるためには、調停期日を利用するのが合理的でしょう。

その反対で、希望は旧姓・旧戸籍なのに、相手が勝手に新戸籍で離婚届を出してしまうと面倒です。なぜなら、離婚時に新戸籍を編成してしまうと旧戸籍には戻れないからです。離婚時は旧戸籍に戻る唯一のチャンスなのです。

この場合、手続としては錯誤を理由とした戸籍訂正許可審判の申立ても可能ですが、どう考えたって面倒ですよね。

ですから、離婚後の戸籍と氏は、可能な限り調停調書に記載してもらうのがベストですし、それ以前に自分で離婚届を出す方向に調整してみましょう。

離婚届の確認は離婚調停の成立時

離婚調停成立の要件である離婚への合意は、身分関係を決定する重要な位置付けなので、当事者本人による意思の合致を原則としています。

調停成立までの調停期日は弁護士の出席でも、調停成立時は出席が不可能な事情を除き、本人を出席させて確認します。代理人による離婚の合意はできません。

よって、調停が成立する調停期日(つまり最後の調停期日)で、離婚届に必要な戸籍の手続について、相手に意思表明すれば良いでしょう。

旧姓・新戸籍が希望なら、その他欄に記入済みの離婚届を渡し(または申出書を渡し)、婚氏続称・新戸籍が希望なら、離婚の際に称していた氏を称する届を渡します。

まとめ

  • 自分が戸籍から抜ける側なら離婚後の戸籍と氏を調停成立前に決めておく
  • 離婚後の戸籍は旧戸籍か新戸籍、氏は旧姓か婚氏続称から選ぶ
  • 正しく離婚届を記入しないと意図どおりの戸籍にならない
  • 相手が離婚届を出す側なら信用しないほうが良いかも
  • 離婚後の戸籍と氏は調停調書へ記載してもらうのがベスト

なお、離婚届の「婚姻前の氏にもどる者の本籍」欄や、その他欄の記載について知りたければ、「離婚届の書き方~届出日から証人まで全て解説!」も確認してください。

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