子の引渡しの類型~誰がどの手続で請求する?

子の引渡しを求めていく手続には複数あり、請求する人とされる人の組み合わせ(類型)でも変わってきます。そして、類型によっては優先されるべき手続や利用できない手続があって、なかなか面倒なので本記事でまとめました。

まず、誰が誰に請求するかは、請求する側(請求者)と請求される側(被請求者)に関係なく、子の引渡し事件の登場人物として次のように考えられます。

  • 親権者かつ監護者
  • 親権者かつ非監護者
  • 非親権者かつ監護者の親
  • 非親権者かつ非監護者の親
  • 監護者の第三者
  • 非監護者の第三者

次に子の引渡しの手続ですが、次の3つを対象とします。

  • 家事調停または審判
  • 親権または監護権の行使妨害排除請求
  • 人身保護請求

子の引渡しを求める5つの方法」では、上記の他に離婚訴訟の附帯処分と刑事司法の介入も入れています。しかし、離婚訴訟は離婚前の夫婦に限られ、刑事司法の介入は事件性があるときに限られる点から、原則として除いています。

なお、人身保護請求については、虐待や遺棄などからの救済を目的としていれば、利用が制限される手続ではないため、そのような状況下を想定していません。詳しくは別記事にしてあるのでご覧ください。

参考:人身保護請求による子の引渡し

類型1:別居中の夫婦間

親権者かつ監護者と、親権者かつ非監護者の争いです。共同親権を持つ別居中の夫婦は、親権に基づく監護権も共同で持ちますから互いに同等の立場です。

しかしながら、実際に子を監護できるのは一方でしかなく、現に子を監護していない側が子の引渡しを請求するときは、子の監護者の指定を申し立てます。

その理由は、いつまでも共同監護権では解決せず、監護権を切り離すことで、子の監護者に指定された側は、子の引渡しに強い根拠を持つことができるからです。

子を現に監護していない親権者から、子の監護者の指定が申し立てられるとき、自ら監護者を希望して子を監護しない状況は考えられず、子の引渡し請求を含んでいるはずですが、実際には子の引渡しを別途申し立てる運用です。

子の引渡し請求が可能な手続
子の監護者の指定+子の引渡し、人身保護請求、離婚訴訟の附帯処分

人身保護請求については、別居中の夫婦では請求を認めない傾向が強くなっており、元々が夫婦間の問題(家庭問題)であることからも、子の監護者の指定と子の引渡しを申し立てて、家庭裁判所手続を優先するべきです。

家庭裁判所の審判や審判前の保全処分で、子の引渡しが命じられても相手方が従わないときは、違法性が顕著であることから人身保護請求が認められます。

また、婚姻中なので離婚訴訟の附帯処分に子の引渡しを申し立て、離婚の認容判決と共に子の引渡しを命じてもらうことも可能です(人事訴訟法第32条第2項)。

子の監護者が既に指定されている場合

子が自らの意思で監護されている状況を除くと、監護権を持たない親による子の監護が不当な拘束と言えるので、家庭裁判所に監護者として指定された親は、監護権を主張することで正当に子の引渡しを請求できます。

子の引渡し請求に加えて人身保護請求も許され、監護権行使妨害排除請求も可能ですが、妨害排除請求をしなくても、家庭裁判所に指定された監護者に従わないこと自体で顕著な違法性を問うことができるため、人身保護請求で足ります。

子の引渡し請求が可能な手続
子の引渡し、監護権行使妨害排除請求、人身保護請求

そして、監護者指定された親に子を監護させることが、著しく子の不利益にならない限りは、本来の監護親に引き渡されるべきで、裁判所もその方向で動くでしょう。

反対に、家庭裁判所から監護者指定された親が子を監護しているのに、監護権を持たない親が子の引渡しを請求したくても、その請求根拠に正当性がありません。ですから、子の監護者の変更と子の引渡しを申し立てます。

子の引渡し請求が可能な手続
子の監護者の変更+子の引渡し

類型2:離婚後の夫婦間

離婚時は夫婦の一方を親権者と定めなくてはならず、離婚後に必ず単独親権になる制度から、離婚後の夫婦は必ず親権者と非親権者に分かれます。しかし、監護者については、必ずしも定められているとは限りません。

一般には、暗黙のうちに親権者=監護者となるケースが圧倒的で、親権を取ると言えば、子を引き取り監護するのと同義です。しかし、親権者以外の監護者も許されており、親権と監護権を分離分属させることも可能です。

したがって、子の引渡しを請求する過程では、請求者が親権者か非親権者か、なおかつ監護者か非監護者なのかで扱いが変わっていきます。

親権者かつ監護者から非親権者かつ非監護者への請求

親権者かつ監護者であれば、親権からも監護権からも、他方の親に対する正当な権利として子の引渡しを請求できます。ですから、親権者かつ監護者に監護させることが、子の福祉に著しく反しないと、非親権者かつ非監護者の親は対抗できません。

子の引渡し請求が可能な手続
子の引渡し、親権行使妨害排除請求、人身保護請求

無権利者による子の監護なので違法性が高く、いずれの請求も許されるところですが、子に関する事項は家庭裁判所の調停や審判で扱うのが相当です。親権行使妨害排除請求や人身保護請求は、二次的な請求としての利用です。

親権者かつ非監護者から非親権者かつ監護者への請求

親権者であっても非監護者であれば、子の監護に関しては無権利者です。そのため、親権行使妨害排除請求は許されず、子の引渡しを請求する根拠として、子の監護者の変更と子の引渡しを申し立てる必要があります。

子の引渡し請求が可能な手続
子の監護者の変更+子の引渡し

非親権者かつ監護者から親権者かつ非監護者への請求

前述のとおり、親権と監護権が分離分属するとき、親権者に監護権はないとするのが通説です。したがって、非親権者でも監護者なら正当な監護権者として、監護権の妨害排除請求を子の引渡し請求の根拠にできます。

子の引渡し請求が可能な手続
子の引渡し、監護権行使妨害排除請求、人身保護請求

この場合でも、親権者による監護は権限外と扱われ、いずれの請求も許されるところですが、一次的には家庭裁判所の調停や審判を利用し、親権行使妨害排除請求や人身保護請求は、二次的な請求としての利用です。

非親権者かつ非監護者から親権者かつ監護者への請求

無権利者からの請求であるため、親権か監護権による請求根拠を必要とします。手続としては、親権者の変更または子の監護者の変更を前提とします。

子の引渡し請求が可能な手続
親権者の変更+子の引渡し、子の監護者の変更+子の引渡し

親権者の変更または子の監護者の変更が申し立てられると、家庭裁判所は職権で子の引渡しを命ずることはできますが、子の引渡しを別途申し立てることで、確実に子の引渡しを判断してもらうようにします。

類型3:第三者が関係する場合

親と第三者間で子の引渡し請求があるとき、その親に親権があるかどうか、第三者に監護権があるかどうかで変わります。親権がない親と第三者間の争いが想像できないかもしれませんが、単独親権の親権者が亡くなると発生します。

原則的には、生活保持義務を負う親による監護が、子の幸福に必要と考えられていますが、家庭裁判所は何よりも子の福祉を最優先で考えます。親が第三者に子の監護で優先されるとは限らないので注意しましょう。

また、ケースとして少ないとはいえ、第三者同士で子の引渡し請求がされることもあります。不慮の事故などで未成年が両親を失い、その親族が争うような場合です。

親権者から監護者の第三者への請求

監護者が定められているとき、子の監護については監護権が親権よりも優先します。そのため、親権者からの親権行使妨害排除請求は要件を満たさず、親権者は子の監護者の変更を申し立て、併せて子の引渡しを申し立てます。

子の引渡し請求が可能な手続
子の監護者の変更+子の引渡し

親権者から非監護者の第三者への請求

非監護者である第三者が、子の監護にとって完全な部外者のときは、単なる無権利者による不当な子の拘束ですから、将来も監護者にはなり得ない第三者との間では、家庭裁判所手続が馴染まないとされます(家族・親族の問題ではない)。

よって、基本的には民事手続で子の引渡しを求めていきます。

子の引渡し請求が可能な手続
親権行使妨害排除請求、人身保護請求

ただし、親権者による監護では、子にとって有益ではない事情があるなど、親権から監護権を分離分属して、第三者が監護者に指定され得る立場のときは、家庭裁判所手続によって処理できるとも考えられています。

同様の考えかたで、親権者から監護を委託されている第三者が相手方のときは、子の福祉に配慮すると、後見的機能を持った家庭裁判所が関与すべきで、これらのケースでは、子の引渡し調停または審判を申し立てるのが相当です。

非親権者の親から第三者への請求

親権者が生存しているのに、非親権者の親から第三者へ子の引渡しが請求される状況は考えにくく、離婚後に親権者が亡くなった場合や、認知された非嫡出子の親権者が亡くなった場合を前提とします。

単独親権の親権者が亡くなっても、非親権者の親が自動的に親権者になることはなく、未成年後見人が家庭裁判所に選任され、未成年後見人が親権を行使します。

多くの場合、親権者が亡くなると祖父母などの親族が子を引き取って監護しているため、そのままでは祖父または祖母が未成年後見人になるでしょう。

非親権者の親は親権者の変更を申し立て、家庭裁判所の許可を得ることで、親権者かつ監護者として子の引渡し請求をする流れです。

子の引渡し請求が可能な手続
親権者の変更+子の引渡し

子の監護者の指定も可能ですが、親であれば親権者の変更を申し立てるでしょうし、子の監護をしない親族の未成年後見人も現実的ではありません。

親権者の変更は、事情と子の福祉を考慮して許可の当否が決まるので、唯一の親でも無制限に許可されるものではなく、実際にも非親権者の親からの親権者変更の申立てに対し、未成年後見制度を活用すべきとした判例があります。

また、親権者の変更申立てが、未成年後見人の選任前と選任後のどちらでされるべきか見解は分かれますが、実務上はどちらでも可能とされています。

第三者から非親権者の親への請求

第三者が親権者に子の引渡しを請求するとすれば、親権者による監護が著しく子の不利益になる場合で、この場合は人身保護請求が認められるでしょう。

したがって、第三者から親権者への請求は限定的で、ここでは非親権者の親を前提とします。監護者でもある単独親権者が亡くなって、その親族が子を監護していたところ、非親権者の親が子を連れ去ったようなケースです。

親権者が不在の状況ですから、第三者は自らを候補者として未成年後見人の選任申立てを行い、親権行使の権利を得てから子の引渡しを請求します。

子の引渡し請求が可能な手続
未成年後見人の選任+子の引渡し

当然ながら、相手方となる非親権者の親は、親権者の変更を申し立てて対抗するので、子のために第三者を未成年後見人とするか、非親権者を親権者に変更するか、家庭裁判所がその判断を示すことになります。

第三者間での請求

第三者間での子の引渡し請求は、両親ともに死亡し、双方の親族が子を奪い合うかたちで起こります。共に非親権者かつ無権利者同士での争いになるため、子の引渡しに根拠を持たせるためには、未成年後見人として選任されなくてはなりません。

このケースでは、どちらの親族が未成年後見人として選任されるかで全てが決まり、双方が自らを候補者として未成年後見人の選任申立てをするでしょう。

子の引渡し請求が可能な手続
未成年後見人の選任+子の引渡し

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