年金分割の争いは審判なら自分の住所地でも可能?

年金分割調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所に申し立てるのが原則です(家事事件手続法第245条第1項)。

また、年金分割審判は、申立人または相手方の住所地のどちらにも申し立てられます(家事事件手続法第233条第1項)。

そして、年金分割の争いは別表第2事件に該当し、別表第2事件は調停と審判のどちらも申立てが可能です。

これらを整理してみましょう。

  • 年金分割調停は相手方の住所地または合意した家庭裁判所
  • 年金分割審判は申立人または相手方の住所地の家庭裁判所
  • 年金分割の争いは別表第2事件
  • 別表第2事件は調停と審判のどちらも申し立てられる

もうお気づきかと思いますが、年金分割の争いは、調停ではなく審判から申し立てる場合、申立人の住所地でも手続可能だということです。

夫婦は離婚後に別居するのが普通なので、自分と相手の住所地が離れていることも多く、自分の住所地で審判手続を進められるメリットは大きいのではないでしょうか。

審判は調停に付されることがある

別表第2事件は、調停と審判のどちらも申し立てられると説明しましたが、審判を申し立てても、すんなりと審判手続が進むとは限りません。

家庭裁判所には、審判を調停に付す(付調停)職権があり、審判から申し立てても調停をさせることができるからです(家事事件手続法第274条第1項)。

家事事件手続法 第二百七十四条第一項

第二百四十四条の規定により調停を行うことができる事件についての訴訟又は家事審判事件が係属している場合には、裁判所は、当事者(本案について被告又は相手方の陳述がされる前にあっては、原告又は申立人に限る。)の意見を聴いて、いつでも、職権で、事件を家事調停に付することができる。

では、自分の住所地で年金分割審判を申し立て、家庭裁判所が調停に付したとき、管轄の家庭裁判所はどこになるのでしょうか?

付調停による調停の管轄

付調停による調停は、管轄の家庭裁判所に処理させなければなりません(家事事件手続法第274条第2項、特に必要があると認めるときを除く)。

その管轄は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です(調停の管轄規定に従い、本案審判が係属する家庭裁判所と同一とは限らない)。

一方で、調停に付するときは、自ら調停事件を処理すること(いわゆる自庁処理)も可能とされています(家事事件手続法第274条第3項)。

まとめると、

  • 審判の申立てが付調停になると相手方の住所地で調停(原則)
  • 特に必要があると認めるときは管轄外でも付調停による調停が可能
  • 付調停による調停は自庁処理も可能

となります。

つまり、特に必要があると認めてもらうか、自庁処理の上申が認められれば(どちらも同じようなことですが)、付調停による調停を自分の住所地でできるということですね。

付調停は当事者への意見聴取がある

家庭裁判所が審判の申立てを付調停にする理由は、当事者の話合いによる自主的な解決を期待しているからです。

しかし、当事者が調停に参加しない(できない)ケースや、話し合う意思がないケースは、調停しても成立しないので意味がありません。

また、調停ではなく審判を申し立てた申立人には、審判で解決したい期待があり、付調停はそれを裏切る形にもなってしまいます。

ですから、当事者の意見を聴いたうえで付調停となるのですが、調停を望まないならその旨を、調停に応じるとしても自分の住所地を希望するならその旨を、理由と共に家庭裁判所へ伝えれば良いでしょう。

特に、按分割合を上限の50%から譲る気がない場合は、付調停に応じない姿勢を見せて、審判による決着を目指したいところです。

なぜなら、家庭裁判所手続における年金分割の按分割合は、ほとんどが50%で決められるからです。

参考:年金分割の按分割合(分割割合)は原則50%

この傾向は、調停でも審判でも変わりませんが、按分割合を譲る気がないのに、付調停を経由して時間を無駄にする必要はないでしょう。

まとめ

  • 年金分割審判は申立人の住所地で申立てできる
  • 審判は家庭裁判所の職権で調停から始めることもある(付調停)
  • 付調停になっても自庁処理してもらえる可能性がある
  • 付調停には意見聴取があるので調停に応じない意見表明は可能

このように、審判から申し立てて、付調停に自庁処理を求めるか付調停に応じなければ、申立人の住所地で手続を進められる公算は大きいと思われます。

ただし、当事者が遠隔地同士の場合、テレビ会議システムの利用も進められていますから、場所にこだわる理由はそれほど無いのかもしれません。

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