年金分割の按分割合(分割割合)は原則50%

年金分割の合意分割では、年金分割のための情報通知書に記載されている按分割合(分割割合のことです)の下限から上限50%までの間で、当事者が自由に決められます。

したがって、按分割合に合意が得られている限り、不平等であっても問題はなく、必ずしも上限の50%を強制されるわけではありません。

ところが、家庭裁判所の調停・審判・判決によって決まる場合、圧倒的に按分割合を50%とするケースが多いです。

調停・審判による按分割合の取決状況

令和元年度の司法統計から、按分割合の取決状況を拾ってみました。

 総数50%~40%40%未満
離婚調停・調停に代わる審判8,0648,0113518
年金分割調停753719277
年金分割審判1,5741,56851
合計10,39110,2986726
総数に対する比率100%99.1%0.6%0.2%
※データ:令和元年度司法統計
※離婚調停には協議離婚届出の成立を含む

実に全体の99.1%が、按分割合50%で決まっています。

これは、令和元年度が特殊なのではなく、平成30年度は98.9%(総数10,902件)、平成29年度は98.8%(総数11,217件)ですから、約99%は按分割合50%だということです。

このように、家庭裁判所では、按分割合50%を基本的な運用としています。

年金分割と財産分与は似て非なるもの

離婚する当事者にとっては、離婚原因への有責性が離婚条件に大きな比重を占めます。以前まで、女性(特に専業主婦)に対する財産分与の割合は低かったのですが、徐々に均衡が進み現在では基本的に50%です。

ただし、財産形成に対する夫婦の貢献度が著しく乖離していれば、財産形成への寄与分を認め、夫婦が不平等になることは良くあります。

元々、財産分与は当事者の協議で自由に分与割合を変えられるものですし、夫婦の一切の事情を考慮して行われますから、不平等な分与でも法的な制限はありません(過当な財産分与は贈与税の対象になります)。

また、扶養的財産分与慰謝料的財産分与の存在が認められているように、離婚後の所得保障や離婚の有責性への賠償といった用途で、50%を超えた財産分与をすることも認められています。

年金は社会保障制度の一環

厚生年金の保険料も、夫婦の収入から納付されているのであれば、財産分与と同様に任意での分割を認めても良いように思えますが、年金というのは、将来に向けた所得保障で社会保障制度の一環です。

また、保険料を決める標準報酬には上限があり、いくら高収入でも公的年金が莫大な金額になることはありません。

保険料の納付によって、一定の範囲で老後の所得保障を積み上げていく公的年金制度の性質から、夫婦の平等性と所得保障という両面で、按分割合は50%になることが多いです。

保険料の納付実績=将来の年金額となる以上、その財産性を考慮すれば、強制的に50%の分割とするよりも、当事者に按分割合を決める余地が残されているのは、財産分与など他の事情との調整ができる点で優れていると個人的には感じます。

つまり、将来の年金受給より現存する財産を優先するなら、財産分与を多くして年金分割をしない選択も可能ですし、一時金の支払いを年金分割の代わりにすることも可能だということです。

したがって、按分割合が50%を下回ったとしても、当事者間で十分な合意があれば、公序良俗に反しない限り問題ありません。

なお、家庭裁判所が按分割合を定める場合、当事者の寄与の程度その他一切の事情を考慮することになっていますが(厚生年金保険法第78条の2第2項)、一切の事情を他で解決できる場合は、按分割合50%が優先されるようです。

例えば、離婚に有責性があったとしても、賠償するとしたら慰謝料や財産分与で行われるべきで、按分割合を50%としない事情にはあたらないと考えられています。

按分割合を50%にしたければ調停を申し立てるべき

言うまでもなく、年金分割調停を申し立てるのは厚生年金や共済年金の納付実績が少なく、将来受給できる年金が少ない側なので、按分割合の請求は上限の50%が多くなります。

そして、家庭裁判所は年金分割について原則50%での運用をしていることから、申立人に重大な非が無ければ、50%になるように話合いを進めます。

これは、ある意味で申立人の後ろ盾として家庭裁判所が存在するように思えますが、年金という社会保障制度を考えれば、按分割合が50%になっても仕方がないでしょう。

逆に考えると、按分割合を50%にしたいのであれば、年金分割調停を積極的に利用するべきだとも言えます。

年金分割調停は審判になりやすい

年金分割調停では、はっきりした争点(按分割合)があり、その範囲も年金分割のための情報通知書から明確です。

離婚調停に付随して、按分割合の請求が申し立てられる場合では、他の条件での調整もあり得ますが、単独の申立てでは譲歩の余地がありません。

よって、簡単には合意形成ができず、調停不成立となって審判に移行し、審判で50%の按分割合とされることになるでしょう。

もしくは、調停の段階で調停委員から按分割合は50%が原則だと聞かされて、渋々納得して調停成立になるパターンも当然あります。

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