調停と裁判の決定的な違いはここだ!

調停も裁判(訴訟の意味、以下同じ)も、裁判所で争い終わらせるために用意された制度であることに代わりはありません。この二つの制度で決定的に違うのは、調停では当事者が「自分たちで決める」のに対し、裁判では裁判官に「決めてもらう」ことです。

この「自分たちで決める」と「決めてもらう」違いは、そのまま手続の進め方にも影響してきます。そして、調停は事件を解決する最終手続ではなく、裁判を利用しなくても争いが解決できるように設けられた手続です。

ただし、調停を甘く見ると怪我の元で、調停でも裁判でも決まったことが法的な拘束力を持つのは変わりません。したがって、いくら調停が裁判と違うといっても、軽く考えて調停に臨むのは間違っています。

まずは、このページのテーマでもある、違う点から確認していきましょう。

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調停は合意を前提にしている

裁判というのは、訴える原告と訴えられる被告に分かれて、それぞれの主張や証拠から、裁判所が法的な側面から判断を下すものです。

もちろん、判決を待たずに和解し、訴えが取り下げられることもありますが、基本的には判決を得るために訴えを起こすのが当たり前です。

裁判で判決が出てしまえば、敗訴した側は本人の気持ちがどうであろうと、上訴して認められないかぎりは確定した判決に従わなければなりません。

一方、調停は話合いなので、合意があって初めて何かが決まります。逆にいうと、合意がなければ何も決まらないのが調停です。

調停は自発的な解決を望む制度

調停が合意を前提として、当事者に拒否できる仕組みが用意されているのは、調停が話合いによる手続であることを端的に意味しています。

それゆえに、調停は裁判所に判断してもらう制度ではなく、あくまでも自発的な解決を望む場合に機能する制度です。

逆に言うと、争ってばかりで何も譲歩するつもりがない当事者には、調停が何の意味も持ちません。しかし、争い全体の中では、全てが正反対の主張で、ひとつも合意がないのはそれほど多くないでしょう。

一部の決まったことは調停調書として残し、決まっていないことは改めて調停を申し立てて話合いを続けることもできますし、とても決まりそうにないなら裁判に委ねる方法もあります(家事事件の別表第2事件は自動的に審判へ移行します)。

自由度が高く柔軟である点は、裁判官に決められてしまう裁判よりも、日常的なトラブルにおいては有効に作用します。

手続上の違いもある

調停は申立書を提出すること、裁判は訴状を提出することで手続が開始されます。その他にも、調停は費用が安い、調停は調停室で行われるが裁判は法廷で行われるなど、手続上における違いもあります。

ただし、これらの違いは、調停を利用する過程において生じるもので、調停と裁判で決定的と呼べるほどの大きな違いではないでしょう。

大きな違いとなるのは次の点です。

調停は非公開で行われる

調停室で行われる調停は、傍聴人などおらず非公開で行われます。

調停が非公開で行われるのは、家事調停のようにプライベートな内容を扱う以外にも、争いの解決に向けて当事者の自由な発言を促し、平和的解決を目指そうとする趣旨からで、率直な意見交換を求めているからです。

もちろん、同席する調停委員は守秘義務を負いますので、当事者の発言が外部に漏れる心配はありません(調停委員に正常なモラルがあればですが)。

調停には不服申立てがない

裁判では上訴することで不服を申し立てられるのに対し、調停では決まった事柄に対する不服申立ての制度がありません。

これは考えてみれば当たり前の話で、調停で決まるのは合意があった内容だけですから、不服が生じる余地はないからです。

もっとも、内心は不服があって、しぶしぶ合意するという状況はあるでしょう。どうしても不服なら最初から合意しなければ良く、本人の意思で合意する以上は、不服申立てが否定されるということです。

また、調停で合意が得られなければ、不成立になって終わるだけに過ぎず、裁判所は何の判断も示さないので、不服申立ての対象がありません。

調停に裁判官は同席しない

調停で直接話し合う相手は、裁判官ではなく調停委員です。裁判と違って、裁判官の面前で主張する口頭弁論のような手続はありません。

しかし、調停を運用する調停委員会は、裁判官と調停委員2人以上で組織されますから、どのような調停でも裁判官は必ず存在します。

では、調停で裁判官が何をするかというと、調停の進行に必要があれば調停委員との評議を行い、調停の運営に対して必要な指示をします。

最終的には、調停で合意があった内容を当事者に確認した上で、調停成立を宣言します。または、調停で合意が得られず、調停を続けても無意味な状況になれば、裁判官が調停の不成立を宣言して調停は終わります。

したがって、調停での裁判官は、初回の調停で手続説明をする以外に、調停の最後まで登場しないのが通常です(裁判官が行う調停もあります)。

調停は最終手続ではない

調停が、当事者の合意を取り入れた柔軟な手続であること以外にも、争いを解決する最終手続ではない点で裁判とは異なり、調停で決まらなければ、裁判(家事事件の別表第2事件は審判)で決着します。

調停が合意による成立であることは、裁判における和解をイメージさせますが、調停で合意が得られなくても不成立になって終了するのに対し、裁判は最終手続なので和解できなければ判決が出されます。

  • 調停成立→終了
  • 調停不成立→裁判→終了(訴えを提起できる家事事件と民事事件)
  • 調停不成立→審判→終了(家事事件の別表第2事件)

このように二段階の手続になっていると、手続が簡便な調停の段階で、ある程度の争いは解決できるメリットがあります。後に裁判や審判が残されているからと調停をないがしろにせず、争いの一部だけでも調停で決めておくべきでしょう。

その理由は、裁判よりも調停のほうが、費用も労力も小さくて済むので、裁判までもつれて長く争うよりも精神的に楽だからです。

調停と裁判が同じ点:法的な効力

裁判での判決が確定すると、法的な効力を持つことは言うまでもありません。調停で話し合われて決められた事柄も、調停調書に記載され、確定判決(家事事件の別表第2事件は確定審判)と同じ効力を持っています。

手続き得られる結果結果を決める人
裁判確定した判決裁判官
調停調停調書(効力は確定判決)当事者

むしろ、合意の上で決められる調停のほうが、人によっては望ましいのではないでしょうか。

しかも、調停の場合には「合意した内容のみ」が調停調書に記載されるのであって、どうしても不服なら合意しないという選択肢があります。

合意しない事柄については、調停調書に記載されず当然に効力を生じませんが、裁判で確定した判決は不服があっても効力を持っています。

なお、調停で合意した内容と、裁判で裁判官から下された判決が、同じ効力であることを軽く考えてはいけません。たかが話合いだからといって、調停後に約束を反故にすると、相手は強制執行手続ができるからです。

参考:調停で決まったことを守らないとどうなる?

あとがき

制度としては全く異なる調停と裁判ですが、得られる結果で効力が同じだという点は、調停に参加する上でとても重要です。

証拠と裁判官の心証で、一刀両断的に判決が出される裁判と違い、調停では合意した部分だけを判決と同じ効力にできる当事者の裁量があります。

確かに、調停を経由した裁判は二度手間になって、早く解決したい当事者にとっては面倒だと感じるかもしれません。

最初から話し合うつもりがなければ、調停を拒絶し続けて裁判に持ち込むことはできますし、裁判官に決められる判決よりも、自分で決める調停があることは、多くの人にとって有意義であるはずです。

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