年金分割の方法は合意分割と3号分割の2種類ある

年金分割の方法には、合意分割と3号分割という2種類の異なる分割方法があります。異なるといっても、婚姻期間における厚生年金(共済年金)の納付記録を分割することには変わりありません。

合意分割と3号分割は、大まかに次のような違いです。

合意分割
夫婦が最大2分の1で分割の割合(按分割合といいます)を決めます。夫婦で決められないときは、年金分割調停・審判を申し立てて按分割合が決まります。
※離婚前なら離婚調停や離婚訴訟で決まります。

参考:年金分割の合意分割とは

3号分割
平成20年4月1日以降で、夫婦の一方が厚生年金(共済年金)の被扶養配偶者だった場合に、その期間を相手の合意なく2分の1で分割します。

参考:年金分割の3号分割とは

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分割方法を詳しく知る必要はない

合意分割と3号分割は異なる制度ですし、3号分割には期間の制限があります。それでも、合意分割と3号分割の詳細まで意識する必要はそれほどないでしょう。

なぜなら、3号分割の対象期間(被扶養配偶者だった期間)は3号分割で分割しますし、3号分割できない期間が含まれるときは合意分割しか選べないからです。

婚姻期間のうち全期間を分割一部期間だけ分割
全期間が合意分割の対象合意分割×
一部期間だけ3号分割の対象合意分割3号分割
全期間が3号分割の対象3号分割×

つまり、合意分割と3号分割のどちらかを選ぶというよりも、年金分割したい期間と被扶養配偶者だった期間によって、合意分割か3号分割は必然的に決まるということです。

どのような場合に、合意分割と3号分割が選ばれるのかは、最後のほうで事例を示しているので参考にしてください。

3号分割は合意分割よりも優先される

合意分割を年金事務所や共済組合に請求するとき、婚姻期間中に3号分割の対象になる期間が含まれていると、3号分割の請求もあったとみなされる扱いです。

その場合、先に3号分割がされ、3号分割した結果に対して全期間を按分割合に応じて分割します。

結局のところ、3号分割の期間が含まれていても含まれていなくても、合意分割の期間がある限りは夫婦で決めた(または家庭裁判所手続で決まった)按分割合で分割されるということです。

したがって、合意分割と3号分割の詳細まで知っていたところで、年金分割の結果は変わりません。それでも、年金分割制度への理解を深めてもらう目的で、当サイトでは多くの解説記事を用意しています。

ただし、婚姻中の全期間が3号分割の対象になる場合は、協議すら必要なく請求があれば2分の1で分割されます。また、相手と話もしたくなければ一部期間の3号分割だけして、他の期間は分割しないという選択肢もあるでしょう。

こうしたケースまで考えると、合意分割と3号分割の違いについては、一応の理解をしておく必要はあるのかもしれませんね。

年金分割調停ができるのは合意分割だけ

夫婦で按分割合を決める合意分割では、年金額の増減に直結するだけに、按分割合で争うこともあります。

とりわけ、老後の経済不安を抱える人(その多くは婚姻中に扶養されていた妻です)にとって、按分割合は最大の2分の1で譲れないでしょう。

夫婦で按分割合の協議が調わなければ、離婚前なら離婚調停の付随申立てで話し合い、離婚後なら年金分割調停を申し立てて話し合います。

しかし、3号分割は手続(標準報酬改定請求)さえすれば、強制的に2分の1で分割されるため、話し合う意味もない年金分割調停は申し立てることができません。

また、そもそも年金分割の対象になる期間がない(夫婦のどちらも婚姻中に厚生年金や共済年金へ加入していなかった)場合は、当然に年金分割調停を申し立てることができません。

ケース別の年金分割方法

他の記事でも説明しているので重複しますが、ケース別の年金分割方法を説明しておきます。合意分割と3号分割の選択をイメージしてみてください。

ケース1:夫婦の一方が婚姻から離婚まで扶養されていた

夫婦の一方が厚生年金(共済年金)へ加入しており、他方が扶養されていたなら、3号分割の対象期間しかなく3号分割です。
ただし、3号分割は平成20年4月1日以降と決まっており、婚姻期間に平成20年3月以前が含まれるときは合意分割になります。
その場合でも、平成20年4月1日以降だけ分割するときは3号分割できます。

ケース2:婚姻当初は共働きだったが出産で退職して扶養になった

これが一番多いケースかもしれません。
出産までの共働き期間は合意分割、退職後は扶養なので3号分割(平成20年4月1日以降に限る)になります。
婚姻期間の全体を分割するときは合意分割、退職から離婚までの期間だけ分割するときは3号分割です。

ケース3:婚姻当初は扶養になっていたが育児が終わって働き始めた

ケース2の逆パターンなのでこちらも多そうです。
働く前の扶養されていた期間は3号分割(平成20年4月1日以降に限る)ですが、働き始めてから離婚までは合意分割です。
婚姻期間の全体を分割するときは合意分割、婚姻から働き始めるまでの期間だけ分割するときは3号分割です。

ケース4:婚姻から離婚まで共働きだった

夫婦のいずれも厚生年金(共済年金)に加入していたなら、扶養されていた期間がないので合意分割です。
繰り返しになりますが、夫婦のいずれも厚生年金(共済年金)に加入した期間がなければ年金分割はできません。

ケース5:出産育児で一時的に扶養だったが残りは共働き

一時的に扶養だった期間は3号分割(平成20年4月1日以降に限る)、残りの期間は合意分割です。
婚姻期間の全体を分割するときは合意分割、一時的に扶養だった期間だけ分割するときは3号分割です。

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