離婚には、協議離婚、調停離婚、審判離婚、和解離婚、認諾離婚、判決離婚の6種類があります。
これら6種類の離婚方法は、全てが任意に選べるものではなく、離婚成立までの流れで決まりますし、どの離婚方法でも離婚には変わらないので、あえて覚えるほどではありません。
ただ、離婚の種類を知っておくと、自分が現在置かれている状況に対して、どのような離婚方法が残されているのか把握できるでしょう。
6種類の離婚のほかに「裁判離婚」という呼び方があります。一般的に裁判離婚とは、家庭裁判所手続で離婚した場合の総称ですが、裁判離婚の定義はあいまいで下記のいずれでも使われます。
- ①判決離婚のみを裁判離婚とする
- ②審判離婚、判決離婚の2つを裁判離婚とする
- ③和解離婚、認諾離婚、判決離婚の3つを裁判離婚とする
- ④審判離婚、和解離婚、認諾離婚、判決離婚の4つを裁判離婚とする
- ⑤調停離婚、審判離婚、和解離婚、認諾離婚、判決離婚の5つを裁判離婚とする
離婚の種類と離婚までの流れ
6種類の離婚は、次のような流れになります。オレンジの枠が離婚成立のタイミングです。
協議離婚とそれ以外の離婚では、離婚成立のタイミングが異なるとわかるでしょうか。
以降、それぞれの離婚方法について解説します。
協議離婚:夫婦の離婚合意と離婚届による離婚
離婚全体のうち、約9割は協議離婚です(2021年は86.4%)。
協議離婚は、家庭裁判所が関与しない唯一の離婚方法で、夫婦の双方に離婚意思と離婚を届け出る意思があれば、離婚の理由は問われません。
協議離婚では、役所に離婚の届出があり、戸籍事務管掌者(市区町村長、実際には役所の戸籍担当)が、離婚届の記載を適法だと認めて受理したときに離婚が成立します。
民法上、離婚の届出は、当事者双方と証人2人の口頭による方法も可能ですが(民法第764条による同法第739条の準用)、離婚届を書けない事情がなければ離婚届を提出して届け出るでしょう。
協議離婚の離婚届は記載が適法なら受理される
協議離婚では、離婚届の受理が成立の要件であるため、受理に対する役所の審査は厳格に行われるように思えます。ところが、実際には離婚届に記載上の不備がなければあっけなく受理されます。
本来は、夫婦の離婚意思を要件とするのですが、届出のあった夫婦双方を役所に呼び出し、わざわざ離婚意思を確認するような手順はないのです。
戸籍法の改正によって、市区町村長は、必要があれば届出人その他の関係者に対して、質問または文書提出を要求できることが明文化されました(戸籍法第27条の3)。
ただし、この規定を設けるにあたっては、調査(審査)権の行使が、従来から行うことができる範囲内にとどまるものであって、範囲が拡大されるものではないとされています。
つまり、記載に不備がなく、疑義が生じない離婚届において、両当事者の離婚意思を積極的に確認するような運用ではないということです。
したがって、離婚届の記載から不適法だと判断できる明確な状況がなければ、基本的に離婚届は受理されて離婚が成立します。また、不適法な離婚届が受理されたとしても、離婚の効力は失われません(民法第765条第2項)。
本人の離婚意思と無関係に離婚届が出された場合
無断で出された、偽造された、脅されて書かされたなど、一方の離婚意思を欠く虚偽の離婚届であっても、一旦役所で受理されてしまうと無効なはずの離婚でも成立します。
このとき、離婚の無効を訴えるには、離婚届を受理した役所ではなく、家庭裁判所に協議離婚無効確認調停を申し立てます。協議離婚は、以下でも解説しているので参考にしてください。
参考:協議離婚制度
調停離婚:離婚調停の成立による離婚
離婚の協議が夫婦でまとまらない、もしくは協議にならない状況なら、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができます。
離婚調停は、離婚訴訟と違い家庭裁判所が離婚を判断する手続きではありません。離婚協議の場を家庭裁判所に移して、第三者の調停委員が間に入り話し合う手続きです。
離婚調停で夫婦が離婚に合意すると、調停が成立して調停離婚となります。調停離婚は、離婚全体のうち9%程度です(2021年は9.2%)。
具体的には、離婚調停での合意内容を当事者に確認した上で、裁判官が調停成立を宣言し、家庭裁判所書記官が調停調書を作成して離婚が成立します。
離婚調停で離婚に合意しない場合
離婚調停において、離婚を決めるのは当事者の夫婦ですから、離婚したくない側が離婚調停での話し合いに合意しないだけで、調停は不成立になります。
×協議離婚 ⇒ ×離婚調停
と来ましたので、残る離婚方法は4種類です。
審判離婚:調停に代わる審判による離婚
離婚調停の成立が難しい状況において、家庭裁判所が相当と認めれば、調停に代わる審判をすることが可能になっています(家事事件手続法第284条)。
調停に代わる審判は、大筋で離婚には合意しているのに、小さな食い違いで話し合いがまとまらない場合や、子の生活の安定から早急な解決が求められる場合など、限定的なケースでしかされません。
当事者が話し合う調停とは違い、調停に代わる審判は家庭裁判所が判断を示すものです。
ただし、離婚調停での話し合いを踏まえ、この条件で離婚したら良いのではないかという一種の提案であって、家庭裁判所が審判に従わせようとする性質ではない特殊性を持っています。
そして、調停に代わる審判を夫婦が受け入れ、審判が確定すると審判離婚となります。審判離婚は年々増加傾向です(2021年は1.9%)。
調停に代わる審判に異議が申し立てられた場合
通常、審判に不服があるときは、即時抗告の手続き(つまり高等裁判所での抗告審)となりますが、調停に代わる審判には、前述のとおり家庭裁判所からの提案のような性質があるため、適法な異議申し立てにより直ちに審判が失効します。
×協議離婚 ⇒ ×離婚調停 ⇒ ×審判離婚
そうすると、残る離婚方法は3つ、和解離婚、認諾離婚、判決離婚です。
これらは、いずれも離婚訴訟による離婚方法なので、離婚調停でも調停に代わる審判でも離婚できない場合、離婚訴訟を起こすしかありません。
つまり、調停に代わる審判は離婚訴訟をせずに離婚できる最後のチャンスなのです。
この時点まで離婚がもつれるようなら、弁護士の活用を考えてみるべきでしょう。離婚調停は弁護士なしでも十分可能ですが、離婚訴訟は弁護士の助けを借りたほうが無難です。
参考:調停と弁護士
離婚訴訟による和解離婚・認諾離婚・判決離婚
離婚調停(または調停に代わる審判)で離婚できず、離婚したい側が離婚請求の訴えを提起すると、離婚訴訟となって最終的には離婚に何らかの決着が付くことになります。
離婚訴訟は、離婚に向けた最終手続なので、離婚を請求する原告・離婚を請求される被告、いずれの立場でも全力で争わなくてはなりません。
以下、離婚訴訟における離婚方法の解説です。
和解離婚:離婚訴訟上の和解による離婚
離婚訴訟の判決前に原告と被告が和解して(離婚の合意をして)離婚する方法です。和解によって和解調書が作成された時点で離婚が成立します。
ただし、この場合の和解とは訴訟上でされる和解のことで、訴訟外で任意にされる和解(和解調書が作成されない和解)は、結局のところ協議離婚なので注意してください。
和解離婚は、2004年(平成16年)から認められた比較的新しい離婚方法ですが、離婚全体の1.5%程度で推移しています(2021年は1.5%)。
認諾離婚:離婚訴訟で請求を認諾した場合の離婚
請求の認諾とは、相手の請求を全面的に認めること、つまり、原告の離婚請求を認めて、被告が離婚に合意することを意味します。請求を認諾すると認諾調書が作成され、その時点で離婚が成立します。
請求の認諾には例外があり、子の監護に関する処分(養育費など)、財産分与、年金分割について、附帯処分の申立てがあるとき、または親権者の指定が必要なときは、認諾できないと定められています(人事訴訟法第37条第1項)。
認諾離婚は、和解離婚と同様に2004年(平成16年)から認められた離婚方法です。しかし、その実数は極めて少なく、最も多かったのは2010年の30件しかありません(2021年は8件)。
判決離婚:離婚訴訟での認容判決による離婚
離婚訴訟で、認容判決(原告の離婚請求を認める判決)が言い渡され、その認容判決が確定したときは離婚が成立します。
判決への不服は上訴して争うことが可能なため、判決が言い渡されただけでは離婚が成立せず、判決の確定が必須です。
判決離婚は、離婚全体の1%程度で推移しています(2021年は1.1%)。
離婚の種類にかかわらず離婚届は必要
協議離婚以外の離婚では、調停調書の作成、審判の確定、和解調書の作成、認諾調書の作成、判決の確定によって既に離婚は成立していますが、戸籍の変更を要するため離婚届を出します。
どの離婚方法でも、離婚が成立する点に変わりはなく、違うとすれば戸籍の記載です。
例えば、離婚後の戸籍謄本を確認すると、協議離婚では【離婚日】と記載されているのに対し、調停離婚では【離婚の調停成立日】と記載されています。
さらに、協議離婚以外の離婚方法では、家庭裁判所が交付する次の文書を添付します。また、離婚届の届出人は1人になり、離婚相手の署名(押印は任意)を必要としません。
協議離婚以外で離婚届に添付する文書
- 調停離婚の場合:調停調書謄本
- 審判離婚の場合:審判書謄本と確定証明書
- 和解離婚の場合:和解調書謄本
- 認諾離婚の場合:認諾調書謄本
- 判決離婚の場合:判決謄本と確定証明書
離婚届をいつまでも出さないと過料制裁?
協議離婚以外の離婚届は、調停の成立、審判の確定、和解の成立、請求の認諾、判決の確定から10日以内に出さなければなりません(戸籍法第77条第1項による同法第63条の準用)。
既に離婚は成立しているからと甘く見て離婚届を出さないと、簡易裁判所で5万円以下の過料に処される規定があります(戸籍法第135条、同法第138条)。
過料制裁は実行されていると思えませんが、過料制裁の規定がある以上、離婚届は速やかに出しておくべきでしょう。
また、過料制裁がなくても、遅れると戸籍届出期間経過通知書(遅れた理由を書く用紙)を書かされ、簡易裁判所に送付される扱いなので、面倒でも離婚届はきちんと10日以内に出すべきです。
まとめ:離婚の種類
- 協議離婚、調停離婚、審判離婚、和解離婚、認諾離婚、判決離婚の6種類がある
- 協議離婚以外は家庭裁判所が関与する
- 協議離婚は離婚届で成立、協議離婚以外は離婚が成立してから離婚届
- 協議離婚以外は1人で離婚届を出すことができる