協議離婚とは?今さらですがおさらいです

夫婦の合意と、役所への離婚届で成立する離婚が協議離婚です。協議離婚をすること自体に費用は必要なく、離婚届を出すことができるかどうかがカギです。

離婚届を出すだけの簡便な手続による離婚は、協議離婚だけに許されており、他の離婚方法では必ず家庭裁判所が関与して期間も長くかかります。ですから、夫婦が冷静に話し合える状態なら、協議離婚で離婚するのが最も労力は小さく、実際にもほとんどの夫婦が協議離婚を選びます。

裁判所の関与を伴う諸外国の離婚制度と異なり、日本の協議離婚制度は離婚を当事者の自由にしているとも言えますが、その反面、協議離婚には問題も残るので、後半で触れていきたいと思います。

まずは、法律で協議離婚がどのように規定されているのか、協議離婚にはどのような制約があるのか確認しましょう。

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協議離婚と民法の規定

協議離婚を認めている法律は、民法第763条です。

民法 第763条
夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。

離婚するかどうかは、夫婦の協議(合意)によるものなので、協議離婚では離婚理由が一切問われず、離婚のタイミングも夫婦が自由に決められます。

そして、協議離婚は離婚を届け出る(離婚届を出す)ことによって、効力が生じることになっています(民法第764条による同法第739条の準用)。逆に言うと、離婚を届け出なければ(離婚届を出さなければ)、法律上は協議離婚にならないということです。

また、協議離婚にはもうひとつ重要な規定があり、未成年の子がいると親権者を一方に定めなくてはなりません(民法第819条第1項)。

民法 第819条第1項
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。

協議で定められた親権者は、離婚届に記入する欄があり、その記載がないと(役所の確認ミスがない限り)離婚届は受け取ってもらえず、離婚も成立しない扱いです。

ここでは離婚届を説明しないので、詳しくは以下を参考にしてみてください。

参考:離婚届の用紙ダウンロードと書き方・必要書類など

協議離婚が成立するためには

離婚届によって協議離婚の効力が生じるとはいえ、離婚届さえ出せば、協議離婚の効力が直ちに発生するかというと、それは2つの意味で正しくありません。

1つ目は、離婚の届出(離婚届の提出)がされても、役所が受理しなければ協議離婚は成立しない扱いです。届け出るという行為で成立するのではなく、役所が離婚届に不備がないと審査した上で、受理決定により協議離婚が成立します。

届け出る行為だけで協議離婚が成立してしまうなら、何を書いた離婚届でも成立してしまうので、これはわかりやすいですね。つまり、役所が離婚届を受け取った時点でも協議離婚はまだ成立しておらず、審査後に受理されて成立するわけです。

2つ目のほうが重要で、協議離婚が「有効に」成立するためには、夫婦が離婚に合意していることを必要とする点です。

協議離婚なら当たり前だと思うかもしれませんが、夫婦の一方または双方が離婚に反対していても、ただの紙切れである離婚届は出せるのですから、離婚届だけでは虚偽の届出を見抜けません。

したがって、協議離婚での離婚届は、あくまでも手続上で必要な形式的な要件に過ぎず、夫婦による離婚意思の合致を実質的な要件としています。

  • 夫婦のどちらも離婚に合意していること(実質的要件)
  • 不備のない離婚届を役所に出すこと(形式的要件)

この2つの要件を満たさないと、協議離婚は有効に成立しません。

より正確には、夫婦の離婚への合意が、届出時点まで存在することが要件です。つまり、夫婦が離婚に合意して、本人が離婚届に不備なく記入したとしても、離婚届を出す前に離婚の意思が覆されると、協議離婚は有効に成立しないということです。

また、離婚の届出は、口頭でもできることになっており、形式的要件に過ぎない離婚届よりも、当事者の離婚意思が重要だとわかります。

無効な協議離婚が成立することもある

令和3年9月1日以降、戸籍の届書に押印は必要なくなります(押印しても構いません)。随時修正する予定ですが、令和3年9月1日以降は押印についての記載を読み飛ばしてください。

離婚届が提出されて役所が受理すれば、たとえ夫婦の協議や合意が「なくても」協議離婚は成立します。離婚届には、夫婦と成年の証人二人以上の署名が必要(実務上は押印も必要)で、夫婦の署名押印から離婚の合意が推測されます。

ところが、離婚届に必要なのは文字に過ぎない署名で、押印に至っては認印で可能、印鑑登録証明書の添付は不要です。

虚偽の離婚届でも、記載に不備がない限り、受理されて協議離婚は成立します。驚くべきことですが、それが協議離婚の現実であり、実際に偽造された離婚届で協議離婚が成立することも少なくありません。

しかし、それでは当事者が困るので、離婚の意思がないのに離婚届が出されて成立した協議離婚は、その無効を訴えることができます。

参考:協議離婚無効確認調停

実質的要件である離婚意思の合致を欠いた協議離婚は、最初から無効なのですが、戸籍上は離婚が成立しているため、戸籍の訂正を目的として無効を訴えることになります。

協議離婚と不受理申出

離婚届だけで、戸籍上の離婚が成立してしまう状況は、離婚したくない当事者にとって相当な脅威です。いつ相手や第三者が虚偽の離婚届を出すかもしれず、知らない間に離婚が成立しているかもしれないからです。

そこで、本人以外からの離婚届を役所に受理させない、不受理申出という制度が存在します。不受理申出書を提出することで、相手からの離婚届を防止でき、本人が取り下げなければ生涯有効なので便利です。

不受理申出と不受理申出書については、こちらを参考にしてください。

参考:離婚届などの不受理申出と不受理申出書の書き方

協議離婚では何を協議する?

協議離婚で必ず決めなくてはならないのは、次の2つだけです。とはいえ、それがなかなか決まらずに話合いは紛糾するのですが……。

  • 離婚への合意
  • 子の親権者

また、協議離婚でも協議離婚以外でも、離婚で夫婦の権利義務が大きく変化します。それに伴い、金銭的な関係も発生してくるので、次のような話合いをします。

  • 子の監護者(子と暮らす親)
  • 財産分与
  • 慰謝料
  • 養育費
  • 面会交流(子と別居親の面会)
  • 年金分割

いずれにおいても、離婚後に話し合うことは可能ですが、離婚後では話合いに応じない可能性もあり、離婚前に話し合って、その内容を離婚協議書に残しておくことが、離婚後の生活に不安定な要素を残す協議離婚では大切です。

離婚への合意
説明すら不要だと思いますが、夫婦がお互いに離婚をしたいと思っていなければどうにもなりません。夫婦の合意は必須要件で、合意のない協議離婚は無効です。

子の親権者
法律で定められているように、子の親権者を定めなければ離婚できません。先に離婚だけして、後から親権者を決めることは原則としてできないので注意しましょう。

子の監護者(子と暮らす親)
親権者と監護者は、ほとんどの場合に同じ親ですが、別々であっても良いと解されています。例えば、どうしても親権を失いたくない夫と、どうしても子と暮らしたい妻が協議して、親権者を夫、監護者を妻にできます。

財産分与
婚姻中に夫婦が協力する中で築かれた財産は、共有財産として扱われ、離婚時に清算するのが財産分与です。他にも、離婚後に苛酷な暮らしを余儀なくされる相手に分与したり、慰謝料の代わりに財産分与を含めることもできます。

慰謝料
相手の不法行為(典型例は浮気やDV)によって離婚に至った場合は、不法行為を理由とする慰謝料の請求ができます。ただし、慰謝料が発生するような夫婦関係では、離婚も含め冷静に話し合われるとは思えず、紛糾は必至でしょう。

養育費
どちらの親にも子を養育する義務があり、子を監護する親は、監護しない親に養育費の一部を請求できます。離婚時に決められる養育費は絶対的なものではなく、離婚後に事情が変われば、再度協議して変更することもできます。

面会交流
子と別居している親は、定期的に子と会うための機会を要求し、子と同居して監護する親が応じます。頻度に定めはないですが、1か月に1,2回というケースが多いようです。子がある程度大きくなれば、子の意思を尊重して頻度は変わるでしょう。

年金分割
給与所得者には厚生年金が発生し、婚姻期間中に夫婦が納めた厚生年金の納付記録を、離婚時に夫婦で分けるのが年金分割です。年金の受給年齢まで効果はありませんが、離婚前に話し合っておかないと紛糾しやすい問題です。

協議離婚と離婚協議書

協議離婚の協議で決めた内容は、それが何であれ、文書に残しておくことが、離婚後のトラブルを防ぐためには重要で、作成される文書は離婚協議書と呼ばれます(協議離婚書や離婚合意書などと呼ばれることもあります)。

お互いに人間として信頼関係があり、離婚後も連絡を取り合うことができて、争いも生じないのであれば、離婚協議書は必要ありません。そのような夫婦が、はたして離婚するかどうか不明ですが、事情によってはあり得るのでしょう。

ほとんどの離婚する夫婦は、相手を信用できず、離婚後に連絡しても無視したり理由を付けて会わなかったりするので、争いが生じやすい悪化した関係です。

ですから、協議で決めた約束を守らせるためにも、離婚協議書として残すだけではなく、可能な限り公正証書にして残しておくべきです。

※離婚協議書と公正証書は今後別記事で解説する予定です。

協議離婚制度には問題点も多い

簡便すぎると言われる日本の協議離婚制度は、離婚前にも離婚後にも問題点を残しています。以下で解説していますが、むしろ一番の問題点は、当事者が問題点を感じないで協議離婚していることです。

役所は虚偽の離婚届を止められない

協議離婚では、法律上の問題を残さずに離婚しているかどうか確認する人がいません。離婚届を受け付けた役所は、記載に不備がないか確認するだけで、実質的要件とされる夫婦の離婚意思は確認されず、あっさり離婚届は受理されます。

離婚は人生の大きな出来事なので、当事者に意思確認くらいしても良いのでは……と思ってしまうでしょうか。

しかし、離婚届に限らず届出の実質的審査権(届出が真実によってされているかどうかの審査権)は役所になく、届出の法令違反(記載不備等)だけを、形式的に審査する権限しかないとされます。

戸籍法の改正によって、市区町村長は、必要があれば届出人その他の関係者に対して、質問または文書提出を要求できることが明文化されました(戸籍法第27条の3)。

ただし、この規定を設けるにあたっては、調査(審査)権の行使が、従来から行うことができる範囲内にとどまるものであって、範囲が拡大されるものではないとされています。

つまり、記載に不備がなく、疑義が生じない離婚届において、両当事者の離婚意思を積極的に確認するような運用ではないということです。

そのため、虚偽の離婚届に対しては、発覚してから当事者が無効を訴えるか、事前に不受理申出をして、離婚したくない側が何らかの行動をしなければなりません。

協議が不十分でも離婚できる

前述のとおり、協議離婚で決めるべきことは多く、他にも家庭内や親族内の事情が多々あるでしょう。それらが解決されずに離婚届が先行してしまうと、潜在的な争いを残したまま協議離婚されることになります。

そして、法律に詳しくなければ、協議が不十分で離婚することにどれほどのデメリットがあるのか知らず、勢いで離婚届を書いてしまいがちです。

また、そもそも自分にある権利や義務を知らず、何も決めないで離婚してしまったり、不利な条件を強いられても対抗できずに離婚してしまったりと、納得した上で離婚しているとも限らないでしょう。

さらに悪いのは、金銭的な内容が離婚から一定期間で請求権を失うことです(財産分与は2年、慰謝料は3年、年金分割は2年)。せめて、何を請求できる権利があるのか、どのような義務を負っているのか、協議離婚前に知っておくべきです。

このサイトが少しでもその助けになれば幸いですが、知識だけあっても対抗できるものではありません。夫婦間の収入・地位・性別などの違いで、不公平な協議離婚になりそうなら、家庭裁判所に助けを求めるのは正しい選択です。

約束が反故にされる可能性もある

家庭裁判所が関与する他の離婚方法では、離婚時に決められた事項は家庭裁判所が作成した文書となって残り、その文書で強制執行(決められた事項を国家権力で強制的に実行させること)が可能です。

例えば、離婚時に約束したお金の支払いがなかったら、相手の財産を差し押さえて強制的に回収できる仕組みが、最初から用意されているのです。

しかし、協議離婚では離婚届を出すだけなので、約束が守られなくても打つ手がなくなります。口約束は論外ですが、離婚協議書では強制執行ができません。

同じことを協議離婚で実現するためには、離婚協議書となるべき内容を「強制執行認諾約款」の付いた公正証書にする方法しかなく、離婚協議書にすら抵抗を見せる相手なら、公正証書はもっと抵抗されるでしょう。

だからといって、離婚協議書で済ませたり、強制執行認諾約款のない公正証書にしたのでは、訴えを起こして裁判所に認められないと、強制執行はできないことになっています。

まとめ:協議離婚

  • 夫婦で話し合って離婚を決められるのが協議離婚
  • 離婚届を出すまで協議離婚は成立しない
  • 離婚の意思がない協議離婚は無効
  • 未成年の子の親権者は必ず決めなければならない
  • 離婚で発生する権利と義務を知ることはとても大切
  • 安易な離婚届は将来トラブルの元
  • 決めたことは離婚協議書や公正証書に残すべき
  • 夫婦で決められなければ家庭裁判所の調停を利用する
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