養育費の法的根拠と親の義務

養育費とは、自立していない子(未成熟子)が成長していく上で必要な、衣食住に関する費用、教育費、医療費など、いわゆる生活費となりますが、その負担根拠は親が子を扶養する義務、親権者または監護者が子を監護教育する義務によるものです。

親が子を扶養する義務は、親子という関係から自然発生的だとされる説もあるところ、民法上でも直系血族に対する扶養義務(民法第877条第1項)は規定されていますから、子が血縁であるときは争いようがありません。

たとえ、養子縁組による法律上の親子関係でも、養親は親権者として子を監護教育する義務(民法第820条)を負います。

よって、実子でも養子でも親子関係がある限り、扶養義務によって養育費(扶養料)は発生し、子を監護している親から監護していない親へ請求されます。

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生活保持義務と生活扶助義務

未成熟子に対する親の扶養義務(未成熟子扶養義務)は、民法に明文の規定はありませんが生活保持義務だと解されています。

生活保持義務とは、被扶養者(未成熟子)に自らの生活と同程度の生活を保持する義務で、親が豊かな生活を満喫し、子が貧しい生活に耐えるのは許されません。

「一杯のかけそば」という有名な話のように、生活保持義務では、一杯のかけそばも一片のパンも一切れの肉も、子に分け与えなければならないほど重い義務です。

一杯のかけそばも一片のパンも一切れの肉も……というのは、生活保持義務が重いことを表現するために誇張して使っています。

現実には、資力が不十分なのに親子で分け合うと、親子が共に困窮してしまいますよね。もっとも、親心としては自分を犠牲にしてまで子の生活を優先するでしょうか。

親子が共に困窮する状況は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とした日本国憲法第25条の趣旨に反してしまいます。

したがって、生活保護等の社会保障制度で保障される程度の生活ができる前提で、余剰となる資力があれば、子に親と同程度の生活をさせる義務だとする考え方もできます。

未成熟子の扶養義務だけではなく、夫婦間の協力扶助義務においても生活保持義務であると解されているため、夫婦と未成熟子による家庭では、全員が同程度の生活を送ることができるように、夫婦は尽力する必要があります。

一方で、生活扶助義務とは、相手に最低限度の生活を扶助していれば、自己犠牲までは必要とせず、親族間での扶養義務は一般に生活扶助義務です。自らの生活に余裕があれば援助するべきであっても、援助者が困窮してまでの扶養義務は負わないとされます。

親子間・夫婦間の義務=生活保持義務、生活扶助義務より重い
親族間の義務=生活扶助義務

離婚後または未婚の父母の扶養義務

離婚後または未婚で単独親権の状況では、非親権者に親権の行使が認められず監護教育する義務を負いませんが、未成熟子に対する扶養義務は依然として残ります。

前述したように、親の未成熟子扶養義務は生活保持義務で、父母が離婚しても未婚でも親であることは変わらないのですから、生活保持義務は揺るぎません。

また、親権者と非親権者、監護者と非監護者のように父母の立場が違っても、親子関係の事実(認知・分娩)に何ら影響はなく、やはり生活保持義務は揺るぎません。

これらを踏まえると、子に自立能力が備わるまでは、両親共に「優劣なく」生活保持義務を負い続けるのです。ただし、親と同程度の生活を保持するといっても、離婚後または未婚の父母は、多くが別居していますよね。

生活保持義務には優劣がなくても、別居していると父母が優劣なく監護はできず、父母の収入にも格差があるので、必然的に監護と養育費のバランス調整で生活保持義務を果たしていくことになります。

養育費と扶養料の違い

扶養料とは、親が子を扶養する義務・子が扶養を受ける権利のために支払われる費用で、養育費と似たような性質を持っていますが、権利義務の発生が親子間であり、厳密には養育費と同一に扱われません。

養育費の場合、子の監護教育に必要な費用を監護親と非監護親で分担する性質から、監護親は非監護親が分担すべき額を、非監護親へ直接請求できます。即ち、養育費は権利義務の発生が親同士です。

扶養料は、子が扶養を受けるために親へ請求する性質から、権利義務の発生が親子間です。

  • 養育費:監護親から非監護親への分担請求
  • 扶養料:子から親への請求

もっとも、本来は子がするべき非監護親への扶養請求を、代理して監護親が行う前提では、養育費と扶養料のどちらも監護親から非監護親への請求となります。

そのため、養育費と扶養料を区別する意味はそれほどありません。

養育費も扶養料も子の扶養に使われるわけですし、同じお金の名目が、親同士では養育費、子の立場では扶養料になるだけです。ただ、家庭裁判所手続においては、親が申し立てる養育費請求と、子(または代理人)が申し立てる扶養請求は区別されています。

扶養料の請求権は失われない

養育費と扶養料の違いが重要になるのは、父母が養育費で何らかの合意をしているときです。離婚時には、夫婦間で養育費を請求しない・支払わないといった約束が、子の意思とは無関係にされる場合があります。

養育費が分担請求に過ぎなければ、父母間の約束は有効に作用しますが、父母がどのような約束をしても、子から親に対する扶養請求には何ら影響を与えません。

したがって、子が扶養を必要とする限り、子はいつでも扶養料を父母に請求することができ、さらに監護者が親権者なら子の法定代理人として請求できますから、養育費を支払わない父母間の取決めは、事実上意味がないということです。

詳しくは別記事を用意しましたのでご覧ください。

参考:離婚で養育費なしの合意は有効か~扶養料との違い

未成熟子と未成年の子の違い

一般的には、養育費を未成年の子に対する費用とするイメージですが、成年でも親の扶養を必要とする状態は起こり得ますし、未成年に限られるものではありません。

例えば、成年に達しても学業を理由に就労していない、健康上の問題で就労できない、勤労意欲があるのに就業先が見つからないなど考えられます。

成年でも未成年でも、自立生活の能力に欠ける子を未成熟子と呼び、親には未成熟子を扶養する義務があって、父母の収入に応じた養育費の分担義務を負います。

成年の未成熟子に関する養育費では、父母間の養育費請求ではなく、子からの扶養請求によるべきだとする見解もありますが、未成熟子が監護を要する以上、子の監護に関する処分とみなして、監護親から非監護親への養育費請求を認める解釈もできるでしょう。

父母の関係と養育費の請求手続

養育費は、夫婦が婚姻していると「婚姻から生ずる費用」に該当するため、夫婦で協議が調わないときは、婚姻費用分担請求調停・審判によって解決します。

婚姻費用の分担義務は、夫婦が同居でも別居でも夫婦である以上は変わりません。

しかし、離婚する夫婦では、離婚後の子の監護に関する事項を定め(民法第766条)、その中には養育費の取決めも含まれます。この場合に養育費の取決めで協議が調わないとしても、養育費請求調停・審判ではなく離婚調停で話し合われます。

これは、養育費の取決めが離婚を前提としているので、前提の離婚なしに養育費だけ取り決める状況はあり得ない(離婚前提がないと婚姻費用になる)からなのですが、養育費の取決めは法律上の離婚要件ではありません。

したがって、養育費の話合いが紛糾しても、一旦は離婚に合意して協議離婚もしくは離婚調停を成立させ、改めて離婚後に養育費請求調停・審判を申し立てることは可能です。

ここまで少しややこしいのでまとめると、請求手続は次のようになります。

婚姻中の夫婦における「婚姻中の」養育費請求
→婚姻費用分担請求調停・審判

婚姻中の夫婦における「離婚後の」養育費取決め
→離婚調停の付随申立て(調停不成立なら離婚訴訟の附帯処分)

離婚後の夫婦における養育費請求
→養育費請求調停・審判

また、離婚を話し合っている夫婦が、離婚後の養育費取決めだけではなく、離婚までの養育費、つまり婚姻中の養育費にも争いがある場合、離婚調停に並行して婚姻費用分担請求調停や審判を別途申し立てる運用です。

この他、非嫡出子(婚外子)に対する養育費の請求では、父の認知によって父子関係が発生し、その際は子の監護に関する事項を定めるとしていますので(民法第788条による第766条の準用)、離婚後と同様に養育費請求調停や審判を申し立てます。

なお、子が親を相手方として行う扶養請求は、父母の関係に全く拘束されませんが、子による扶養請求の申立てはほとんどされることはなく、監護親が婚姻費用か養育費を理由に、非監護親へ請求するケースのほうが圧倒的に多くなっています。

この点、養育費は子のためだと承知していても、監護親へ支払うことへの抵抗(子のために使われていることへの疑念)があるかもしれず、子自身からの扶養請求であれば、支払う側も納得しやすいのかもしれません。

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初めての調停
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