離婚調停の5割は弁護士が関与している現実

調停は手続きがそれほど難しくはないため、最初から最後まで当事者だけで行うことが十分可能です。ところが、家事調停の中でも申立ての多い離婚調停(正確には夫婦関係調整調停)は、今や弁護士の関与率が5割に達します。

その理由はさまざま考えられるとしても、現実問題として離婚調停の半分に弁護士が関与しているとなると、当事者だけでの解決が難しくなっているのは確かなのでしょう。

そして、弁護士の関与率は年々高まっており、いずれ離婚調停は弁護士を付けるのが当たり前の時代を迎えるのかもしれません。

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夫婦関係調整調停における弁護士関与率の推移

司法統計には、離婚調停の弁護士関与率を示すデータがなく、公表されているのは、夫婦間の紛争一切を対象とした婚姻関係事件(離婚調停を含む)についてのデータです。

より正確なデータを得るため、司法統計に加えて日本弁護士連合会で公表されている資料を参照しました。

2015年2016年2017年2018年
夫婦関係調整調停件数46,92246,49345,04443,286
弁護士関与件数20,58021,51222,07622,388
弁護士関与率43.9%46.3%49.0%51.7%
参考:離婚調停件数43,91943,48242,32540,620
参考:離婚調停の割合93.6%93.5%94.0%93.8%
※夫婦関係調整調停件数、離婚調停件数:司法統計
※弁護士関与件数:日本弁護士連合会「夫婦関係調整調停事件における代理人弁護士の関与状況 」

申立人と相手方の一方、または双方に弁護士が関与する割合は年々上昇しており、2018年には50%を超えています。2008年は25.4%だったので、10年で倍増した計算です。

なお、表に示す通り、夫婦関係調整調停の約94%が離婚調停ということは、ほぼ離婚調停への関与率と言ってもよいでしょう。

夫婦関係調整調停は申立てによって円満調停と離婚調停に分かれますが、円満調停とは即ち「仲直り」を目的とする調停ですから、争いの激しい離婚調停に比べ、弁護士に依頼するケースは少ないと個人的には考えます。

離婚調停では争点が多くなりやすい

離婚調停は、離婚の際の条件面とセットで話し合われることから、必然的に争点が多くなりがちで長期化の傾向が見られます。

それだけではなく、夫婦が別居してしていると、婚姻費用の分担請求や面会交流請求が並行して申立てられることもあります。

こうした場合、離婚調停と別に調停期日を設けるのは、労力も時間も不経済であることから、離婚調停とひとつの申立てにすることができ(家事事件手続法第255条第4項による同法第49条第3項の準用)、調停委員会の職権で手続併合することも可能です(同法第260条第1項第4号)。

当事者が同じで関連性の高い紛争は、まとめて話し合うことで早期解決を目指しているというわけですね。

したがって、離婚までの婚姻費用、離婚までと離婚後の面会交流、離婚後の親権・養育費・財産分与・年金分割といった、実に多くの取り決めを経なくてはなりません。

弁護士に依頼したほうが良い離婚調停はあるのか

離婚調停の弁護士関与率が上がっていることについては、明確な理由を説明できないのが正直なところです。

男女平等の意識と女性の社会進出、DV事案の増加、紛争の複雑化、スマホの普及で弁護士関連の情報を得やすくなった、離婚や調停に対する考え方の変化、弁護士の増加で費用面の負担低下など、さまざまな要因が考えられます。

日本では、夫婦の合意があれば協議離婚できますので、離婚調停を申し立てるとすれば次のような状況でしょうか。

  • 相手が離婚そのものに応じてくれず離婚できない
  • 離婚条件で折り合わず離婚できない
  • 離婚したいが相手と話したくない

まず、相手が離婚条件に関係なく離婚そのものに応じてくれない場合は、弁護士に依頼するまでもないでしょう。頑なに離婚を拒む相手に、代理人が話したからといって離婚に応じるとは考えにくいからです。

ただし、そのような状況では、調停が成立するとは思えないため、最初から離婚訴訟を前提に弁護士へ依頼することは考えられます。

次に、離婚条件で折り合わない場合ですが、妥当な相場を知っている弁護士への事前相談はもちろん、調停においても交渉に長けた弁護士の存在は力になりそうです。

続いて、相手と話したくない場合は、調停がそもそも当事者同士で話し合わない運用(双方合意があれば同席調停も可能)ですから、それだけの理由で弁護士に依頼するほどではありません。

しかしながら、相手からの連絡すら嫌だというのであれば、弁護士は代理人として連絡先になってくれますし、万が一にも家庭裁判所で会わないように代理出席してもらうこともできます。

また、相手に弁護士が付いているなら、こちらも弁護士に対応してもらったほうが無難でしょう。

争点が多いほど弁護士に依頼するメリットは大きい

離婚調停に限らず、調停が成立した場合に作成される調停調書には、調停での合意内容が記載されます。

これを調停条項と呼びますが、合意内容の最後に、調停条項以外の債権債務が無いことを確認する旨の記載(清算条項)を入れる場合が多いです。

清算条項には、後の紛争を未然に防ぐ目的があって、それはつまり、一旦調停調書が作られたら調停条項に以外の請求ができないことを意味します。

そのため、調停条項は慎重に慎重を重ねて確認する必要があるのですが、法律の素人である当事者では、この確認が疎かになりがちです。

離婚までの争点が多ければ、必然的に調停条項も増えることを考えると、とりわけ金銭面の取り決めが多い場合は、弁護士にチェックしてもらうのが良さそうです。

さいごに

当サイトでは、当事者だけで調停できるように多くの解説記事を用意していますが、多種多様な夫婦関係を全て網羅できるはずもなく、あくまでも一般論でしか伝えることができません。

離婚は人生の分岐点となる大きな出来事なので、高額な弁護士費用を支払ってでも、万全を期したいと思うのは当然で、離婚訴訟までもつれると相当な時間もかかります。

ですから、弁護士への依頼を否定するものではありませんが、お金に余裕がないと難しいですし、何とか自力で乗り切り、新たな人生のスタートを迎えて欲しいと思います。

弁護士については、以下の別カテゴリにまとめてありますのでご一読ください(私見も多く含まれています)。

参考カテゴリ:調停と弁護士

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