動産の財産分与は基本的に時価

動産とは、不動産以外の物品と考えて良く、一般家庭において最も高価な動産は自動車であることが多いでしょう。基本的には、財産価値がある物品は何でも動産に含まれてしまいますが、現実的に財産分与の対象は少ないはずです。

財産分与の対象になる動産

  • 自動車、バイク
  • 宝石、貴金属類
  • 家具、家電
  • 絵画、彫刻
  • 美術品、骨董品
  • 高価な衣服、着物
  • 金銭的価値を持つその他の物品

動産の財産分与の考え方

動産の財産分与は、現金で分けるのか価値で分けるのか、また価値の評価をどのように求めるかで変化します。全ての動産に活発な中古市場があるとは限らないので、実際には次のような方法を複数組み合わせることになるでしょう。

売却した金額を現金で分ける

自動車やバイクのように、大きな中古市場や買取市場がある動産は、実際に売却して得られた金額を分けます。公平な考え方ですが、離婚後にも保有していたい動産がある場合でも再購入しなければならず、この方法は極めて不経済です。

売却を仮定した金額を分ける

離婚後に保有したい側が動産を引き取り、売却を仮定した金額の中から、相手の財産分与に相当する金額を現金で渡します。この方法を他の動産でも繰り返すことで、理論的にはどちらが動産を引き取っても公平に財産分与が可能です。

どちらかが一方的に動産を引き取らない限り、お互いに支払うべき現金が生じるでしょうから、最終的に精算すれば大きな現金の移動にもなりません。

価値だけを考えて分ける

現金の移動を避け、動産を山分けのようにお互いに取りあって分けます。公平に行うには、事前に価値の見積りを行う必要があります。

分けた結果、お互いが保有する動産の価値に不均衡が生じたとしても、他の財産分与で相殺すれば良く、価値の把握ができていれば問題はないでしょう。

動産の価値は個人の思い入れも含まれる

動産の中には、市場価値がほとんど失われていたり、一部の限られた人にしか価値が認められない物もあります。特に、収集品や年代物の類は、興味のない人ならゴミ同然というケースもあるので、動産の価値は見積もり次第です。

価値の見積もりは客観的な視点で行うべきですが、そうすると高価な物品も、購入直後ですら二束三文になる可能性を持っていて、実質的な価値は購入した本人に委ねたほうが、有利に財産分与できるかもしれません。

相手にとっての価値をうまく利用する

例えば、相手が50万円で購入した骨董品があるとして、本当の価値が100万円なら100万円として財産分与するとしても、1万円の価値しかなければ、相手が思い込んでいる50万円で引き取らせ、代わりに50万円分の動産を受け取ることができます。

自分が引き取る側なら、1万円の価値しかないことを主張すれば良く、つまり、相手が引き取る動産は高い価値、自分が引き取る動産は安い価値で見積もる方法を選択すると、動産の財産分与は有利になります。

同じようなケースで、自分が引き取っても意味がない動産で、相手が婚姻中に占有していた物は、処分してしまうよりも持っていたほうが相手にとって価値が高いので、市場価値で見積もらず、相手にとっての価値で見積もると良いでしょう。

女性が身に付ける宝石類やお互いの高価な衣服など、相手の考える価値が市場価値より高ければそのままの価値で、市場価値のほうが高ければ市場価値で見積もると、自分にとって有利な結果になります。

財産分与は、著しく不均衡がなければ夫婦の協議で決めるものなので、必ずしも実際の市場価値で等しく分けなくても大丈夫です。

動産にローンが残っている場合

ローンで動産を購入したとき、所有権は一般に購入者にはありません。普段は所有権が問題になることは少ないのですが、ローンでは所有権留保(代金の完済まで所有権がローン会社にあること)の契約になっているはずです。

したがって、本来はローンが残っている動産をローン会社の承諾なく勝手に売却などできず、市場価値とローン残債を計上することで、財産分与の対象額を算定します。

例えば、市場価値50万円の車に100万円のローンが残っていれば、実質的な負債は50万円ですから、お互いに25万円ずつの負債です。そして、車を引き取る側には50万円の利益があるため合計で-75万円、もう一方は-25万円と分けられます。

この例において、車を引き取る側とローンの名義人の組み合わせは4通りあるので、財産分与は次のようになります。

 夫がローン名義人妻がローン名義人
夫が車を引き取る妻→夫に25万円支払い夫→妻に75万円支払い
妻が車を引き取る妻→夫に75万円支払い夫→妻に25万円支払い

ローンが残っていると自動車の名義変更はできない

ローンで所有権留保になっている自動車では、車検証の所有者欄がローン会社(またはディーラー)になっています。しかし、使用者欄は購入者になっているので、自動車を使用して運転することは可能です。

財産分与のためにローンが残った自動車を処分しようとするなら、車検証の通り所有者は購入者ではなく、所有者を購入者にしたいのならローンの完済が条件です。

まれに、所有者を変更しなくても、買主への使用者変更を認めてくれるケースもあるようですが、まず期待できません。そのため、ローンを完済できなければ売却ができないように思えるところ、まだ手段は残されています。

自動車の買取業者には差額ローンの仕組みがある

買取業者の中には、ローンの残債を立て替えて支払ってくれるサービスを提供している業者があります。先ほどの例だとすると、買取業者は50万円で買い取りますが、ローン会社には100万円支払ってくれます。

差額の50万円は、売却時に買取業者へ持参するのが通常で、買取業者へのローンとして取り扱ってくれる場合もあります。いずれにしても自動車のローンが完済されて買取業者に所有権が移るため、売却できない悩みからは解放されます。

離婚後にローン名義だけ残るのは危険

生活上、どうしても車を手放せないのに、ローンを完済できず名義変更もできないため、離婚後の車の使用者とローンの名義人が異なる状況も考えられます。そして、車の使用者がローンの名義人に、毎月支払いを約束する形態です。

このような財産分与は、車の使用者を信用する前提で成り立ちますが、果たして離婚後に他人となった元配偶者をどこまで信用できるのでしょうか?

一番の問題は、車の使用者がローン返済分を支払わなくなったとき、問答無用でローンの名義人が支払わなくてはならない点です。しかも、口座引き落としを使っていて相手から入金がなく滞納になると、ローンの名義人がペナルティを受けます。

このとき、車の使用者が支払わないからなどという理屈は通用せず、ローンの名義人は滞納で社会的な信用を落とします。そのまま続けば、いわゆるブラックリストになり、他のローンが組めなくなったり、クレジットカードが作れなくなったりします。

ですから、余程信用できる相手でもない限り、自分がローンの名義人のまま、車を相手に使用させることなど控えるべきでしょう。どうしても行うなら、支払いの約束を強制執行認諾約款付きの公正証書にして保全を図るべきです。

強制執行認諾約款付きの公正証書とは、支払いの約束が反故にされても、裁判なしで強制執行(給料等の差押えなど)が可能になる公正証書です。
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