離婚で財産を分与する側は、場合によって譲渡所得税が課税されてしまいますが、財産分与を受ける側には、ほとんど税金がかかることはありません。
税金がかかる可能性があるとすれば、主に3つです。
- 贈与税(原則非課税)
- 不動産取得税(都道府県による)
- 登録免許税(当事者の協議しだい)
これらの税金は、財産分与がどのように行われたのかによっても変わります。
何にせよ、できるだけ税金が少なくなるように、財産分与の対象を考慮することが大切で、財産分与の協議が終わってから、税金の存在に気付かないよう注意してください。
過当な財産分与でなければ贈与税は非課税
財産分与には、清算的財産分与、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与の3つあり、財産分与そのものが贈与ではないとされています(相続税基本通達9-8)。
清算的財産分与は、夫婦の実質的な共有財産が、夫婦個人に分与されただけで最初から贈与の考え方がなく、扶養的財産分与は贈与とされてもおかしくないですが、養育費が代表例であるように、扶養的性質を持つ場合は非課税が原則です。
そして、慰謝料的財産分与については、本来が損害賠償金として支払われるもので、損害賠償金は非課税(所得税)であるため、慰謝料的財産分与が課税されてしまうと、税制度として不整合が生じます。
これらから、財産分与はいずれの名目でも非課税となります。
財産分与が過当であれば贈与扱い
財産分与が完全非課税になると、離婚を利用して不正に夫婦間で資産移動が行われる可能性が出てきます。例えば、夫から妻に財産を移動する目的で一旦離婚して、夫の財産を妻に分与した後で再婚するとします。
そうすると、離婚時に分与された財産は、再婚後において妻の財産ですから、税金を支払うことなく事実上の贈与が可能になります。同じことを婚姻中に行えば、確実に贈与税の課税対象です。
また、配偶者が亡くなると、相手配偶者には法定相続権が発生しますが、こちらも亡くなる前に離婚して財産分与が行われていれば、相続税は発生しません。
このような、財産分与を利用した税を免れる行為が許容されるはずもなく、離婚時の財産分与に不適当な分与は、贈与とみなして贈与税の課税対象です。
不動産取得税は都道府県で扱いが異なる
財産分与による不動産の取得は、夫婦の共有財産を清算する観点では、財産形成における被分与者の貢献が、離婚で具現化される性質です。
つまり、被分与者の貢献で形成された財産を、名義上で分与者から被分与者へ移転するに過ぎないので、不動産の取得とはみなさない考え方ができます(この考え方には反対意見があります)。
もしくは、不動産の取得があったにせよ、売買や贈与などの理由による取得とは、同等の課税が馴染まないとする考え方もあるでしょう。
いずれにしても、都道府県によっては財産分与に伴う不動産取得税を減免しているので、不明な点は必ず都道府県税事務所に問い合わせてください。有資格者でも誤った認識が目立ちます。
減免を受けるとしたら条件は?
財産分与で不動産取得税が減免されるのは、清算的財産分与に限定しているケースが見られます。これは前述の通り、離婚による共有財産の清算が、他の理由による不動産の取得と同一視されていないからです。
ところで、共有財産とは特有財産以外の財産ですから、婚姻前に取得していた不動産や、婚姻中に贈与や相続で取得した不動産は、個人の特有財産となって当然に対象外です。
したがって、財産分与で不動産取得税が減免される可能性としては、次の条件が全て揃った不動産だと考えられます。
- 清算的財産分与である
- 婚姻後に取得した不動産である
- 贈与や相続で取得した不動産ではない
課税されるのは名義変更が終わってから
不動産取得税は、一定期間内(30日以内や60日以内が多い)までに申告をするとなっていますが、名義変更(所有権移転登記)が法務局でされることにより、不動産の取得は知られるので、申告しない人も多いようです。
申告しなくても、登記すれば課税対象者には納税通知書が送られてきます。
財産分与で名義変更後、すぐに売却してしまうと、持っていない不動産について不動産取得税を支払うことになりますが、不動産の取得のたびに発生する税金なので所有の有無は問われません。
減免措置がある都道府県なら、共有財産の清算的財産分与だと証明できれば減免を受けられるはずなので、ダメ元で都道府県税事務所に相談してみましょう。
証明になる書類としては、協議離婚なら離婚協議書やその公正証書、その他の離婚なら家庭裁判所が交付する書面も考えられるところですが、むしろ何が必要か、税事務所に聞いてから用意したほうが確実です。
登録免許税は財産分与でも課税される
不動産の名義変更(登記)による登録免許税は、財産分与が理由でも課税されます。
登録免許税の税率は1000分の20(2%)で、名義変更する不動産の固定資産税評価額×2%が税額です。不動産が高額になると結構な金額になりますし、名義変更を司法書士に依頼すると、それなりの報酬も発生します。
ただし、必ずしも財産分与を受ける側が登録免許税を負担するとは決まっておらず、良く協議して決めましょう。
慣習的に、登記で利益を受ける登記権利者(財産分与を受ける側)からの納付が多いようですが、登記義務者(財産を分与する側)が納付しても、双方で分担しても問題ありません。
登録免許税の納付義務は、登記を受ける人全員が連帯して納付義務を負います(登録免許税法第3条)。
登記は必ずしておくべき
登録免許税は、登記申請の際に納める税金なので、名義変更がなければ登録免許税は発生しないのですが、それでも登記は必ずするべきでしょう。
なぜなら、現所有者(財産分与を受ける側)に名義変更されていない不動産は、対外的に前所有者(財産分与する側)の不動産と同じだからです。
名義変更をせず、登記上の所有者である離婚相手が、勝手に第三者へ売ってしまっても、登記していない実際の所有者から対抗手段はありません。