養育費の取決めはひとり親家庭の3割から4割

未成年の子がいる離婚では、離婚後に子を監護する親が、監護していない親に対して、子が成年するまでの養育費を請求することが多いです。

養育費の存在は、法律上で離婚を成立させる要件にはならなくても、現実に子を育てるにはお金がかかり、両親が分担して負担するのが当然だからです。

親としての養育義務は、離婚をしたからといって失われるものではなく、子と同居する親はもちろん、子と離れて暮らす親にも等しくあります。

したがって、養育義務に対して意識の高い親であれば、養育費を話し合って取り決めるプロセスは当然にあり、争うとしても金額の調整でしょう。

ところが、実態としては養育費を取り決めずに離婚するほうが多いようで、離婚後になってトラブルになるケースが後を断ちません。

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ひとり親家庭への調査から見える実態

平成23年に厚生労働省が行った無作為抽出の調査では、母子世帯の37.7%、父子世帯の17.5%、全体で32.9%しか養育費を取り決めていない結果が出ています。

平成23年度調査養育費の取決めあり養育費の取決めなし
文書あり文書なし不詳を含む合計
母子世帯(1,332)26.7%(355)10.4%(139)37.7%(502)60.1%(801)
父子世帯(417)10.6%(44)6.7%(28)17.5%(73)79.1%(330)
全体(1,749)22.8%(399)9.5%(167)32.9%(575)64.7%(1,131)
※データ:平成23年度全国母子世帯等調査結果報告
※養育費の取決めが不詳なものは表示していない

母子世帯が父子世帯よりも養育費を取り決めているのは、離婚後の生活に不安を持つ母親では、養育費を請求する割合が多いからでしょう。

それにしても、あくまで一部に対する調査結果だとはいえ、全体で3分の1しか養育費が決まっていない実態は、相当問題がありそうです。

改善の傾向はみられている

5年後の平成28年には、母子世帯の42.9%、父子世帯の20.8%、全体で39.7%まで改善しています。

平成28年度調査養育費の取決めあり養育費の取決めなし
文書あり文書なし不詳を含む合計
母子世帯(1,817)31.5%(572)11.3%(205)42.9%(780)54.2%(985)
父子世帯(308)15.6%(48)4.9%(15)20.8%(64)74.4%(229)
全体(2,125)29.2%(620)15.1%(320)39.7%(844)57.1%(1,214)
※データ:平成28年度全国母子世帯等調査結果報告
※養育費の取決めが不詳なものは表示していない

とはいえ、約4割しか養育費の取決めがないことは、子の安定した監護や将来の教育に大きな不安を残します。

平成24年の民法改正で、離婚届の用紙に面会交流と養育費の確認欄を設けるようになりましたが、記入がなくても離婚届の受理は妨げられません。離婚届では、面会交流・養育費の取決めがあるかないかをチェックするだけです。

その効果が、どれほどあったのかは定かではありませんが、平成28年調査は平成23年調査よりも改善しているのですから、啓発として全く無駄ではなかったようです。

その後、様式が見直され、令和3年には取り決めの方法(公正証書、その他)欄が追加されたり、法務省の関連HPへのQRコードが追加されたりしていますので、少しずつ改善していくことが期待されます。

文書で取り決めている割合は高い

養育費を取り決めているひとり親家庭のうち、文書で取り決めているケースは約7割です(平成23年調査:399/575=69.4%、平成28年調査:620/844=73.5%)。お金の支払いを口約束でするのは危険で、必ず文書で取り決めておくべきです。

また、文書で取り決めたとしても、念書、合意書、離婚協議書など私文書では、債務名義にはならず、養育費が支払われないときの備えとしては不十分です。

給料の差し押さえなど、強制執行をするために必要な文書のこと。

私文書なら強制執行認諾約款付きの公正証書にするか、調停など家庭裁判所の手続を利用して、債務名義になる文書を作成するようにしましょう。

公正証書にしても、強制執行認諾約款(養育費が未払いなら強制執行されることを認める文言)がないと、債務名義にはなりません。

離婚方法と養育費の取決め

離婚には、夫婦が話し合って離婚することに合意し、離婚届を出すことで成立する協議離婚と、家庭裁判所手続で離婚する広義の裁判離婚があります。

参考:離婚方法の種類と離婚するまでの流れ

離婚方法の違いによって、養育費の取決めが変わるかというと、母子世帯では協議離婚で養育費を取り決めずに離婚する割合が高く、裁判離婚では逆転します。

平成23年度調査協議離婚裁判離婚
母子世帯(1,106)父子世帯(355)母子世帯(226)父子世帯(62)
養育費の取決めあり30.1%(333)14.9%(53)74.8%(169)32.3%(20)
養育費の取決めなし67.5%(747)82.3%(292)23.9%(54)61.3%(38)
※データ:平成23年度全国母子世帯等調査結果報告
※裁判離婚は調停・審判・判決・和解・認諾による離婚
※養育費の取決めが不詳なものは表示していない

平成28年度調査協議離婚裁判離婚
母子世帯(1,319)父子世帯(306)母子世帯(318)父子世帯(50)
養育費の取決めあり37.8%(499)20.9%(64)79.6%(253)44.0%(22)
養育費の取決めなし59.0%(778)74.2%(227)17.6%(56)48.0%(24)
※データ:平成28年度全国母子世帯等調査結果報告
※裁判離婚は調停・審判・判決・和解・認諾による離婚
※養育費の取決めが不詳なものは表示していない

父子世帯でも、協議離婚よりも裁判離婚のほうが、養育費を取り決めている割合は高くなりますが、母子世帯のように正反対の結果とはなりません。父子世帯の父は、母子世帯の母に比べて収入が多く、養育費を請求する意識が低いからだと考えられます。

また、裁判離婚になっているのに、家庭裁判所が養育費の取決めをスルーして、離婚を成立させていることが不思議に思うでしょうか。

離婚調停や離婚裁判で、離婚と同時に養育費が争われるとは限らず、最初から養育費の請求がない場合は家庭裁判所も判断をしなかったのでしょう。

ただし、統計データよりも後の平成24年民法改正で、離婚時の面会交流と養育費が明文化(民法第766条)されたことを受け、当事者の請求がなくても、家庭裁判所は面会交流と養育費の確認をする運用に変えているはずです。

なお、親権と違い、養育費の取決めは離婚後でも調停・審判可能なため、離婚調停で養育費が請求されていても、離婚と親権の合意で調停を成立させ、養育費は離婚後に争いを続けるケースがあります。

養育費の取決めがされない理由

特に養育費を取り決めなくても、収入の範囲内で自ら養育費を支払う親がいる一方で、養育費を取り決めても、一切支払わない親もいることは、養育費の取決めだけで養育費が支払われるとは限らないことを意味します。

それでも、離婚後は他人となる夫婦が、離婚時に養育費を取り決めておくのは重要で、子の養育に必要な費用は確保しておくべきです。

なぜ養育費の取決めをせずに離婚してしまうのか。その理由についても調査が行われているので確認してみましょう。

平成23年度調査母子世帯(801)父子世帯(330)全体(1,131)
相手に支払う意思や能力がないと思った48.6%(389)34.8%(115)44.6%(504)
相手と関わりたくない23.1%(185)17.0%(56)21.3%(241)
交渉をしたがまとまらなかった8.0%(64)1.5%(5)6.1%(69)
交渉がわずらわしい4.6%(37)3.6%(12)4.3%(49)
相手に養育費を請求できると知らなかった3.1%(25)4.8%(16)3.6%(41)
現在交渉中又は今後交渉予定である1.0%(8)0.7%(8)
自分の収入等で経済的に問題がない2.1%(17)21.5%(71)7.8%(88)
子を引き取った側が負担するものと思っていた1.5%(12)8.5%(28)3.5%(40)
その他5.7%(46)4.8%(16)5.5%(62)
※データ:平成23年度全国母子世帯等調査結果報告
※理由が不詳なものは表示していない

平成28年度調査母子世帯(985)父子世帯(229)全体(1,214)
相手に支払う意思や能力がないと思った38.6%(380)31.9%(73)37.3%(453)
相手と関わりたくない31.4%(309)20.5%(47)29.3%(241)
交渉をしたがまとまらなかった5.4%(53)8.3%(19)5.9%(72)
交渉がわずらわしい5.4%(53)0.4%(1)4.4%(54)
相手に養育費を請求できると知らなかった0.1%(1)0.4%(1)0.2%(2)
現在交渉中又は今後交渉予定である0.9%(9)0.4%(1)0.8%(10)
自分の収入等で経済的に問題がない2.8%(28)17.5%(40)5.6%(68)
子を引き取った側が負担するものと思っていた0.6%(6)7.0%(16)1.8%(22)
その他7.1%(70)5.2%(12)6.6%(82)
※データ:平成28年度全国母子世帯等調査結果報告
※理由が不詳なものは表示していない

主要な理由では、相手に支払う意思や能力がない(諦めている)、関わりたくないといった理由で、離婚するくらいですから相手に期待しない気持ちや、関わりたくないという気持ちも良くわかるところです。

母子世帯と父子世帯で決定的に違うのは、自分の収入等で経済的に問題がないとする経済力の違いです。父子世帯は、交渉したがまとまらなかったとする割合が小さいことから、交渉もしていない父が多いと推測できます。

また、子を引き取った側が負担するものと思い込んでいる回答が、父子世帯に多く見られます。この点も、父母の養育費に対する理解度の違いというよりは、父母の経済力の違いが大きいのでしょう。

なお、平成23年度調査と平成28年度調査の比較では、「相手に養育費を請求できると知らなかった」との回答がずいぶん減りました。

この結果から、養育費に対する認知度が高まっているのは明らかですが、相手と自分の経済力、相手と関与することへの嫌悪といった親の事情が、養育費の取決めよりも優先されているようです。

養育費は子のためにある

幼い子にとって、親が離婚をすると経済力が不足して、これまでと同じ生活ができない可能性があるなど、当たり前ですが知り得ません。そして、養育費の取決めがされない主な理由は、親の事情であることが調査結果から良くわかります。

これは、養育費の取決めをせずに養育される子にとって、自らが両親に等しく扶養される権利を、親の事情でないがしろにされている状況ですから、子を監護する親としては、調停に持ち込んででも養育費を請求するべきでしょう。

相手と関わりたくない、交渉がわずらわしいなどは単に親の都合です。親は子を扶養する義務を負い、養育費を確保するのも親の義務だと認識して交渉をしていくのが、親の都合で離婚されてしまった子に対する責任だと言えます。

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初めての調停
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