離婚調停の管轄裁判所を変更したい場合

離婚調停を申し立てる管轄の裁判所は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または夫婦が合意で定める家庭裁判所です(家事事件手続法第245条第1項)。自由度が高いようですが、夫婦で決めるには当然ながら合意が必要です。

ですから、相手方と連絡するのも嫌な場合や、相手方の了承を得られないと思われる場合なら、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることになるでしょう。

この場合の住所地とは相手方の現住所を意味し、住民票上の住所と現住所が異なっている場合でも、現住所を管轄する家庭裁判所に申し立てます。

管轄の家庭裁判所は、裁判所のホームページで調べてください。

裁判所の管轄区域 – 裁判所
※別ウィンドウまたは別タブで開きます。

また、離婚調停に限らず、調停では相手方の現住所を知らないと申し立てられません。なぜなら、調停を申し立てられたことが相手方に確実に通知されないと、調停に出席できず申し立てる意味が無くなってしまうからです。

したがって、相手方の住所地を知っていることが前提となりますが、相手方の住所地では遠いなど不都合がある場合は、変更にいくつか方法があります。

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夫婦が合意した家庭裁判所を管轄にしたい場合

夫の住所地や妻の住所地に限らず、夫婦の合意があれば、全国どこの家庭裁判所でも離婚調停の申立ては可能です(合意管轄といいます)。

原則である相手方の住所地での調停では、申立人にとって労力が大きく、かといって申立人の住所地では逆に相手方が大変なので、中間的な場所に双方が出向くというのも一つの選択肢でしょう。

また、裁判所やその近くで、誰か知り合いに会う可能性を減らせるのも、地元から離れるメリットではあります。

管轄合意書を用意しよう

夫婦の合意で管轄の家庭裁判所を定める場合は、管轄の合意が書面または電磁的記録によってされることを必要とします(家事事件手続法第245条第2項による民事訴訟法第11条第2項及び第3項の準用)。

夫婦が合意した家庭裁判所に離婚調停を申し立てるときは、管轄合意書(当該家庭裁判所を管轄とした旨を記載し申立人と相手方が署名押印した書面)を提出させる運用がされています。

※管轄合意書の書き方は別記事を用意する予定です。

電磁的記録は、どのような提出方法が認められるのか未確認のため、わかりしだい追記します。

申立人が自分の住所地で調停したい場合

管轄合意がないと、原則どおり相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に調停を申し立て、その家庭裁判所で調停が行われます。

しかし、調停時に別居中で住所が離れてしまった場合、自分の住所地を管轄する(本来の管轄ではない)家庭裁判所で調停したいことは良くあります。

そのようなときは、自分の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、自庁処理をお願いします。

裁判所が、職権で事件を自ら処理することを自庁処理と呼びます。

自庁処理は「事件を処理するため特に必要があると認めるとき」に限定されています(家事事件手続法第9条第1項ただし書き)。

自庁処理は、法定の管轄裁判所を変えてもらう例外的な扱いですから、自庁処理が認められるだけの理由がなければなりません。

【申立人が自庁処理の理由とする例】

  • 遠隔地の調停では子供が幼くて不都合
  • 金銭的に困窮していて交通費が出せない
  • 病気や怪我の影響で移動が困難
  • 介護等の理由でその地を離れられない

また、調停の申立人に自庁処理の申立権はなく、お願いなので上申の形式となり、離婚調停の申立書と一緒に自庁処理上申書を提出します。

参考:自庁処理上申書と移送申立書・上申書の書き方

相手方が自分の住所地で調停したい場合

既に説明のとおり、管轄の原則は相手方を管轄する家庭裁判所ですが、自分を相手方として離婚調停が申し立てられているのに、自分の住所地を管轄する家庭裁判所で調停が開かれない場合もあります。

それは、前述の自庁処理による場合の他、離婚調停が申し立てられた時点の住所と、現住所が異なる(または申立人が現住所を知らなかった)場合です。

そのようなときは、離婚調停が申し立てられた家庭裁判所に対し、移送の申立てをします。ただし、申立人が現住所を知らなかっただけなら、一旦取り下げてもらい、現住所の管轄裁判所へ再度申し立ててもられば解決するでしょう。

移送とは、裁判所が担当(係属といいます)している事件を、他の裁判所へ移すことです。

管轄ではない裁判所からは、申立てまたは職権で、管轄の裁判所に移送することができます(家事事件手続法第9条第1項)。また、管轄の裁判所であっても、例外的に職権で他の裁判所へ移送することができます(家事事件手続法第9条第2項)。

本来の管轄は、相手方にとって自分の住所地ですから、離婚調停が申し立てられた管轄違いの家庭裁判所に対し、移送申立書を提出することで移送を申し立てます。

参考:自庁処理上申書と移送申立書・上申書の書き方

なお、移送と移送申立ての却下に関しては、即時抗告が可能です(家事事件手続法第9条第3項)。

お互いが自分の住所地で調停したい場合は?

さて、ここでひとつ疑問が生じます。

調停の申立ては、申立人のタイミングで行われますから、通常、相手方は裁判所から通知があるまで調停が申し立てられたと知りません。

そうすると、申立人がする自庁処理の上申も先にされますよね。これは、自分の住所地で調停したい相手方にとって不利に思えませんか?

自庁処理には相手方への意見聴取がある

自庁処理は、相手方の家庭裁判所で処理するべき調停を、申立人の都合で変えることなので、相手方の意見を聴くことになっています(家事事件手続規則第8条第1項)。

したがって、自庁処理が認められる前には、相手方に意見陳述の機会が与えられますし、自庁処理が認められなければ、原則どおり相手方の住所地を管轄する家庭裁判所へ移送されますので、相手方に不利ということはありません。

自庁処理と移送の詳しい解説は、別記事にしています。

参考:家事調停の管轄裁判所と移送または自庁処理

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初めての調停
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