事実婚と法律婚が連続した年金分割は?

事実婚と法律婚は、夫婦の事情によって繰り返される場合もあり、状況しだいで事実婚と法律婚を選択するカップルがいるくらいです。

その背景には、苗字に関係する夫婦同氏制度や、子の身分に関係する嫡出制度があることは以前から言われてきました。

ところで、事実婚と法律婚が連続するとき、年金分割はどのようになるのでしょうか?

事実婚においても法律婚においても、年金分割の請求は、当事者の関係解消を前提にしていますので、事実婚と法律婚のそれぞれで年金分割が起こるように思われがちです。

しかしながら、事実婚と法律婚が連続している場合においては、その前後によっても年金分割の取扱いが異なるので注意しましょう。

事実婚から法律婚に移行したとき

事実婚の解消が法律婚(婚姻の届出)によるときは、年金分割の請求(標準報酬改定請求)ができません(厚生年金保険法施行規則第78条)。

年金分割を請求できるのは、法律婚の解消、つまり離婚したタイミングです。

その際、事実婚の期間と法律婚の期間は、通算されて年金分割の対象となります(厚生年金保険法施行規則第78条の2第2項)。

事実婚の年金分割対象は、第3号被保険者期間に限られているため、事実婚の第3号被保険者期間+法律婚の期間が年金分割の対象です。

これらを考えると、事実婚から法律婚への移行では、離婚まで年金分割を意識する必要はありません。

法律婚から事実婚に移行したとき

法律婚から事実婚に移行するときは、離婚届で法律婚を解消しますから、法律婚の期間における年金分割請求が可能です。

もっとも、離婚後に事実婚で関係を続けるので、年金分割の意識が希薄であることに加え、年金分割による関係悪化を懸念する心情から、なかなか年金分割を言い出せないのかもしれません。

事実婚の最中に請求期限を過ぎるケースも

事実婚から法律婚の場合と違い、法律婚から事実婚へ移行すると、法律婚に対する年金分割の請求は離婚から2年間です。

したがって、離婚時に年金分割せず事実婚が解消されたとき、離婚から2年以内なら法律婚の期間も含めて年金分割できますが、2年を過ぎていると直近の事実婚の期間しか年金分割ができなくなります。

この点は、事実婚から法律婚に移行した場合と大きく違います。

うっかり請求期限が過ぎないように、法律婚から事実婚への移行では、離婚前に年金分割を話し合っておくことが重要でしょう。

もし、自分が年金分割で年金が減る側であっても、事実婚での良好な関係継続のためには、年金分割してあげる配慮が必要ではないでしょうか。

法律婚と事実婚を繰り返すとき

実際に、法律婚と事実婚を繰り返している当事者以外は、なぜそのような事をするのか理解しにくいのかもしれませんね。

法律婚と事実婚を繰り返す事例のひとつに、生まれてくる子供を嫡出子にするため、子供が生まれるタイミングで婚姻・離婚するケースがあります。

その事情はともかく、法律婚と事実婚を繰り返す場合、法律婚の解消(離婚)するごとに、年金分割の請求権が発生します。

ゆえに、法律婚から事実婚に移行した場合と同じく、離婚から2年間の請求期限に気を付けなくてはなりません。

嫡出子にする目的の婚姻・離婚であれば、戸籍上と子の身分の問題だけで夫婦としての実態は変わらず、ついつい年金分割を見過ごしがちです。

通過地点の離婚時に年金分割していないと、最終的な関係解消時には、直近の事実婚または直近の法律婚+その前の事実婚の期間しか年金分割できないことを頭に入れておきましょう。

最後が事実婚の場合:直近の事実婚
最後が法律婚の場合:直近の法律婚+その前の事実婚

なお、年金分割は婚姻期間(または事実婚期間)に対して請求する制度なので、同一相手との再婚・再事実婚であっても、2年前までに離婚した法律婚とその前の事実婚について、年金分割を請求することは可能です。

まとめ:事実婚と法律婚が連続した年金分割

  • 事実婚から法律婚への移行では事実婚の年金分割を請求できない
  • 事実婚から法律婚に移行すると両期間は通算される
  • 法律婚から事実婚に移行しても両期間は通算されない
  • 法律婚の解消時(離婚時)は常に年金分割を請求できる
  • 法律婚から事実婚に移行したときは2年の請求期限に注意(重要)
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