年金分割のための情報通知書はできれば離婚前に

年金分割のための情報通知書には、どちらからどちらに年金分割されるのか、その割合はどのくらいまで可能なのかといった、年金分割においてとても重要な情報が含まれています。

しかし、夫婦二人(または元夫婦二人)の情報であることから、請求した本人だけではなく相手当事者にも交付される場合があります。

この点はとても重要で、当事者双方が年金分割するつもりなら良いのですが、自分だけ年金分割を考えており、相手に内緒で情報を知りたいときは、争いのタネになる可能性を覚悟しなくてはなりません。

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相手に知られないのは婚姻中だけ

夫婦の一方と双方、婚姻中と離婚という4通りの組み合わせにおいて、年金分割のための情報通知書は次のように交付されます。

婚姻中の夫婦の一方が請求
どちらが請求しても請求者だけに交付されます。

婚姻中の夫婦の双方が請求
当事者双方に交付されます。

離婚した元夫婦の一方が請求
どちらが請求しても当事者双方に交付されます。

離婚した元夫婦の双方が請求
当事者双方に交付されます。

当事者双方からの請求は問題ないとして、問題になりやすいのは離婚後に元夫婦の一方が請求した場合です。相手にも年金分割のための情報通知書が届いてしまうと、その後どうなるのかは相手の出方によります。

離婚後に情報通知書をうっかり請求してしまうと……

自分の標準報酬総額(大まかには婚姻中における厚生年金・共済年金加入時の総給与・総賞与)が少なく、年金分割を考えているのなら、相手が情報通知書を見ても大丈夫でしょう。

年金分割は、将来の年金額に影響を与えるためトラブルになりやすいとはいえ、法律で認められた正当な権利ですし、標準報酬総額の少ない側は年金が減らないからです。

しかしながら、自分が標準報酬総額の多い側なら、情報通知書を不用意に請求せず、一度考え直してみてはどうでしょうか。

なぜなら、年金の少ない相手に対し、自分の年金が多いことを知らせ、なおかつ年金分割という制度があることも教えてしまいます。

年金の多い側からの年金分割は考え方しだい

年金分割は、法律で認められた正当な権利と説明しましたが、その請求権は必ず行使しなければならないわけではありません。

したがって、年金分割するかどうかは年金の少ない側に任せておけばよく、年金の多い側から年金分割を言い出す義務もないのです。

年金分割の請求とは、年金制度の実施機関に対する標準報酬の改定請求を意味しますが、法律上、合意分割の改定請求は年金の多い側からも少ない側からもできます(厚生年金保険法第78条の2第1項)。

ただし、年金の多い側にとっては、年金が減る請求となるため、合意分割の標準報酬改定請求は、年金の少ない側(年金が増える側)からされるのが通常です。

また、3号分割の標準報酬改定請求は、被扶養配偶者が行いますから(厚生年金保険法第78条の14第1項)、合意分割でも3号分割でも、年金の少ない側が年金分割を請求するということになります。

それでも、婚姻中に積み上げられた標準報酬総額を、財産分与と同様に清算する年金分割制度の趣旨を考えれば、年金分割を黙っているのは、モヤモヤするかもしれませんね。

後腐れなくスッキリした気持ちで、離婚という再スタートを切るため、自分に不利な年金分割を、あえて言い出すのは立派な対応でしょう。

年金分割が有利か判断してからでも遅くはない

前述のとおり、年金分割のための情報通知書は、請求者だけに交付される婚姻中(離婚前)のうちに入手しておきたいところです。

ただ、離婚前・離婚後にかかわらず、相手の給与・賞与をある程度把握していれば、どちらからどちらに年金分割されるのか(どちらの標準報酬総額が多いのか)、全くわからないケースは少ないのではないでしょうか。

とりわけ、家計をやりくりすることが多い女性はなおさらです。

離婚後であっても、自分の年金が増えると確信を持ってから情報通知書を請求すれば良く、慌てる必要はありません。

また、どちらの総給与・総賞与が多かったか、はっきりしないほど差が小さいなら、仮に自分が年金の増える側でも年金分割のメリットは少ないので、面倒なトラブルを引き起こさないように黙っておくのも一考です。

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