自庁処理上申書と移送申立書・上申書の書き方

自庁処理上申書は、管轄外の裁判所へ調停を申し立てた際、管轄の裁判所へ移送することなく自庁処理してもらうための上申書です。移送申立書は、管轄外の裁判所から管轄の裁判所へ移送してもらうための申立書です。

また、管轄の裁判所から管轄外の裁判所へ移送してもらうためには、移送上申書を提出します(申立権がないので移送申立書ではありません)。

いずれも必要がなければ裁判所へ提出する書類ではないのですが、調停の当事者は、紛争内容とは別に管轄でも争うことが多く、管轄争いが起こったときには自庁処理上申書や移送申立書・上申書を提出することになるでしょう。

自庁処理上申書と移送申立書・上申書には、特に決まった書式が用意されていません。ただし、記載には必要事項があるので解説していきます。

自庁処理上申書の書き方

自庁処理上申書の記載例です。

自庁処理上申書

記載例では、

  • 事件の表示
  • 書類名(自庁処理上申書)
  • 日付と上申先
  • 上申の趣旨
  • 上申の理由
  • 申立人署名押印

の順番にしていますが、どのような順番であっても構いません。もっとも、書類名である「自庁処理上申書」を末尾に記載する人はいませんが…

また、左詰めで記載しているところは、右詰めにしても大丈夫です。左詰めでも右詰めでも好みのレイアウトに変更して使いましょう。

重要なのは、書くべき内容を書くことだけです。

事件の表示

事件の年、事件記録符号、事件番号、事件名、申立人、相手方を書きます。

事件記録符号とは、記載例で()にしている部分です。家事調停事件なら「家イ」、民事一般調停事件なら「ノ」のように符号が決まっています。事件記録符号は後述しますので確認してください。

事件番号は、調停の申立てが受理されて付けられる番号なので、調停申立てと同時に自庁処理を上申するときは、当然に事件番号がまだありません。

したがって、裁判所の窓口で調停を申し立てるなら、事件番号を聞いて自庁処理上申書に書き加えるか、郵送での調停申立てなら事件番号は空欄です。

事件名については調停申立書に書いているはずで、申立人は調停の申立人、相手方は調停の相手方をそのまま書きます。

事件の年、事件記録符号、事件番号、事件名は、上申の趣旨に含めて「平成○○年(○○)第○○○号 ○○○○○○事件の管轄裁判所は~」でも問題ありません。

書類名

「自庁処理上申書」以外では「自庁処理申出書」とされることもあります。自庁処理は申立権がないので「自庁処理申立書」は誤りとも言えます。

日付と上申先

これは問題ないでしょう。上申先は調停を申し立てた裁判所で、支部や出張所なら支部名・出張所名まで正しく書きます。

上申の趣旨

ポイントは、本来の管轄裁判所がどこか書くこと、調停を申し立てた裁判所(御庁)で処理して欲しいこと、上申しますと書くことです。記載例では分けていますが、上申の理由は上申の趣旨に入れても構いません。

文頭で「頭書事件」としているのは、事件の表示が最上部にあるからで、上申の趣旨の直前に事件の表示をすれば「上記事件」となりますし「本件」でも通じます。

上申の理由

記載例では文章で書いていますが、番号を振って理由を1つずつ書く方法も良く使われます。ただし、理由を付ければ何でも自庁処理されるものでもないです。

自庁処理によって、調停の申立人は利益を得て、調停の相手方は不利益を受けます。相手方に不利益を与えてもなお、申立人の利益のために自庁処理をすることが、当事者間の衡平に資する事情を必要とします。

上申の理由に、長々と事件の背景まで書く必要はないですが、自庁処理をすべき理由に該当するものがあれば積極的に書いて差し支えありません。

自庁処理しないと事実上調停が行えない事情なら、自庁処理は認められやすいとはいえ、テレビ会議・電話会議システムが活用できるようになった背景もあって、自庁処理の必要はないと判断されることも多いです。

申立人署名押印

説明するまでもなく、調停の申立人が自署して押印(認印可)します。

移送申立書の書き方

移送申立ての記載例です。

移送申立書

自庁処理上申書と同様に、

  • 事件の表示
  • 書類名(移送申立書)
  • 日付と申立先
  • 申立ての趣旨
  • 申立ての理由
  • 申立人署名押印

の順番にしていますが、順番の入れ替えや右詰めへの変更など、好みに合わせて調整してください。ただし、申立ての趣旨と申立ての理由は続けて書くべきです。

以下、自庁処理上申書と異なる点を解説します。

申立ての趣旨

定形的な書き方で、移送して欲しい裁判所へ「移送するとの裁判を求める」とします。移送は決定でされるので、決定を求めるとしてもOKです。

申立ての理由

記載例は管轄違いを理由とする移送申立てです。管轄違いが理由では弱い(調停の申立人が自庁処理を求めている)場合は、移送されるべき理由を考えましょう。

例えば、調停の申立人には交通費を負担するだけの収入がある、調停の相手方は調停までの準備期間が短く、移送されずに遠隔地で調停が行われると負担が増す、調停の申立人は代理人へ依頼しているので、移送されても不都合はないなどです。

なお、原則の管轄は相手方の住所地を管轄する裁判所ですから、管轄違いを理由とする移送の申立人は、調停の相手方が多くなります。

単に申立人と記載すると、移送の申立人なのか調停の申立人なのかわからなくなるので、記載例では「本件相手方である申立人」としています。

申立人署名押印

この場合の申立人とは移送の申立人です。

移送上申書の書き方

管轄外の裁判所から管轄の裁判所への移送には申立権がありますが、管轄の裁判所から管轄外の裁判所への移送は、職権でされるだけで申立権はありません。

そのため、管轄の裁判所で調停が申し立てられ、管轄外の裁判所へ移送して欲しいときでも上申しかできず、移送上申書を提出します。

移送上申書は、自庁処理上申書を参考に書けば大丈夫でしょう。要は、自庁処理上申書での管轄裁判所と御庁が逆になる書き方です。

また、自庁処理上申書で「御庁にて事件を処理していただきたく」となっているところは、「○○裁判所○○支部へ移送していただきたく」とします。

【記載例:移送上申書における上申の趣旨】
頭書事件の管轄裁判所は御庁ですが、下記理由のため、○○裁判所○○支部へ移送していただきたく上申します。

なお、調停の申立人なら、管轄の裁判所へ移送を上申しなくても、移送して欲しい管轄外の裁判所へ調停を申し立てて、自庁処理を上申すれば足りるため、管轄の裁判所へ移送を上申する機会はそれほどありません。

事件記録符号について

事件記録符号は、家事事件と民事事件で次のようになっています。

家事事件事件記録符号
家事審判事件
家事調停事件家イ
家事雑事件家ロ
家事共助事件家ハ
家事抗告提起事件家ニ
人事訴訟事件家ホ
通常訴訟事件家ヘ
民事控訴提起等事件家ト
民事再審事件家チ
保全命令事件家リ
民事事件(調停関係)事件記録符号
民事一般調停事件
宅地建物調停事件
農事調停事件
商事調停事件
鉱害調停事件
交通調停事件
公害調停事件
特定調停事件特ノ

※事件記録符号は法改正で変わる場合もあります。

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