不受理申出と不受理申出書の書き方

婚姻届、協議離婚届、養子縁組届、協議離縁届、認知届の5つの届出については、その届出の当事者から役所に対し、本人以外から届けられても役所で受理されないように事前の申出が可能です(戸籍法第27条の2第3項)。

役所に受理されない=不受理なので、この申出を「不受理申出」といい、不受理申出は原則本人の出頭による書面(以下、不受理申出書)での申出に限られます(戸籍法施行規則第53条の4第1項ならびに第2項)。

不受理申出が利用されるケースとしては、勝手に又は無断で出される離婚届への対抗手段のほか、近年では知らないうちに行われる養子縁組届への対抗手段です。

何のために養子縁組届?と思うかもしれませんが、養子縁組で戸籍と氏が変わる効果は、悪用されている現状があって(ネームロンダリングとも呼ばれます)、本人確認等で防止措置はされているものの、完全には防止できていません。

そこで、不受理申出によって強制的に受理されないよう対策するのです。

不受理申出制度が存在する理由

不受理申出の対象になる5つの届出は、全て届出によって身分行為(身分の取得や変動)の効力が生じる「創設的届出」と呼ばれるものです。

創設的届出は、届出に当事者の意思がなければ当然に無効ですが、受理されると戸籍訂正は容易ではなく、家庭裁判所に無効確認を訴えるしかなくなります。

ところが、役所の戸籍担当者は、届書(届出に使われる用紙)が提出されたとき、届書の内容に記載漏れや法令違反が明らかでなければ受理します。

届出が疑わしいときは、管轄の法務局に受理照会をする扱いですが、短期間に養子縁組が繰り返されているなど、受理照会は相当に疑わしいケースだけで、当事者の一方が窓口に来ない程度では行われません。

そうなると、戸籍という身分(親族関係での立場)を決める重要な届出にもかかわらず、当事者の意思がない無効な届出でも問題なく受理されるわけです。

これらの無効な届出は、当事者の確かな意思によってされるほとんどの有効な届出と表面上区別が付かず、無効な一部の届出のために、届出全体について当事者全員の意思を確認していくのも現実的ではありません。

そこで、届出を受理されたくない当事者から不受理を申し出ることで、届出意思が不存在の届出を防止できるようにしています。

不受理申出書の入手方法

不受理申出書は、全国で共通に使えるため、全国どこの役所で入手しても大丈夫ですし、役所に出向くのが面倒ならダウンロードも可能です。ただし、不受理申出書がダウンロードできる自治体は少なく、それには理由があります。

不受理申出の性質上、本人が役所の窓口に出頭して申し出なければ意味を為さず、結局は役所に出向くので、郵送向けにダウンロード提供する意味がないのです。

それでも、先に書いて持っていきたいケースもあるでしょうから、全ての自治体でダウンロードできないのではなく、一部の自治体では用意されています。

北海道札幌市:不受理申出書のダウンロードページ
※別ウィンドウまたは別タブで開きます。

特に書くのが難しい文書でもないので、どうしても窓口に出頭できない場合や、どういう書式か事前に知っておきたい場合に利用してください。

不受理申出書の書き方

不受理申出書の記入欄は少なく、本人出頭を原則としていることからも、不明な点は窓口で聞けばそれで済みます。しかし、記入欄がなぜそうなっているのか、理解した上で書かないと難しいかもしれません。

以降、前述のダウンロード可能な不受理申出書を前提に説明します。

欄外:申出日

不受理を申し出る年月日を書きますが、原則は本人出頭でも、やむを得ない理由があって出頭できない場合は、特定の要件を満たすことで郵送もできます。

よって、不受理申出書の申出日は受理日と一致しない可能性があります。だからといって、郵送の場合に不受理申出書に記載された申出日まで遡ることはありません。

欄外:宛先

必ず、申出人の「本籍地」の市区町村長です。本籍地以外の役所で不受理を申し出る場合も、宛先は本籍地の市区町村長となります。

例外は申出人が外国籍で、日本人を相手方とする不受理申出では、相手方日本人の本籍地を管轄する市区町村長が宛先になります。

不受理の対象となる申出

不受理申出書は届出別の専用用紙になっており、届出の種別が記載されているので間違いないか確認します。

なお、過去にした不受理申出があれば、その旨をチェックしますが、これは、同じ効力の申出が有効なときは、重複して受理せずに不受理にするためです。

申出人の表示等

この欄は、不受理を申し出る届出によって異なります。

不受理申出する届出申出人の記載相手方の記載
婚姻届申出人夫又は妻になる人
協議離婚届申出人夫又は妻
養子縁組届養子になる人養親になる人
協議離縁届養子養親
認知届申出人認知される子

どの用紙でも、申出人と相手方について次の内容を記入しますが、相手方については必須ではありません。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 住民票上の住所
  • 本籍
  • 筆頭者氏名

これらの記入自体については特に問題ないはずです。住所については番地と番の選択があり、該当する方を○で囲むか該当しない方を線で消せば良いでしょう。

申出人が外国籍の場合は氏名をカナで、本籍欄は国籍を記入、相手方の氏名、本籍、筆頭者氏名をその他欄に記入します。

なお、相手方も同様に記入することで相手方を特定することになりますが、その効果については後述します。

その他

前述の通り、外国籍の申出人の場合に相手方の記入に使われます。
※他の用途は不明なため、わかりしだい追記します。

申出人署名押印

問題ないでしょう。当然ながら申出人の自署でなくてはなりません。

申出人連絡先

不受理について連絡がある場合に備えて、確実な連絡先を記入します。普通は、現住所と平日の昼間に通じる電話番号を記入しておくのが最も確実です。

連絡方法の希望として考えられるのは電話連絡の時間指定ですが、他の記載パターンについては、わかりしだい追記します。

不受理申出書の申出(提出)方法

申出人の本籍地の役所に本人が出頭し、不受理申出書によって申し出るのが原則で、本人確認後と不受理申出書に不備がなければ受理されます。

不受理申出は、申出人に関する5つの届出を不受理にする申出であることから、届出の当事者になり得ない人が不受理申出をすることはできません。

不受理申出の申出人

  • 婚姻届:夫又は妻になる人
  • 協議離婚届:夫又は妻
  • 養子縁組届:養子になる人(15歳未満は法定代理人)又は養親になる人
  • 協議離縁届:養子(15歳未満は離縁後に法定代理人となるべき人)又は養親
  • 認知届:認知する人

不受理申出に持参するもの

  • 不受理申出書
  • 申出人の印鑑(認印可)
  • 本人確認書類

法定代理人とは、一般的に親権者や未成年後見人です。

15歳未満を対象とした養子縁組届では、養子になる人が共同親権に服しているとき、共同親権者のどちらも申出人になることができます。

15歳未満を対象とした協議離縁届では、離縁後の法定代理人が該当するので、不受理申出がされる協議離縁前の段階では、法定代理人と「なるべき人」です。

また、認知届では、認知する人(つまり父)からしか申出できず、認知される人(認知される子やその法定代理人)からは申出できないので注意しましょう。

郵送や使者による不受理申出

申出方法の例外として、自らが出頭できない場合、郵送による申出と本人以外の使者による申出が認められています。

これらの方法では、公正証書または私署証書に公証人の認証を受けた書面を提出することで(もしくは準ずる方法によって)、不受理申出が申出人本人によるものだと明らかにしなくてはなりません。

そして、公正証書または認証を受けた私署証書には、必ず次の事項を含めます。

公正証書または認証を受けた私署証書に含める事項

  • 不受理の申出をする旨
  • 申出年月日
  • 申出人の氏名、生年月日、住所、本籍、筆頭者氏名
  • 15歳未満の養子縁組で法定代理人による申出の場合は、養子になる人の氏名、生年月日、住所、本籍、筆頭者氏名
  • 15歳未満の協議離縁で離縁後の法定代理人になるべき人による申出の場合は、養子の氏名、生年月日、住所、本籍、筆頭者氏名

公正証書による方法

申出人本人が、公証役場の公証人に、前述の必要事項を記載した公正証書を作ってもらいます。

認証を受けた私署証書による方法

申出人本人が、前述の必要事項を記載した書面に署名押印し、それを公証役場に持ち込んで公証人に認証してもらいます。

代理人への依頼は不可

一般的には、公正証書や私署証書の認証で、代理人による嘱託(公証人への依頼)も可能ですが、不受理申出書に添付する場合は、本人からの嘱託が絶対条件です。

ここで、公証役場に行くことができるくらいなら、本人が役所に行って申出すれば良いと思うかもしれませんね。

しかし、入院中などで動けなくても公証人は出張できるので、公正証書や認証を受けた私署証書が作成でき、郵送や使者による申出が可能になります。

本籍地以外への不受理申出

不受理申出は本籍地以外に住所地や所在地の役所に申し出ることも可能で、本人確認後に受理されるのは同じですが、本籍地ではないので謄本を作成して保管し、不受理申出書の原本は本籍地の役所に送られます。

ただし、15歳未満が対象である場合、養子縁組届においては法定代理人が、協議離縁届においては法定代理人になるべき人が申出人となるので、申出人の本籍地と養子になる人または養子の本籍地は異なる場合があります。

その場合、申出人の本籍地の役所で原本が、養子になる人または養子の本籍地の役所(申出されたどちらの本籍地にも該当しない役所を含む)で謄本が保管されます。

時間外の不受理申出

不受理申出は、本人からの申出が確認された場合しか受理できない性質から、役所の時間外(閉庁日や夜間)の申出書は受け付けない自治体がほとんどです。

一部の自治体では、時間外でも特定の時間帯(開庁前・閉庁前の一定時間、閉庁日の昼間など)は受け付けていることがあります。

こうした対応の違いは、時間外に宿日直の職員が本人確認できるか、時間外は守衛だけで本人確認できないかの違いで、もし申出書を受け付けてもらえても、審査は翌開庁日となります。

また、極めて僅かだと予想されますが、ごく一部の自治体では時間外での不受理申出があると、本人確認のために職員を呼び出して対応するようです。
※いつまで同様の対応がされるかは定かではありません。

不受理申出の受理後と不受理通知

本来、不受理申出の有無と関係なく、役所の戸籍担当者は、対象となる5つの届出があったときに、届出の当事者から不受理申出がされていないか確認します。

ただし、当事者全員の本人確認がされた届出は、仮に不受理申出があっても受理できる申出人からの届出になるため、不受理申出の有無は確認されません。

不受理申出があった申出人の本籍地の役所では、戸籍簿に着色用紙を綴じ込んだり、画面上に不受理申出がある旨を表示させたりして、不受理申出がされていると確認できるようにする措置を施します。

では、本籍地以外に対象の届出がされた場合はどうなるのでしょうか?

本籍地以外に届出があると、本籍地の役所に対し電話等で不受理申出されているか確認されます。その上で、本籍地に不受理申出がされておらず、なおかつ届書にも不備がなければ受理されます。

しかし、本籍地に不受理申出がされていると、本籍地はもちろん、本籍地以外でも本籍地に電話等で確認できますから、申出人からの届出以外は受理されません。

申出人には役所から通知される

申出人以外からの届出が、不受理申出によって受理されなかったときは、その旨が申出人に通知されます。

この通知は、住民異動届がされた現住所(戸籍の附票上の住所・住民票上の住所)を宛先としますが、転送不要で送られます。

したがって、不受理の通知を受けたければ、住民異動届をきちんと出して引っ越さなくてはなりません。役所に返送されると翌年中までは保管されます。

住所変更は上記のとおりですが、氏名・本籍が変わる場合はどうでしょうか?

申出後に本籍が変わる場合、旧本籍地の役所から新本籍地の役所へ不受理申出書の原本が送られ、新本籍地の市区町村長に申し出たのと同じ扱いを受けます。また、氏名や本籍の変更については、その変更履歴が保存されます。

相手方の特定と不受理申出の失効

不受理申出には有効期間がなく、申し出た日から申出人が取り下げるまで効力は失われません(以前は6ヶ月間でしたが廃止されました)。

ただし、相手方を特定して不受理申出をすると、申出人が不受理の対象とした届出において、その相手方が不受理申出で特定した相手方と同じとき、届出の適法な受理によって不受理申出は失効します。

届出が適法に受理される条件は、不受理申出の申出人から届け出られるか、家庭裁判所によって決められた結果による届出です。申出人以外からの届出は受理されず、不受理申出の効力は保たれます。

AさんがBさんを相手方として、協議離婚届の不受理申出をしたとき、AさんがBさんとの協議離婚届を出すと、協議離婚届は受理されて不受理申出は失効します。

BさんがAさんとの協議離婚届を出しても、申出人本人(Aさん)からの届出ではないため受理されず、不受理申出の効力は保たれます。

また、本人が15歳未満で、不受理申出が法定代理人(または法定代理人となるべき人)からされた場合、15歳の誕生日の前日までが有効期間で、効力を持続させるには、15歳になった本人が改めて申し出なければなりません。

不受理申出と届出が入れ違いになったら?

大抵の場合、不受理申出をするのは、自分以外から届出される危険性が高く、予防が必要と判断した場合でしょう。

しかし、不受理申出も対象の届出も、本籍地以外で申出・届出ができることを考えれば、自分以外から先に届出されたらどうしようと考えますよね。

不受理申出が、対象とする届出の後になると、さすがに受理されてしまった届出を覆すことはできません。

しかし、不受理申出が届出の前にされていたのに、対象とする(本来は受理できない)届出の受理で戸籍の記載がされてしまった場合は、役所側が管轄の法務局長の許可を得て戸籍を訂正します(戸籍法第24条第2項)。

届出よりも不受理申出が先である限りは、不受理申出があったと後から判明しても同様の処理がされますから、極めて例外的ですが、受理された届出は覆されます。

不受理申出の取下げ

不受理申出は、申出人に限って取り下げることができ、不受理申出書と良く似た書式の取下書を提出します。

申出人が本籍地の役所で取り下げることを原則とし、本籍地以外の役所で取り下げても構いませんが、郵送による提出では不受理申出と同様の制限を受けます。

不受理申出の取下げが受理されると、本籍地の役所で行われていた、戸籍簿に着色用紙を綴じ込んだり、画面上に不受理申出がある旨を表示させたりしていた措置を取りやめ、本人以外の届出でも受理できる状態に戻します。

また、本籍地以外の役所に取下書が提出されると、提出された役所で謄本が保管され、申出人の本籍地の役所に原本が送られる点は、不受理申出書と同じです。

取下書の書き方

不受理申出書と似たような内容なので、特に混乱することはないでしょう。

  • 宛先はどこの役所に提出しても本籍地の市区町村長
  • 取下げの対象となる届出にチェックする
  • 取下げ時の氏名、生年月日、住民票上の住所、本籍、筆頭者氏名(不受理申出時から変更があれば変更前の内容)
  • 本人の署名押印
  • 日中の昼間に連絡可能な連絡先

まとめ:不受理申出

不受理申出は、自分の意思と無関係に届出をされそうなときだけではなく、今は大丈夫でも将来への備えとして活用できます。

特に調停で争うような場合は、勝手な届出がされる可能性はありますし、いつでも自分で取り下げることができるため、利用価値はとても高いです。

  • 本人以外からの届出を防止する役割
  • 不受理申出後も本人からの届出は受理される
  • 有効期間はなく生涯有効(特定の条件下では失効)
  • 不受理申出した本人は取り下げることも可能
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