除籍謄本・除籍抄本

除籍謄本と除籍抄本は、戸籍の全員が除かれた状態の戸籍(除籍)を、証明書として役所に交付してもらう文書で、除籍謄本は除籍全部事項証明書、除籍抄本は除籍個人事項証明書とも呼ばれています。

除籍謄本と除籍抄本の違いは、除籍謄本(除籍全部事項証明書)が除籍された戸籍の全員に対する証明書、除籍抄本(除籍個人事項証明書)が除籍された戸籍の一部の人についての証明書である点です。

調停で主に除籍謄本・除籍抄本を必要とするのは、相続関係が多いですが、後述するように除籍になる理由は死亡だけとは限りません。ここでは除籍謄本と除籍抄本の取り方について説明していきます。

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そもそも除籍ってどんな意味?

除籍という言葉には2つの意味があり、個人の除籍と戸籍の除籍という違いです。その点が除籍をわかりにくくしている理由でもありますが、わかってしまえば簡単ですから、せっかくなので正しく理解しておきましょう。

個人は戸籍から除籍される

戸籍は、夫婦と未婚の子を単位として作成されており、本籍のある市区町村で管理されています。戸籍に記載された人が何らかの理由で、戸籍から抜ける場合と、亡くなった場合には戸籍から除かれ、これを除籍と呼びます。

個人が除籍になる典型例は婚姻と死亡で、婚姻すると親を筆頭者とする戸籍から出ていき、新しい戸籍(婚姻相手または自分を筆頭者とする戸籍)に異動します。そして親の戸籍では、婚姻した子が除籍されます。

死亡の場合は、戸籍の異動はなく現在の戸籍上で除籍されます。除籍されるのは死亡した人だけなので、生存する他の人が戸籍にいても、他の人には影響を与えません。この点は、戸籍の筆頭者が死亡しても同じです。

個人の除籍を除籍と呼んでしまうと、戸籍の除籍(除籍簿)と紛らわしくなることから、個人の除籍を「個人が除かれる・除かれた」として表現し、除籍を除籍簿の意味に限定して使うケースもあります。

戸籍は誰もいなくなると除籍になる

婚姻や死亡などの理由で、個人が除籍されていくと、いつかは戸籍の全員が除籍された状態になります。この状態の戸籍も除籍と呼び、除籍簿として管理されます。

除籍謄本や除籍抄本は、除籍簿上の戸籍(除籍)を証明する謄本・抄本のことで、除籍謄本に記載された全員は、必然的にその戸籍から過去に除かれています。

したがって、戸籍の誰かが除かれた(除籍された)だけの戸籍との決定的な違いは、個人の除籍では他の人が戸籍に存在すると戸籍謄本で取得するのに対し、全員が除かれて除籍になった戸籍は、除籍謄本でしか取得できない点です。

例として、夫婦と子が1人の戸籍の場合、子の婚姻、父の他界、母の他界の順で起こったとき、夫婦の戸籍は次のようになり、最終的には除籍されて除籍簿に入ります。

  1. 子が婚姻→子は夫婦の戸籍から除籍→子の除籍は戸籍謄本で確認
  2. 父が他界→父は夫婦の戸籍から除籍→父と子の除籍は戸籍謄本で確認
  3. 母が他界→母は夫婦の戸籍から除籍→全員が除かれたので除籍簿入り→除籍謄本で確認

順番が異なり、父の他界、母の他界、子の婚姻の順でも同じことで、最後の1人が除籍されるまで戸籍謄本で確認し、全員が除籍されると除籍謄本(抄本)で確認します。

  1. 父が他界→父は夫婦の戸籍から除籍→父の除籍は戸籍謄本で確認
  2. 母が他界→母は夫婦の戸籍から除籍→父と母の除籍は戸籍謄本で確認
  3. 子が婚姻→子は夫婦の戸籍から除籍→全員が除かれたので除籍簿入り→除籍謄本で確認

転籍でも元の戸籍は除籍になる

戸籍の除籍にはもうひとつパターンがあって、本籍を変更したときの転籍です。転籍とは、戸籍の本籍を変えることですが、戸籍は市区町村の管理ですから、本籍の市区町村が変わると新しい戸籍を作らなくてはならず、元の戸籍は除籍になります。

ただし、本籍の市区町村が変わらない転籍もあり、管内転籍と呼ばれます。管内転籍では同一市区町村なので、新しく戸籍を作る必要はなく、戸籍の本籍欄を新しい本籍に変更するだけで、戸籍は除籍されません。

戸籍が除籍されていると戻ることはできない

原則として、一度戸籍から抜けた者は、元の戸籍に戻ることはできません。

例外は、婚姻により戸籍から抜けた場合で、なおかつ婚姻中の戸籍筆頭者ではない場合、離婚で婚姻中の戸籍から抜けるため、復籍といって元の戸籍に戻ることが可能です。

同様の理由で、養子縁組により戸籍から抜け、養親の戸籍に入った者が、離縁で養親の戸籍から抜ける場合も、復籍によって元の戸籍に戻ることができます。

しかしながら、離婚でも離縁でも、戻るべき戸籍が全員の死亡などで除籍されていると、除籍された戸籍を復活させられず、元の戸籍に戻ることはできません。その場合は、離婚・離縁した者を筆頭者とする新戸籍が作られる扱いです。

除籍謄本・除籍抄本の請求手続

除籍謄本や除籍抄本の請求は、戸籍謄本・戸籍抄本の請求と基本的に違いはありません。請求したい除籍の本籍地を管轄する役所に申請して交付してもらいます。

手続で唯一違うのは、戸籍謄本・戸籍抄本の手数料が450円なのに対し、除籍謄本・除籍抄本の手数料は750円と高くなることです。300円差は、1通なら小さくても、複数の除籍謄本・除籍抄本が必要になると、思わぬ出費になることもあります。

請求できる人や本人確認書類が必要な点も、戸籍謄本・戸籍抄本の手続と同じです。手続について詳しくは「戸籍謄本・戸籍抄本」で確認してみてください。

相続時は除籍謄本を辿っていく

相続時には、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍(除籍)を求められることがあり、死亡時の戸籍(除籍)から直前の本籍を確認し、直前の本籍の役所に申請する流れを、出生時の戸籍まで続けていかなくてはなりません。

亡くなった人が預貯金口座を持っていると、その預貯金口座からお金を移すときに、金融機関から必ず戸籍の履歴を求められます。

過去に遡ったとき、その戸籍に残った生存者がいれば戸籍謄本となりますが、多くは全員が亡くなっているか、婚姻等で抜けて除籍謄本になっているでしょう。

除籍謄本の手数料が750円で高いと説明したのは、過去に遡るたび750円取られるので、出生時の戸籍に遡るまでの回数が多ければ多いほど出費が多くなるからです。

例えば、存命時に転籍を繰り返していると、毎回の転籍で除籍になった戸籍が存在します。それらの除籍謄本も過去を繋げていく上で必須になるため、日本全国を転々として転籍を多くしていると、除籍謄本の枚数が多くなっていきます。

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