協議離婚は優れているのか今一度考えてみたい

誰もが知るように、協議離婚とは夫婦が離婚届に署名押印して、役所に届けることで離婚が成立するとても簡単な離婚方法です。

離婚というのは、婚姻もそうであるように、人生において非常に大きな出来事ですが、最終的には紙切れ一枚で決まってしまうほど簡単にできます。

考えてみると、結婚式のスピーチで「忌み言葉」と呼ばれるNGワード、例えば「別れる」や「切れる」といった言葉を使わないように気を付けるのは、縁起や慣習だけではなく、夫婦の絆が脆く壊れやすいことの裏返しかもしれません。

それはさておき、協議離婚のメリットとは一体何でしょうか?

ここまで読んだだけで、メリットは何も無いような流れになっていますが、メリットは確かにあります。ただ、そのメリットが重要視されるほど大きいかといえば、そうでもないのでは?という記事です。

争わないで協議離婚する夫婦は少ない

離婚する夫婦の多くは、愛情が冷めて無感情な他人同士に戻るのではなく、何らかの争いがあり時には憎しみ合って分かれます。にもかかわらず、建前上は合意が必要な離婚届にハンコを押すのですから、諦めの境地なのかもしれません。

それ以前に、離婚は夫婦の問題で、夫婦だけで解決するべきという意識が強く、家庭裁判所を介在させることに抵抗があるのでしょうか。

夫婦の両方が同じように愛情を失い、同時期に離婚を希望するのは僅かです。大抵は、一方から離婚を切り出し、他方は引き留めようとするか考えた末に合意します。

離婚全体の9割弱が協議離婚であることを考えると、どのくらいの人が離婚したくない心境から諦めて離婚に至るか知りたいところです。

離婚の総数協議離婚割合
2009253,353222,66287.9%
2010251,378220,16687.6%
2011235,719205,99887.4%
2012235,406205,07487.1%
2013231,383201,88387.3%
2014222,107194,16187.4%
2015226,215198,21487.6%
※資料:2015年人口動態調査
子供がいなければ、離婚後は赤の他人として新たな人生を送ることに支障はないとしても、子供がいればそうもいきません。親子関係は永遠に続くからです。

争って離婚した夫婦の一方が、離婚後に子供に会えなくなるケースは非常に多いです。そして、養育費と面会交流が交渉の道具にされるほど、離婚後の親子は、もはや親子という当然に存在する関係から、金銭的対価を必要とする関係になるのです。

これは親子にとって不幸以外の何物でもないですが、そのくらい養育費を支払わない親がいて、面会交流をさせない親がいるということです。

離婚時の約束など、離婚後にはあって無いような扱いを受け、離婚後に調停を申し立てる元夫婦も相当数いることを踏まえれば、協議離婚は争いのない夫婦(そんな夫婦が離婚するか疑問ですが)にしか馴染まないでしょう。

前置きはこのくらいにして、協議離婚は優れているのか考えてみます。

本当のメリットは時間とお金ではない

冒頭で述べたように、協議離婚は手続が離婚届だけで、夫婦の合意があれば時間とお金のどちらもかからない唯一の離婚方法です。

ただし、時間がかからないというのは、離婚届を出すことができる状態まで話合いが行われた後の話です。夫婦がお互いに離婚をしたいと考え、財産分与などの離婚条件もすんなり決まるなら、確かに時間はかかりません。

現実はそうでもないでしょう。一方が離婚を切り出してから、離婚届が提出されるまでの時間は調べようもないですが、そんな簡単に離婚できるのでしょうか?

それでも、調停離婚を始めとする家庭裁判所での離婚は、1ヶ月に1回程度しか期日がなく、話合いが自由にできる点では断然に協議離婚が優れています。

お金は協議離婚のほうが高いかもしれない?

協議離婚は、役所にある離婚届に記入して提出するだけで無料だと思っていたら違います。なぜなら、協議離婚での約束が守られないかもしれないからです。

唯一、離婚時に全ての清算が終わって、離婚後に1つもトラブルの種を残さない協議離婚はお金がかかりません。約束が破られれば、離婚後も争いが起こり、良く言われる「タダより高いものはない」になってしまいます。

そこで作成されるのが離婚協議書で、離婚協議書だけで約束は保証されませんから、さらに権利を保護するには、公正証書(強制執行認諾約款付き)にする必要が出てきます。この公正証書を作成する費用が高いのです。

公正証書の原案を作るだけでも難しく、原案から公正証書作成の委任までを弁護士、司法書士、行政書士に頼むと、普通に数万円~10万円以上は取られます。

そして、公正証書を作成すること自体にも手数料がかかり、その内容(支払い義務の金額)しだいで、これまた数万円取られます。

離婚調停は数千円、離婚裁判でも2万円程度(慰謝料請求は除く)あれば可能で、調停調書や判決書が公正証書の代わりになるため、トータルで考えるとお金の面で協議離婚が優れているとは言えません。

最大のメリットは自由に離婚条件を決められること

協議離婚の優れている点、それは「当事者が自由に離婚条件を決められる」ことに尽きるのではないでしょうか。自由といっても、親権者の指定が必要など、法律の制限を受ける部分もありますが、契約行為としての自由度は保たれます。

逆に考えると、協議離婚は離婚条件を当事者の裁量に任せているとも言えます。不公平な条件で離婚したからといって、訴え出ない限り誰も関与してきません。

しかし、調停では夫婦が平等であることを前提として、事情を考慮しながら調整して離婚条件を決めます。当事者の合意があれば、社会通念上許される範囲で偏った離婚条件も可能ですが、偏った離婚条件だからこそ調停が申し立てられるのであり、それを是正して着地点を見いだすのが調停です。

もっとも、調停離婚に公平性があることは、協議離婚で一方的な離婚条件を望む側にとってデメリットかもしれませんが…

人によっては戸籍の記載にこだわることも

離婚した事実は、どのような離婚方法でも変わりませんが、戸籍には離婚の種別が記載されます。そのため、協議離婚ではないこと(離婚に争いがあったこと)を知られるのが嫌な人は、何が何でも協議離婚で離婚するべきです。

戸籍の全員が出ていく又は亡くなると、戸籍は除籍簿に入り、除籍簿は150年間保存される決まりです。もし子孫が平均30歳で子供を産むとすれば、5代先の子孫ですら、戸籍を辿ってこの先祖は協議離婚ではなかったと知ることができます。

協議離婚のデメリットは大きい

簡便な手続と引き換えに、協議離婚のデメリットは深刻です。話合いがこじれやすい点を、協議離婚のデメリットに挙げる意見も多いですが、離婚調停なら冷静に話し合えるというものではなく、協議離婚だからこじれるのでもないでしょう。

協議離婚のデメリットは、夫婦で決めた離婚条件(契約)が、不平等かつ不安定になりやすい点に他なりません。どのような離婚でも、離婚の効力に違いはなく、デメリットは離婚成立後の元夫婦に生活不安を与えます。

夫婦間の権力差が離婚条件に影響する

近年になって、法整備の面でも人々の意識でも社会的にも、男女平等の方向には向かっているとされてます。しかし本当にそうでしょうか?

社会では多方面で未だに性差別はなくならず、家庭裁判所ですら幼児の親権者は圧倒的に母親とする傾向が強いです。そのような中、プライベートである夫婦間の権力差は、社会よりも大きいと考えられます。

ここで言うところの権力差とは、社会的地位や収入の差、精神的な夫婦間の優劣、時には性別までも関係します。

本人の気質によっては、権力の大きい側から強引に押し切られて、不利な条件で離婚するしかなくなるケースもあるでしょう。または、どうしても離婚したい側が、不利を承知で条件を飲み離婚するなどです。

夫婦間の知識差が離婚条件に影響する

離婚の際に決めなくてはならないことは多いです。しかし、その知識には個人差があり、また法的な知識差も大きく影響してきます。

例えば、年金分割制度は制度自体を知らない人も多く、請求に2年の時効があることはもっと知られていません。年金分割制度で年金が減ると知っている側が、知らない側へ教えずに協議離婚を成立させ、2年間じっと時効を待つこともできます。

他にも、財産分与があるのに財産を隠し、隠された相手は財産がありそうだと知りながら調査することもできずに、泣き寝入りすることも考えられます。

このように、協議離婚では一方が不利なことは隠し、有利なことだけ含めた、不平等すぎる離婚条件もあります。調停委員のような立場の人がいないので、客観的に公平性のある離婚条件とは程遠いでしょう。

参考までに、協議離婚で話し合うべき内容は以下でも触れています。

夫婦の合意と、役所への離婚届で成立する離婚が協議離婚です。協議離婚をすること自体に費用は必要なく、離婚届を出すことができるかどうかがカギです。 離婚届を出すだけの簡単な手続による離婚は、協議離...

十分な話合いがされずに離婚してしまう

こちらも大きなデメリットで、離婚後に話合いが必要と気付いても、雲隠れしたように所在が掴めなくなることは少なくありません。

迷いはあるにしても、一度離婚をすると決めたら、早く離婚したいのが人の心情で、離婚を急ぐあまり条件を十分に話し合わないことが原因です。

また、夫婦が険悪な状態になってしまうと、離婚条件を話し合うどころか、別居して離婚届すら郵便でのやり取りになって離婚することもあります。

離婚することで、夫婦には権利と義務が生まれる認識が不足しているのですが、連絡も取れない相手と後から何を話し合いたくても無駄です。

離婚時の約束が破られやすい

協議離婚だから離婚時の約束が破られやすいのではなく、約束が破られるのを防止するために、何の手段も行わずに離婚することが多いという意味です。

口約束での協議離婚は、約束を破ってもらうためにあると言っても良く、そのくらい他人になった後は約束が守られません。

調停離婚の調停調書は、約束が破られたときに強制執行を可能にする、債務名義と呼ばれる文書の1つです。協議離婚で債務名義は得られないので、離婚協議書の内容を、強制執行認諾約款付きの公正証書にします。

既に説明したように公正証書の費用は高く、調停調書があろうと公正証書があろうと、約束を守らない人は守りませんが歯止めにはなります。

本当に協議離婚しかないのか考えてみよう

協議離婚を否定的なニュアンスで書いてきましたが、調停制度を知ってもらうためのサイトだからといって、むやみに調停離婚を勧めるものではありません。

調停は時間と労力が協議離婚よりも大きく、すぐにでも協議離婚することが、人によっては大きなプラスになるかもしれないからです。

ただ、協議離婚が優れているのは、手続が楽、お金が不要といった「現在」であって、調停離婚が優れているのは、調停調書による「将来」への備えです。

協議離婚で将来を担保するには、全ての離婚条件を網羅して、きちんと公正証書を作った上で離婚する必要があることだけは忘れないでください。

協議離婚をするための離婚調停もある

離婚調停を申し立てて離婚への合意が成立しても、必ず調停離婚しなくてはいけないルールなどありません。普通は調停離婚するために調停を申し立てますが、取り下げて協議離婚することもできます。

取下げ以外にも方法はあり、調停で離婚を成立させず、協議離婚への合意を成立させます。こちらは、調停成立ですから調停調書が作られ、離婚条件も含めて調停で話し合われた結果が記されます。

離婚条件が記載された調停調書さえあれば、公正証書なしで協議離婚しても、調停調書で強制執行可能です。調停を取り下げて協議離婚すると、合意した離婚条件が担保されないので、協議離婚への合意で調停を終わらせるほうが良い方法です。

ただし、注意点もあるので詳しくは以下をご覧ください。

なお、いくら調停調書が欲しいからといって、離婚や離婚条件には争いがないのに、調停を申し立てるわけにはいきません。調停はあくまでも争いを解決するために利用する手続で、調書の作成が目的では申立てを受理できないからです。

したがって、問題なく協議離婚できる状態において、公正証書作成の費用が惜しくても、離婚調停を申し立てるには口裏を合わせた嘘の争いが必要です。

もっとも、協議離婚で不満の残る離婚条件は1つくらいあるでしょうから、その時点で離婚調停を申し立て、合意している離婚条件の確認と、不満のある離婚条件を交渉した上で、協議離婚の合意を成立させてしまえば良いでしょう。

まとめ

協議離婚は、手続が簡単で夫婦が全てのことを決められるメリットと、法的性質を含んだ離婚条件がきちんと決められない、または不平等に決められて離婚してしまうデメリットを併せ持ちます。

一方で調停離婚は、調停委員が介在して離婚条件を客観的に判断してもらえる代わりに、時間がかかるというデメリットもあります。

どちらが優れているか結論はなく、将来の生活を不安定にしないためには、協議離婚で公正証書を作るか、離婚調停で調停調書を作るしかありません。

調停が面倒だから、家庭裁判所でプライベートな内容を調停委員に話すのは恥ずかしいからという理由だけで、単に離婚調停を嫌うのは、離婚後の生活を不安定にしかねないリスクを負うと自覚しましょう。

安易な気持ちで早急に協議離婚してしまうと、結局は離婚後にトラブルを起こし、離婚後に調停を申し立てることになってしまいます。

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