離婚届の不受理と不受理申出の効果

離婚には、夫婦だけではなく子や親族などにも影響する、身分関係の大きな変動を伴うため、離婚を成立させる離婚届は、極めて慎重に受理されるべきです。

しかしながら、離婚届による簡便な離婚を可能にする協議離婚制度は、偽造や虚偽の離婚届までも受理される結果となり、この点はしばしば問題になるところです。

そこで、役所による離婚届の受理・不受理が重要となるのですが、協議離婚の離婚届には、本人以外からの届出を不受理にしてもらう不受理申出の制度があるとはいえ、制度が十分に周知されているとは言えません。

役所が離婚届を受理できないとしたら、次の3つに絞られるでしょう。

  • 離婚届に記載不備がある
  • 疑わしい離婚届が提出された
  • 不受理申出がされている

これらについて、以降で説明していきます。

離婚届の記載不備では不受理にならない

離婚届が提出されたとき、役所では受付→審査→受理という流れで処理します。離婚届に必要な事項が記載されていない、または記載されていても不備があり、受理できないことが明らかなら、受付(受領)せずに必ず補正を求めてきます。

その場で補正ができなければ、持ち帰って補正するか(夫婦以外が届け出ると補正できない)、後で役所に出向いて補正するどちらかです。ただし、捨印で補正できる軽微な記載不備は、役所側で補正することもあります。

つまり、最初から補正を求められる離婚届は、不受理になる以前に受付すらされないのであって、受理・不受理を決定する段階に達せず不受理にはなりません。

補正の結果、離婚届が受領されると、届け出た側の心情としては、受け取ってもらったので受理のように思うでしょうか。しかし、それは受理ではなく受付です。

受付後、記載事項が適法であるかどうかの審査を経て、初めて受理決定されます。受理決定のタイミングは、受付日よりも遅れることもありますが、受理されると受付日に遡って効力が発生するため、離婚日は受付日となります。

受付後に記載不備が見つかった場合

不備がないものとして受付しても、審査の過程で不備が見つかることもあり、役所の職権で補正できなければ本人を呼び出して補正させます。離婚届に平日連絡可能な連絡先を書く欄があるのはそのためです。

この段階でも、受理・不受理の決定には至っておらず、不備の補正と再審査によって、受理・不受理が決定されます。審査で不適法との判断なら不受理です。

また、離婚届での事例は少数だと考えられますが、受理決定がされた後に、記載不備が見つかる可能性もないとは言えないでしょう。受理決定の後は、追完届を提出させることで不備を補正する扱いです。

このように、受付前・受付後・受理後のいずれでも不備の補正は可能なため、不備があることを理由に不受理にはならず、不受理は記載が不適法なときだけです。

ちなみに、離婚届の記載が不適法であるとき、役所が見逃して不受理とならずに受理されてしまっても、離婚の効力は妨げられません(民法第765条第2項)。

離婚届を正しく書けば受理される

なるべく不備がないように離婚届を書くのが望ましいのですが、人生に何回も書く書類ではないので、書き方がわからないこともあるでしょう。

離婚届は法律で記載事項が決まっており、標準様式が存在します。各役所では、標準様式に従った用紙を使っているため、書き方はどの離婚届もほとんど同じです。

知っていれば書き方が難しい書類でもありませんが、ここでは離婚届の書き方を説明しませんので、もしわからなくなったら以下を確認してみてください。

参考:離婚届の書き方~届出日から証人まで全て解説!

疑わしい離婚届は不受理になる可能性がある

離婚届の記載事項に不備がなく受付されたとしても、明らかに疑わしい離婚届が提出されることは考えられます。典型例では、届出人の署名や承認の署名が全て同じ筆跡で、誰が見ても偽造や代筆を推測できる場合です。

もっとも、偽造した離婚届を出す人は、見抜かれないように工夫はするでしょうから、明らかではなくても疑いが残る(疑義といいます)状況において、役所は離婚届の受理・不受理をどのように決定するのでしょうか?

役所には事実調査をする権限がない

離婚届に対する役所の審査は、記載事項の適法性を問う形式的審査に留まり、具体的に事実確認をする実質的審査の権限はないとされています。

ただし、形式的に記載が正しいだけで全て受理するのではなく、疑わしい離婚届は直ちに受理せず、不受理申出があれば不受理とすることで、離婚意思に基づいた決定ができるように、形式的審査を超えた範囲の審査もされています。

それでも実質的審査権を持たないゆえに、離婚届に届出人として記載された夫婦を呼び出し、事情聴取をするようなことはせず、管轄の法務局に指示を仰ぎます。

事実調査は法務局が行う

法務局は、役所から疑義のある離婚届について照会を受けると、当事者に事情を聴くなど必要な事実確認を行い、その上で役所に対して受理・不受理を指示します。

役所は法務局の指示によって受理・不受理を決定するだけですが、法務局から不受理の指示があり、偽造に犯罪の疑いがあるときは告発の可能性もあります。

告発するかどうかは偽造内容と役所の判断しだいなので、偽造された離婚届が出されたからといって、告発を期待できるものではないです。なお、役所が離婚届を受理してから疑いが生じたときでも、法務局の指示を仰いで処理されます。

不受理申出で離婚届は不受理になる

離婚届では、届け出た人の本人確認はされるとはいえ、当事者以外による届出も許されており、当事者が書いた真正な離婚届であるかも確認されません。

極端な話をすれば、記載内容に不備がない離婚届であれば、誰が書いて提出しても受理されて、当事者が知らないうちに離婚が成立してしまうのです。

さすがに他人の夫婦を離婚させようとする人は少ないですが、当事者が離婚してくれない相手に内緒で、勝手に離婚届を提出するのは十分に考えられるでしょう。

夫婦の一方に全く離婚意思がない虚偽の離婚届に対応するため、離婚届の届出人として記載された夫婦で、届出時に本人確認されていない人に対しては、離婚届の受理後に確認通知が送られます。

しかし、確認通知は「離婚届を受理していいですか?」ではなく、「離婚届を受理しました」という通知なので、離婚届の受理を止めることはできません。

そこで、自分は離婚したくないときに利用するのが、離婚届の不受理申出です。いつでも申し出ることができて、原則として取り下げるまで有効です。

不受理申出によって、自分が提出する離婚届以外は不受理にされ、もし他の誰かが勝手に離婚届を出すと、不受理になった通知も受けられます。

不受理申出の制度と、不受理申出書については、別ページを用意しているので、詳しく知りたいときは参考にしてみてください。

参考:不受理申出と不受理申出書の書き方

不受理申出が有効なのは協議離婚だけ

離婚届を受理されたくないからと、役所に不受理申出をしても、家庭裁判所が関与した裁判離婚(調停離婚、審判離婚、和解離婚、認諾離婚、判決離婚)によって提出される離婚届については受理されます。

これは、協議離婚では離婚届の受理で離婚が成立するのに対し、裁判離婚では離婚届を出さなくても(出す義務はあります)離婚は成立しているからです。

協議離婚で提出される離婚届のように、届出によってその効力(離婚届なら離婚の効力)が発生する届出を創設的届出といい、裁判離婚で提出される離婚届のように、役所に戸籍変動の報告をする役割しか持たない届出は報告的届出といいます。

ですから、不受理申出をしたからといって、どのような離婚届も不受理にできるのではなく、家庭裁判所が関与して離婚が決まったときは、離婚は成立済みで不受理申出の意味がないことは知っておきましょう。

なお、裁判離婚による離婚届は、家庭裁判所によって作成された、離婚の成立を証明する書類(調停調書、審判書、和解調書、認諾調書、判決書)を添付しなくてはならず、裁判離婚による離婚届の偽造は極めて困難です。

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