調停では欠席が許されてしまう

調停は、当事者同士が話し合うことを手段とする制度ですから、話合いが進まなければ絶対に成立では終わりません。当事者(または代理人)が出席しない調停は無意味なので、調停すら行えないことになってしまいます。

調停の申立人が出席しないのは考えられず、欠席するとしたら相手方になりますが、その結果、話合いができないままでは調停が不成立になります。実際には不成立にしてしまうのではなく、調停委員から取下げを勧められることも多くあります。

いずれにしても調停が成立しないので、成果を期待していた申立人はイライラしますし、審判や裁判が視野に入ってくるので、今後も考えなくてはなりません。ここでは、調停を欠席すること自体に対する解説をしていきます。

調停の出席は任意と変わらない

調停では、話合いを行う日(調停期日といいます)に裁判所から呼出しがあり、正当な理由なく応じなければ、5万円以下の過料に処せられます(家事事件手続法第258条による同法第51条の準用、民事調停法第34条)。

しかし、申立人にとっては不満は残るでしょうが、過料が命じられるケースは極めて異例で、欠席によるペナルティは実質的に無いのと変わりません。

時には話をまとめないために、調停を申し立てられた相手方が、わざと調停に行かないという手段もよく使われます。調停は不成立(不調に終わるともいいます)になっても、その時点では欠席側に不利な決定がされるということはないのです。

調停の欠席が戦略の場合もある

調停では、調停委員が当事者の合意を目指して働きかけるほか、それまで話し合った内容に応じて解決案を提示することもあります。

多くの解決案は、双方の言い分を考慮したものですが、合意せずに有利な条件で終わらせようとする当事者がいることは、別に珍しくもないでしょう。

調停の欠席が、単に話合いを拒否しているのならともかく、調停の申立人をじらして、より良い条件を引き出すために行われる可能性は否定できません。

調停の申立人は、一刻も早く解決したいから申し立てるのであって、少しくらいなら妥協してでも解決したいという申立人の心理を逆利用する手口です。

調停で決まってしまえば、確定した判決と同じ効力なので、こうした駆け引きも普通に起こり得ます。一種の戦術でもあり、誰か他の人に入れ知恵されて行うこともあるのでしょうが、残念ながら妨ぐ方法はありません。

過料制裁はなぜ発動されないのか

法の番人である裁判所が、法律に規定された過料を事実上でないがしろにしている点について、調停の申立人としては多いに疑問が残るのではないでしょうか?

ところが、過料の制裁を求めて(そもそも過料制裁は裁判所が決めるので当事者に申立権はないですが…)、仮に発動されたとしても、出席してくる相手方はそれほどいません。

出席する意思があって、どうしても出席できないなら、裁判所書記官に連絡して期日を調整してもらうか、代理人の弁護士に依頼するはずです。

つまり、調停を欠席する人は、最初から話し合う意思がなく、過料の制裁を受けたからといって、話し合う気になるものでもないでしょう。ましてや、過料は申立人に入るお金ではなく、状況は少しも好転しません。

調停は話合いのためにある制度で、過料の制裁が余計に相手方の態度を硬直させるようでは逆効果です。身柄を拘束して裁判所に連行するわけにもいかず、杓子定規に過料制裁を発動しても、効果は見込めないのです。

実際には、呼出状などで「出席しないと5万円の過料ですよ」と通知するだけでも、中には慌てて、もしくは仕方なく出席してくる人も多くいます。

過料を知っていて欠席する人(本当に過料制裁されても経済的な影響が小さい人)は、過料制裁で出席するでしょうか?

ですから、過料は規定があることで出席させる効果を持っているのであり、過料制裁しなければならない状況では、むしろ意味がないとも言えます。

調停の不成立と取下げの違い

調停の不成立は、調停委員会(裁判官と調停委員)が、当事者に合意が見込めないと判断するか、合意を不当として調停を終了させるものです。

欠席が続けば合意以前の問題ですし、相手方が合意の拒絶(合意内容にかかわらず合意すること自体の拒絶)や欠席を明言していると、続けても無駄なので不成立になります。

対する取下げですが、申立人の判断や調停委員の勧めにより、取下書を提出して行うものです。ただし、調停期日に取下げの申出がある場合は口頭でも可能で、取り下げた場合には、調停そのものが開かれなかったと扱われます。

欠席を原因としたとき、不成立と取下げの判断基準は不明確で、相手方の意思確認(調停に参加する意思がない、話し合う気がない)が一応できていれば不成立、相手方から何の意思表示も行われず、欠席が続けば取下げを勧めることが多いようです。

調停だけで終わるなら大した違いはない

不成立でも取下げでも、調停で結果が出なかった点は変わらず、再度調停を申し立てることに制限はありませんが、裁判を起こすとなると事情が変わってきます。

調停を申し立てた事件で訴えを提起する場合、調停前置主義の対象になる事件では、調停では合意が得られなかったことを求められます。

具体的には、調停不成立証明書や調停不成立調書謄本を、提訴のときに訴状へ添付することで、調停前置が必要ないと証明することになります。

ところが、取下げでは調停がなかったことになるので、調停不成立証明書等が当然ありません。したがって、取下げでは調停前置を満たさなかったように思えても、調停で話し合われた実態があれば、取下証明書や事件終了証明書で代えることができます。

調停の記録自体は残っているので、不成立の証明書や調書はなくても問題なく、調停で話し合う余地がないと証明できるだけで足りるからです。

そもそも、調停前置主義の対象事件で、調停不成立証明書等を提出するのは、書類として必要なのではなく、調停させたほうが良いかどうかの判断のためです。

不成立であれば明確に話合いができないとわかりますし、取下げでもその経緯から調停前置に相当すると判断されれば、提訴することは可能です。

ちなみに、調停が不成立で終了した場合、2週間以内に訴えを提起すれば、調停申立て時の費用(収入印紙)は、提訴費用と扱われるので少しお得です。

審判・裁判の欠席は非常に不利

調停で欠席が許されるからといって、審判・裁判でも同じように欠席が許されるかというと全く話が違います。欠席することは、自分に争う意思がない、つまり相手の主張を認めたようなもので、ほとんどの場合は請求側が有利です。

そのため、本当に無知や無関心なら欠席してしまう可能性はありますが、大抵は審判・裁判になると出席(もしくは代理人の弁護士が出席)します。

もっとも、家事事件では身分形成など人の将来に重要な事項を含むので、一度の欠席で判断してしまうのは早急として、期日を再調整するかもしれませんが、理由なく何度も欠席すると、申立人側の主張で判断されるでしょう。

調停の欠席は審判・裁判で不利になる?

家事事件における審判は、調停ができない別表第1事件の審判と、調停と審判のどちらからでも申立てができる別表第2事件の審判に分かれます。

別表第2事件では、調停不成立で審判に自動移行しますので、いわば調停と一連の手続になっており、不成立になった調停申立て時に審判の申立てがあったと扱われます(家事事件手続法第272条第4項)。

ですから、調停での欠席は、裁判官が審判する上で1つの資料として扱われるかもしれず、別表第2事件における調停の欠席は要注意です。

一方の裁判ですが、調停と裁判は別の手続として扱うのが建前です。

調停に欠席をして、調停委員会を構成する裁判官や調停委員の心証が悪くなっても、裁判に何ら影響することはありません。提出された証拠と事情から、審理を行って判決を出すのが裁判という手続です。

ただし、裁判官が少ない地方の裁判所など、調停と裁判を同じ裁判官が担当することも十分に考えられるでしょう。そのときに、話し合う意思を見せずに欠席してきた事実が、裁判官にどう響いているかは定かではありません。

解決しようと調停を申し立てた原告と、解決する気がなく調停を欠席し続けた被告で、裁判官の心証が原告に傾いても人間なら何ら不思議のないことです。

調停の欠席が、審判・裁判に不利とまでは言いませんが、不利にはならなくても有利になる理由がないのは確実で、争いを当事者間で解決しようとしない姿勢は、どちらかというと社会通念上において否定されていることを覚えておきましょう。

まとめ

調停の欠席は、事実上で許されているのも同然ですが、だからといって、身勝手な都合での欠席が、何の影響も与えないかというとそうではありません。

正当な理由があって都合が付かない場合には、きちんと裁判所書記官に連絡しておくことで、期日の再調整ができず欠席になってしまっても、調停委員や裁判官の心証まで悪くするようなことは考えにくいです。

また、調停を欠席することで前に進まなくなったとしても、調停は最終手続ではないため、その後は審判や裁判に移行していつか結論が出ます。

むしろ、柔軟な対応が可能な調停のうちに出席しておくべきで、どうしても出席できないなら、相談も兼ねて弁護士へ依頼することも考えてみましょう。案件にマッチした弁護士を案内してくれるサポートサービスもあります。

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