有価証券/投資信託/会員権などの財産分与

有価証券・投信信託・会員権など(以下、株式等とします)は、婚姻中に夫婦の収入で購入したものなら、名義にかかわらず財産分与の対象になります。これは、婚姻中に得られた現金という共有財産を、株式等に換えるだけなので当然です。

しかし、株式等は流動性が高く、投資目的である場合には売買も頻繁にされますので、どの時点でその存在を確定させるかは、争いが大きくなりやすい点です。

また、株式等は常に評価額が上下するため、どの時点で評価するのかも大きく、保有株式等が多ければ多いほど、評価のタイミングが重要です。

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いつの時点の株式等を対象にするか

婚姻前からの個人資産、または婚姻中に個人が受けた贈与や相続などの財産は、特有財産として扱われるため、株式等で運用しても財産分与の対象になりません。

一方で前述の通り、夫婦の協力で得られた収入から株式等を購入すれば、共有財産ですから財産分与の対象です。そこで、夫婦の協力とはどのような状況を示すのか考えてみると、一般的には同居して共同生活をしている状況です。

この場合の同居とは、現に同居していることだけを指すのではなく、単身赴任等で別居していても、夫婦が経済的に協力した生活をしていることを意味します。また、生計を一にするという言い方もされます。

したがって、夫婦の協力が失われた別居時を、対象財産の基準時とするのが実務上の運用です。ただし、別居の全てで協力が失われているとは言えず、単身赴任等の事情もあるため実態に即して別居時を判定し、争いがあれば家庭裁判所の判断です。

別居には離婚による別居も含まれる

別居時とは、婚姻中の別居に限定されず、離婚による別居も含まれます。つまり、婚姻中に関係が破綻して別居したならその別居時、離婚で別居したなら別居時=離婚時です。どちらの場合でも、別居時が婚姻関係の破綻を意味するので問題ありません。

しかし、離婚後も同居しているとどうなるでしょうか?

そもそも、離婚後に同居する関係の夫婦(事実婚)で、法律上の離婚を機に財産分与をすると、課税を免れるための仮装とも捉えられかねませんし、そのような良好な夫婦関係で、財産分与請求調停が申し立てることも考えられません。

また、事実婚の夫婦では、関係解消時に財産分与が認められることを踏まえれば、離婚後に同居を続ける場合でも、関係解消による別居時を基準とするのが相当になって、やはり別居時の基準で問題ないことになります。

同居中でも別居扱いになることはある?

同居から離婚して別居に至れば、そのタイミングが対象財産の基準時になることは説明の通りです。しかし、同居している夫婦の全てが協力関係にあるとも限らず、経済的にも完全に分離して同居していることもあるでしょう。

財産分与の対象とするには、夫婦の協力で形成された財産であることが必要で、同居中でも夫婦が非協力的になった時点を、対象財産の基準時とするのが理屈です。

ところが、別居では客観的に明確な基準を得られるのに対し、同居中に基準時を求めるのは、当事者の認識が異なれば争いになります。家庭裁判所が夫婦の内情まで知ることは困難ですから、別居時または離婚時になっても仕方がないかもしれません。

いつの時点で株式等を評価するか

株式等は別居時の時価ではなく、現時点での時価で評価されます。これは調停なら成立時、調停不成立で審判移行または審判申立てなら審判時、離婚訴訟なら口頭弁論終結時での評価ということです。

そうしないと、基準とした別居時から株式等の評価額が変わった場合に、過不足のある財産分与になってしまうからで、現金のように評価が変わらない財産と違って、不動産でも同じように判断されます。

もっとも、評価する瞬間の正確な評価額を求めるのは現実的ではなく、調停、審判、訴訟において提出された、株式等の残高証明書や顧客勘定元帳から算定するでしょう。調停や審理の最中に、高騰・急落の事情がない限りはそれで問題ないはずです。

別居後に株式等が売られた場合

夫婦の協力が失われた別居後、株式等が売却されたとしても、現金に形を変えただけなので、売却金額がそのまま評価額です。ただし、売却には手数料を伴い、手数料については控除されます。評価時まで売らずに保有したと仮定する評価にはなりません。

その後、さらに株式等を購入していても、別居時を基準時とした株式等の評価額は、一度現金化した時点で確定されているので、評価額は動かないということです。

非上場株式の場合

上場株式と違って、非上場株式は価額の算定が困難です。したがって、非上場株式の場合には、会社経営の資料(財務諸表)を用いて、公認会計士や税理士等の有資格者に算定してもらわなければ、正確に評価することができません。

また、非上場株式会社の定款では、株式に譲渡制限(取締役会や株主総会の承認)を付けているのが普通ですから、株式での財産分与ができるとも限りません。その場合には、他の財産で非上場株式の評価額相当分を分与する工夫が必要です。

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