財産分与を不動産で行うときの4つの評価方法

財産分与の対象になる財産の中でも、不動産は特に評価が難しく、それは定価のない不動産では実際に売却してみないと価値がわからないからです。

また、売却すれば簡単に分割できても、そのままでは分割できない不動産だからこそ、いくらに相当するのか正しく算定しないと、不公平になってしまいますよね。

分与する側としては高く評価するほど他の財産を分与する必要がなくなり、分与される側としては低く評価するほど他の財産も分与してもらう余地があるわけで、不動産での財産分与は評価金額の影響がとても大きいです。

不動産の評価方法にはいくつかあり、評価方法によって金額は異なってくるため、どのように評価するべきか自分に得が大きい方法を選ぶようにしましょう。

不動産を評価する際の注意点

評価方法を説明する前に注意点ですが、不動産の知識が少ないと、単純に買った金額をそのまま不動産の価値だと思ってしまうことがあります。

財産分与は夫婦の協議で行うものですから、夫婦の合意があればいくらで評価しても構わず、買った金額で評価することも考えられるでしょう。

しかし、土地の場合は、地価が変動していない前提ならそれでも構わないのですが、建物の場合は、買った金額で評価することはあり得ません。建物には経年劣化があり、築年数が増えるほど価値は下がって当たり前だからです。

したがって、戸建て(土地と建物)を全体で評価する場合はもちろん、土地がほとんど含まれないマンションでは、なおさら買った金額よりも低い評価になります。

売却した仮定で評価する

不動産を評価することは、即ち今売ったと仮定したらいくらになるのか、つまり財産分与時点での時価を求めるのと等しいです。

不動産には1つとして同じ物件がないこと、売主と買主の交渉で売買価格が決まる性質から、相場はあっても定価はないので素人が適正な時価を知るのは難しいです。

それゆえに、夫婦それぞれの価値観ではなく、客観的な評価方法で時価を求めるしかありません。決して相手の言いなりにはならないように気を付けましょう。

分与する側は譲渡所得税に注意

始めのほうで、分与する側は高く評価されたほうが得だと説明しました。

例えば、財産分与全体で1,000万円を分与しなくてはならないとき、住宅が1,000万円の評価なら住宅を渡すだけで済みますが、800万円の評価なら残りの200万円を別の財産で分与しなくてはなりません。

逆に住宅が1,200万円で評価されれば、住宅を渡す差額として相手から200万円相当を受け取ることができて、高く評価されるほど得だとわかりますよね。

ここで注意したいのが、不動産での財産分与では分与する側に譲渡所得税が課せられることです。譲渡所得税とは、不動産を譲渡(一般には売却ですが財産分与も譲渡とみなされます)したとき、差益に対して納める税金です。

不動産が高く評価されるほど差益が出やすく、これが売却ならいくら差益が出ても売却代金から納税できるのですが、財産分与では何も収入がないのに課税されるため、差益が大きいと分与する側には非常に酷でしょう。

ですから、思ったよりも高い評価で財産分与できてシメシメ…なんて思っていると、翌年の確定申告でガーン!となることもあるわけです。

評価方法1:固定資産税評価額

ここから、具体的に不動産の評価方法を説明していきます。

不動産の所有者には、市町村(東京23区は東京都)から資産価値に応じた固定資産税が課せられ、毎年春頃に固定資産税納税通知書が送られてきます。

固定資産税納税通知書を見ると、土地と建物に分かれて固定資産税評価額(価格と書かれていることがあります)が記載されています。見たことがある人なら、知っている人も多いのではないでしょうか。

固定資産税評価額は公的な評価として信頼性も高いのですが、いくつか注意点があるので確認しておきましょう。

固定資産税評価額は時価よりも低い

固定資産税評価額は、実勢価格と呼ばれる市場相場よりも低く、なおかつ土地と建物で異なる次のような評価水準です。

  • 土地:地価公示価格の7割相当
  • 建物:新築価格の5割~7割相当に経年劣化を考慮

土地の評価で基準にされる地価公示価格とは、毎年国土交通省から公示される全国の地価で、市場取引でも参考にされる重要な指標です。

建物の場合、同等の建物を再建築したと想定した場合の価格(再建築価格といいます)を使うのですが、工事業者等の利益が含まれないので、一般的には新築価格の5割~7割程度とされ、築年数に応じて減価されます。

これらを踏まえると、固定資産税評価額を使う場合には、土地なら0.7で割った金額、建物なら0.6で割った金額を使うことで、妥当な価格に近くなります。

財産分与請求調停では固定資産税評価額を資料として提出することも多いのですが、そのまま使うと時価よりも低く、不動産を受け取る側に有利です(本当は価値の高い不動産を価値が低いとして受け取るため)。

固定資産税評価額は3年に1度の評価替え

評価額としての信頼性は高くても、固定資産税評価額は3年に1度しか変わりません。ということは、財産分与が行われるタイミングによって、最長で3年前の評価額になってしまい時価が反映されない可能性もあります。

それでも、3年間にどれほど資産価値の変動があるか考えると、あまり気にする必要はないともいえますが、新しい建物の場合には築年数が3年違うと売買価格も結構変わるので、固定資産税評価額を鵜呑みにするのは良くないでしょう。

古い建物でも固定資産税評価額はゼロにならない

建物の固定資産税評価額は、どんなに古くても再建築価格の2割を下限とします。ところが、現実の不動産売買では、古すぎる建物に価格は付きません。

その結果、十分に古い建物では、固定資産税評価額を評価に使うと時価(ほぼ無価値)よりも高くなり、これは不動産を手放す側にとって有利な状況です(本当は価値の低い不動産を価値が高いとして手放すため)。

評価方法2:実勢価格

実勢価格とは実際に売買されている価格のことですが、類似の物件について取引情報を集めていくと、大体の価格帯(相場)までは調べることができます。

ただし、取引情報はあまり公開されておらず、利用できるとしたら不動産取引価格情報検索か不動産取引情報提供サイトでしょうか。

不動産取引価格情報検索(土地情報総合システム)
不動産取引情報提供サイト(レインズ)

いずれも地域を絞り込んで過去の取引情報を検索できます。

取引情報はあくまでも参考価格

例えば、全く同じ間取りで隣り合ったマンションの部屋でも、どちらかがエレベーターに近いなどの理由で、同じ価格にはならないでしょう。同じ道路に並んでいる広さが同じ土地でも、僅かな立地の違いから異なる価格になるのが普通です。

このように、どの不動産も異なる条件を持っており、過去に取引された情報は、全て「異なる不動産の価格」でしかありません。隣の家がいくらで売れたから、自分の家も同じ価格で売れるというものではないのです。

したがって、取引情報はできるだけ近隣の類似物件を多く集めた上で、価格ではなく「価格帯」として参考にするべきです。

過去の取引情報は過去のものでしかない

三大都市圏のように取引が活発な地域なら、少し前の取引情報も出てくるかもしれませんが、公表されている取引情報は全ての不動産取引を網羅したものではなく、そもそも地方なら取引の絶対数も少ないです。

また、不動産相場は常に変動しますから、あまり古い情報をアテにしてしまうと時価を見誤ってしまいます。情報が古い・数が少ない場合には注意しましょう。

売り物件を調べてみる方法もある

過去の取引情報で不足する場合は、不動産のポータルサイトで、近隣の売り物件を調べてみるのも良いかもしれません。

夫婦が納得できる価格なら正確な時価である必要はなく、現在売り出されている物件の価格は、それなりに時価を反映しているからです。

その代わり、売り物件の価格は市場相場よりも少し高いことが多いです。要するに、誰でも高く売りたいので高い価格で売り出しますよね。

ですから、売り物件から判断する場合には割り引いて価格を考えましょう。

評価方法3:鑑定評価額

不動産鑑定士という資格を聞いたことがあるでしょうか?

不動産鑑定士は、不動産鑑定を業として行うことができる唯一の資格で、不動産の時価を調べるとしたら、不動産鑑定士の鑑定評価額が最も正確だと思われます。

国土交通省が行う地価公示でも、基礎となる価格は不動産鑑定士の鑑定評価額を使いますし、この分野で不動産鑑定士の右に出る者はいません。

デメリットはお金がかかること

不動産鑑定士は不動産の鑑定が商売なので、当然にタダで鑑定してくれず、どんなに安くても10万円以上はかかると思って間違いないです。

しかも、不動産の価格が高いほど、不動産鑑定士の報酬も高くなる料金体系になっており、一般的な住宅なら数十万円はかかるでしょう。そのため、鑑定評価額を出してまで不動産を正確に評価する人は少数派です。

もっとも、夫婦の主張が数千万円も異なるようなケースでは、無理に争って弁護士費用をかけるよりも、不動産鑑定士に鑑定評価額を出してもらったほうが、紛争の解決には実効性があってなおかつ安く済むのかもしれません。

評価方法4:査定価格

不動産会社は、営業の一環として無料で価格査定を受け付けており、査定価格にはリアルな取引相場を把握している不動産会社ならではの強みがあります。

価格査定は、本来であれば売却するつもりの人が利用するのですが、無料で査定依頼したからといって何かを契約する必要はないですし、むしろ価格相場を知りたい用途のほうが利用価値のあるサービスです。

また、複数の不動産会社へ同時に査定依頼できる一括査定サービスを使うと、複数の査定価格を比較できるので利便性も精度も高くなるでしょう。

不動産査定

価格査定には不動産会社の意向が出る

査定価格は時価を反映しそうに思えるのですが、必ずしもそうとも限らず、不動産会社の意向が査定価格に反映してしまうことがあります。

というのも、不動産会社が無料で価格査定をしている目的は、価格査定の依頼者に、価格査定だけではなく売却の依頼(媒介契約)もしてもらいたいからです。

そのため、依頼者に「高く売れそうだ」と思わせることも大切なのですが、相場から外れた高い価格で査定してしまうと、逆に信用を落としますよね。

ですから、相場に近い範囲で高めの査定価格を出してくる不動産会社が多く、これは時価という視点では明らかに余計な要素でしょう。

一括査定で複数の査定価格を比較するときは、最高価格と最低価格(最低価格は査定誤りの可能性)を外し、中間的な価格を参考にしたほうが良さそうです。

まとめ

不動産の評価には色々な種類があり、夫婦が妥当と認める価格であれば、どのような方法で評価しても構いません。

とはいえ、価値の低い不動産を高いと偽って分与したり、その逆で本当は価値が高いのに、良く調べずに安い価値で分与してしまったりと、分与する側・分与される側のいずれにも損得が起こり得ます。

一旦財産分与してしまうと後からやり直すことは難しいので、資産価値が高い不動産だけに、評価は慎重に行うべきでしょう。

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