養育費の取決めは離婚の3分の1しかされない

未成年の子がいる離婚では、離婚後に子を監護する親が、他方に対して子が成年するまでの養育費を請求することが多いです。

養育費の存在は、法律上で離婚を成立させる要件にはならなくても、現実に子を育てるにはお金がかかり、両親が分担して負担するのが当然だからです。

親としての養育義務は、離婚をしたからといって失われるものではなく、子と同居する親はもちろん、子と離れて暮らす親にも等しくあります。

したがって、養育義務に対して意識の高い親であれば、養育費を話し合って取り決めるプロセスは当然にあり、争うとしても金額の調整でしょう。

ところが、実態としては養育費を取り決めずに離婚するほうが多いようで、離婚後になってトラブルになるケースが後を断ちません。

ひとり親家庭への調査から見える実態

平成23年に厚生労働省が行った無作為抽出の調査では、母子家庭の37.7%、父子家庭の17.5%、全体で32.9%しか養育費を取り決めていない結果が出ています。

養育費の取決めあり養育費の取決めなし
文書あり文書なし不詳を含む合計
母子家庭(1,332)26.7%(355)10.4%(139)37.7%(502)60.1%(801)
父子家庭(417)10.6%(44)6.7%(28)17.5%(73)79.1%(330)
全体(1,749)22.8%(399)9.5%(167)32.9%(575)64.7%(1,131)
※データ:平成23年度全国母子世帯等調査結果報告
※養育費の取決めが不詳なものは表示していない

母子家庭が父子家庭よりも養育費を取り決めているのは、離婚後の生活に不安を持つ母親では、養育費を請求する割合が多いからでしょう。

それにしても、あくまで一部に対する調査結果だとはいえ、全体で3分の1しか養育費が決まっていない実態は、子の福祉から相当問題がありそうです。

平成24年の民法改正で、離婚届の用紙に面会交流と養育費の確認欄を設けるようになりましたが、記入がなくても離婚届の受理は妨げられません。離婚届では、面会交流・養育費の取決めがあるかないかをチェックするだけです。

文書で取り決めているのは約7割

養育費を取り決めているひとり親家庭のうち、文書で取り決めているケースは約7割です(399/575=69.4%)。文書の詳細は明かされていませんが、お金の支払いを口約束でするのは危険で、必ず文書で取り決めておくべきです。

また、文書で取り決めたとしても、念書、合意書、離婚協議書など私文書では、債務名義(裁判なしで強制執行を可能にする文書)にはならず、養育費が支払われないときの備えとしては不十分です。

私文書なら強制執行認諾約款付きの公正証書にするか、調停など家庭裁判所の手続を利用して、債務名義になる文書を作成するようにしましょう。

離婚方法と養育費の取決め

離婚には、夫婦が話し合って離婚することに合意し、離婚届を出すことで成立する協議離婚と、家庭裁判所手続で離婚する広義の裁判離婚があります。

離婚の方法には、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚(狭義)の4つがあり、裁判離婚には和解離婚、請求の認諾による離婚(認諾離婚)、判決離婚があるため合計6種類もあります。 ちなみに、夫婦の協...

離婚方法の違いによって、養育費の取決めが変わるかというと、母子家庭では協議離婚で養育費を取り決めずに離婚する割合が高く、裁判離婚では逆転します。

協議離婚裁判離婚
母子家庭(1,106)父子家庭(355)母子家庭(226)父子家庭(62)
養育費の取決めあり30.1%(333)14.9%(53)74.8%(169)32.3%(20)
養育費の取決めなし67.5%(747)82.3%(292)23.9%(54)61.3%(38)
※データ:平成23年度全国母子世帯等調査結果報告
※裁判離婚は調停・審判・判決・和解・認諾による離婚
※養育費の取決めが不詳なものは表示していない

父子家庭でも協議離婚よりも裁判離婚のほうが、養育費を取り決めている割合は高くなりますが、逆転するまでには至りません。父子家庭の父は、母子家庭の母に比べて収入が多く、養育費を請求する意識が低いからだと考えられます。

また、裁判離婚になっているのに、家庭裁判所が養育費の取決めをスルーして、離婚を成立させていることが不思議に思うでしょうか。

離婚調停や離婚裁判で、離婚と同時に養育費が争われるとは限らず、最初から養育費の請求がない場合は家庭裁判所も判断をしなかったのでしょう。

ただし、統計データよりも後の平成24年民法改正で、離婚時の面会交流と養育費が明文化(民法第766条)されたことを受け、当事者の請求がなくても、家庭裁判所は面会交流と養育費の確認をする運用に変えているはずです。

なお、親権と違い養育費の取決めは、離婚後でも調停・審判可能なため、離婚調停で養育費が請求されていても、離婚と親権の合意で調停を成立させ、養育費は離婚後に争いを続けるケースもあります。

養育費の取決めがされない理由

特に養育費を取り決めなくても、収入の範囲内で自ら養育費を支払う親がいる一方で、養育費を取り決めても、一切支払わない親もいることは、養育費の取決めだけで養育費が支払われるとは限らないことを意味します。

それでも、離婚後は他人となる夫婦が、離婚時に養育費を取り決めておくのは重要で、子の養育に必要な費用は確保しておくべきです。

なぜ養育費の取決めをせずに離婚してしまうのか。その理由についても調査が行われているので確認してみましょう。

 母子家庭(801)父子家庭(330)全体(1,131)
相手に支払う意思や能力がないと思った48.6%(389)34.8%(115)44.6%(504)
相手と関わりたくない23.1%(185)17.0%(56)21.3%(241)
交渉をしたがまとまらなかった8.0%(64)1.5%(5)6.1%(69)
交渉がわずらわしい4.6%(37)3.6%(12)4.3%(49)
相手に養育費を請求できるとは思わなかった3.1%(25)4.8%(16)3.6%(41)
現在交渉中又は今後交渉予定である1.0%(8)0.7%(8)
自分の収入等で経済的に問題がない2.1%(17)21.5%(71)7.8%(88)
子を引き取った側が負担するものと思っていた1.5%(12)8.5%(28)3.5%(40)
その他5.7%(46)4.8%(16)5.5%(62)
※データ:平成23年度全国母子世帯等調査結果報告
※理由が不詳なものは表示していない

主要な理由では、相手に支払う意思や能力がない(諦めている)、関わりたくないといった理由で、離婚するくらいですから相手に期待しない気持ちや、関わりたくないという気持ちも良くわかるところです。

母子家庭と父子家庭で決定的に違うのは、自分の収入等で経済的に問題がないとする経済力の違いです。父子家庭は、交渉したがまとまらなかったとする割合が小さいことから、交渉もしていない父が多いと推測できます。

また、子を引き取った側が負担するものと思い込んでいる回答が、父子家庭に多く見られます。この点も、父母の養育費に対する理解度の違いというよりは、父母の経済力の違いが大きいのでしょう。

つまり、子を引き取っても困窮する母は、必然で父に養育費を請求し、子を引き取っても十分に生活可能な父は、最初から母に負担させる意識が低いのです。

養育費は子のためにある

幼い子にとって、親が離婚をすると経済力が不足して、これまでと同じ生活ができない可能性があるなど、当たり前ですが知り得ません。

そして、養育費は扶養を必要とする子の意思ではなく、親の意思で勝手に決められ、養育費の取決めをするのもしないのも親しだいです。

これは、養育費の取決めをせずに離婚された子にとって、自らが両親に等しく扶養される権利を、親の意思でないがしろにされている状況ですから、子を監護する親としては、調停に持ち込んででも養育費を請求するべきでしょう。

相手と関わりたくない、交渉がわずらわしいなどは単に親の感情です。親は子を扶養する義務を負い、養育費を確保するのも親の義務だと認識して交渉をしていくのが、親の都合で離婚されてしまう子に対する責任だと言えます。

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