共同親権と単独親権

親権には父母が共同して行う共同親権と、父母の一方で行う単独親権があります。原則的には父母が婚姻していると共同親権、婚姻していないと単独親権です。

親権争いは共同親権でも単独親権でも起こりますが、共同親権から単独親権の争い、単独親権から単独親権の争いはあっても、単独親権から共同親権の争いは、それほど多くありません。

なぜなら、共同親権は婚姻や養子縁組を経由するので、共同親権者になるべき当事者や親子関係になる当事者双方の関係が良好だからです。

また、養子は養親の親権に服するため、親権者になり得るのは、実親だけではなく養親も含まれます。親権者は民法第818条で規定されています。

民法 第八百十八条

成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2  子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3  親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

養子が未成年のとき、養親が夫婦であれば、夫婦で養子縁組をしなければならず(民法第795条本文)養親の共同親権になります。

しかし、養子が配偶者の嫡出子である場合は、その配偶者と嫡出子は養子縁組できませんから、他方配偶者との養子縁組になり、実親と養親の共同親権です。

この状況は、連れ子で婚姻して、婚姻相手が連れ子と養子縁組する形態でみられますが、このときは単独親権から共同親権で争いが起こるかもしれません。

ただし、親権争いというよりも養子縁組の問題ですし、普通は再婚前に決めているはずですから、再婚後に争うことは少ないと思われます。

共同親権

共同親権になるのは、婚姻している実親同士、養親同士、実親と養親の他に、特別代理人と一方の親権者という例外的なケースもあります。実親、養親にかかわらず、父母が婚姻中であれば、原則的に共同親権です。

共同親権においては、親権者同士の優劣はなく、どちらの主張が尊重されるのでも、子に対する責任で差があるものでもありません。また、現に子と居住しているからといって、優先されるものではありません。

したがって、共同親権では親権を行うために共同親権者の同意が必要です。ただし、必要なのは同意であって、名義ではない点に注意が必要です。

子を代理してされた法律行為が単独名義でも、共同親権者の同意があれば有効である一方、共同名義でされた法律行為でも、相手方に悪意があれば無効です。

わかりにくいので例を示すと、子が何か契約をするとき、親権により子を代理して親権者が契約をすることは良くあります。

このとき、一方の親権者が単独名義で契約しても、他方親権者が同意している場合には、実質的に親権の共同行使となりますから契約は有効ですが、他方親権者の同意を得ていないと、親権の共同行使にならずその契約は無効です。

対して、一方の親権者が共同親権者の同意を得ずに共同名義で契約すると、こちらも実質的には親権の共同行使ではないため無効のように思えます。

しかし、それでは共同親権者双方の同意があると信じて契約した相手方は、契約が無効になる不測の事態で不利益を受けかねません。

そこで、相手方に悪意があり、共同親権者の同意がないと知って契約した場合だけ無効としているのです(民法825条ただし書き)。

さらに、子がする法律行為に同意を与える場合においても、共同親権者の同意を得ずにした場合は、共同親権者によって取り消すことができますから、共同親権では親権者に共通の意思がないと、法律行為が事実上できない事態に陥ります。

もっとも、共同親権でも日常的な判断まで共同ですることはなく、お互いの信頼に基づき単独で代理または同意され、他方の事後承諾もあるでしょうし、食い違いのほとんどは、家庭内で話し合われて何らかの共同意思が形成されます。

事実上の離婚で同意が得られない場合は?

では、既に婚姻関係が破綻した事実上の離婚状態にある夫婦で、話合いの余地が全くない場合はどうなるのでしょうか?

民法には、共同親権者の意思が相反している状況を解決できる規定がなく、考え方としては2つあります。

1.家庭裁判所に判断を委ねる

民法第766条は、協議離婚時に子の監護に必要な事項を定めるとしており、父母の協議が調わないとき、家庭裁判所が子の監護に必要な事項を定め、必要があれば子の監護について相当な処分を命じることができます。

民法 第七百六十六条

父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2  前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
3  家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
4  前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。

この規定は婚姻の取消し、裁判上の離婚、父が認知する場合に準用されますが、婚姻中に事実上の離婚状態にあっても類推適用できるとした判例もあります。

そこで、内容によっては、婚姻中でも子の監護に関する処分として、家庭裁判所に調停または審判を申し立てることは可能でしょう。

もしくは、親権に関して夫婦の協力ができない状態とも言えるので、夫婦間の協力扶助に関する処分に該当するかもしれません。

いずれにしても、家庭内で決めるべきことまで何でも家庭裁判所が判断できるとは限らないため、申立てが許されるかどうかは事案しだいです。

例えば、子の進路を父母が争っているとして、家庭裁判所が子の進路を審判するのは、後見的な立場を考慮しても不適当だと考えられます。

民法に明文の規定がないことから、子に影響が大きい重要な事項について共同親権者に争いがある場合は、家庭裁判所が介入することに肯定的な見解があるのは確かです。この点は、今後の民法改正で是正されていくのかもしれません。

2.単独の親権行使で問題ないとする

前述の民法第818条では、第3項で父母の一方が親権を行うことができないときに、他方の単独親権行使を認めています。しかし、その詳細は規定していません。

通説では、親権を行うことができないときの例として、一方が親権喪失・停止で制限を受けたときや後見開始などによるか、事実上で親権を行使できない行方不明や収監、重篤な病状などによるとされています。

事実上の離婚で、単独親権行使が認められるかどうかは争いがありますが、配偶者以外との同棲、子との長期別居で、親権を行うことができないときに該当するとした判例があるので、単独行使できる可能性はあるでしょう。

ただし、親権を単独で行使できたとしても、単独親権になるわけではありません。

また、この場合は当然に共同親権者の反発を招きますので、最終的には単独親権行使の正当性・有効性を家庭裁判所で判断してもらうことになります。

単独親権

共同親権が原則的に父母の婚姻を前提としているのに対し、単独親権になる状況は、父母の関係の違いによって多々あります。婚姻中ではない父母に共同親権を認めていないのは、共同行使が困難であると考えられているからです。

つまり、現在は共同親権の実現性と無関係に、法律上の婚姻・離婚で、一律に共同親権と単独親権が決められているということです。

しかし、例えば事実婚のように、法律上の婚姻ではなくても父母が協力できる状況、または離婚後も子について意思の疎通を欠かさない父母も存在する中、婚姻中に協力して親権を行使できない夫婦がいるのも事実です。

そこで、婚姻関係とは無関係な共同親権をめぐる議論も活発化していますが、民法の改正が不可欠で今後の議論しだいでしょう。

単独親権になる状況は次のようなものです。

父母の離婚・婚姻取消し

民法819条によって、離婚後の親権者は、父母の協議または裁判所が一方に定めなければならないとされており、離婚後の共同親権を認めていません。

例外的に、親権者が指定されない協議離婚届を役所が誤って受理した、もしくは親権者が指定された協議離婚届でも親権者指定協議が無効だった場合に、暫定的な離婚後の共同親権が起こり得ます。

ただし、父母が出生前に離婚した場合は、母が親権者と定められています。その場合でも、出生後の協議で父を親権者にもできます。

この点は不思議に思うかもしれません。出生後に離婚すると協議で親権者を一方へ定めるのに対し、出生前に離婚すると母親が優先されるからです。

そのまま解釈するなら、離婚と出生が重なりそうなとき、出生直前でも先に離婚しておくだけで、母親は親権を得ることが可能です。

なお、婚姻取消しでの親権者は離婚の規定が準用されます。

子の離縁

養父母と未成年の養子が離縁するとき、養子の親権は養親から実親になりますが、実親が離婚していると実父または実母の単独親権です。また、実親と養親の共同親権で、養親と養子が離縁すると、実親の単独親権になります。

非嫡出子(婚外子)の親権

非嫡出子の親権は母が行い、父の認知があれば、協議で父を親権者と定めることもできます。非嫡出子は、父母の婚姻と認知が伴わない限り単独親権です。

婚姻中の父または母の死亡

夫婦の一方が死亡すると、存命の他方親権者による単独親権になります。これは養父母が婚姻中であっても同じです。また、夫婦の一方に失踪宣告された場合も、失踪者は死亡とみなされるので単独親権になります。

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