遠隔地の離婚調停成立と調停に代わる審判の活用

別居している夫婦の離婚調停では、管轄裁判所が遠すぎて、調停参加への負担が一方だけ重くなることは良くあります。それが嫌なので、離婚調停の前に管轄で争うこともあるでしょう。

しかし、家事事件手続法の施行によって、調停は電話会議システムやテレビ会議システム(以下、電話会議システム等)で行うことが可能になりました(家事事件手続法第258条第1項による同法第54条第1項の準用)。

そのため、管轄で争うことの意味は薄れてきたのですが、問題は離婚調停の成立時です。離婚調停と離縁調停は、電話会議システム等での成立が許されません(家事事件手続法第268条第3項)。

また、離婚調停と離縁調停は、調停委員会から提示された調停条項案を受諾する旨の書面によっても、調停を成立させることができません(家事事件手続法第270条第2項)。

したがって、離婚調停の成立時(最後の調停期日)は、どんなに遠くても管轄裁判所まで行かなくてはならず、これを何とかできないかというのが今回のテーマです。

調停の成立と本人の出席

そもそも調停は、当事者同士の話合いを目的としますから、本人の出席を原則としており、弁護士の出席はやむを得ない事情があるときです(家事事件手続法第258条第1項による同法第51条第2項の準用)。

やむを得ない事情とは、例えば健康上の理由など、家庭裁判所への出頭が難しい状況を予定していますが、忙しい・出席したくない・遠隔地などの事情でも、弁護士のみでの調停は数多く行われています。

つまり、運用上では本人の出席にそれほど厳密ではなく、弁護士に依頼しても調停を成立させることは可能です。

ただし、離婚調停は代理人のみでの調停成立を許さない運用がされており、本人の出席(本人による離婚の合意)が大前提になっています。

その理由は、金銭等を取り決める調停とは異なり、本人の身分行為(親族関係の変動)を伴う離婚では、弁護士の代理が馴染まないからです。

※この点については別記事を用意します。

意図的に調停に代わる審判で離婚する

本題に入りますが、本人の出席を前提とする離婚調停の成立ができないのであれば、違う手続で本人出席を回避するしかありません。

その違う手続とは、調停に代わる審判です。調停に代わる審判での離婚は、審判離婚と呼ばれます。

本来の調停に代わる審判は、調停の成立が難しい場合において、家庭裁判所の職権で行われる例外的な手続で、調停の成立が可能なら調停成立を目指すのが筋です。

とはいえ、調停に代わる審判ができる条件は、「調停が成立しない場合において相当と認めるとき」としか規定されておらず、審判するかどうかは家庭裁判所の裁量に任されています。

調停に代わる審判の条件は満たしている…はず

当事者の一方が、管轄裁判所の遠隔地に住んでおり、負担が重いことを理由に離婚調停が成立できない状況は、少なくとも「調停が成立しない場合」に該当しますよね。

そして、もう1つの条件である「相当と認めるとき」ですが、離婚調停で離婚に合意し、離婚条件にも争いがなくなった夫婦に対して、家庭裁判所が相当ではないと判断することはないでしょう。

調停に代わる審判は、離婚調停の成立に至らない当事者でも、離婚訴訟の重い手続負担をさせることなく離婚できるように設けられています。

その目的を考えれば、当事者負担を軽くする最善の方法が調停に代わる審判であるときに、あえて審判しない理由が見つかりません。

審判離婚までの流れ

調停に代わる審判による審判離婚までの流れを簡単に説明します。

  1. 離婚調停で事前合意しておく
  2. 調停に代わる審判をしてもらう
  3. 異議申立てしないで審判を確定させる
  4. 確定証明書の交付を受ける
  5. 役所に離婚届の提出

1.離婚調停で事前合意しておく

ここが一番肝心です。離婚への合意はもちろんですが、細かい離婚条件まで合意しておかないと先へ進めません。

電話会議システムの利用で合意するか、弁護士の代理出席で離婚調停を進める場合は、逐一報告を受けてしっかりと意思疎通ができるようにしておいてください。

理想的には、合意内容を基にした調停条項案(離婚調停が成立すると仮定した調停条項案)を作成してもらい、夫婦双方で何も異議がないことを確認するべきです。

冒頭で説明のように、調停条項案を作成してもらっても、受諾する旨の書面では離婚調停を成立させることができないので、調停条項案はあくまでも事前確認用です。

2.調停に代わる審判をしてもらう

調停に代わる審判は、当事者に申立権がなく家庭裁判所の職権で行われるため、当事者の希望で審判してもらうには上申が必要になります。

それ以前に、離婚の話合いがまとまりそうなら、最終的には調停に代わる審判での離婚を望んでいると、調停期日で調停委員に伝えておいても良いかもしれません。

離婚調停での合意形成が確実になった(調停を成立させるだけになった)時点で、調停に代わる審判をして欲しい旨の上申書を提出します。

3.異議申立てしないで審判を確定させる

調停に代わる審判には、告知を受けてから2週間の異議申立て期間があり、審判書が届いた後は確定まで2週間待ちます。

適法な異議申立てがあると、調停に代わる審判は効力を失うので、お互いに異議申立てをしない確認もきちんとしておきましょう。

また、調停に代わる審判には異議申立権の放棄も認められています(家事事件手続法第286条第2項による同法第279条第4項の準用)。

万全を期すのであれば、異議申立権放棄書を提出することも考えられるのですが、そこまで疑う関係性では、離婚調停での合意形成すら難しいのではないでしょうか。

なお、調停に代わる審判では、審判に服する旨の共同の申出が可能で、申出があると異議申立てはできなくなりますが、離婚調停での調停に代わる審判では利用できないので注意が必要です(家事事件手続法第286条第8項)。

4.確定証明書の交付を受ける

調停に代わる審判が確定すると、その時点で離婚は成立しています。それでも役所には離婚届を出さなくてはなりません。

離婚届の提出時は、審判書謄本と確定証明書の添付が必須なので、家庭裁判所に確定証明書の交付申請をします。

審判書謄本の送付時に、確定証明書の交付申請書を同封する運用も多いと思われますが、同封されていなくても、家庭裁判所のホームページ等からダウンロードするか自作でも構いません。

また、離婚届に不要な情報(例えば財産分与や養育費の支払いに関する内容など)が審判書謄本に含まれており、役所の戸籍担当などに見せたくない人もいるでしょう。

その場合は、戸籍届出用の「審判書省略謄本」も交付申請してください。省略謄本の添付で問題なく離婚届は受理されます。

確定証明書も省略謄本も、交付申請には150円の収入印紙が必要です(交付申請書に貼り付けます)。郵送で申請する場合には、送付先を書いた返送用封筒、切手、身分証明書のコピーも同封しましょう。

5.役所に離婚届の提出

離婚届は、調停に代わる審判の確定から10日以内に役所へ提出します。どの役所に出すこともできますが、本籍地以外の役所に届け出るときは、戸籍謄本の添付が必要です。

既に離婚は成立しているので、離婚届には一方の署名・押印だけ書けば良く、証人欄の記入も必要ありません。離婚届については、離婚届の入手(用紙ダウンロード)から提出までも参考にしてみてください。

離婚届の提出が遅れると、法律上は5万円以下の過料制裁です(戸籍法第135条)。過料制裁はレアケースですが、審判の確定後は急ぎましょう。

参考:調停離婚などで離婚届を出さないとどうなる?

離婚調停成立や調停に代わる審判は必要か?

ここで、単純な1つの疑問が浮かぶでしょうか。

離婚調停を成立させることができる、もしくは調停に代わる審判への異議申立てがないとわかっている状況であれば、協議離婚もできるのでは?という疑問です。

協議離婚なら、夫婦が別居していても郵送で離婚届をやり取りすれば良く、離婚のタイミングも自由に決めることができます。

しかし、それでも協議離婚はおススメしません。なぜなら、協議離婚の最大のデメリットは、離婚時に約束した諸条件が守られないことも多い点にあるからです。

成立した離婚調停では調停調書を、確定した調停に代わる審判では審判書と確定証明書を受け取ることができ、これらの書類は強制執行を可能にします(債務名義と呼ばれます)。

協議離婚でも、離婚協議書を作成して強制執行認諾約款付きの公正証書にすれば債務名義となりますが、公正証書の作成は面倒でお金もかかります。

離婚後に支払い等を受ける側にとって、家庭裁判所の「お墨付き」とも言える債務名義があるのと無いのとでは大きく違うでしょう。

せっかく得られる債務名義を捨ててまで、協議離婚を優先する理由はそれほどないと思われます(戸籍に調停離婚や審判離婚と記載されるのが嫌なときくらいです)。

まとめ

今回は、離婚調停の変則的な終局方法を取り上げました。

調停に代わる審判を意図的に使った前例が、どのくらいあるのか不明ですし、家庭裁判所が対応してくれるとも限りません。

ただ、せっかく離婚調停で費やした労力や合意した内容を、遠隔地で本人出頭ができないという理由だけで無駄にするのは明らかに効率が悪く、あえて離婚訴訟にする意味もないでしょう。

事件が解決に向かうのであれば、家庭裁判所は柔軟に対応してくれると思われるので、試してみる価値は大いにあります。

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