離婚の意思は調停委員に強制されるものではない

離婚調停の申立人は、離婚に反対する相手方を説得して欲しいことが非常に多いです。しかし、離婚調停だからといって、家庭裁判所が離婚を積極的に勧めてくれると勘違いしてはいけません。

離婚を話し合うために離婚調停が用意されているのであり、離婚させるために離婚調停が用意されているわけではないからです。

それは即ち、相手方にとっても離婚を強制されないことを意味します。調停において、全ての決定権は当事者にあるのが大原則で、調停委員が当事者の意思を強制することなどあってはなりません。

ところが、現実の離婚調停は、調停委員が離婚を説得することも多いですし、逆に調停委員が離婚を考え直すように説得することもあるようです。

離婚調停といえども円満の道もある

離婚調停は夫婦関係調整調停の1つとして存在しますから、夫婦のわだかまりがとけて、円満に解決する道も残されています。

ただし、申立人の請求が離婚である以上、家庭裁判所が和解を押し付けるようなことはなく、円満に終わるとしても話合いでの結果的な和解を前提とします。

何が何でも離婚する!と息巻いて離婚調停を申し立てる人は多いですが、中には離婚を迷いつつ、相手方が話合いに応じないため、やむを得ず離婚調停を申し立てる人も決して少なくありません。

ですから、離婚調停が始まると、調停委員は必ず最初に申立人と相手方の意思確認をします。申立人が婚姻を続ける可能性、相手方が離婚に傾く可能性も考えて、双方の話を注意深く聞くでしょう。

当事者としては、離婚調停の最初から自分の意思が固いと示しても良いですし、状況によっては譲歩する意思を示しても良く、正直に自分の気持ちを話すことです。

当事者の離婚意思は尊重されるべき

離婚調停が申し立てられる背景には、実に複雑な人間関係や感情、夫婦にしか分からないプライベートな事情が含まれます。

調停委員においても、当事者と話をしているうちに個人的な感情が湧き出て、中立的・客観的ではない一方に偏った印象を持つことは否定できません。

もちろん、主観に基づく感情や印象は、公平の立場に置かれる調停委員に許されるものではないのですが、調停委員も人であるからには、どうしても感情に支配されるのは否めず、個人的な意見を押しつけたくなる場合もあるでしょう。

しかし、調停で話し合った結果として当事者が離婚に合意したなら、調停委員がどう思っていても、当事者の離婚意思は尊重されなければなりません。

申立人の責任で婚姻が破綻した場合、要するに有責配偶者からの離婚調停申立てであっても、調停は当事者を呼び出して自主的に話合いの場を提供する手続であり、調停委員が判断を下す場ではないのです。

離婚したくない意思も尊重される?

離婚意思が尊重されるなら、逆に離婚をしたくない意思も尊重されるべきはずですよね?離婚問題は夫婦の私的な争いで、調停委員に離婚を説得される筋合いもないのですが、実際にはそうでもないようです。

離婚調停を申し立てるのは、大半は相手方に責任があるとする側で、調停で最初に話を聞くのも原則として申立人からです。

初回の調停期日に、夫婦が同席して手続説明を受ける運用ですが、手続説明が終わると申立人から話を聞かれるのが通常の流れです。

詳しい調停の流れは以下をご覧ください。

調停の流れを大まかに説明すると、申立て、調停期日(実際の話合いで複数回)、調停の終了(成立、不成立、取下げ)という順で進みます。 調停を申し立てる人(申立人といいます)は必ずこの流れになり、い...

しかも申立人は経済的に弱者であったり、虐げられていたり、暴力を受けていたりと同情するべき点が多く、相手方の話を聞く前から先入観を持たれかねません。

もちろん、申立人の後に相手方から話を聞いた上で、復縁の可能性も探られるのですが、時には離婚できないか相手方に確認することもあるでしょう。

離婚をしたくないのに離婚を前提にされるのは納得できないとしても、家庭裁判所が「この夫婦は離婚しかない」と考えていれば十分あり得ます。

調停委員は一方の味方であってはならないが…

夫婦が離婚に至る経緯はそれぞれでも、完全に一方だけの責任というのは少なく、普通はお互いに何らかの不満があって不仲になっていきます。

間に入る調停委員としては、どちらの主張も取り入れ、未成年の子がいる場合は養育環境なども考慮に入れながら、落とし所を探していくのが本来です。

もっとも、正反対の立場にある一方の意見を取り入れると、どうしても他方に反してしまうため、第三者として公平の立場をとっても、一方に与していると思われるのは仕方がないでしょう。

この点は、時々「調停委員が味方に…」などとして批判されますが、本当に個人感情で一方に同情してしまうケースが全くないとは言い切れません。

誰のために離婚を説得するのか

離婚が押し付けられるものではないとはいえ、申立人の離婚意思が固く、復縁を望むこともできない状況では、相手方の離婚したくない意思を尊重したところで、離婚調停は不成立で終わり、当事者は何の成果も得られません。

離婚調停が不成立になると、負担の大きい離婚訴訟を選ぶしかなく、できれば前段階の離婚調停で解決を目指し、相手方へ離婚が全く考えられないのか打診することも十分考えられます。

と、ここまでは当事者ファーストの正論ですが、家庭裁判所の立場としては、紛争解決能力を向上させたい意向があります。つまり、家庭裁判所はできるだけ調停成立(離婚または円満)で終わらせたいのです。

離婚調停のほとんどが不成立になってしまうと、紛争解決能力の低さが問題になるかも知れず、家庭裁判所に対する市民の不信感に結び付きかねません。

このように書くと、家庭裁判所の関係者にはお叱りを受けるかもしれませんが、調停の成立率・不成立率が、調停の運用方法や調停委員の選考を検討する資料となることは否定できないでしょう。

当事者の離婚合意に介入したら断固抗議

家庭裁判所の組織として、後見的な機能を持つ調停委員会であっても、離婚の合意をした当事者に、円満な婚姻関係の継続を求めるのは無理です。

同じ夫婦でも、協議離婚なら離婚を止める人はいないのに、調停離婚なら調停委員に離婚を止められるのは変な話で、夫婦が離婚に合意すれば誰も介入できません。

調停委員が私的な感情から、夫婦による離婚の合意を無視して婚姻関係の継続を持ち出すなど問題外です。もし、正当な理由なくそのような調停委員の働きかけがあれば、断固抗議しても差し支えないでしょう。

調停委員の責務は、結果が離婚であろうと円満であろうと事件の解決ですから、責務の範囲を逸脱した調停委員は、抗議を受けてしかるべきです。

ただし、直接言っても(本人に自覚がないので)効果は薄いと思われ、担当の裁判所書記官に伝えるか、弁護士がいるなら弁護士を通じて抗議するのが正解です。

  • 0
  • 0
  • 0
  • 0
  • 0