離婚全体の9割にもなる協議離婚を少し詳しく解説

夫婦が自分たちで話し合って離婚を決め、離婚届を役所に出すのが協議離婚です。協議離婚は全体の約9割を占め、ほとんどが協議離婚だとわかります。

しかし、不仲になった夫婦が、争いもなく離婚する状況が全体の約9割とは、いくら日本人の気質が穏やかだからといっても何となく疑問が残らないでしょうか?

実際には、争いがあるのに我慢して離婚したり、離婚に伴う請求権の存在を知らなかったり、家庭裁判所の利用を敬遠したりと、潜在的に争いを抱えたまま離婚するケースも相当数あると考えられます。

なぜなら、絶対数が多いとはいえ、離婚後にトラブルが発生するのは大抵が協議離婚で、何も決めずに離婚することもあるからです。特に未成年の子がいなければ、なおさら「離婚届にハンコを押して終わり」となるでしょう。

ここでは、協議離婚の実状と手続、さらには問題点について探っていきます。

協議離婚の割合はここ数年横ばい

2015年の人口動態調査によれば、離婚全体の件数は226,215件に対して協議離婚は198,214件と、約87.6%でした。この割合は数年変わらず87%台です。

離婚の総数協議離婚割合
2009253,353222,66287.9%
2010251,378220,16687.6%
2011235,719205,99887.4%
2012235,406205,07487.1%
2013231,383201,88387.3%
2014222,107194,16187.4%
2015226,215198,21487.6%
※資料:2015年人口動態調査

2000年以降でみると、2000年に91.5%あった協議離婚の割合が、若干ながらも徐々に下がっており、調停離婚や和解離婚(2004年以降)に流れています。

離婚届の提出と効力

日本では民法第763条の規定により、夫婦が協議で離婚することを認めています。そして、協議離婚では離婚の届出、つまり離婚届の提出(または当事者双方と証人2人による口頭での届出)によって、効力を生じることになっています。

しかし実務上、離婚届のように戸籍に影響する届出は、届書の提出で直ちに効力が生じるのではなく、受付(受領)と受理が分けられています。離婚届を出して受け取られても、その時点で効力が発生するわけではありません。

当たり前だと言えば当たり前ですが、離婚届の記載内容を確認せず、単に受付で効力を生じさせては危険です。そこで、受付→審査→受理の流れで離婚届は処理されます。

受付は離婚届を受け取ること、受理は離婚届を審査し有効なものとして判断することで、受理されなければ離婚届による戸籍の記載はされません。離婚届が夜間や休日に守衛室で受け取ってもらえるのも、受付と受理が分かれているからです。

役所は離婚届を形式的にしか審査しない

離婚届が役所に提出されたとき、その記載をチェックしますので、この時点から審査は始まっていると言えます。

軽微な不備があれば、その場で訂正を求められますし、後から職権でも訂正できない重大な不備が見つかると、当事者を呼び出して訂正させます。

記載の誤りの他、当事者と証人2人以上の署名があるか、未成年の子がいる場合に親権者の指定がされているかなど、法令違反に該当しないかもチェックされます。また、離婚届を提出した人の本人確認もされます。

ところが、肝心の離婚意思についてはチェックされません。協議離婚を規定する民法第763条は、「夫婦は、その協議で、離婚をすることができる」としているので、「その協議」があったかどうかはとても大切です。

当事者双方に離婚意思がなければ有効になりませんから、その届出である離婚届においても、離婚意思が確認されなければならないのになぜか確認されません。

しかし、全く離婚意思が無視されているかと言えばそうでもなく、不受理申出があれば本人以外の届出を受理しない扱いがされます。

その他、明らかに疑わしい届出は、法務局に照会する扱いもあるので、離婚意思の有無は審査に含まれると解されています。

役所が実質的な審査もすると…

離婚意思の確認には賛否両論あって、虚偽の届出を防止して戸籍の正確性を保つべきだとする積極論と、届出の円滑な処理を妨げるとする消極論に分かれます。

さらに消極論では、不受理申出の制度があること、受理されても協議離婚無効確認の訴えを提起できることから、ほとんどが離婚意思を持っていると推定される離婚届で、離婚意思の確認のために当事者を出頭させるのは不便だとします。

確かに、離婚意思の確認をするなら、離婚届は夫婦両名による窓口での提出もしくは後日当事者に確認となり、別居・入院・収監・渡航などでは著しく不便です。

現在の形式的な審査は、不受理申出がされないと虚偽の届出を防止できませんが、役所にも当事者にも手続を迅速に行うメリットのほうが大きいのでしょう。

離婚届で離婚が成立するのは受理時

受け付けた離婚届の審査で問題が見つからなければ、役所は受理決定します。

この時点で協議離婚が成立して、離婚届が受理決定された後は取り下げることができなくなり、成立した離婚に離婚意思がなくても、協議離婚無効確認の訴えでしか離婚は覆されません。

理屈上は、離婚届が受付されてから受理されるまでの間であれば、離婚届を取り下げることができますが、多くは即日で受理されると思われるので、提出してすぐに撤回するような場合を除き、取下げはできないと思ったほうが無難です。

また、受理決定がされると、受付日に遡って受理された扱いとなるため、離婚届の提出日が離婚の成立日となります。

この点は、協議離婚だけにある特徴で、他の離婚方法では、家庭裁判所で離婚が成立するので、離婚届の提出日以前に離婚が成立しています。

受理後、戸籍の記載がされますが、離婚の成立が受理時であることから、戸籍の記載が遅れても離婚の効力には影響しません。ですから、本籍地以外に離婚届を提出して受理されれば、本籍地の役所に送付されるのは離婚成立後です。

協議離婚の歴史的な経緯と諸外国との違い

江戸時代には、離縁状(いわゆる三行半:みくだりはん)を夫から妻に渡すか、妻が縁切寺(いわゆる駆け込み寺)に駆け込むことで離婚が行われていました。しかし、この制度は妻からの離婚が原則的に認められないのも同じで不公平です。

明治に入って、旧民法(明治民法)によって協議上の離婚が規定され、協議離婚の制度が始まります。このとき、裁判所が離婚の意思を確認することも提案されましたが、離婚は私事であり国家が干渉するべきではないとして採用されなかったようです。

その後、現行の民法に至るまでの間、協議離婚の規定内容は変わっていても、離婚意思の確認が規定されない点は、旧民法から続いています。

一方、諸外国で協議離婚が許される国は僅かです。諸外国のほとんどは、離婚に裁判所が関与しますので、外国人との協議離婚が日本で成立しても、本国では離婚が認められないケースがあり注意を要します。

その場合は、協議の延長と変わらない調停での離婚も認められないので、離婚調停で調停に代わる審判をしてもらい審判離婚で対応します。

調停に代わる審判をせず、調停調書にあえて「確定判決と同一の効力を有する」と記載する場合もあります。大事なのは、外国人が本国で離婚するために必要とする書面ですから、調停で対応できれば記載を工夫し、調停で対応できなければ審判になるでしょう。

協議離婚が抱える問題点

離婚届という1枚の紙を出すだけで離婚が成立する手続は、争いのない当事者にとって簡単で便利な手続であっても、争いのある当事者には危険な側面もあります。

冒頭にも説明の通り、争いがあるのに我慢して離婚したり、離婚に伴う請求権の存在を知らなかったりする場合や、不受理申出をしていなければ、勝手に離婚届が出されるのを防げない問題を残しています。

しかも、本人が署名した確認もされず、押印は実印ではなく認印で済むのですから、離婚が権利義務を生じる重大な身分行為であるのに、その手続が簡便極まりないのは、やはり危険と言わざるを得ないでしょう。

少なくとも、請求に時効がある財産分与、慰謝料、年金分割だけは離婚時に決めておかないと、離婚後の生活保障に関わります。

社会的・経済的な弱者になりやすい女性は、男性よりもこうした問題を重視するべきで、離婚協議書の作成や裁判所の関与で、支払いの確保に努めるべきです。

協議離婚がなくなるとどうなる?

協議離婚だけで年間に20万件もあるのに、その全てを家庭裁判所に委ねるとしたら、当然に対応しきれません。協議離婚が役所への届出で済んでいるのは、離婚で不利益があっても、ある意味で当事者の自己責任との裏返しです。

家庭裁判所が協議離婚にも関与するとして、いかに簡易な制度を設けても、子の監護を始めとする離婚に向けての諸条件を確認しないまま、離婚を許可する制度にはならないでしょうから、結局は調停になる事案が相当あると考えられます。

それでも、諸外国では協議離婚を許していない国が圧倒的なので、日本ができない理由もありません。協議離婚による離婚後のトラブルを思えば、協議離婚と調停離婚の中間的な離婚制度の実現が待たれるところです。

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