離婚調停は同居しながら?別居してから?

離婚調停を行う際には、同居よりも別居のほうが、どちらかというと早く終わりやすいと言われています。調停期日から次の調停期日は約1ヶ月間あり、別居していると争いを続けないで済むからです。

そもそも離婚調停自体が、まともに話が折り合わない夫婦を対象としており、主張の異なる当事者同士が同居していると、余計に話がこじれるでしょう。

もっとも、離婚調停をするために別居するというよりも、一緒に生活していくのが耐えられない、暴力を受けてしかたなく、他の異性と親密になったからなど、大抵の別居に至る経緯は違うところにあります。

離婚調停において、現在の同居・別居による有利・不利はありません。ただし、夫婦には同居義務がある以上、別居の理由は離婚の責任において大きな意味を持ちますから、別居していればそれで良いわけでもないのです。

※この記事は離婚調停を申し立てる側の視点です。

同居しながらの離婚調停

離婚したら別居するとしても、経済的な事情、子供を置いて出ていけない、要介護者やペットの存在など、別居に踏み切れないことも十分あるでしょう。離婚したい側にとっては、既に毎日が苦痛の日々かもしれません。

さらに、離婚調停が始まれば、調停期日が終わってから第2ラウンドが家で始まりかねず、とても冷静ではいられないですし耐えられないのではないでしょうか。

それでも同居せざるを得ない事情があるなら別ですが、あえて同居するとして、どのような可能性があるか考えてみます。

同居では調停期日通知書が同じ家に届く

事前に離婚調停することを伝えていても、この点はとても大きな問題です。なぜなら、調停期日通知書と一緒に離婚調停の申立書の写しも入っているからです。

離婚調停の申立書には、離婚以外にも申立人の請求(親権や金銭的な請求)が記載されており、申立書を見た相手が激昂する可能性も考えられます。

人によっては、公的機関の家庭裁判所に、私事である離婚問題を持ち込むこと自体で腹を立てるかもしれず、呼び出されることにも抵抗を感じるはずです。

離婚調停の申立てから、調停期日通知書が届くまでは2週間程度、初回の調停期日までは1ヶ月程度の間が空くのが通常です。詳しい流れは別記事をご覧ください。

調停の流れを大まかに説明すると、申立て、調停期日(実際の話合いで複数回)、調停の終了(成立、不成立、取下げ)という順で進みます。 調停を申し立てる人(申立人といいます)は必ずこの流れになり、い...

同居では、調停期日通知書が届いてから初回調停期日までの間、離婚調停や申立書の内容について、夫婦で争いが激しくなるのを避けられないでしょう。

そう考えると、同居よりも別居の方が良いのは明らかで、相手からのDVがあるなら、エスカレートしないように別居してからの方が安全です。

せめてもの対処としては、相手にとって不意打ちとならないよう、離婚調停の申立て後は、離婚調停が始まることや請求内容を伝えておくくらいでしょうか。

調停委員への心証を考えてみる

離婚までは法律上の夫婦であることを重く受け止め、同居・協力扶助義務を怠らない姿勢は、離婚調停において一定の評価を受けるはずです。

というのは、調停委員も人間ですから、誠実な当事者に気持ちが寄っていくものですし、常識的には別居して当然の状況を、耐え忍んで夫婦の義務を果たしている姿は、他人にとって同情したくなる部分も多いからです。

「ホントは今すぐに別居したいのだけど、子供にとって父親(母親)ですし子供の気持ちを考えると…」などと、自分本位に行動せず、子供や相手配偶者を気遣う姿勢は、調停委員から確実に評価されます。

家庭裁判所は、とりわけ子の福祉を非常に重視しますので、子供のために同居しているんだという主張は好印象を与えるはずです。

つまり、離婚調停の前からもう調停は始まっていると考え、調停委員への心証を良くするために同居を続ける選択も、場合によってはアリだということですね。

離婚に有責性があるなら別居しないほうが良いかも

自分に一方的な離婚原因があるとき、典型例では浮気やDVが原因のときは、自分で夫婦関係を壊しておきながら、なおも別居する行為が身勝手と受け止められ、離婚調停が有利に進まない可能性を考えておきたいところです。

既に夫婦関係が破綻し、復縁できないほど深刻な状態では、別居しても同居義務違反を問われることはないですが、だからといって有責性はなくなりません。

有責性があるからこそ、離婚までは夫婦としての義務を果たす「責任感のある常識人」でいることは、離婚調停でもマイナスにならないはずです。

証拠探しは同居のほうが確実

同居を続けることの大きなメリットとして、調停や訴訟で証拠を提出したいとき、同居のほうが相手の身辺を圧倒的に探りやすいという点があります。

離婚調停になるほど関係悪化した夫婦では、家庭内別居で会話がなく、寝室も別というケースも多いですが、同居していれば何かボロを出すかもしれません。

それを発見して、相手が隠している事実を暴くには、どう考えても同居のほうが断然有利です。ただし、自分から別居して、元自宅(相手が住んでいる家)には自由に出入りできる状況なら別居でも良いでしょう。

ほんの一例ですが、次のような可能性も考えられます。

【目的:財産分与】

銀行や証券会社からダイレクトメールが届いたとして、普通に考えると、口座を持っていない銀行や証券会社から封書が届くことなどあり得ないです。開封しなくても相手は口座を持っていると推測できます。

離婚調停で財産分与を請求するとき、相手が財産を開示したとして、その口座が含まれていなかったらどうなるでしょう。口座があるはずだと追及するか、支店名までわかっていれば、家庭裁判所に調査嘱託することも可能になるかもしれません。

【目的:慰謝料】

浮気の証拠を掴みたいとき、同居では警戒されて難しいかもしれませんが、たった1枚のレシートでも浮気に繋がっていることがあるので、ゴミすらも調べることができる同居を続けながら監視します。

別居して相手に浮気をしやすくする環境を与え、探偵や興信所に浮気調査をさせる手もあるのに対し、別居していると夫婦関係が破綻した後の浮気だと主張されやすく、同居中に証拠を掴みたいところです。

また、道義的にはどうかと思いますが、相手が就寝中や入浴中に携帯電話を調べるのも、同居中ならではと言えるのではないでしょうか。

いずれ別居するとしても焦らずに、離婚調停での請求について根拠を持てる状態までは、我慢してでも同居するメリットはあります。

別居してからの離婚調停

離婚をすると決めたら、一日でも早く別居したくなるのが心情です。相手の顔も見たくないと考えるほどなら、別居したほうがスッキリします。

調停期日後も無用な争いを避けることができて、別居することのメリットは、特に精神的な面で大きいように思えます。

ただし、別居に不安があるとすれば、主に経済的な問題と離婚調停で不利にならないかどうかでしょう。現在同居中なら良く考えてから行動するべきです。

別居しても調停で住所は知られない

離婚調停の申立書には、申立人の住所を記載するため、申立書の写しが相手に送られると、住所を知られてしまうように思えますが心配ありません。

申立人の住所は、DV事案など相手に知られる危険を避けるため、現住所を記入せずに、実家などの住所にすることが許されています。

しかし、本当の現住所を家庭裁判所に知らせないと、通知等の連絡ができないため、別途連絡先を記入した書面(通常は連絡先等の届出書)に、非開示を希望する旨の書面(通常は非開示の希望に関する申出書)を添付して提出します。

これらの書類については別記事も参考にしてください。

離婚調停の必要書類は離婚調停申立書と添付書類で、ここでは添付書類について詳しく説明しています。 添付書類はさらに付属書類とその他の資料に分かれるのですが、付属書類は家庭裁判所の書式を使って、離...

別居では婚姻費用の分担義務が発生する

夫婦には、同居義務とお互いに同程度の生活をするための扶助義務があり(民法第752条)、別居していたとしても婚姻中であれば扶助義務を免れません。

婚姻中の生活費や養育費など、夫婦生活に必要な費用を婚姻費用と呼び、同居・別居の区別なく収入の多い側が少ない側を扶助する義務を負います。自分が収入の多い側なら、別居することで相手の生活費も負担しなくてはならないのです。

家庭内別居でも、生活費を渡してくれないなどの事情があれば婚姻費用を請求できますが、別居のほうが家計が別になって請求根拠は明確です。

婚姻費用の分担は義務なので、別居に至った責任はそれほど問われず(責任が極めて重ければ減額は考慮される)、離婚までは請求できてしまいます。

婚姻費用の分担請求は離婚調停の戦略

別居での婚姻費用が離婚調停に与える影響は非常に大きく、明らかに別居のほうが夫婦合計の生活費は多くなるのが普通です。経済格差がない夫婦は珍しいことから、別居によって収入の多い側は負担が増えます。

十分にお金がある人はともかく、一般的なサラリーマンの給料で、別居した夫婦の生活費を支えていくのは負担が大きすぎてきついはずです。

そこで、離婚調停と並行して婚姻費用分担請求調停を申し立て、経済的に相手を追い込む手が良く使われるのも覚えておくと良いでしょう。

離婚すれば婚姻費用の分担義務がなくなるので、別居で経済的な負担が続くと、愛情とは別の次元で離婚を認めざるを得ないことになります。

こうした戦略も使われるのが離婚調停であり、収入の多い側は別居すると不経済で、収入の少ない側は別居すると好都合なのです。

婚姻費用を請求しても支払ってくれるとは限らない

自分の経済力に不安があっても、別居すると婚姻費用を請求できるのなら、すぐに別居したほうが良いと考えるかもしれません。

相手が支払ってくれない場合、婚姻費用分担請求調停の成立後や審判の確定後は、相手の給料・財産を差し押さえる強制執行ができますし、調停・審判中は審判前の保全処分で仮払いを求めることも可能です。

つまり、婚姻費用を支払わない相手には、無理にでも支払わせる手続はあるのですが、そもそも相手の経済力が不足していると、差し押さえたくても差し押さえるほどの給料・財産がなく無意味になってしまいます。

したがって、相手に別居中の婚姻費用を支払う経済力がない状況では、別居を思いとどまって生活のために同居を続けるほうが無難です。

悪意の遺棄と別居の関係も押さえておきたい

悪意の遺棄とは、簡単に言うと「わざと夫婦関係を破綻させる行為」を指すのですが、完全に終わっていない夫婦が別居をすると、別居した側が悪意の遺棄を問われるケースがあり、相手に攻める口実を与えかねないです。

ほとんどの夫婦は、一方が主な収入を担い、他方が家事・育児で貢献する役割分業(性別役割分業といいます)を、生活の基本的なスタイルにしているでしょう。

別居をすると役割分業による相互協力ができなくなるので、同居・協力扶助義務を怠り、わざと夫婦関係を破綻させたと相手に主張されることがあるのです。

悪意の遺棄について詳しくはこちらを確認してみてください。

離婚請求における遺棄の持つ意味は、婚姻関係の継続に不可欠な、夫婦の同居、協力扶助といった義務を怠り、夫婦生活に協力しない一切の行為で、遺棄という言葉が本来持っている、置き去りにする行為よりも広い解釈...

別居の既成事実は離婚に有利

別居がある程度の期間継続していると、もはや夫婦関係の改善による円満な婚姻関係を築くのは難しいと判断される場合があります。

同居しているからといって、離婚するほどでもないと思われることはありませんが、別居していると復縁は難しいと思われることはあるという意味です。

実際、冷却期間を置くために別居した夫婦が、復縁して同居に戻る割合は、統計データがなくてもそれほど高くないと推測できないでしょうか?

一度離れた気持ちが元に戻る難しさを、誰でも経験則で知っているからです。

ただし、自分が離婚の原因を作り、なおかつ別居する場合は、さらに非難されるべき事情が生じるので、財産分与等の離婚条件に影響するかもしれません。

それを考えても、相手が離婚に合意せずどうしても離婚したいとき、別居の既成事実を作ってから離婚調停に臨むのは、離婚に関して言えば有効な方法です。

親権争いでは子連れの別居が有利な傾向

親権者の指定が絡む場合には、現状で子供を監護している側が有利な傾向です。ですから、親権争いを見据えて子供と一緒に家を出ていき、一定期間を過ごした上で離婚調停を申し立てると、親権を得やすくなるのは確かです。

この点には批判も多いですが、現状維持で子供を監護している側が親権者となる割合は高く、子供を連れて別居するようにアドバイスする弁護士もいると聞きます。

本来は子供のために公平であるべきだとしても、親権重視の離婚調停なら、子供を連れて先に別居というのは選択肢に入るでしょう。

子供への心理的な影響も考えるべき

同居での説明では、子供への影響を考えて別居しない親を演じることも、調停委員への良い心証に働きかけると説明しました。

しかし、子供への影響そのものを考えると、夫婦が不仲で争いが絶えない環境に置かれた子供の多くは、心の傷を抱えたまま健やかに成長できません。

幼い頃から憎しみ合う人間関係を目の当たりにし、両親を愛しながらもどちらかの味方を強制される葛藤状態に置かれてしまいます。

子供は見ていないようで本当に良く見ているので、家庭内での争いを子供に見せるくらいなら、別居して新たな生活に向かったほうが良いでしょう。

離婚も当然に子供へ良くない影響を与えますが、平穏な生活を過ごしていくうちに、やがて大きくなって離婚を理解してくれる日がくるはずです。

まとめ

こうして考察してみると、同居よりも別居のほうが離婚調停は進めやすいですし、別居の既成事実は大きな強みです。同居での離婚調停は弊害が多く、もはや復縁が考えられない状態なら別居して離婚調停をするべきです。

しかし、婚姻費用を始めとする経済的な問題、親権者としての適格性、悪意の遺棄、離婚原因の有責性など、離婚の条件面で不利になるようなら、別居が良いとも言いきれずケースバイケースでの判断になります。

基本的には、同居でも別居でも婚姻関係が破綻して回復の見込みがないときは、子供に与える影響を考慮した上で、家庭裁判所は離婚を認める方向です。

離婚調停が不成立でも離婚訴訟になれば、婚姻関係が破綻した夫婦を無理に繋ぎ止める理由はなく、特別な事情がない限り離婚を認める判決が得られます。

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