年金制度と年金分割の基本を理解しておく

年金についてはあえて説明するほどでもないですが、一定の年齢に達するまでに納めた年金保険料によって、老後に納付額以上で受け取ることができる制度です。公的な年金制度には3つの種類があり、次のように加入対象者が異なります。

  • 国民年金:20歳から59歳までの全ての国民
  • 厚生年金:会社員で厚生年金の適用事業者に雇用される人
  • 共済年金:主に公務員

国民年金が全員加入であることから、会社員は国民年金が含まれた厚生年金、公務員等は国民年金が含まれた共済年金、それ以外の人は国民年金への加入だけです。この違いを理解しないと、年金分割制度を理解できないので、しっかり把握しましょう。

厚生年金と共済年金はプラスされる年金

比較的良く聞く、年金の1階部分・2階部分という言葉は、1階部分が国民年金、2階部分が厚生年金・共済年金を意味します。1階部分の国民年金は全員が受け取り、2階部分の厚生年金・共済年金は、加入者だけが受け取ることができる仕組みです。

※年金には3階部分もありますが、ここでは説明しません。

ここで、1階部分と2階部分の天井の高さを年金受給額とイメージしましょう。天井が高いほど年金が多くもらえると考えます。そして、できあがった家の高さが、そのまま年金の受給額です。

1階部分の国民年金は高さが変わらない

全員が加入している1階部分の国民年金は、固定額を納付して加入年数により年金額が決まります。したがって、国民年金については同じ期間で保険料を納めている限り、誰であっても差は生じません。

1階部分の天井は、固定額の保険料納付により高くなることはない=年金支給額も固定と考えればわかりやすいでしょうか。天井が低くなるとすれば、保険料に未納がある場合です。いずれにしても、国民年金の加入者は平屋建てです。

2階部分の厚生年金・共済年金は高さが変わる

国民年金は天井が変わらないのに対し、2階部分の厚生年金と共済年金は、収入に応じた保険料になるため、収入が多くて勤続年数が長ければ、天井がどんどん高くなります(上限はあります)。

さらに、厚生年金と共済年金は、労使(雇う側と雇われる側)が折半して保険料(共済年金は掛金ですが、以下保険料として扱います)を納付し、天井の高さに対して保険料の負担はそれほど多くありません。

天井の高さが決まっている国民年金に、厚生年金・共済年金の安い保険料で増築していく形です。増築の結果、厚生年金・共済年金の加入者は、家の高さが高くなっていき、それだけ年金を多く受け取ることができます。

自分の年金は何階建て?

年金は個人で加入するものなので、夫婦で「年金の家」の高さが異なって当然です。説明の通り、2階部分は厚生年金と共済年金なので、夫婦のどちらも会社員や公務員等以外なら2階部分がなく、お互いに平屋建てとなって差がありません。

夫婦の一方が会社員や公務員等なら、2階建てと平屋建てになり、年金受給額が大きく変わります。夫婦がどちらも会社員や公務員等なら、お互いに2階建てですが、その高さはお互いの収入や勤続期間で変わってきます。

もちろん、過去に会社員や公務員等の経験があれば、その間に納めた保険料の分だけ、2階部分は増築されていますから、自分の年金が何階建てでどのくらいの高さなのか、きちんと把握しておくことが年金分割の第一歩になります。

国民年金の3種類の被保険者

国民の全員が加入する国民年金でも、ある人は国民年金、ある人は厚生年金、ある人は共済年金と加入状況は異なり、区別するため次のような呼び方があります。

  • 第1号被保険者:第2号被保険者と第3号被保険者以外の全員
  • 第2号被保険者:厚生年金・共済年金に加入している人
  • 第3号被保険者:第2号被保険者の配偶者で収入が一定以下の人

注目すべきは第3号被保険者で、第2号被保険者が支払う厚生年金・共済年金の保険料から国民年金保険料が負担されているのと同じです(正確には違いますが、同じように考えても問題ありません)。

なぜなら、厚生年金・共済年金の保険料から、第2号被保険者と第3号被保険者の人数に相当する国民年金の給付分が負担されるからです(基礎年金拠出金と言います)。したがって、第2号被保険者全員で第3号被保険者を支えていることになります。

自分の年金が何階建てか知りたいとき、大まかな分け方ですが、第1号被保険者は自営業や学生等で平屋建て、第2号被保険者は会社員や公務員等で2階建て、第3号被保険者は会社員や公務員等の被扶養配偶者で平屋建てです。

就職・退職によって第何号になるか変わりますので、第2号被保険者の期間だけ2階部分が増築されていくと覚えましょう。

おさらい:年金制度

  • 公的年金には国民年金、厚生年金、共済年金の3つがある
  • 国民年金が1階部分、厚生年金と共済年金が2階部分
  • 全員が国民年金に加入している(1階部分は共通)
  • 厚生年金と共済年金は国民年金にプラスされる(2階部分はその人次第)
  • 第3号被保険者は負担なしで国民年金加入者になる(1階部分だけ)
  • 婚姻中の働き方で夫婦の年金受給額は異なる(2階部分の高さ)

夫婦での年金格差が離婚後の大きな問題

夫婦がどのように生計を立てていくかは、夫婦が話し合って決めることですから、一方が働くこともあれば、双方で働くこともあるでしょう。婚姻関係がうまくいっていれば、夫婦が老後を迎えたときに、夫婦の年金を合算して生活していきます。

しかし、離婚するとそうはいきません。夫婦の働き方が異なることで、婚姻中に増築された2階部分の高さは夫婦のそれぞれで異なり、老後の生活が不公平になります。

例えば、夫が会社勤めで生活費を稼ぎ、妻が扶養されて家事や育児を担当する役割分担は、現在でも多く見られる夫婦の形態です。

そのまま夫婦が離婚をすると、夫は厚生年金に加入しているので、2階部分も含めた年金を受け取ることができ、専業主婦の妻は国民年金の1階部分だけの年金となります。もちろん、夫と妻の役割が入れ替われば、年金受給額も逆になります。

いずれにしても、夫婦の一方が家事専従者として扶養されると、将来の年金では明らかに不利を受けます。被扶養家族以外にも自営業や学生なら、2階部分がなく会社員や公務員等の配偶者と年金で格差が広がっていきます。

そこで、離婚によって生じる年金の夫婦格差を是正するために年金分割制度ができ、平成19年4月1日から始まりました。

婚姻中の年金は夫婦で納付した扱い

婚姻中の夫婦には協力扶助義務があり、どちらが生活費を稼いでも、夫婦の収入として使われていきます。また、夫婦が婚姻中に築いた財産も、財産分与で基本的には2分の1で分けられます。

つまり、極端に貢献度の異なる収入が無い限り、婚姻中に夫婦で得られた収入は、生活費で使われようと財産として築かれようと、夫婦の共有で扱われるのです。夫婦の収入から支払われる年金保険料も、夫婦が共有で納めたと扱うのが相当でしょう。

このような考えから、厚生年金や共済年金の保険料で増築された夫婦それぞれの2階部分は、夫婦で等しくなるように天井の高さを調整する手続が年金分割です。

もっとも、結婚前から会社員や公務員等で2階部分があるケースや、離婚後に増築される部分まで分割するのは不適当なので、年金分割は婚姻中に増築された2階部分だけを対象にしています。

イメージが掴みにくければ、離婚時における夫婦それぞれの「年金の家」から、婚姻中に増築された部分だけを取り外し天井を同じ高さにして、また夫婦それぞれに戻すといったところです(実際は天井の高い方から低い方に移すだけです)。

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