合意分割の期間に3号分割が含まれるときは?

婚姻中の夫婦の働き方はそれぞれなので、合意分割の対象になる厚生年金(共済年金)の年金記録(標準報酬額)は、必ずしも連続していません。

そして、3号分割の対象期間(国民年金の第3号被保険者になっていた期間=扶養されていた期間)が、婚姻期間の一部だけということもあります。

例えば、結婚当初は夫婦が共に会社員で、出産時に退職した妻が夫の扶養となって育児を行い、子供の成長後に職場復帰したとしましょう。

このとき、妻は会社員(第2号被保険者)→夫の被扶養配偶者(第3号被保険者)→職場復帰して会社員(第2号被保険者)となります。

このように、婚姻期間中に3号分割の期間が一部だけ存在している場合は、どのように年金分割されるのでしょうか?

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3号分割は合意分割の前に行われる

年金分割の請求(標準報酬の改定請求)を年金事務所や共済組合に行うとき、3号分割の請求が無くても、合意分割の請求があれば3号分割の請求があったとみなされます。

3号分割の対象期間しか無いとき

婚姻期間中の全てが3号分割の対象期間なら、そもそも合意分割する必要はありません。第2号被保険者(扶養している側)の年金記録は、第3号被保険者(扶養されていた側)と折半されます。

3号分割の対象期間が一部であるとき

3号分割の対象期間が一部ということは、合意分割できる期間と3号分割できる期間が混在しています。この場合は、先に3号分割を行った結果に対し、請求のあった按分割合となるよう全期間でさらに分割されます。

3号分割の対象期間が無いとき

婚姻期間中に一度も第3号被保険者の対象期間がなければ、婚姻期間の全体を請求のあった按分割合で分割するだけです。

3号分割が含まれていても合意分割の結果は同じ

3号分割の対象期間が一部含まれていても、3号分割を先にしてから合意分割するので、結局は合意分割で請求した按分割合に落ち着きます。

ただし、合意分割で請求できる按分割合の範囲が変わるのと、標準報酬額の積み上がり方が少し違うので、モデルケースを使って見ていきましょう。

【モデルケース】

  • 婚姻期間は10年間、平成20年4月1日以降
  • 夫は10年間勤務、標準報酬総額は3,600万円
  • 妻の標準報酬総額は1,200万円
  • 夫婦の合計標準報酬総額は4,800万円(夫75%・妻25%)
  • 按分割合は妻に46%で合意した
  • ケース1:妻は6年目から夫の扶養になる(6年目以降は3号分割)
  • ケース2:妻も10年間勤務(婚姻期間全体を合意分割)

ケース1:3号分割が含まれる場合

3号分割を含む年金分割-1

上図のように、妻は6年目から第3号被保険者(夫の扶養)なので、先に6年目から離婚までの60か月を3号分割します。夫の標準報酬から、900万円(1,800万円の1/2)が妻に移されます。

3号分割を含む年金分割-2

3号分割したことで、夫と妻の標準報酬総額が次のように変わりました。

夫:3,600万円-900万円=2,700万円(4,800万円の56.25%)
妻:1,200万円+900万円=2,100万円(4,800万円の43.75%)

この結果に対して全体を合意分割するため、按分割合の範囲は43.75%を超え50%以下です(標準報酬総額の少ない妻が下限の基準)。

合意した按分割合は妻に46%ですが、4,800万円×46%=2,208万円となり、妻は108万円足りません(夫が108万円多い)。

そこで、不足する108万円を、全期間の夫の標準報酬から妻に移します。そのために算定するのが改定割合です。

改定割合=108万円÷夫の標準報酬総額2,700万円=0.04=4%

改定割合4%を用いて、夫の標準報酬から妻へ108万円移します。

3号分割を含む年金分割-3

合意分割が完了したところです。3号分割された期間も含め、全体から標準報酬が移されていることに注意してください。

3号分割を含む年金分割-4

結果を確認してみましょう。

夫:1,728万円+864万円=2,592万円(4,800万円の54%)
妻:1,272万円+936万円=2,208万円(4,800万円の46%)

按分割合のとおりに合意分割できました。

3号分割が含まれていない場合

3号分割が含まれていない場合は、そのまま全体を合意分割します。

夫と妻の標準報酬総額の割合は、夫3,600万円÷4,800万円=75%、妻1,200万円÷4,800万円=25%ですから、按分割合の範囲は25%を超え50%以下となります(標準報酬総額の少ない妻が下限の基準)。

3号分割を含まない年金分割-1

標準報酬総額が1,200万円の妻を、合意した按分割合の46%(4,800万円×46%=2,208万円)とするには1,008万円足りません。

改定割合=1,008万円×夫の標準報酬総額3,600万円=0.28=28%

改定割合28%を用いて、全期間の夫の標準報酬から妻へ1,008万円移します。

3号分割を含まない年金分割-2

合意分割が完了しました。3号分割を含まないので簡単ですね。

3号分割を含まない年金分割-3

夫:3,600万円-1,008万円=2,592万円(4,800万円の54%)
妻:1,200万円+1,008万円=2,208万円(4,800万円の46%)

こちらも按分割合のとおりに合意分割できました。

按分割合が分割可能な範囲内であれば、3号分割が含まれていても含まれていなくても、結果は変わらないとわかります。

合意分割の按分割合は必ず情報通知書で確認

標準報酬総額の計算は複雑ですし、3号分割を踏まえた按分割合の範囲を、自分で計算するのはとても難しいです。

実は、婚姻期間の全体を合意分割せずに、一部期間を3号分割だけしておけば、自分の年金のほうが多かった……なんてことも起こりかねません。

婚姻期間中に3号分割の期間が含まれているとき、年金分割のための情報通知書には、3号分割をした後における按分割合の範囲が記載されています。

したがって、情報通知書を確認するのがベストです。

ただし、離婚後に情報通知書を請求すると、必ず元夫婦の双方に送付される(相手にも知られる)点には注意してください。

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