年金分割って何を分割する?

年金分割でとても多い勘違いが、年金が現金で配偶者に分割されると思ってしまうことです。年金分割で分割されるのは、実際に受給する年金でも、配偶者が将来受給する年金への請求権でもありません。

また、離婚時に配偶者が将来受け取るべき年金の一部を、分割して給付するのでもありません。恐らくこの勘違いは、財産分与と年金分割を同じように考えてしまっていることが理由です。

ここでは、年金給付の簡単な仕組みと年金分割について説明していきます。

年金は保険料納付記録で支給額が計算される

受給できる年金額は、受給年齢に達するまでに納付された、年金保険料によって上下します。この点は容易に理解できますし、保険料に未納があると年金額が少なくなるのも納得できるでしょう。

年金保険料を納めると、納めた実績が記録されていきますが、この納付記録は国民年金と厚生年金・共済年金では別に管理されています。そうしないと、厚生年金・共済年金の加入状況は人によって異なるからです。

国民年金(基礎年金)を受給できる年齢に達したとき、納付記録から老齢基礎年金額が計算されて支給されます。40年(480ヶ月)のうち未納期間があると、その分だけ支給割合が減ります。厚生年金・共済年金には国民年金も含まれており、保険料を納めた全員が同じ方法で計算されます。

ここまではそれほど難しい話ではなく、未納が無いように納めて満額支給を受けるのが最も老齢基礎年金を多く受け取る方法です。

国民年金は保険料が固定で、年金額も全員が納付期間に応じて支給されるため、年金分割の対象にする意味がなく、夫婦それぞれの納付期間で年金額が決まります。

厚生年金と共済年金には標準報酬額がある

厚生年金と共済年金では、収入によって保険料が変わります。どのくらいの給与・賞与であるかは人によって異なりますから、段階的に区切られた報酬の概算(標準報酬額)が記録されていきます。

この標準報酬額を基にして保険料が決まり、標準報酬額の上下と納付期間の長短で年金額も上下します。月収50万円で20年間勤務した夫と、月収20万円で10年間勤務した妻では、標準報酬総額が異なって年金額が変わるのは当然ですね。

年金分割は、夫婦で異なる記録になっている、厚生年金と共済年金の標準報酬総額を対象に行われます。

年金分割は婚姻中の標準報酬総額の分割

夫婦の一方でも両方でも、婚姻中に厚生年金や共済年金に加入していた納付記録があると、その標準報酬総額の合算を夫婦の標準報酬総額と考えます。そして、2分の1を限度として標準報酬総額を夫婦で分け合うのが、年金分割の基本的な仕組みです。

簡単な例を使って、年金分割をしてみましょう。先ほどの、月収50万円で20年間勤務した夫と、月収20万円で10年間勤務した妻を使います。また、簡単にするため、収入をそのまま標準報酬額とし、按分(あんぶん)割合は2分の1とします。

年金分割では、分割する割合のことを「按分割合」と呼びます。この名称は良く出てくるので覚えておきましょう。

夫は50万円×20年=1,000万円の標準報酬総額があり、妻は20万円×10年=200万円の標準報酬総額を持っています。全期間が婚姻期間なら、夫婦で合算して1,200万円の標準報酬総額です。

この納付記録を2分の1で分割すると、夫の標準報酬総額が600万円、妻も600万円になります。具体的には、夫の1,000万円から妻に400万円を移し、標準報酬総額が増えた妻は年金額が増える仕組みです。

このように、標準報酬総額の多い側(保険料を多く納付してきた側)から少ない側に納付記録を移すので、標準報酬総額が増えた側は、納めていない保険料を自分で納めたかのようになります(実際に納めていないので納付期間には含まれません)。

納付記録を移すのは自分でできるはずもなく、年金事務所や共済組合に按分割合を指定(この例では0.5に指定)して、標準報酬の改定を請求することになります。

夫が結婚前から働いていた場合

夫が10年間勤務した後に妻と結婚、妻が結婚と同時に働き出して10年後に離婚したとします。年金分割は婚姻中の納付記録を対象にするので、婚姻期間の10年間が年金分割の対象です。

夫の20年間の納付記録では、結婚前の10年間は分割対象にならず、婚姻中は夫が50万円×10年=500万円、妻は20万円×10年=200万円の標準報酬総額です。合算して2分の1に分けると、夫も妻も350万円の標準報酬総額になります。

妻が婚姻中働いていなかった場合

婚姻期間を20年、妻が被扶養配偶者だったと仮定し、妻の10年間の納付記録は無かったとします。夫は50年×20年=1,000万円の標準報酬総額、妻は標準報酬が無いので0円です。

合算すると1,000万円になり、2分の1で分割してお互いが500万円の標準報酬総額に変わります。このときは、夫婦の一方しか厚生年金・共済年金の納付記録がないので、一方の納付記録が2分の1に減って相手に移るのと同じです。

過当に年金分割をすることはできない

年金分割では、夫婦が年金分割しなくても受け取るべき年金を、下回るような按分割合は選択できません。また、按分割合の最大値は2分の1(0.5)で、夫婦が不平等になる按分割合も選択できない決まりです。

先ほどの例なら、夫が1,000万円、妻が200万円の標準報酬総額を持っているとき、妻が200万円を下回るようにはできず、夫が600万円を下回るようにもできないということです。

年金分割をしても受け取るのは受給年齢から

年金分割を行っても、記録上の納付実績が増減するに過ぎませんから、その効果(年金の増減)が発生するには、年金を受給できる年齢まで待たなくてはなりません。また、受給資格を得られるだけの保険料納付期間を満たす必要があります。

年金分割が納付記録上の分割で実現される仕組みを理解すれば、現金で分割されるのではなく、受給年齢まで待たなくてはならないのも理解できるでしょう。

注意点が1つあり、年金分割によって改定される納付記録は、年金支給額を計算するときには使われますが、受給資格を満たすための納付期間には算入されない点です。

例えば、婚姻中に厚生年金や共済年金に未加入であった人が、年金分割によりその期間の標準報酬額を得ても、保険料納付があった期間には加えられません(この期間を離婚時みなし被保険者期間と言います)。

あくまでも自分が保険料を納めた期間で、受給資格を満たさなければ、そもそも年金自体が受け取れないことになります。

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