調停で面会交流を拒否・制限できる5つの理由

面会交流が実施されるかどうかは、とりわけ非監護親(別居親)にとって重要であり、何よりも子の成長にとって両親と触れ合うことが重要であるのは確かです。

一方で、監護親(同居親)の立場では、面会交流がされることで逆に子へ良くない影響を危惧したり、自らが別居親を嫌悪したりして、どうしても面会交流を拒否したい・制限したい事情もあるでしょう。

ところで、家庭裁判所における基本的なスタンスは、面会交流を禁止・制限すべき具体的な事由がなければ、原則として面会交流を実施させる方向です。

このスタンスには賛否両論ありますが、どのような立場でも、面会交流が子へ不利益を与える場合には、面会交流を禁止・制限すべきことに争いはありません。

面会交流を原則実施するスタンスが批判されているのは、禁止・制限すべき事由を監護親が立証できなければ、面会交流が実施されてしまうからです。

家事事件では、当事者が主張しない事実でも家庭裁判所が調査や証拠調べをすることは可能ですし、実際にも面会交流の争いでは、家庭裁判所調査官による調査もされるのですが、だとしても監護親の負担は大きいでしょう。

通常、請求する側がその根拠を主張する(例えば離婚請求なら請求原因を必要とする)のに対し、面会交流では原則実施のスタンスから、面会交流を制限して欲しい監護親が、制限すべき理由を立証しなくてはなりません。

では、どのような理由なら、調停で面会交流を拒否・制限できるのでしょうか?

この点、家庭裁判所は次のように考えているようです。

1.非監護親による子の連れ去りのおそれ

面会交流を認め、非監護親が子と接触することで、子が連れ去られて帰ってこないことを危惧する監護親の心情は、察するに余りあるところです。

面会交流で連れ去られた子は、突然普段の生活から切り離され、慣れ親しんでいる監護親や友人等に会うことができなくなる精神的ダメージは量り知れません。

よって、連れ去りの危険度が大きい場合は、面会交流を制限するだけでは足りず、拒否する理由にはなります。

ただし、子の連れ去りは子と会うことができない非監護親が実力行使する性質ですから、適切な面会交流で連れ去りの危険度が小さくなることは予想できます。

監護親が連れ去りを危惧して面会交流に不安がある場合は、弁護士等の第三者を立ち会わせる、建物内で面会交流を行う、面会交流支援団体を利用するなど、試行的な面会交流から始める工夫の余地は十分にあるところです。

したがって、過去に連れ去りがあったという一事だけで、面会交流を完全に拒否できるものではないでしょう。

2.非監護親による子の虐待のおそれ等

子の利益に反する行為として、最も嫌悪されているのは子への虐待です。

非監護親による子の虐待の過去があり、将来もその危険性が高い場合は、面会交流を拒否できる理由になることが明らかで、家庭裁判所も虐待は重く見ます。

問題なのは、虐待の事実を監護親が立証できるかどうかで、立証できなくても虐待によって子が怯えている状態を感じられるならまだしも、監護親が虐待の証拠を残しているケースを除き立証は難しいでしょう。

例えば、虐待後の写真や診断書、児童相談所や警察に相談した記録、シェルターに逃げ込んだ経歴など、十分な証拠資料を提出できることは多くありません。

同居時に子が虐待されていたときから、別居後の面会交流を拒否する予定で(もしくは離婚や親権争い等を見越して)証拠を残す人は少ないからです。

さらに複雑なのは、過去に虐待があったと監護親から虚偽の主張がされる場合もあることです。非監護親が監護親の主張を覆すためには、虐待がないことの証明をしなくてはならず、それは恐らく不可能です。

調停で決まらなければ審判になるが…

過去の虐待の有無を争い、父母の主張が真っ向から対立していると、合意形成されないので面会交流調停が成立することはありません。面会交流は別表第2事件ですから調停不成立で自動的に審判へ移行します。

審判の審理は慎重にされますし、事実認定が不十分な事案は調査や証拠調べもされるとはいえ、事実が出てこなければ結局は裁判官の心証になってしまいます。

その結果、本当は虐待があったにもかかわらず、監護親が十分な主張をできないばかりに面会交流が認められてしまう、または非監護親が無実の虐待で面会交流を禁じられてしまうこともないとは言えないのです。

とはいえ、監護親には何があっても面会交流に応じない手段が残されており、直接強制ができないことを踏まえれば、審判でも真の解決にはならないでしょう。

監護親に不服がある限り実現されないのが面会交流の現実で、審判によって余計に父母の対立が高まることも十分に考えられます。

3.非監護親の監護親に対する暴力等

非監護親による子の虐待と同様に、監護親に対するDVも、監護親に証拠を残す意識が同居当時からなければ、その立証は難しいと思われます。

使えるとすれば、診断書、録音(言葉の暴力)、接近禁止命令等、シェルター隔離、配偶者暴力相談支援センターや警察への相談記録くらいでしょうか。

また、両親間のDVを目撃した子は、脳が委縮するとの研究結果が過去に出されたこともあって、子が精神的ダメージを受けており、非監護親との接触でさらにショックを受ける可能性まで考慮しなければ、子の利益に資する面会交流になりません。

よって、監護親に対する暴力は、面会交流を拒否・制限できる理由にはなり得ますが、監護親不在での面会交流も模索されます。

子が幼ければ面会交流支援団体等の利用、成長した子は自らの意思で面会交流を行うこともできますので、子へ与える影響が総合的に判断されます。

いくら監護親不在で面会交流ができるといっても、非監護親と子が会っている事実だけで、取り乱してしまうほどショックが大きい監護親もいます。

非監護親と子の面会交流が問題なく終わっても、監護親がショックから面会交流後に適切な監護をできなくなるようでは、それも子の利益に反すると考えられるわけで、面会交流は実に難しい事案です。

4.子の拒絶

子が幼いときは、自らの意思を表明できないので、子の拒絶を拒否・制限の理由にできませんが、大人の言うことを理解でき、自分の意思で考えて話ができる年齢(概ね10歳くらいでしょうか)になれば、子の拒絶も理由になります。

ただし、子が非監護親に恐怖心を抱いているなど、非監護親との関係だけで拒絶しているならともかく、子の拒絶で難しいのは、非監護親と会うことが監護親への裏切りと感じる葛藤から拒絶しているケースです。

幼いとはいえ、意思表明ができる年齢になれば、監護親に反抗しないほうがうまくいくと考えるものですし、いくら専門的知見を持つ人でも、このような子の真意を間違いなく推し量ることは相当難しいでしょう。

つまり、子が拒絶している背景には、監護親の存在もあるのです。

ですから、子の拒絶が真意であるかどうかの判断はとても難しい問題で、真意でない拒絶を見誤ると、非監護親にとって酷な結果となります。

監護親による子への刷り込み

子の拒絶では、非監護親から長く離れている間に、監護親から悪いイメージを刷り込まれ、非監護親へ憎しみを感じていることもあるでしょう。

非監護親との関係を断ちたいために、そうした行動に出る監護親は少なからずいると考えられ、非監護親の立場からは無念ですがそれも現実です。

一種のマインドコントロールで、片親引き離し症候群(片親疎外症候群)と呼ばれており、子への精神的影響から虐待の部類と認識されています。

この場合も、子が持っているイメージを払拭することは難しく、子の真意をどのように評価するのかで面会交流が決まってしまいます。

5.監護親又は非監護親の再婚等

監護親も非監護親も、離婚後に再婚することは良くあり、さらに子が監護親の再婚相手と養子縁組することも珍しくありません。

再婚しても親子関係は変わらず、監護親の再婚で子が非監護親と会えなくなる道理もないので、原則としては面会交流を拒否・制限できる理由にはなりにくいです。

とはいえ、特に監護親の再婚は子に与える影響を考慮されるでしょう。

その理由は、子が新しい(監護者の再婚相手との)人間関係を形成し、環境に馴染んでいく過程で、面会交流がプラスになるとは限らないからです。

そうはいっても、逆に面会交流を禁止・制限することが子の心に傷を残すかもしれず、再婚相手という登場人物が増えるとより複雑になります。

基本的には再婚後も面会交流が望ましい

子は父母の都合で離婚した影響を否応なしに背負い、今度は監護親の都合でした再婚も受け入れるしかない状況です。

子は親が思う以上に親を気遣っているもので、再婚を喜んでいるように見えて、実は非監護親を心の中で想っているかもしれませんよね。

ですから、子に害がない限り再婚後も面会交流は続けるべきですし、家庭裁判所は再婚を理由に面会交流を禁止・制限することに消極的です。

また、いずれ子が成長すれば、いくら再婚相手と良い関係にあっても、実親を知ることで自己を知りたい気持ちが芽生えるでしょう。

どんなときでも、子が非監護親と会いたい気持ちを妨げる理由はなく、近い存在の監護親こそが子の気持ちに応えてあげるべきなのです。

まとめ

面会交流の争いは、禁止・制限すべき事由の認定に加え、子の真意を知る二重の難しさがあって、家庭裁判所も頭を悩ませます。

その上、面会交流の場合は家庭裁判所で何が決まっても、事実上で監護親のコントロール下にあり、家庭裁判所の存在感が小さいことも否定できません。

それでも、調停不成立で審判へ移行し、裁判官に与えた心証が審判を大きく左右するとなれば、弁護士への依頼を積極的に考えても良いでしょう。

監護親の立場でも非監護親の立場でも、自分に有利な審判がされることで、正当性を持つことができる意義は大きいからです。

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