無効な離婚でも追認すると有効な離婚になる

離婚の意思が無いのに離婚届を出された場合、協議離婚無効確認調停で離婚が無効だと争うことになります。離婚が無効であることを双方が事実と認めると、合意に相当する審判によって決着し、離婚届を出した側が認めなければ訴訟での決着へと進みます。

しかし、それらの過程における当事者(特に無断で離婚届を出されてしまった側)の負担は大きく、調停や訴訟は時間も掛かってしまいます。

さらには、離婚の無効が認められたとして、その後に夫婦生活を継続できる可能性は低いでしょう。というのも、同意なく離婚届を出すからには、出した側の離婚意思は極めて固いからです。

もし、協議離婚無効確認調停・訴訟で離婚の無効が確定しても、今度は離婚調停から離婚訴訟へ向かっていくと考えられます。

そこで、離婚は仕方なく認めてしまい、離婚条件に争点を移す方法も無いわけではありません。後から認めることを追認と呼び、無効な離婚に対しては追認が可能と解されていて、追認すれば有効な離婚として扱われます。

民法では、取消しができる詐欺・強迫による離婚は追認できる(追認によって取消権を失う)と明記されていますが、無効な離婚に対して追認できると明記されていません。しかしながら、判例は無効な身分行為の追認に肯定的です。

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追認に特別な手続は必要ない

追認の場合は、自ら離婚を認めるだけで、役所への届出はもちろん、相手への通知も必要ないとされており、離婚届で離婚が成立していることを知って、それでも離婚を無効と主張しなければ追認していると推測されます。

追認のための行動を起こさないことを「黙示の追認」と呼びますが、黙示の追認は万能ではありません。

離婚の成立を知っていて、放置することによる黙示の追認は、追認する側にとってデメリットが大きく、どうしても争いを避けたい場合を除き、明示的に追認するべきでしょう。

具体的には、離婚が有効な前提で(離婚を有効だと認めて)、離婚条件の交渉を行うことです。逆に無効な離婚を追認しないなら、離婚を肯定してしまう条件交渉は当然にタブーです。

例えば、財産分与や慰謝料、年金分割といった離婚に伴う請求は、離婚が無効であれば必要はないのですから、離婚条件の交渉をする=離婚を追認していると捉えられます。

追認の効果は良く考えてみるべき

結果的に離婚するとしても、一旦は離婚を無効にしてから、夫婦の合意で離婚をするのが本来の方法です。しかし、追認のほうが圧倒的に手間は少なくて済みます。

協議離婚無効確認調停→戸籍訂正申請→改めて離婚届提出という面倒な手続を、追認するだけで省くことができるからです。

しかし、追認では離婚届の提出まで遡って有効な離婚とされ、この点は追認する側にとって非常に重大です。離婚が離婚届の提出時まで遡る効果を良く考えなくてはなりません。

追認による請求権への影響

離婚を追認せずに、離婚を無効としてから離婚する方法では、未来の離婚届で離婚が成立するのに対し、追認では過去の離婚届で離婚が成立します。

この違いは、離婚によって発生する様々な請求権の時効(除斥期間)に大きく影響を与えます。

離婚成立から、財産分与は2年、慰謝料は3年、年金分割は2年までに請求しなければならず、追認によって離婚が離婚届の提出時まで遡ると、既に請求できないケースが出てくるでしょう。

また、婚姻費用においても、離婚の無効と追認では違いが起こります。

離婚が無効になると、離婚届まで遡って婚姻は継続してますから、婚姻費用の分担を請求することはできますが、離婚を追認してしまうと、離婚届の時点で離婚しているため婚姻費用は請求できません。

追認する場合は親権者の指定を必ず確認

離婚届が無断で提出されたとしても、役所が受理していれば、手続上は離婚で戸籍が変更されています。そして未成年の子がいると、離婚届によって親権者が指定されています。

このとき、離婚届を出した側に都合の良い親権者指定となっているかもしれず、親権者の指定を確認せずに追認するのは厳禁です。離婚届に記載された親権者を、そのまま認めてしまうことになりかねないからです。

離婚届における親権者の指定も含めて追認してしまうと、親権者を変更するためには、親権者変更調停を申し立ててなければなりません。

離婚後の未成年の子は、戸籍の異動手続をしていなければ婚姻中の戸籍に残っており、子の身分事項欄を見れば親権者の記載があります。

離婚を追認するときは、必ず子の戸籍謄本を確認して、親権者にも合意できるときだけにしましょう。

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初めての調停
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